ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……
許してください。なんでも……は、しないけど。ホント、マジで許して。
ああまずいまずい! 本当にまずい!!
ちくしょう! この裏切り者! なんで開かないんだよ! おかしいでしょ! こう言うピンチの時に飲まないでいつ飲むってのさ!!
「なんだ、来ないのか!? あんだけ大見得切ったんだ! 掛かって来てみろ!」
ぬうん…………来てみろって言われても。いや、たしかに大層な挑発しちゃったけどさ……
でも無理なんだよ。動けない。動きたいし、ぶっちゃけ言えば早くこの場から逃げ出したいけど、体の怪我が痛すぎて動けないんだ。立ってるのもやっとってか………立つ時に力入れ過ぎて座ることも出来ない。
正直、さっき瓢箪の栓を抜く為の力で私の全てを振り絞りました、はい。
「来ないならこっちから行くぞ!!」
ギャーギャー!! こないで! こっちに来ないでこの変態!!
どうしよ。アイツ私があんなこと言っちゃったから怒りが限界突破してる………早く何かしないとまずい。ホントに死んじゃう!
なんであんなこと言っちゃったんだよ私ッ……こんな事なら無言で飲めば………いや、そんな事考えてる時間ないって。
早くかんがえないと。
あー……何かないか、何かないか……。
「チッ……死ねぇ!!」
そうだ! 仙術! 仙術があった!
て、わぁぁぁぁ!!! もうこっちに来てる!? くそ! 何でもいいからなんか打て私ぃ!!
「仙法・幻術『水面月』」
パッと適当に思い浮かんだ言葉を口にした瞬間、私の目の前に透明な水とも言えない……ガラスで作られたような球体が出現した。
その球体は重力に引かれて地面に落ちると、割れる事なく地面に薄く広がる。
私の足裏を呑み込み、どんどん円形に広がり続け……半径二メートルほどの極薄い水溜りのような膜が出来上がった。
その直後、弥助が私に向かって拳を振りかぶる。
「これで終いだ!!」
そう言って彼は本気で振りかぶった拳を、私の…………
…………そのすぐ真横の地面に振り下ろした。
「なっ!?」
驚いたような声が隣から聞こえる。
しかしそれに構ってられる余裕は私にはない。何故なら衝撃で舞い上がった極小な石飛礫が私の傷跡に突き刺さって凄く痛い思いをしているから。グスン。
そんな私とは裏腹に膜の表面は水のように波を立てるも、拳の衝撃で吹き飛ぶような事にはならずただただユラユラと揺れている。
「クソッ何処に消えやがっ……ッ!」
キョロキョロと見回して、すぐ真横にいた私の存在に気付き、彼は私………からちょっとズレた位置を睨み付けた。
ふむん………
この様子を見るに、どうやら仙術は成功したようだ。ちょっと一安心。
「チョロチョロ逃げまわりやがって……認めてやるよ。確かにさっきより速度は上がったみたいだが、逃げてばかりじゃあなぁ!!」
そして彼は再び私の位置からちょっとズレた辺りを殴り出した。
当然何もないところを思いっきり殴り付けて空振りした彼は、体勢を崩し前のめりによろめく。もう一押しすればすっ転びそう。
というわけで……。はいそこ、『縛』!!
「ぬおっ!?」
タタラを踏んでいる軸足に仙術の基本術『縛』で拘束する。
拘束は一瞬だけど、それでも踏み出そうとした足を引っ掛けるくらいのには役に立つ。
両足とも前に出せない状態で前のめりになった彼は無様に上半身から転けた。ざまぁ。
「な、くっ!!」
慌ててすぐに立ち上がり、また辺りをキョロキョロする弥助。そんな彼の様子が滑稽だったのか観戦している他の妖怪達から野次が飛んだ。
「おいおい何やってんだ弥助!」
「決闘中に転ぶなんて、喧嘩慣れしてねーのかよ」
その野次を聞いてか彼の顔は真っ赤に染まる。上擦ったような声色で私に向かって怒鳴り付けた。
「クソッ!! いい加減にしろお前! 何故真面目にやらん!! 俺を馬鹿にしてるのか!?」
そう睨み付ける彼はやはり、私から少しズレた位置に顔を向けていた。
ちなみにだが私はさっきから一歩も動いていない。いや、何度も言うように動けない。何故なら動くと痛いから。
では何故彼が私からズレた位置に攻撃してはまた別の所を攻撃すると言う行為を繰り返しているのかと言うとだ。
それは私が放った仙術『水面月』のおかげである。
今もこの術が私の足下を中心にを展開し続けている。いや、正確に言えば私の足下と周りに漂っている見えない粒子がある。
この術に私が覆われている限り、彼は……この外にいる何者も正確な私の位置を見る事ができない。膜の上に映る私の姿を本物の私と誤認してしまう。そして一度その幻が殴られれば。もっと言えば一定に流れる術の流れが掻き乱されれば、元あった幻とは別の幻が違う場所に映し出される。
彼等からしてみれば弥助が殴りかかった直後に一瞬で少し離れた位置に移動したように見えるはずだ。
唯一の欠点として、この術を掛けている限り私は一歩もこの場から動けない事だけど………さっきみたいに私には他の仙術があるから関係ない。
ちなみにこの術の詳しい仕組みは私も知らない。私にこの術を教えた仙人はこの薄い膜を『美しい月を映す湖の水面』を表していると言っていたが………よくわからん。師はいつも無意味に着飾った言葉を言うからな。
私にわかるのは、広がる波が収束する膜の部分………そこに私の幻が写ると言うことだけ。
つまりこれがある限り、私に向かって放たれた筈の攻撃は私がいる位置とは違う場所に向かっていくと言う訳だ!
「こっちを向け! 俺を無視するな!」
彼は私の目の前を横切るように通過していった。また私の幻影を殴ろうとして勢い余って通り過ぎちゃったんだろう。
はっはっはっ。無駄だ無駄だ。いくら殴ろうとそれは私じゃないんだよ。教えないけど。
本当に猪みたいな奴だなコイツ。何度も馬鹿みたいに突っ込んできてさ。ほら、そこに地面がツルツルになる仙術を掛けてやる。
「わっ、ぅぶ!?」
あははッ。今度は顔面から地面に突っ込んだぞ。わーい、大の男が受け身も取れずに思いっきり転んでやんの。恥ずかしいー。
ねえ、今どんな気持ち? あんだけ馬鹿にしてた女に触ることすら出来ずに何度も無様に転ぶってどんな気持ち? ねえねえ? 私みたいな弱小妖怪にあしらわれるってどんな気持ちなの?
あらまあ。そんなにお顔を真っ赤に染めてしまって…………プギャー! まさに赤鬼ってやつだ! 初めて見たよ。こんな私にすら勝てない鬼を見るのは。
ていうか、あれ? これってもしかしなくても、私って強くない? あの鬼をこんなにも惨めな思いにさせているんだから、私ってそれ以上の実力があるってことだよね?
あー、酒呑ちゃん気づいちゃったわー。こりゃ最強ですね。やっぱり私の噂は誇張とかじゃなくて実力の裏打ちだったってわけか。
申し訳ねぇ。酒呑ちゃんがあんまりにも強くて申し訳ねぇ! あっはっはっは────
「クソがぁッ!!!」
怒声と共に乱雑に振り下ろされた拳が地面を叩き、ちょっと大きめの石飛礫が私の右腕に被弾した。
あまりの痛みに失神するかと思いました、まる。
ぅヴァゥおおぁぁぁぁああああ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!
腕が……捥げる。マジ、捥げる。いてぇ。
「ふん!」
ひぃ!!?
危なっ!? やば、今の痛みに気を取られて術式が解けかけてた!! メチャクチャ顔面の近くに拳が通ったんだけど!?
それから、何分経ったのだろう。
弥助は懲りずに何度も殴り掛かって来ては私に触れられず無駄に体力を消費させ。
私はあどれなりんとか言うやつが切れたのか、右半身の痛みが洒落にならないくらい痛すぎて術式を必死に維持するのがやっとだった。
いや、まずい。本当にキツイ。最初の頃は調子に乗ってたけど、やっぱり実力の違いがあり過ぎる。私は怪我に加えて高度な術式の維持で限界に近いって言うのに、向こうは己の身体に物を言わせた物理攻撃。場合によっては何日も延々と喧嘩する程タフネスな鬼が、弱小な私に小難しい技を使う事もないから集中力なんて関係ない。
まるで終わりの見えない目標に向かって永遠に走り続けているかの様だ。
私は限界を感じていた。傷は治るどころか奴が殴る余波でどんどん悪化し、ボロボロだ。振袖に隠れて見えないだろうけど、布を脱げばグチャグチャになった私のないすばでーが顕になるだろう。
しんどい。もう、目の前がチカチカして世界が揺れている。目眩ってやつだ。
あと少しで私の術式も無くなる。そうなれば、弥助の容赦ない拳が私を襲うだろう。もう、死にかけている私が一発でも拳を貰えば、死ぬ。絶対に死ぬ。それは確かだ。
ああ……私は良くやったよ。褒めてやりたいね。なにせ、あの妖怪最強と名高い鬼相手にここまで粘ったんだから。
でも、もう駄目だ。いくら私が逃げ回ろうと、私から相手にはなんのダメージも与えられない。勝てる方法を私は持っていないのだ。
これが弱者だ。自分では何も出来ない。何も残せない。どんなに頑張ろうと、上の者を超えることは出来ないんだ。
それこそ上の者に媚び諂い、助力を願うくらいの事をしなければ勝てない。
「助けてください」
だから私は簡単に助命を請うた。
「助けて……あげてください」
私を。こんな無様で弱い私を助けてあげてください。
痛みでどうにかなりそうなのを我慢して必死に身体を動かす。安いプライドをかなぐり捨て、両手を地面に付き、頭を擦り付ける。
「もう、止めにしませんか? こんな弱い者いじめをして、楽しいのですか?」
「かあさん………?」
「勇儀。貴女の言い分はわかります。ですが、もう良いではないですか」
もう十分私はボコボコにされたでしょ? 悪かったよ。千年間も居なくなって悪かった。憂さ晴らしはもう十分でしょ? だから助けてよ。
このままじゃ私が死んじゃうよ? 私が死んでいいの?
「母さんは……それでいいのかい?」
「…………貴方なら、わかっているでしょう? 私はまだ終わらない。私はここで止まっていては駄目なのです。それが私の願いであり、私のために集ってくれたかつての妖怪の山の悲願でしょう?」
やっちゃってよ勇儀! 私の代わりにこのアンポンタン野郎を倒してくれ! 私にやって来た事を倍返しにして返してやれ!
そうでなくても、私を一旦休ませてください! じゃないとこの間の二の舞だよ!?
「………ッ。ま! 待ってくれ!! 俺はそんな事望んでいない! まだやれる!! いや、やらせてくれ!」
土下座までしてようやく助けて貰えそうだったのに、後ろから待ったを掛ける弥助の声が私に届いた。
いや、殺らせてくれってお前………どんだけ私に対して殺意高いんだよ。怖いよ。私、貴方にそこまで恨まれる様な事しましたか!?
確かに、今思えば私もやり過ぎたとは思ってるよ。何にも考えずお金を稼いでたけど、奪われる側からしたらたまったもんじゃないからね。
でももういいじゃん!! 許してくれよ! なぁ!?
「もう十分でしょう? 結果は目に見えてますが?」
「まだだ! 俺はまだアンタから一撃も貰っていない。決着はついていないんだ!!」
ああ、もう…………クソ野郎。いい加減にしろよコイツ。
何が一撃も貰っていないだ。互いに殴り合ってどちらが強いか比べようってか? 私の身体はお前の一撃でボロボロ。誰がどう見ても決着はついているだろ。
「そこまで、決着を付けたいのですか? それが死であっても?」
「ああそうだ!!」
「そうですか…………」
はは。コイツどんだけ私を殺したいんだ本当に。そこまで一途に想われると、嫌悪を通り越して呆れてしまう。
加えて、周りからも否定的な感情が伝わって来た。他の妖怪達から、殺せだの、戦えだの、野次が飛んでくる。皆が、私のプライドを捨てた土下座を拒絶したのだ。
この血気盛んなバトルジャンキー共め。そこまで私を殺したいか。
なんで、こんなにも私は嫌われているのだろうか? 昨日はあんなに持ち上げてくれたのに。酷い…………酷い、酷い! あんまりじゃないか。私、知ったんだからな! 弥助に虐められてた時、誰も助ける素振りすら見せてくれなかった事! 豪児さんも、本当のギリギリまで助けようとしてくれなかった事!
「もう……いい」
もういい。私がこんなにも頼んでいるのに、助けてくれないなんて………。私はただ死にたくないだけなのに。
「勇儀」
「なんだい母さん?」
もういい。なら、私も容赦しない。
「この場にいる鬼の者全てを、今ここで殺しなさい」
やっちゃえ勇儀!! 私の代わりに皆やっつけちゃえ!!
私の言葉に弥助のやつ、ポカーンとしたアホ面を晒した。
鬼や他の妖怪達も何を言われたかわからないみたいな顔してる。は? お前、決闘どころか俺達にまでそのチート野郎をぶつけて来るの? プライド無いの? みたいな顔してる。
そりゃそうだ。だってさっき土下座して命乞いしてた奴がいきなり逆上して子供みたいな我儘を言うなんて思わないだろう。
「……母さん?」
勇儀からの視線が痛い。彼女も、まさか決闘の交代どころか子供のような憂さ晴らし目的で配下の鬼全員の殺害を命じられるなんて思わない。
でも私は撤回しないぞ。
「私の命令は絶対。そうでしょう? 勇儀」
「いや、それはそうなんだが…………え? はっ?」
突然で混乱している勇儀はいつもと違って要領を得ないような返事だった。まあ、彼女は仕方ないか。勇儀は賭博のこと知らないもんね。なんでこんな命令をされたのかわからないのも理解してる。
でも私はみんなに虐められたんだ。逃げようとしたら押さえつけられて、しかもパルスィちゃんを人質にまでしやがった。許せるはずがない。
「勇儀」
「わ、わかったけど……」
「なっ!?勇儀姐さん!?」」
周りの鬼達が驚いてる。はっ…………自分は関係ないと思いましたか。 残念だったな。私はお前達に対しても恨みはあるんだよ。許して欲しけりゃ首を垂れろ。私に傅け。
それに、ゴリ押しで勇儀から言質を取る事が出来た。これで怖い物は何も無い。勇儀は基本自分勝手だけど、私の命令には忠実だ。やれと言われればやる女。それが勇儀。そこに痺れる憧れるぅ。
「まて…………まてまて! アンタは何を言ってるんだ!?」
まるで物分かりの悪い小さな子供みたいに誰が喚き散らしているな…………と、思ったらまたお前か弥助。私の話を遮るなよ。早くやることやって帰りたいってのに長引かせるなんて………本当に嫌なやつだなお前。
「貴方が決めたことですよ? 私はあんなにも懇願したのに、それを拒絶しているのは弥助、貴方でしょう? 何を今更………」
「皆は関係ないだろう!? それに、そんな…………だって、アンタが懇願したのは俺の為じゃ……」
「はっ?」
何言ってんだコイツ。私がお前の為に助命を懇願した? 馬鹿なの? なんであんなにも酷いことされた私がお前の助命を懇願しないとならないだよ!
か、勘違いしないでよね! 私はただ自分の命が危ないと思ったから土下座しただけだからね! もう痛いの嫌だからとか、決闘とかどうでもいいから早く帰ってお酒飲みたいとか…………これっぽっちも考えてたんだからね!!
「何故…………私がお前の為に土下座までしないとならないのですか?」
「だ、だけど。あの時はそれしか……」
「身を弁えろよ痴れ者が」
もうお前、本当に痛いよ。イタイ奴だよ。賭博の時は変な謎推理かまして来るわ、そのせいで上司に怒られるわ、挙げ句の果てにこんなきゃわいい小鬼ちゃんを殺そうとするとか…………畜生の外道以下だな!?
早く逃げないと。こういうサイコパスはマジで何して来るかわからん。もう仙術も出せないほど疲弊してるから、さっきみたいにならないし。
私は足を引き摺りながら出来るだけさっさと勇儀の元に向かう。全力で勇儀の庇護下に入らないと。
出来るだけ会話で時間を稼ぐんだ!
「理解していないのなら全ての者に伝えましょう。そもそもあの場で誰もお前を止めなかった時点で同罪なんですよ。しかも、何人かの鬼はパルスィさんを人質にしました」
それさえなければ私はトンズラ出来たのに。
大体、酷すぎる。圧倒的に弱い私をあんな風に逃げる事すら許さずに虐めるなんて、なんて残虐な奴等なんだ。しかも、こんな土下座姿まで晒して命乞いしてるのに!!
「それなのに他の者は関係ない……? 呆れて物も言えませんね。無知もここまでいくと怒りや呆れを通り越して興味すら失せそうです。これも、貴女の罪ですよ勇儀?」
「なっ……姐さんを馬鹿にするな!!」
「いいえ、します。確かに彼女の頑張りは認めますが………今回の原因は貴方達を統制しなかった勇儀にある。それが長の責任というものです。そうですよね勇儀?」
実際その通りだよ勇儀。貴女がちゃんとコイツらのこと教育してないからこんな事になったんだよ? ちゃんと教育してよね!?
妖怪の山の教育は? いや…………あいつら私より強いから……。口答えしたら逆に殺されそうじゃん。私は悪くねぇ。
「…………ああ。そうだね。確かにそうだ…」
ほら勇儀もそう言ってる。罪を認めたな? よっしゃ、これで何も怖くない!
調子に乗ったな弥助ェ。お前が私の殺害に拘るからいけないんだよ!
「どうです? これがお前が下した決断の結果です。避けられた筈の間違い。
…………私は弱い者を痛ぶる行為は嫌いだ。ヤられる者は惨めでみっともなく、その上悲しいくらい不様な姿を晒すから」
今の私のようにな!! ボロボロの身体に鞭打って、精一杯会話で時間を稼いで、安全な所に遅い足取りで逃げようとする。こんなツライ事なんて嫌に決まってる!!
なのに、なのにィ!
「それなのにお前は…………ッ。
稚児だ。ガキだ。やってる事がつまらないんだよ。だからこそ、今この薄暗い地下でジメジメと陰気に居続けなければならない」
「ッッッ!!」
あーもう、畜生!こんな事になるならこんな場所に来ずに我儘言って部屋で引き篭もってれば良かった!! 本当は私だって自由気ままに外に出たいのに…………。
クソッ。お前のせいだよ。お前みたいな奴がいるから私達弱者は隅っこでこそこそ隠れながら生活しなきゃならないんだ。
責任転嫁?…………うるさい、わかってるわ!! わかってるんだよ!
「鬼は深く考えずに力で物を言うべし? それもアリでしょう。策略を練らず、力押しで相手を負かす? 素晴らしい。鬼として満点の正解だ。私もそう思います。力こそが鬼の証だと……
だから負ける。だからこそこうなる。
己の力を過信し、本当の力だと勘違いをし…………気づいた頃には摂理に負け、
ううぅぁ………そうだよ。わかってる。本当は私にも悪いところはあったんだなって思ってる…………今思えば私は本当に調子に乗ってた。お金がガッポガッポ稼げるから何も考えず意地悪しちゃったし、豪児のおっさんが何でもかんでも私のお願い聞いてくれるからメチャクチャな要求しちゃったし、一悶着ありそうな処刑の現場も勇儀がいるから大丈夫だって…………運と他人の
「弱い。弱い。弱い。
この地底に追いやられたのがいい証拠ですね。これが現状。これが、負け犬の鬼の姿だ」
惨めだ。何でこんなに惨めなんだ私は……たった一匹の鬼にこんな…………私は勇儀に頼らないと何にもできないなんて……本当に私って負け犬じゃん…………
もう愚痴が止まんねーよ。何なんだよホント。ツライわぁー……本当にツライわぁー……
でも、私は私なりに頑張ったよ? ね、勇儀。貴女も頑張っただろうけどさ。私もここまで頑張ったの。聞いてたからわかるよね?
私も貴女の頑張りを褒めた。だから、勇儀も……私をたしゅけてぇ……
「勇儀」
「なんだい母さん?」
近くで勇儀の声が聞こえる。どうやら、ようやく彼女の下に辿り着いたみたいだ。もう視界が真っ白で、何も見えないから…………うん。私はもう倒れるね。
「まだ、向かって来るなら………全てを終わらせて。それが、ケジメです…………でも、私の助けを願うなら…………全て貴方に任せます。私のお願い、任せましたよ」
足下の地面が急に無くなったような……気持ち悪い浮遊感……。
真っ白な世界から一変して、暗く………抗いのない暗闇……。
ああ……本当に……
「疲れました…………私は少し寝ます、ね……」
次の日。私は地底の鬼達から熱烈な声と共に地底の大将に持ち上げられた。
え、もしかして殺されそうになった恨みで敢えてツライ役職に!? すいやせん!! やめてください死んでしまいます!!