始次元ゲイムイーリス 喜劇のアポカリプス    作:燐2

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ちょうど二か月ぶりの更新。


嫌悪されし神、笑う邪悪

宙に浮く虫を掃うように薙ぎ払った一撃、それは闇の一閃として町を覆った。

その範囲にあった煉獄の炎に栄えた街は暗黒に包まれ天を震わすほどの轟音と共に消滅する。逃げ遅れた人間も崩壊していた建物も余さず残さず差別なく禍々しき一色に塗りつぶされる。しかし、その中でも強く光る物と弱弱しく光る物がいた。

 

「僕ごとかよ。お前の敵はあっちだろう」

 

破滅の禍風を真面に浴びても顔色一つ変えず立ち尽くす空の姿。あの程度(・・)の攻撃ならば避ける価値すらないと嘲笑うかのごとく、その純白のコートに穢れすら一つもない。足場にしていた燃えていたビルはこの世から消えたので、新たな足場は黒く焦げた地面に立っていた。

 

空は頭を掻く。すぐ傍には、あの存在に戦いに挑んだのはいいが、膝を地面に落とし荒々しく肩で呼吸をする女神の姿だった。先ほどの一撃はあの悪神を構成する負の念による攻撃、その対極の属性を糧にある女神にとって猛毒を浴びらされていると同威儀である。しかも、捕まった空を救う為に消耗が激しい。

 

余裕を見せる空と今にも倒れそうな女神に悪神が触手を束ね広げる。負のシェアエネジーで構築された問は思えない輝きし虹色の光沢を見せる魔性の輝き、それは大気を覆うように羽ばたかせ神々しく空を舞い肉薄する。

 

「ッッッッ!!」

 

「はぁ…」

 

先に動いたのは勿論、空だった。ため息を吐きながらその場を即座に離れる。先ほどの迎撃行動で蜂の巣にしたのが原因なのか奴にとって逆鱗に触れてしまったようで、直ぐに倒せそうな女神を放置してその殺意は空に向けられる。

 

「最悪」

 

禍々しき女神に一つ文句を呟くと同時に、その場に槍のような手甲が突き刺さる。第三者からすれば視界すら捉えることが出来ないほどの一閃。遅れて響く轟音と舞う土煙から歩きながら悠々と空は姿を現す。それに女神は思わず口を抑える。出来の悪いホラー映画でも見ている気分になった。何故なら歩くそれは、中身の贓物を引き摺りながら歩く者。人間に言うなら臍から上が強烈な力で切り開かれたような惨状だった。

 

「っ……!?」

 

何かを思いついたように下半身の足が止まると傷口から手が生えた。次に現れる血に濡れた金髪の髪、ゴムを引き千切るような音と吹き荒れる血飛沫と共に現れる傷一つない赤黒い血で濡れた白いコートを身に纏った空の姿が現れる。女神の常識では理解できないあまりに非情な光景に嘔吐感すら引き込み、言葉を失う。肉の塊になった自身の下半身は血と肉に細かく意思があるように分解され、地に足を付けた空の足元に吸収されていく。土煙の向こうにも肉の千切れる音と共に地面を蛇のように走る血と肉が持ち主に戻っていく。

 

「僕を殺す気なら原子レベルで砕け散らすぐらいでやらないと」

 

まぁ、それでも死ねないんだけど、とやつれた声音で空は呟く。既に全身を彩っていた空の血は既に還元されており、女神と逢着した時を変わらない姿となっていた。

 

「お前が真に滅ぼしたいのはそこのビッチだろうが」

 

「ビ、ビッチィィ!?」

 

吠える力があるのなら交代してくれと思った空はコートに手を入れたその瞬間、土煙を貫く黒の閃光が地面が爆発する音と共に現れた。空の背後にいた女神が反応が出来たが体は追いつかない。しかし、空は既にコートからそれを抜き取っていた。大気を貫く速さで放たれる槍撃と抜刀される黄金剣は微かに照らされた火花と同時に二人の衝突した空間を満たしていた大気が強烈な激風となって周囲を吹き飛ばした。

 

「……チッ」

 

本来の力であるならカウンターで相手の上半身と下半身を裂かすつもりであったが、一割しか出せない故に互角(・・)となってしまったことに空は舌を鳴らす。互いの獲物で鍔迫り合い状態になりお互いの片手が止まる。先に動いたのは悪神、もう片方の槍で空を貫かんと伸ばすが凶器の刃は空のもう一つによって捕まえられ動きを停止される。お互いの両手が止まるが、悪神には計四本の触手が蠢く。触手の先の刃状となっている部分が上下に開き紫電を散らした禍々しき輝きを放つ宝玉の先からは黒き光を放つエネルギーが集まっていく。

 

「激しいスキンシップはお断りだね」

 

冷めた視線で空は悪神の股に足を横にして滑り込ませた。光線を放つために集中していた悪神は一瞬反応に遅れた。足を拾われ体制を崩され、刃を掴んでいた腕を離して無謀になった腹部を空の拳が深く突き刺さる。部分的に不気味に光っていた物の砕ける音と同時に悪神は吹き飛ぶ。同時に放たれた触手から放たれた光線は周囲を駆け巡り、あらゆるものを切断している。無尽蔵に振るわれる光剣を空はワンステップで躱すと黄金の剣『クタニド』を放り投げる。

 

「オスカルト、エィロワ、アダイドゥ、アリトライ=ティイ。安定と秩序を司る旧神の守護の刃は悪しき神を断つ神剣なり」

 

唱えるように呟く。呼び出されたように袖から鈴の鳴る音と共に四つの短刃が飛び出しそれを掴む。そして二つの刃の柄と柄を合体させ、更にそれを挟むようにもう二つの刃が合わさる。例え小さき刃でも、それは空の上半身を隠させるほどの巨大な手裏剣となっていた。

 

体に纏わせ、瞳に獲物を映して投擲。空の怪力により放たれた手裏剣は刃が見せないほどの高速回転をしながら飛びついた虎の如く悪神に牙を剥く。

 

これらの行動を悪神が大勢を整える前に放たれていた。悪神もバカではない。あれがあれは聖なる祈りが込められた神剣、例え不滅の存在だとしても己の力を削る毒物以上何物でもない。触手を地面に突き刺して強引に己の体を持ち上げる触手は切り裂かれたが、その程度はさほど問題ではない。

 

因子解放(レギオン・ドライブ)

 

次の攻撃に比べれば。

 

「なっ…!?」

 

女神からは又もや自分の目を疑う。空の背中から何か蛇の様な物が突き破りって姿を現す。鋭い刃のような瞳孔、燃えるような烈火色の鱗。人々が幻想(ロマン)だと言いながら語られるドラゴンの荒々しい顔だ。ドラゴンの凶悪の牙の間から火花が迸り、手裏剣から逃げた悪神目掛けて既に照準は定まっていた。

 

「----ォォォオオオ!!!!」

 

気高きドラゴンの咆哮と共に発射される灼熱の炎弾。夜空を切り裂き、羽としての役目であった触手を切り裂かれた悪神に逃れる術はないように思えた少なくてもその場にいた女神だけは。

 

 

悪神は真正面からその爆炎を浴びた。そして吸収した。

 

 

女神はその恐ろしい光景に息を呑んだ。人々の負の概念によって構築されている『ディスペア・ザ・ハード』にとって弱点とありえるのは己の対極なる力のみ、太陽の如き輝きを放っていた灼熱の弾丸はただ熱いだけであり、不滅の存在体である『ディスペア・ザ・ハード』の効果的な攻撃とは思えない。

 

「ん、狙い通り」

 

しかし、『ディスペア・ザ・ハード』はミスを犯した。それは吸収するためにその場で止まったという事。円を描く様に死角から四つの刃が結合した聖なる手裏剣が『ディスペア・ザ・ハード』の上半身と下半身を切り開いた。

 

何が起きたのか理解できないまま無残に両断された『ディスペア・ザ・ハード』は地面へと墜ちた。

ドラゴンの顔を引っ込ませ、願い通りに天に向かって上げた手の中には手裏剣が収まる。

 

「す、すごい……」

 

その鮮やかさに女神は思わず言葉を漏らす。相手の心理を読んだ三連撃。相手にとって危険な武器をワザと軽傷で済ませて危機感を刻みつき、更に相手の性質を無知を装い大技の攻撃によって油断を誘わせ動きを封じ、死角からの攻撃。

 

「(戦い、慣れている……)」

 

この世界を守護する者である女神は目の前にいる空という存在がどれだけ遠い存在であることを思い知った。この世界に女神より強者は存在しない。数での暴力も知っているが、それでも人智を超えた女神の力には何人も触れることなく無力化できた。

 

「……やったの?」

 

「無理」

 

「はい?」

 

ためらないながら問を投げる。それに対して空は手裏剣をコートに放り込み背を『ディスペア・ザ・ハード』が墜ちた場所に背を向けて歩き出した。

 

「ちょ、無理ってどういうことよ!?」

 

「あれはこの世界の負の集合体。あの程度なんて、所詮短い失神する程度のダメージなんだよ。あれを滅するのならこの世界の全ての人間を抹殺するしかないよ(なにより、これ以上は面倒だ)」

 

刃を掴み傷ついた手を見る。ここで血を流す意味がない。あの悪神も女神が死んでも滅んでも全く関係ない。

 

「そ、そんなこと出来る訳ないじゃない!!!」

 

「じゃあ、滅べ」

 

渇いた音が響く。地面を蹴った女神はそのまま空に向かって顔に平手を決めたのだ。

 

「…………」

 

荒く呼吸を繰り返し顔色の優れない顔つき、瞳に流れる一滴。

理解できない。

どうして、そこまで人間に肩入れするのか?嘘と否定ばかりする彼らを守る意味はない。

両肩を捕まれる。

振り払おうと思えばいつでもできた。しかし、女神の瞳に映す意志の力に魅せられ振り払うこと辞めてしまう。

 

「お前、あれがどんな奴か分かっている?」

 

「えぇ、分かっているわ…」

 

「もし仮に解放したとしよう。でも、また復活する。いや……生まれるよ」

 

「人の負によって生まれる神。でも苦しんでいるあの中には怒りだけじゃない悲しみや苦しみが詰まっている!それを助けたい!!」

 

人を愛する女神の気持ちを理解できない故に頭を傾げた。人間を全て抹殺するのが一番手っ取り早い。あの悪神を構成する根源を断ち切れば後は自然消滅を待つだけで十分だ。なのうにどうせ修羅の道に歩もうとしているのか、人間を憎み殺すことしか知らない存在には未知の領域だ。

 

「ーーー私は女神なのだから!」

 

今まで、見てきた神とは違った女神に少しだけ驚いた。

神という存在は生まれたその時から在り方が決まっている。

彼女の人を愛する思いも、所詮造られ者だ。なのに、神としての使命以外に彼女は心底から人間を愛している想いが伝わってくる。

 

女神の悪神と戦う為の心は既に折れていた。力だけ合っても経験が圧倒的に不足だ。

女神自身も強く言いながら、誰かに縋るような事は初めだった。この世界で頂点とも思っていた絶対なる自信は目の前の存在が壊してしまった。女神としてのプライドの形は既にない。残ったのは最も強い想い、人の為にあるべき女神としてのレインボーハートの思いだ。

 

「そんな台詞(セリフ)で他人頼みか?」

 

「私に出来る事なら、なんでもする!」

 

なんでもする。その一言に目を細めた。

そして、試すような口調で条件を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前がこの世界に残った人類を僕の目の前で全員殺してくれるならいいよ」

 

その声音は邪悪と暴怒に染まっていた。

 

 




悪神より酷い悪がここにあるよ(ーー;)
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