『オデーサの悲劇』
後にそう語られることとなるポトフ戦車軍団の壊滅。
その原因については、直後から様々な人間が、様々な方面――その端緒が「被告人なき軍法裁判」だったのは有名な話――から究明がなされてきたが、しかし、研究者達はほぼ例外なく、ある一点において見解の一致をみる。
『相手が帝国陸軍第18砲兵師団だったのが悪い』
その戦闘力が知られて以降、多くの人間が指摘するのはこの一点。
「ポトフ将軍は第18砲兵師団のことを知っていたのか?」
結論から言えば、彼は知りようがなかった。
冷戦終結以降に開示された当時のルーシー連邦軍情報部資料によれば、彼らが第十八砲兵師団のことを察知したのは、意外に早く統一歴1928年初夏、実に編成直後のことであった。
――が、その内容はというと「帝都ベルン方面において、一個砲兵師団が新編された模様」という、初期情報でしかなかった。
仕方ない面もある。なにせ当時の連邦軍、そして共産党の一番の関心事は『オーバーロード』、すなわち合州国及び連合王国によるフランソワ北部上陸作戦であり、それに呼応しての「共産主義クーデター」であった。
「連合王国、そして合州国が、ペッタン将軍の首を挿げ替えようとするのは自明の理」
「その通りです同志。こともあろうに共和国政府はこの期に及んでも中立を標榜しております。第二戦線を構築するにあたり、これは実に都合が悪い」
「どうせペッタン氏は首なのだ。――
共産主義は、自己の無謬を疑わない。
人類社会は階級闘争を経て、最終的に共産主義社会に行き着くのが必然。その「正しい流れ」の「手助け」をすることに、彼らは使命感を覚えこそすれ、罪悪感など露ほども感じない。奴隷制社会も封建制社会も暴力によって次の時代に発展したのだから、暴力革命が起きるのは歴史の必然。そして革命に参加することは人間の歴史的使命である!
――そんな、まっとうな人間なら首を傾げそうな理屈に共鳴する人間ばかりだからこそ、彼らは自分たちが世界から白眼視され、忌避され、台所の黒い生命体に劣る害悪である自覚がない。
だからこそ、であろうか。
フランソワにおける共産主義者の目論見はもろくも崩れた。夏から秋にかけて、モスコー共産党情報部門は、上へ下への大騒ぎであったという。
「どこから情報が漏れた!?」
繰り返すが、彼らは自己の無謬を疑わない。
共産主義と言う理論は疑うことの許されない――と、言うより疑うという選択肢がない――絶対の理論であり、常に正しい(彼らの中では)。
にもかかわらず失敗したとなれば、それは理論ではなく実行する側に問題がある、と彼らの中では結論づけられる。――すなわち。
「…どこの誰かね?ブルジョワジーと結託し、情報を流した反動分子は!?」
共産主義者が三度の飯より内ゲバとリンチを愛するのは周知の事実であるが、その根底にはこれがある。『失敗するのは、誰かが反動したからだ。よってその反動分子を処さねばならない』と。
…救いようがない、ともいう。
あるいは、謝ったら死ぬ病、というべきか。
何せ自分たちが信奉し、実行してきた理論は完璧なのだ。完璧である以上「謝罪」などありえない。万一「謝罪」を選択してしまったが最後、それは理論への裏切りであり、アイデンティティー崩壊の危機でさえある。
――そう、冗談抜きに、彼らは「謝ったら死んでしまう」のだ!
極まれに謝罪しても生き残る個体があるかもしれないが、生き残ったとしても持ち受けるのは『総括』である。
『貴様なぜ謝罪した?よもや共産主義が間違っていると認めたのかね?』
『ち、違う!私は決してそのような!』
『黙れこの忌々しい反動分子め!…こんな奴と同じ空気を吸っていたとは、おぞましいにもほどがある』
『全くだ同志。おい、連れていけ!』
『はっ!』
『や、やめろー!』
――一度その道に堕ちたが最後、二度とまっとうな人間には戻れない餓鬼道。『独裁的な党指導者』――何をしても批判されないから――のみが軌道修正を許される政治体制、それが共産主義である。
彼らが時折、常軌を逸した凶暴性と暴力性を発揮するのは、ひょっとすると、自分たちの心の奥底にある「正気」に蓋をするため、あえて醜悪な道化を演じているのではないかとさえ思われる。共産主義とはそれくらいに救いがない宗教であり、台所の黒い奴よりもしぶとい地球史上最大の汚物であることを、忘れてはならない。
――話がそれたが、そんなわけで、統一歴1928年の秋にかけて、共産党諜報部門はとてもではないが帝国の新設一個師団に関わっている余裕などなかった。
では、赤軍情報部の方はどうか?
残念ながら、こちらはこちらで大忙しであった。
攻撃計画『黎明』。
その発動に向け、連邦軍情報部はその総力を挙げて帝国東部軍の配置、戦力、指揮系統、その他必要な情報を徹底的に収集することに余念がなかった。
――結果、「現在錬成途中。編成完了後、東部軍予備に編入見込」という第十八砲兵師団に関する第二報は、報告書の山に埋もれることとなった。
当然、この件は『オデーサの悲劇』のあと問題として取り上げられるのだが、しかし情報部にだって言い分はある。
「10日時点で、奴らは帝都にいたのだぞ!?」
そう、全く以てその通り。
モンシュタインが参謀本部で、クデーリアンとともに辞令を受け取ったその時、第18砲兵師団もまた、帝都近郊にあった。
――だが、連邦軍情報部が知らなかった事情がある。
それは第18歩兵師団が、自前の鉄道輸送能力を持っていたこと。そして彼ら情報部は帝国の最新型戦車や航空機には非常な注意関心を払っていたが、あるものに関して、情報を入手していたにもかかわらず、その意味するところを把握しきれていなかった。
――すなわち、帝国が誇る『軌道上の怪物』。
『希望は10編成?…モンシュタイン、君、戦前の鉄道資料を引っ張ってきただろう?今なら6編成もあれば行けるハズだ。ちょっとまて。
――ああもしもし? 私だ。
挨拶はいい。ちょいと頼みがあってね。なに、難しいことじゃない。先週納車された『110形』6両、そのまま第18砲兵師団に回してくれ。…うん?ああ、そこは大丈夫。帝室予算で追加発注するから。…貨車と客車?もちろんセットだとも。在庫があるだろう、無いとは言わせんぞ。出来ませんでは良心がない。
…結構。今からモンシュタイン大将がそちらに向かうから、上手く話し合って決めてくれ。結果についてはまた電話する。努力したまえ。
――よし、これで良いだろう』
モンシュタインは後に語る。
自分が鉄道部に差し入れをしたのはあの時が初めてであったと。
結果として、連邦軍の誰もが予想しえなかった事態が起こる。
統一歴1928年12月10日夜。
帝都近郊の演習場にあった第18砲兵師団に緊急招集がかかる。
兵隊ラッパで叩き起こされ、司令部への出頭を命じられた連隊長、大隊長以下は、そこで思わず背筋を正すこととなる。
「先月ぶりだな、諸君!」
エーリッヒ・フォン・モンシュタイン。
帝国陸軍大将にして、第18砲兵師団の生みの親。
東部にいるはずの彼が、そこにいた。
「聞きたいことは色々あるだろうが、時間が惜しい。端的に言おう。
――師団総員、乗車を開始せよ。明朝
目的地も目標も、列車が動き出してから知らされたと、師団将校らは後に語る。
平均時速100キロオーバーを叩き出す快速列車は、機関車の給水給炭以外、ほぼノンストップで東部戦線南方を目指した。
「…ところで閣下、まさか我々と同行なさるので?」
「お忘れかね中将。東部方面司令部はラウドン元帥閣下もろとも爆散。残った東部戦線各部隊は今頃撤退に大忙し。この状況で、私の座る椅子があろうものかね」
「…確かに、愚問でありました」
「だろう。その点、ここは貴官も含め、気心の知れた連中ばかり、指揮通信能力も折り紙付きと来ている。これはもう、居候するほかあるまい?
…ああそうそう、参謀連にも定刻までには来るよう指示したから、そのうち来るだろう。その受け入れも頼むよ」
「はぁ、了解であります」
そして、統一歴1928年12月12日夜。
「目標地点はここだ。ここで降車する」
「危険です閣下、
「だからこそだ」
帝国軍きっての知将は語る。
そもそも、開戦以前から今日に至るまで、帝国軍は常に連邦軍に対し数的劣勢を強いられてきた。にもかかわらず、帝国は戦術的勝利を積み重ねてきた。それは何故か?
「主導権だ。帝国は数限りある部隊を機動的かつ効率的に、連邦に対し主導権を握ることで局地的勝利を積み重ねてきた。――翻って、現状はどうだ?主導権すらあちらにあるではないか」
『黎明』
それは文字通り、帝国から主導権を、そしてすべてを奪わんとする史上空前の大規模攻勢。
「これを手持ちの部隊でどうにかするとなると、工夫の一つや二つは必要だ。――見たまえ」
そう言って、彼は連邦軍配置のプロットされた東部戦線要図を示す。
「いやはや、戦前の想定がどれほど甘かったかを痛感させられる。まるで鉄の津波だな、全く羨ましい。…だが、連中とてすべての部隊を機甲師団にしているわけではない。東部戦線南方において、最も脅威となる連邦軍部隊は、やはりこいつだろう」
「『ポトフ戦車軍』ですな」
「然り。まさに攻勢の要と言えるだろう。参謀本部に照会したところ、戦車に自走砲、牽引式対空砲に歩兵用トラックと、クデーリアンが聞いたら大喜びしそうな編成らしい」
「これを目標に…?危険では」
「極めて危険だ。だからこそ叩く価値がある」
良いかね?と彼はニヤリと笑う。
「確かにおいしそうな獲物はほかにもある。…が、その最中に
「!…楽しい宴はお預けですな」
「そうだ、ならば最初から特上の獲物を頂こうではないか。救援に来るのは格下ばかり。我々は最高級ステーキをたらふく頬張れるわけだ」
「そう上手くいくでしょうか?」
「普通ならば無理だ。
「閣下の言うとおりですな。…ふむ、これはうまく行けるかも知れません」
「うまくやるのだ諸君。そのために我々は今、戦線後方200キロの林の中で停車しているのだから」
「と、仰いますと?」
「簡単な話だよ。貴官が前線将校だったとして、戦線後方200キロの敵部隊まで把握しておるかね?」
「!」
連邦軍情報部の敗北は、この瞬間に決まったと言えるだろう。
まさか数日前まで帝都にいた帝国軍部隊が、いつの間にか東部にあり、深夜の2時に最前線へ鉄道輸送されるなど、誰が予想できるだろうか!
「予定地点です!!」
「
「観測大隊、装甲擲弾兵大隊、第1砲兵連隊は手筈通り前進!」
「第2、第3、第4砲兵連隊は射撃態勢に移れ!」
「補給連隊、作業急げ!」
「走れ走れ走れ!40秒で支度しな!!」
かくして第18砲兵連隊の攻撃は、ポトフにとって文字通りの奇襲となる。
加えて「黎明」の第一撃で帝国東部軍司令部を吹き飛ばして以降、その進撃が順調すぎたのも災いした。
なるほどモスコー襲撃の報はあったが、それは遠く離れた後方の話。ポトフ戦車軍団の面々は文字通り、すっかり油断して眠りこけていたところを蹴り起されることと相成ったのである。
「撃ち方、始め!」
「くそっ!前進だ!帝国軍砲兵陣地を叩く!!」
「同志将軍!?正気ですか!」
「正気だとも!ここで後退などしてみろ、却って敵の思うつぼではないか!」
この時のポトフの判断は、あながち間違いとは言い難い。
よくご存じのとおり、戦車の装甲は正面ほど分厚く、側背面は薄い。ゆえに攻撃を受けたまま撤退に移行した場合、混乱と損害が増える一方だという彼の認識は間違っていない。ただ一つ、その認識に問題があったとすれば。
「しかし、同志将軍!彼我の距離は20,000あるのですよ!?」
砲兵将校からもたらされた*1その情報。
「同志参謀、貴官の懸念は分かる」
だがな、ポトフは続けた。
「退却したところで意味がない。現状、連中はこちらを射程に収めており、こちらには有効な手立てがない。――このままでは一方的にやられるだけだ」
「…ならば前進してこちらも相手を射程に収めるしかない。そう、仰るのですな?」
「その通りだ同志。何より見てみろ、この惨状を」
ポトフが顎をしゃくって見せた先にあるのは、砲撃にうろたえ、逃げ惑う連邦軍歩兵の姿。この状態で撤退命令など出そうものなら何が起こるか、想像もしたくない。
「…案ずるな同志、いつも通りやるだけだ。いつも通り…何も問題はない」
帝国軍の砲撃を受けた場合、急進してその砲兵陣地を叩くというのは、確かに連邦軍戦車部隊からすれば常套手段だった。
――だがそれが、その参謀がポトフ司令官を見た、最後の姿となった。
「ほう?こちらに向かってくるか。連邦にもなかなか肝の据わった奴がいるな」
ここで一つ、第18砲兵師団について、忘れてはならない点がある。
それはこの師団が帝国陸軍唯一の、「全て自走砲で構成された砲兵部隊」であるという事。残念ながら、ポトフ戦車軍団が把握しえなかったその事実は、故に残酷な結果をもたらす。
「何故だ!?なぜ距離が縮まらない」
「同志!連中、陣地転換をしている模様!」
「馬鹿な!射撃を止めずに陣地転換など、ありえん!!」
――『我々は一方的に叩かれ続けた』。
戦車軍団の生き残りは、後にそう証言している。何度音響探知をしても、その距離は12キロより縮まることはなかった、と。
「撃ちながら下がる。これほど楽な仕事は無いでしょう」
「同感だが中将、連中に言ってやるなよ。世界広しと言えど、師団規模でこれをやれるのはこの部隊くらいだろう」
「お褒めにあずかり、恐悦至極であります」
「ふふ、今後とも存分に使い倒してやるからそのつもりで…ふむ。早速だが中将、丁度良い塩梅ではないかね?」
「そうですな。では、始めましょう。――第1、第2砲兵連隊へ命令下達。
『対戦車戦闘用意。砲兵隊、前へ!』」
『砲兵による自発的な
後に帝国陸軍第18砲兵師団を語る際、必ずと言っていいほど使われることとなるその表現は、この日、この時に誕生した。
それは、連邦軍戦車部隊が10数キロ程進軍したときに起こった。
『1号車、被弾!』
「何があった!?」
この時まで、ポトフ戦車軍団の戦車にはほとんど損耗はなかった。
意外に思われるかもしれないが、この時まで帝国軍が行っていたのは「榴弾による遠距離射撃」。ゆえに、運悪く天板に直撃を受けただとか、履帯に食らって走行不能にでもならない限り、戦車
――その砲塔側面や車体に真っ赤にこびりついた、タンクデサント
『こちら3号車、10時方向に発砲炎――』
『3号車、被弾!』
「くそっ!対戦車砲だ!砲塔回せ、照準!!」
「急げ急げ!早くしないとゲルマンスキーにやられるぞ!!」
さすがは精鋭で知られたポトフ戦車軍団の面々。彼らは慌てることなく、砲塔を帝国軍へ指向させた。
――だが、そこまでだった。
「…しゃ、車長!照準できません!」
「何を言っている!?」
よく勘違いされていることだが、実は連邦軍戦車砲の精度は悪くない。
どころか、計測データによっては帝国軍戦車の主砲を上回る数値を示すものすらある。――だが、照準器の性能に違いがあった。
『TSh-16』
倍率4倍、
「――連中、距離4,000以上から撃ってきています!!」
「命中!…さすが60口径だ、当てやすさが段違いですぜ」
「実に結構。だが油断するなよ。まだまだ敵は多いぞ」
「ふふ、腕が鳴りますなぁ。騎士鉄十字勲章が楽しみです…、照準ヨシ!」
「装填ヨシ!」
「
帝国軍Waffenträgerに搭載されていた照準器は2種類。
一つは野砲として使う際の間接照準器、Rbl F 201 (b)12/60。
もう一つが対戦車戦闘用直接照準器、Turmzielfernrohr12/60。その名の通り、60口径12センチ砲のために新規設計された照準器で、その性能たるや倍率
――言うまでもなく、当時の世界標準を凌駕する高性能光学照準器であった。
Waffenträgerはこの二つの照準器を併用することで、理論上5,000メートル以上でも対戦車戦闘を可能とした。しかも――
「弱点を狙う必要はない。当たりさえすれば良い」
「ククッ、全く最高ですな。イワンの戦車がゴミのようだ」
照準すら覚束ない遠距離から、どこに喰らっても即死の一撃が飛んでくる。
ポトフ戦車軍団が置かれた状況は、
しかも――これは戦後になって判明することだが――、実は継戦能力すら両者には隔たりがあった。
連邦軍戦車の主砲発射速度は、
だが、これは所謂カタログスペックである。
もっと言ってしまえば、「党の指導よろしきをもって、革命的に画期的な新型砲塔の開発に成功した」設計局の弾き出した数値であり、つまり現実とは乖離していた。
――現実は、ベストコンディションで毎分4発。
…もうこの時点でカタログ詐欺だが、もう一度よくお読みいただきたい。
そう、ここで重要となるのが「ベストコンディションで」と言う注釈である。
この時代の戦車は構造上、射撃時の排煙が砲塔内に滞留する*2。ゆえにほぼ全ての国の戦車が、砲塔上部に
――装填手が失神する事例が多発し、対策会議が開かれるレベル。
無論、戦闘が長引いたときに発生したとされる事象だが、さすが「身長170センチ以上は装填手になれない」*3お国の設計と言うべきか。
対するWaffenträger。
弾頭だけで27キログラム以上あるため、本車の60口径12センチ砲は分離式薬莢、すなわち砲弾と発射装薬が別々であった。これは本来、発射速度低下を招く方法なのだが、Waffenträgerの場合、カタログ上の発射速度は毎分10発。
――無論、カタログスペックだ。実際には毎分7~8発だったという。
…おかしくないか? と言うそこの読者諸君。その気持ちはよく分かるが、思い出していただきたい。Waffenträgerの乗員構成は「装填手
つまり一人目が弾頭を装填した後、二人目が装薬を押し込み、すかさず一人目が閉鎖器を閉めるという分業が確立されていた。
加えて、本車は砲塔を持たないオープントップ。…と言うより、Ⅳ号戦車の車体に野砲をポン付けしただけだ。風通しが良いどころの話ではない。当然、排煙滞留という概念すら生じない。
ちなみに、実戦においては師団の手隙要員――砲弾運搬車の乗員とか――が装填補助に入るのが常態化していたという。砲塔がない、出入り自由のオープントップならではの方法だった。
余談だがWaffenträger、そんな構造だから車内に搭載する弾薬は多くない。
だから特に連続射撃の場合、常に弾薬補給車――こちらは鹵獲した連邦軍車両やら協商連合経由で調達した合州国製トラックやら、実に雑多だった――を張り付かせ、その搭乗員に弾薬のバケツリレーをさせながら射撃していたという。
――もうこの時点で、勝敗は決していたと言えるだろう。
だが、モンシュタインの灰色の脳細胞は、連邦軍を更なる絶望へと叩き落す。
『15号車、被弾炎上!』
「何だと!?」
『こ、後方!後方8時より、新手の敵部隊!!』
勝敗が完全に決し、ポトフ戦車軍団が潰走を始めたのは午前10時頃だったと伝えられる。算を乱して退却する連邦軍は、しかしながら、第18砲兵師団の魔の手を逃れることは出来なかった。
「第4連隊、前へ!師団総員、追撃戦へ移行せよ!!」
昼過ぎまで続いた追撃により、ポトフ戦車軍団は損耗率80%とも言われる損害を出して、文字通り消滅した。そしてポトフ戦車軍団が消滅した空間を、モンシュタインは無駄にしなかった。
「この通信を聞いている帝国軍全将兵に告ぐ。直ちに以下の地点へ向かえ――帰ろう、
最終的に、この空間から脱出に成功した帝国東部軍の将兵は5万とも6万とも言われる。それは連邦軍の『黎明』に飲み込まれ、重装備のほとんどを失いつつもどうにかこうにか糊口を脱出せんと西へ向かっていた東部軍の生き残りであった。
『――戦線を押し戻そうなどとはしないでくれたまえ。帝国が欲しているのは一人でも多くの将兵なのだ』
参謀本部のオーダーを、モンシュタインは見事に果たしたのである。
これに対応すべき連邦軍だったが、しかし――
「何だと!?」
――それどころではない状況にあった。
「今度はラネングラードだと!?」
ツェ「…なんか特に前半、お口が悪くなってないか?」
事実だからね、シカタナイネ
デグ「なんでも筆者の祖父、日教組とバチバチにやりあって色々やられたらしい」
ツェ「ああ…それで」