始次元ゲイムイーリス 喜劇のアポカリプス    作:燐2

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永久の彼方へ消えていけ

この世界の神---レインボハートは絶望した。

目の前のあまりに深すぎる憎しみを銀色の闇を放つ双眸に。

彼女は人々の希望の思いが集まり、その中で特に強い思いが人格を構成して女神という存在に昇華したからこそ、理解できないその暗黒。

口を空け呆然とする女神の様子に彼/彼女は嗤った答えが分かっていてもそれを諦めない子を憐れと言わんばかりに。それが絶対な真実だと語る。

 

「出来ないでしょ、当たり前だ。お前がそういう存在(・・・・・・)だ。弱弱しい人間が見えぬ希望を描く、現実を侵食するほどの幻想がお前の形。故に人間を殺す事はお前自身の存在を否定する事になる」

 

「………ッ」

 

「世界が大事?人間が大事?人間がいない世界にお前は要らない。世界にお前だけいてもお前は空っぽだ」

 

「私はどうなってもいい……!だから……」

 

「死にたい僕にお前が僕にできる事なんてない」

 

忌々しい世界の正義の呪縛が永劫に約束される現実なんていらなかった。死の安らぎこそ救済だと信じている。心の底から燃え上がっていた情熱は既に鎮圧され、行き場のない殺意は無力な自分へと向けられた。煉獄の業火に燃える街並み、人の死ぬ声。はははとまた笑った。

 

「可笑しいわよ……なんで、そんなに軽々しく死にたいなんて言えるのよ!!」

 

「生まれてくること自体が愚かで間抜けで間違いだった。お前とは逆と思えば想像しやすいんじゃないかな?お前という存在は誰からも祝福される。僕という存在は誰からも忌諱される」

 

全てを呪うように女神の顔を除く彼/彼女の表情に耐え切れず女神は力の抜けた様に腰が抜けて地面に座り込む。それを壊れた人形の様に不気味に笑うそれを見て女神は今まで常識と思っていた世界が崩壊していくような気がした。

何故なら、この世界は平和すぎたからからだ。勝手な人間が起こす事件は人間が手を出せば片付けることが出来るそんな小さなことで、彼/彼女が生きていた世界は常に絶望と鮮血が舞う欲望と狂気が日常と化しているそんな魔界なのだ。故に女神は理解できない、故に彼/彼女は理解できない。お互いが胸に抱く希望と絶望に。

 

「正しき神様、簡単なことだ。人間が寿命で死ぬように世界も死ぬんだ」

 

常識を教える大人のように語り始める。

女神に背を向けて、彼/彼女は指すその方向には既に上半身と下半身を両断させもがいていた悪神が何事もなく復活した姿だった。

 

「アレが始まりを告げる物だと考えればいい。あれが世界の全てを破壊して次なる世界への種子をこの世界に植える。それでいいじゃないか、あれは救済だ。人間同士が交わって新しい生命を造るようにこの世界とあいつは破壊の上で交配して創世が起こると思えば」」

 

「……なら、私はみんなは一体なんのために……」

 

「星の上に暮らす過小な存在が幾ら文化を築いても、それはお前たちが望んでやったことでこの世界の創世と破壊には全く異なる物だ」

 

生活の為に明日の為に進化する生物、人間。それは命じられたのでなく己の欲望が便利になるように向上心を日々高めて、好奇心という無謀で進むものだ。世界の上に生活を築いているのは人間の意志であり、世界の意志とは無関係である。故に滅びる時に何を叫ぼうが、何を嘆いても通じない。世界とはそれほどまでに自分に対して他人に対して無責任で無頓着で無慈悲なのだ。

 

「それでも……それでも、私は……!誰からの為に…!」

 

憐れだと彼/彼女は何も言わず涙を流しながら訴える女神は背を向けていても分かった。これも永劫に続くだろう円環を守るために作り出された犠牲。こういう存在であることを生まれる前から宿命を背負うことが定められた人形。

嘆きを煽るような憎悪の合唱。この世界の深層心理で生まれた誰もが持つ闇が長い年月を得て集まり災厄を振りまくだけの化物。最早、人々の希望の象徴であった女神を信じる者はほぼいないだろう。あれは女神と同じく人間によって創造された者、アレを見てしまえば己の闇が見えてしまう。自分ですら認めたくない本音は自分を傷付ける刃にもなる。あの化物が暴れるだけでここまで人が死ぬのだろうか、彼/彼女は分かっている。あれには人々の絶望を湧き立てる能力が備わっている。故にアレを見た人間が真面でいられるのか。

 

「……………そうね」

 

「……?」

 

「それでも、私はこの世界が大好きでその中で生きる人々が大好きなの」

 

絶望と向かい合ったこそ希望は立ち上がった。簡単に圧倒してきた彼/彼女がいる所為か警戒している様子で距離を保ちながら殺意を溢れ出せる。彼/彼女はそれを簡単に受け流すがそれよりも気になることが出来た。誰がどう足掻いても勝てるわけがない、それは彼女自身が叩き込まれた筈だというのになぜ立ち上がるのか。既に女神としての証であるプロセッサユニットを顕現できない程であり、脆い光剣を生み出すだけで背一杯の状態だ。何より、一度は心を折られたのだ。

 

「私は手を伸ばさないといけないの、人間の未来を守らないといけないの」

 

「あ、そう……じゃ精々無様に散れ」

 

人間の味方にするものにもう語る事はないと背を向けて歩き出そうとしたが、女神の一言に足が止まった。

 

「あなた矛盾しているよ」

 

「…………は?」

 

「本当に死にたいなら、貴方はここにいないもん」

 

意味が分からないと眉を細める。振り向くと慈しむ笑みでこちらを見ている女神。

今まで隙を一切見せなかった彼/彼女の警戒心に致命を与えた瞬間を見逃さず魔神が動いた。その大木のような足が地面を蹴り、一気に二人を肉薄した。そして振るわれる手を覆う形で展開されている槍の様な手甲が女神を貫かんと迫る。女神が直ぐに気づき振り向くと既に槍は視界を覆うほどまでに伸びている白銀に走る閃光は女神が握っているなけなしのシェアエナジーで作り出した光剣で到底防げる物ではない。

 

「---縛れ!」

 

反射的に動いたの彼/彼女だった。掛け声と共に結んだ糸を引っ張るように引かれた腕。そしていつの間にか体のあらゆる場所に纏わりついていた赤い糸が一斉に化物の動きを止め、彼/彼女が微かに指を動かすとそれが号令だったように、崩壊していく街に引っ掛けられていた化物を束縛していた糸が引っ張られ、その巨体は勢い地面に叩き落とされた。

その衝撃に発生した突風は女神の弱った体に容赦なく叩きつけ、体制を崩してしまう。可憐な体は宙に舞い、女神が思わず恐怖に叫ぶが、その次の瞬間には腹部に赤い糸が撒きつけられ引っ張られ、地面に優しく下ろされるが、その傍には般若のような表情で腕を組む彼/彼女の姿。

 

「どういう意味だ?」

 

「……無理よ」

 

トンっ、彼/彼女が指を動かしただけで、女神の首から鮮血が舞った。突き刺すように伸びた赤い糸が浴びた血を祝福するように踊る。この糸は何のか、そんなことより女神は理解できた。地雷を踏んだ、そして殺意に光る双眸で見下ろす存在に自分の命は握られていると。後ろには糸の切れる音ともに立ち上がろうとする化物、完全に糸を切るまでに時間は掛かるだろう。そして目の前には瞳を微かに動かしただけの動作で殺せるような本当の化物だ。

それでも女神は挫けず、負けて堪るものかと力の限り手を握りしめて睨み返した。

 

「諦める理由しか考えない貴方には理解できない!!」

 

猛々しく立ち上がり指してきた女神に彼/彼女は殺意が収まっていき、また指を微かに動かすと女神の腹部に巻き付いていた赤い糸が彼/彼女の指を蔦って無くなる。

 

「……口だけは達者なようだね」

 

「なんのつもり、私を殺すつもりだったんでしょ」

 

「うん、体の一部は切り落として、焼いて、腐らせて、生きたまま蛆虫の餌にしようかと思ったけど気が変わった」

 

呟かれる拷問に冷や汗を隠せない目の前が放っていた殺意はそれを可能にするほどまでに濃い。もう一度、今度は純粋な戦意を瞳に宿した彼/彼女は、女神とすれ違い全ての糸を引き千切り立ち上がったディスペア・ザ・ハードの姿を映す。

 

「契約だ」

 

ギリッと強く握りしめた拳が鳴る。

 

「君のどうしようもない夢を余興として見てみよう。どうせ、絶望するに決まっている未来、どう足掻いても終焉に至るまでの針は止まることなく進む。己の存在を呪いお前は死ぬだろう。だけどそれはお前は理解できないし、一生理解できないだろう。だからこそ、君の戯言が永遠に到達できない理想郷だということを教えてやろう」

 

「……ごめん、中二病患者専用の言語は取得していないの」

 

無言で振り下ろされた鉄拳は女神の頭部に命中。

突然の奇襲にノーガードで直撃され痛々しい音が空間に響く。

 

「~~~~~ッッッ!!!」

 

「君の言っている事は間違いだってことを証明するためにこの世界を救ってやる以上」

 

頭を抑えてゴロゴロ転がる女神に吐き捨てる彼/彼女。

痛いと言いながら止まり、女神は涙目で睨むが迫力と威圧不足もあり彼/彼女はノーリアクション。

 

「すぅーーー……はぁ」

 

胸に手を当てて深いため息を吐く。

彼/彼女の内に封印した禍々しい/神々しい力が始動し始めた。

星々に封印された幾多の邪神を打ち倒し、その力を簒奪してきてしまった。

命令されたとおりに動く殺戮兵器として神を天使を人間を朱に染めたあの時の自分。

 

望まぬ力。守る。壊す。己を構築する必要ない物。

 

世界が泣く。母は泣く。その合成獣(レギオン)に。

自由という絶対なる鎖を一時は纏って、可能性を呪い殺そうとした狂った/壊れた化物。

正義を執行するために首輪を付けられた憐れな忌子は、その身に纏っていた鮮血のような紅き鎖を破壊し、世界を壊す獣として目覚める。

 

「時間がないから序曲(プレリュード)なしの終曲(フィナーレ)だ」

 

桁違いの存在にこの世界の負の集合体である存在の意志は一気に恐怖へと変化される。

それに彼/彼女は嗤う。

その程度なのだ。

弱弱しい人間の思いが積み重なった所で、世界そのものを殺す化物に勝てる道理はない。

 

「そう、ここからは---お前の死葬曲だ」

 

ディスペア・ザ・ハードの戦意は消え失せ、逃走へと移る思考回路そのものが遅すぎた。

肉薄された距離。

勿論、防御しようとするが絶望的なまでに間に合うはずがなかった。

 

彼/彼女だけが許された異能が発動される。

世界の脆さが見える。

世界の亀裂の走る音が聞こえる。

世界の矛盾を知る者だからこそ操れてしまうシンプルで誰もが恐れる---破壊の力。

 

そして、絶対なる暴力が振るわれた。

地を焼いた獄炎がその一撃で消え失せた。

天を覆っていた黒雲には巨大な風穴が穿たれた。

絶望と破壊をまき散らした絶望の化身は更なる絶望と破壊を持つ化物によって破壊された。

ありとあらゆる災害が一瞬で消え失せたゲイムギョウ界、頭を抑えながら呆然としていた女神だが、降り上げられた形で止まっている彼/彼女の姿を見て、あまりに悲しい背中だと瞳から涙が落ちた。

 

 

 

 

 




キルラキル、ガンダムビルドファイターズが終わってしまった。


……俺は春から何を見ればいいんだ。
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