Twitter上で開かれている「#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負」用に一時間で書き上げた小説です。

お題は「20xx」「遅刻」「たった一人の」「花火」「若き支配者」です。
作者の趣味や気の向くままに書きなぐった拙作ですが、よければ是非(><)

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若女王の年末記録

2099年、一世紀経つまであと一年という時間も、今夜零時に終わりを告げる。

 

 初代女王陛下の議事録には、このときの日々が朝の嘆きから始まった。

 

 

 

 「一世紀経つまでに、あとこれだけの書類を片付けなきゃいけないの!?」

 

 若く可憐な少女は、絢爛とまではいかないまでも、埃一つなく綺麗に整えられた書斎で嘆いていた。

 

 「女王陛下、それはこの書斎を掃除する時間に手間取られたからです」

 

 机に座り頭を抱える若女王の傍らに、30を過ぎ後半以降を迎えただろう容姿の側近は痛烈に答えた。

 

 「答えは聞いていません!! そのことなんて、私にはしっかり分かるんですから!!」

 

 「しっかりなれば、今日一日でこの書類全てに目を通していただくこともお分かりですね」

 

 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁおん!!」

 

 犬の遠吠えのように高く泣き叫び、彼女は書類を一枚ファイルから取り出した。

 

 

 

 この国が自治権を得て一年、他国と隣り合える力を得るまで、様々な苦難を乗り越えてきた。

 

 若女王もその一人、幼くして両親を亡くし、隣国から伸びる悪しき手を払いのけ、女王となってこの居場所を国と呼べるまでに成長させたのだった。

 

 「そうだよねぇ、この書類の山も、その苦難あってこそなんだよねぇ」

 

 彼女は机の脇に平積みになったファイルの山に目を通した。

 

 その山は若女王が既に目を通した書類群。彼女が目を通すべき書類は両手で抱き抱えられてるもの一枚だけであった。

 

 「さてと、これを見てチェックしたら、これからの催しに行かないと……カジャ、荷仕度よ」

 

 「かしこまりました、女王陛下」

 

 カジャという名の側近は、恭しく頭を下げた。

 

 

 

 「一年なんてあっという間ねぇ」

 

 カジャが運転するホバー移動式のトラックの助手席で、若女王は砂煙舞うこの国の景色を頬杖ついて眺めていた。

 

 「えぇ、激動でしたね」

 

 「ねぇカジャ、これって運良かっただけかしらね?」

 

 若女王の顔がカジャに向けられる。

 

 「たまたま今年が運良かっただけで、来年は」

 

 「運もありますが、それを呼び寄せるまでに、この国を取りまとめたのは女王陛下の手腕でございます」

 

 カジャは運転してる為に若女王へ顔を向けられない。顔の表情も動かない。

 

 だがその言葉は、カジャがこれまでの軌跡を見続けてきた証に、若女王へ信頼と尊敬の念が込められていた。

 

 「あ、ありがとう、カジャ……あ、ここですね」

 

 ホバートラックが停まり、若女王はワンピースのスカートを手であげて車内から降りた。カジャも素早く車のキーを外して若女王の側につく。

 

 「あ、お姉ちゃんだ!」

 

 「お姉ちゃんだ!!」

 

 「あらあら女王陛下、今日もご苦労様だねぇ」

 

 若女王の元へ国民が集っていく。若女王を見る目は崇拝などなく、近所の姉や娘として見るような距離感であった。

 

 カジャはふぅっと息をついた。国といえどまだまだ小さい。国民一人一人が近所付き合いのある隣人なのだ。

 

 そして隣人一人一人に愛されているのが若女王。もちろん良いことなのだが、もう少し威厳があればいいのではないかとカジャは思っていた。

 

 「カジャ、カジャ!! 今日の仕事は、催し準備のチェックと、スピーチだけだよね」

 

 「えぇ女王陛下、宮殿内に溜まった未確認書類はもうありませんよ」

 

 「じゃあじゃあ、カジャは皆を見てて。そのあと私のスピーチ終わったら、見張り台の近くで待ってもらえる?」

 

 「え、えぇ、かしこまりました」

 

 困惑ぎみに了承をしたカジャにはにかんだ笑顔を浮かべ、若女王は国民に手を引っ張られ催しの準備へと向かった。

 

 「いやはや、私の仕事はそれだけではないですのに……」

 

 カジャは辺りを警戒した。弱小王国、いつ若女王が狙われるか分からないからだ。

 

 運転中も道を見ていただけでない、周囲を見渡し、建物の窓や屋上まで確認してここまで来たのだ。

 

 カジャ本来の役目、若女王の用心棒として依頼された傭兵の役目は、今年で最後である。

 

 「あと数時間、務めさせていただきますよ」

 

 怪しい気配は数人、それらを捕捉し、年末最後の任務としてカジャは粛清にかかる。

 

 

 

 見張り台には既に若女王がぷんぷんと怒りながら待っていた。

 

 「遅い!!」

 

 若女王にカジャは叱られた。約束の時間ギリギリになって、カジャはボロボロになって帰ってきた。

 

 「ていうか、何があったの!?」

 

 「少しばかり、はしゃぎすぎる輩を静め=沈めにかかっただけです」

 

 服をはたいてカジャは答える。身体は無傷だ。

 

 「年末まで服を汚さない!! 父上や母上からそう言われなかったの!?」

 

 「えぇ、任務のうちではありませんので」

 

 「もぉぉぉぉぉ!! あ、そろそろ花火よ」

 

 若女王は見張り台の梯子に足をかけた。

 

 「国民の元へは向かわれないのですか?」

 

 「もみくちゃにされて疲れました! それに、ここから国民の楽しむ姿を眺めるのが、よっぽどいいわ」

 

 見張り台の頂上に二人は登り上がった。

 

 若女王の肩にカジャは自分の上着を羽織らせた。

 

 「風をひきますよ、女王陛下」

 

 「くしゃみが出たら、それはどこかの国がこの祭りの話をしている証拠よ」

 

 若女王は得意気に言い放ちながら、カジャの胴体に倒れ込んだ。

 

 「お疲れ様です、女王陛下」

 

 「へへへ、もっと言って!」

 

 「一言で十分でございます」

 

 若女王は頬を膨らませ、だがすぐに笑って空を見上げた。

 

 「フィナーレよカジャ……今までお疲れ様、たった一人の用心棒さん」

 

 夜空に花火が上がりキラキラと咲いていった。大砲を利用し、花火が上空で次々と咲いていく。

 

 ここでようやく、カジャは疲れを抜くようにホッとため息をついた。

 

 「この国に充分な兵力あれば、私が唯一の側近にならなくていいですのに」

 

 「軍備は整うわ。来年も気を抜かない。だけど今だけは……この平和がずっと続きますようにって願いながら楽しまないと」

 

 若女王の顔は、カジャの顎を見上げていた。

 

 「だから、このあともよろしくね、カジャ」

 

 「契約更新、よろしいんですね」

 

 「当たり前よ、唯一無二の、私の用心棒は貴方一人しか務まらないわ」

 

 こうして二人は見張り台で国最初の年始を迎え、催しの後片付けになるまで二人で花火を眺めていた。

 

 

 

 この国の平和があと百年以上も続きますように。初代女王陛下は、その一言でこの思い出に幕を下ろした。




いかがだったでしょうか?

 「若き支配者」を中心にして構築していった内容、そういった作品は好きですので、いつも以上に楽しく書けました。

 書いているうちに頭の中で話は膨らみ、国の主産業や事情、側近の過去など思いつくうちにタイムアップ。

 本当は花火も細かく描写したかったのですが、主題にする内容を決めず手が回らなくなったのが個人的な反省点です。

 書いていて、現在書いているプロットのアイデアも出てきたので、この作品がいつも以上に自分へのプラスになればいいなと思います。

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