一つのきっかけが、物語に
ちょっとした息抜きで書きました。続きは無いのよ、すまないね。
──辛いとき、苦しいとき、悲しいときにどこからともなく現れて助けてくれる無敵のヒーロー。悪を許さず、輝かしい光を浴びて必滅する正義の味方。涙する者を救うべく、報いるべく、煌めく明日を目指すため、勝利を掴むために邁進する鋼の英雄。
「……たい」
──ああ、
「……り、たい……ッ」
──こんな僕を助ける為に、来てくれた貴方のように。光り輝く光輝を束ね、双剣を閃かせる貴方のように。傷を負っても決して止まらず進み続ける貴方のように、ああ、僕はッ。
「……
これは、
故にこれは、
──成らないで…。
けれど、ああ、けれど。それを認めない月の女神が此処にいる。貴方を渡さない、光り輝く英雄になんて成らせやしない。貴方に救われた、優しい想いを貰った私が……必ず引き戻す。
──どうか、雄々しいだけの英雄に成らないで。優しい想いに振り向いて。貴方に
月を担う女神は祈り、決意し、蒼穹に誓う。
故にこれは、英雄志願者の少年と造られし女神の物語。きっと果てに至るファミリア・ミィス。
──さあ、始めよう。
〜邂逅/プロローグ〜
「──知ったことか、〝勝つ〟為ならば」
淡い光に照らされた迷宮内部、雄々しく輝く言霊が反響して全体に広がっていく。それを耳にし、目にした者は総じて震えた。なんて、思いの強さ、なんて力強い宣誓かと。
「それで、誰かが涙して、傷を負っても……?」
少女は言う。震えた唇を開き、烈火の如く燃え上がる少年の瞳を見ながら、ああ、しかし──
「ああ、僕は進もう。その涙を背負い、その傷を飲み込み、それに報いるべく──ただ、前に」
──煌めく瞳は振り返らない。そう、彼は決して過去を振り返ることは無い。自分が進む事で誰かが涙を流し、傷を負ってしまった? ならばそれに報いなければ、彼らの為により良い明日を掴まなければ、そうでなければあまりにも涙した者達が報われない。そうやって前だけを見つめて、ただひたすら邁進するのみだ。その過程でさらに何かを轢殺しても、それに報いるべく止まらない。破綻した暴走列車、少年を表す言葉はまさにそれが相応しい。
「邪悪は許せない。光の敵は全て殺す、ああ、必ず滅ぼす。だから安心してほしい。明日の光は奪わせやしないから」
「ッ、やめてください、そんな言葉は聞きたくない!」
あまりにも似合わないから、そんな雄々しい宣誓、貴方には。どうか後ろを振り向いて。優しい想いに気づいてほしい。
「戦うならば杖を取れ、ヘカテー。しかし邪魔をするなら容赦はしない。君を斬り裂き、そしてその罪を背負って僕は
「分からず屋……!」
燃え上がる赫怒、立ち上る決意の光。たとえ大切な君であっても、煌めく明日を掴む為、邪魔をするなら斬り裂こう。だから、さあ、いざ双剣を引き抜いて──!
「ぉオッ──!」
「ッ、このぉっ!」
鋼が重なり、火花が散った。少年が振るう双剣には炎が宿り、触れる物を焼き斬る光熱剣と化している。また、その小柄な体躯には光熱剣と同様に炎が這い、炎の鎧となって人間火達磨になっていた。まさに攻防一体、近づくだけで熱が体を嬲るようだ。
「ぐぅ……ッ!」
縦、横、斜め、縦、縦、左斜め、下から上へ、上から下へ縦横無尽にして変幻自在の閃光が瞬く間にして駆け抜ける。振るわれる度に天井や壁、地面が粉砕されて散っていく様をみて冷や汗が出た。斬撃の余波だけで、喝破一つだけでこんなデタラメ……普通じゃない。普段の彼なら出来ない芸当だ。知覚速度を優に超える剣戟を避け、時に受け流しながら苦悶を漏らす。
「──舐めないでッ」
刃の軌跡に身を晒し、皮一枚のところで回避。自らを死地に突撃させる事で無理矢理攻撃の隙を作り出した。黒い木製、捻れて絡まった杖を振りかぶり──速攻、銀の波動を撃ち放つ。
「
渾身の一撃。最早命中必須の距離から放たれた月光纏う斬撃が彼の身体を無残にも斬り裂いて、致命を刻んだ。戦闘不能、例え第一級冒険者であろうとも瀕死、或いはそれ以上の負傷を負った彼は最早立つことなどできない。成すすべなく倒れて──
「──いいや、否だ」
前のめりになって倒れる寸前、右脚を力強く踏み抜く。そしてそのまま双剣を閃かせた。その一撃が直撃、彼女は身体を焼き切られる激痛と共に迷宮の壁を粉砕しながら吹き飛んだ。
ありえない。彼女の頭にはそれしか浮かばない。明らかに致命傷だった。動けないはずだ。下手をすれば死んでしまうんだぞ? 気が狂っているのか? 何故、平然と立っていられる! 剣を握っていられるんだ! 驚愕、恐怖、総身に鳥肌が立った。──マトモじゃない。
「ッ、いい斬撃だ。流石は女神、大した力だ」
「ぐっ、ァッ」
致命傷? 動けないはず? 死んでしまう? ──ああ、それで?
「
ああ、止まれない。英雄は止まらないはずだ。致命傷を負っても、立ち上がって剣を振るうはずだ。ならば──。
「僕が、立ち止まるわけないだろう。例え四肢が引き裂かれようとも、五臓六腑が破裂しようとも、勝利を掴むためならば何度でも起ち上がろうか」
光に焦がれた破綻者は、雄々しい決意と共に剣を構えて──ああ、彼の偉大な英雄に倣うが如く。
「そう、
──煌めく光を具現するべく、嚇怒の詠唱を響かせた。
「我光に焦がれし者。英雄を渇望せし者。悪を滅ぼす者」
──煌めく光に焦がれた愚者、英雄に成りたいと渇望する修羅、悪を許さない必ず殺すと叫ぶ悪の敵。自分は至りたいのだ、と強く願う。
「闇を払い、魔を斬り裂き、邪悪を砕く」
──さらに、さらに、もっと、もっとッ。力を、光を、邪悪を砕く光の翼をこの身に宿そう。たとえそれが、自分に終わりを告げるとしても悔いは無い。
「集え煌めく光よ、悪を滅せ、希望を示すがいい。天上に轟け、闇を貪り滅ぼすがいいッ──
──顕現したのは破邪の光。紅の雷光。身に宿る炎が霞むように立ち消え、次に宿るは破滅の力。さあ、これにて幕引きだ。邪悪なるもの一切よ、苦悶の叫びを上げるがいい。
「さあ、英雄譚を紡ごう──この足跡に続くがいいッ」
しからば必ず、約束された安寧を齎すから。命を燃やし、光の翼を広げるイカロスは太陽へと手を伸ばす。その果てに待つのが破滅だろうと、構わないと覚悟して。──決して後ろは振り向かない。
短いけど、読んでくださってありがとう。さて、もう一つの作品も頑張るのでしばらく待って貰えると幸いです。いやぁ、第2章を早く投稿したいんだけとねぇ、オルレアンが遅々として進まないよ笑
以下、簡単な設定です。
【ベル・クラネル】
所属:ヘカテーファミリア
二つ名:
【レベル2】
力:S 950
耐久:S 910
器用:SS 1050
俊敏:SS 1100
魔力:S 950
【スキル】
『英雄渇望』
・早熟する。
・渇望の丈に応じて効果上昇。
・渇望が潰えた時、このスキルは消滅する。
『光に焦がれし者』
・心が折れぬ限り戦闘行動可能。
・一時的限界突破可能。
・戦闘終了後、極度の反動。
【魔法】
『トリアイナ』
・速攻魔法
・付与魔法
・詠唱魔法
・種類によって、属性が異なる。速攻魔法が雷、付与魔法が炎、詠唱魔法が光。
・詠唱式『我光に焦がれし者。英雄を渇望せし者。悪を滅ぼす者。闇を払い、魔を斬り裂き、邪悪を砕く。集え煌めく光よ、悪を滅せ、希望を示すがいい。天上に轟け、貪り滅ぼすがいいッ──
【ヘカテー】
眷属:ベル・クラネル
髪の色:白銀
瞳の色:紫
概要:記憶を失い彷徨う、神の力を持った美女。本人はヘカテー、という自分の名前しか知り得ない。静かに教会にて息を引き取るつもりだったが、ベルと出会い、彼を眷属に迎えた。