新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ 作:行くよ!!!!
「榊原家は先代からずっと医者なんだ、誰一人としての例外なく。ある人は最先端を走り、またある人は紛争地域に赴き治療したり、ボランティア活動していた、言わば影の偉人だ。そして、今まで、誰一人として力を誇示せず、人から脱線せず、純粋に人助けをしてきた家系です。それと、たとえ祖先が〝人の神〞でもその才能をそのまま引き継げるとは限らないことは知っていますよね?」
白夜叉は難しい顔をしてうなづく。おそらく、榊原家というあまりにも普通ではないイチ家系に驚いているのだろう。亜音とて、口に出している事が信じられない。
だが、ある論がそれを証明していると亜音は確信していた。
「そう、先代は『六道仙人の徒』という霊格の恩恵以外、六道の世界の力を授かる個数が少なかった。おそらくその名の通り最大“六つ”だと思いますが、一つも貰えない者も最初の頃の先代にはいたようなんです。それに過去歴史、“六つ”すべて手に入れた者はいないとされています。ですが、それは此処にきて覆された。」
「それがお主か、」
「その通りです。ワケは、先代が推測を立て、俺自身で確信しました。白夜叉様も聞いたことがあるはずです。仮でも〝夜叉〞を名乗っているのですから」
白夜叉は亜音の言葉に、目を見開く。まさか此処にきて自身の神格を暴かれるとは思いもよらなかったのだろう。
亜音はその様子に狙ったかのような笑みを浮かべて、話を続ける。
「仏教にて『因果論』と呼ばれているものです」
「ああ、知っておるぞ。善因善果・悪因悪果の二つがあるが」
「因果応報、が一番近しいですかね。つまり自分は先代達のおかげで、善因善果の効果で唯一、“六つ”の力を全て手に入れた。先代が善行をしてきたからとしか説明がつかないんです。だけどさらにその奥の真実は、妄言に近いですが、おそらく先代たちも一度は考えた妄言だと思います、でもそれを口に出すのが怖くて、字にすることも躊躇われたのかもしれない。」
亜音は笑顔を絶やさずそう言ったのだが、膝の上に乗せている手が少し震えていた。
それほど恐ろしいことなのだろうかと白夜叉は悟り、口を開こうとしたが一足遅かった。
「“
完璧な、善なる家柄ゆえに──────それは最悪な真実。
人は完璧ではない。そこから逸脱、超越したからこそ、普通から脱線していたからこそ、自分たちはその疑念を抱いたのだ。
〝私たちは、『人』だったのだろうか? ”
人の神は、運命の軌跡を、メモ書きのごとく書き留め、榊原家の意思関係なく善と医療にしたのではないだろうか。想像して見てくれ、もし自分の行動が紙切れ一枚で決められた人生だったら。 そんなのあんまりだ。どれだけ、苦しんできたと、失ったと思ってやがる!救えなかった命がある、自分で取捨選択してきた未来もある、だが、それに至った時、怒りより、悲しみより、感情より、ただただ涙が溢れたんだ。
これも神の決めたことか?泣くことも、悟ることも。
必死に人を助けるために欲を捨てて、時間を割いて努力してきたことも、すべて俺達の意思じゃなかったのか。それを確信しそのレールから踏み外してしまったら、俺達はどうなるのだろうか。
自動で世界からーーーーーーーーーーーーーー消えるのか?
善なる完璧は、危うい存在なのだ。
白夜叉は厳しい表情で勢いよく立ち上がり、断言した。
断言するには根拠がないのかもしれない。だが、白夜叉の長年の勘がそうしろと警鐘を鳴らした。でなければ、 目の前で、人がーーーーーーーーーーー人形のように儚く壊れる、 と。
「そんなことは断じて無いッ!例え神とはいえ、死後に人を操るなど不可能だ、間違いなく、それはおんしたちが、自分たちの正義で!意思で!努力を続けて、打ち立てた世界に誇れる功績だ、手に入れた力だ!信用ならないというのならば私が保証しよう!太陽神が認めた功績だ!だから、気に、」
「ぷ、 ............あはははは!はははははは!!」
亜音は口を抑えて笑っていた。
白夜叉は心配そうにそれを見つめた。とうとう壊れたのか?と。
亜音は少しすると落ち着き、 深呼吸をして言った。
「申し訳ございません、冗談です。ただそれほどまでに俺の先代が凄かったことを、白夜叉様に伝えたかった、知ってもらいたかっただけですから」
「そうか............」
白夜叉は安心したような顔つきで、上座に座り直す。
それを見計らって、亜音は頭を下げた。
「でも、ありがとうございます。その言葉、“私達”の一生の宝とします。本当に…………ありがとうございます」
亜音は“深々”と頭を下げた。その様子を“蚩尤”は黙って見ていた。というより、呆然としていた。まさか、亜音がそんなことを考えながら、これまで生きてきたのだろうか、と。人を助けている時、いや、“人”と接するだけでも胸が張り裂ける思いだったのだろう。
なぜなら、“蚩尤”自身の胸も張り裂けそうだったのだ。
『..........っ .........ワシは...苦しむ友に......気付けなかった、のか』
『あああああああ 、くそがぁあああ!............ワシは友として、何も、何も、気付けなかった...............本当にすまぬ、亜音っ、』
そんな〝蚩尤〞に亜音は、出来るだけ暖かな言葉を贈る。
『ほんと……………君が友になってくれて良かった、本当にありがとう』
『バカが!当然だぁ!......くぅ』
白夜叉も亜音を見ながら微笑み、元気な亜音を見て満足していた。
亜音もそれに対して満遍な笑みを浮かべる。
しかし、誰も気付かない。
この妄言を言ったことさえ、亜音の気使いだったという事を。
彼は、本当はーーーーー泣くことよりも先に抱いたことがあるのだ。
先代の方々は無念だったろう、おそらく誰も先代方の、心の叫びに気が付かなかったのだろう、“力不足を嘆き選ばれなかった己を責め選ばれた未来に嫉妬しきれず善行を成した”、そして“救いはないのだろうか、解答のない問いに”、
だから、わざと白夜叉と“蚩尤”に伝え、知ってもらった。
榊原家が持っていたかもしれない─────〝闇〞を。先代達に、白夜叉の言葉と“蚩尤”の叫びが届いている事を切に願う亜音だった。
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時はガルドと飛鳥達が遭遇する少し前。“フォレス・ガロ”の門前で、ギフトゲームが終わるのを、十六夜と黒ウサギは待っていた。そんな中、黒ウサギは二つの事柄に脳内を支配され、そわそわしていた。
(飛鳥さん達も心配ですが、亜音さんも心配なのですよ〜)
「おい、なにそわそわしてやがる?」
十六夜にそう声をかけられ、黒ウサギは肩をビクらせる。こうなったら、十六夜に相談してしまおうかと黒ウサギは考えたが、頭を左右に振りその考えを捨てた。なぜなら、亜音は黒ウサギの仲間なのだ。信用しなくてどうすると、黒ウサギは拳を作る。
と同時に自己賞賛する。
(今の黒ウサギ、少しカッコいいのですよ!)
とその時。
『GEEEEEEEYAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaa!!』
「っい、今の叫び声は............!」
「ああ、間違いない、虎になった春日部の声だ!」
「あ、なるほど。ってそんな分けないでしょう!!」
黒ウサギは鋭いツッコミを十六夜にぶつけながら、内心ハラハラしながら三人の無事を祈っていた。
(この鬼化植物...............必ず“彼女”が関わっているはず。ならゲームは公平なルールで提示されているはずです。三人ともどうかご無事で!)
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そこからさらに時間は進み、飛鳥とジンは館にではなく、木々が生い茂る森の中にいた。なぜかというと、ガルドと遭遇したはいいものの、狭い部屋で、普通の生身の人間、飛鳥とジンでは分が悪すぎた。あのまま戦っていたら、耀の足手まといになっていたのは明白。唯一、身体能力が高い、耀が館に足止めとして残り、二人は逃げてきたのだ。
それと、逃げる際、飛鳥はジンに命令したのだが、それは一人で逃げろという意図だった。しかし、ジンは無我夢中で命令に忠実に動き、子供の腕力とは思え ない身体能力を発揮して、飛鳥を抱えてここまで逃げてきた。そのせ いで、だいぶ館から離れてしまった。
「ガルドが守ってた、白銀の十字剣............剣と十字架。吸血鬼と化したガルド。ーーー間違いありません。指定武具は、あの白銀の十字剣です」
「吸血鬼?」
「はい。元々ガルドは、人・虎・悪魔から得た霊格、その三つのギフトによって成るワータイガーでした。ですが吸血鬼によって人から鬼種に変えられたのでしょう」
ガルドが虎の姿になっていたのはそのためだ。彼は吸血鬼によっ てもう人に変幻する事はできない。人の姿になるためのギフトが鬼種になってしまったからだ。
まさに、虎の化け物。
そのとき、二人の傍で茂みが揺れた。
「誰!」
「.........私、」
茂みから出てきたのは、血だらけの耀だった。
二人は血を流す耀の右腕を見るや否や悲鳴のような声を上げた。
「か、春日部さん!大丈夫なの?」
「だ、大丈夫じゃ............なぃ。凄く痛い。ちょっと、本気で泣きそうかも」
甘かった。飛鳥はそう痛感した。何が誇りと魂だ。自分はただ奢っていただけなのだ。 少し考えれば分かったこと、狭い部屋でガルドと相対する事は森で奇襲されるより危険だという事に。もし、ガルドがその部屋にいる事を知らずに入っていたら、即死だった。
地に崩れた耀の右手には白銀の十字剣が握られている。
「まさか、一人で剣を!?」
「本当は倒すつもりだった。…….........ごめん」
何に対しての謝罪なのか。それを告げることなく耀は気を失った。
「ま、まずい!傷そのものよりも出血が!このままだと.........っ」
出血多量で彼女の命が危ない。
急いで応急処置をするにも止血できる道具もない。
飛鳥は悔しい気持ちを押し殺し、深呼吸をする。
「今からあの虎を退治してくるわ。ジン君はここで待ってなさい」
「だ、駄目です!一人じゃ無理です!悔しいですがここは降参しましょう!耀さんもこのままじゃ危ない!仲間の命には代えられません」
十六夜を手放すことにはなることになるが、今はそれどころではない。
このままでは耀と飛鳥も失うことになるかもしれないのだ。
しかし、飛鳥は独り言のようにジンに言った。
「私達は負けられない、子供達のためにも、春日部さんのためにも、私は負けられないッ! 」
飛鳥は十字剣を振り、強く地を踏みながら、覚悟を決める。
耀の生命力を信じる覚悟を。
ここで引いて耀が助かっても、耀は笑わないだろう、自分を責めるだろう。
なら、一か八か、笑える未来を選んだ方がマシだ。
飛鳥は髪を結んでいた二つのリボンを解き、ジンに投げ渡す。
そして、真紅のドレススカートを揺らしながら、宣言した。
「十分で決着をつけるわ。少しだけ我慢して」
「...............」
声に反応したのか、耀は左手を振って〝いってらっしゃい〞を込めて友を見送るのだった。
(亜音……………“今の”飛鳥なら大丈夫だよ、)
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「ハァ…………はぁ、」
春日部は薄らいでいく意識の中、ガルドとの対峙した時のことを思い出す。
…………ガルドの初撃を正面から防いだ時、多少力が増していたことには気が付いた。
飛鳥を引かせたのも、部屋の狭さのせいでもあるが、これなら負けることはないとタカをくくっていた。
そして、銀の十字剣を抜き先、構えた時、お互いに動くのをやめた。
『……………っ、く』
『グルル……………ァ、』
だが、その時声が聞こえた。
おそらく人にはできない言語、動物の言語だろう。
『オレは負けるわけにはいかない……………っ、オレはこんなところでッ!』
(それは……………私たちも同じだから!)
耀の剣戟は素人に等しい。
巧みにかわすガルドは、再度、牽制するように唸る。
まるで、耀の内心を呼んだかのように。
『オレは負けない……………オレには“もう後がない”んダァああああ!!』
『…………っ、』
耀もまた己のギフトを駆使し、ガルドの爪をいなし、かわしていく。
部屋の飾り、家具、本棚が切り刻まれ、粉塵が舞い上がる。
そして両者が共に攻めあぐねていた時、耀は足元に写真立てが落ちていることに気がつく。
『これ………って、………貴方の………?』
意外といえば意外だった。
こんなゲス野郎にも待っている家族がいることに。
と、すぐに散っていた気をガルドに戻す。
すると、ガルドの様子が急におかしくなった。
例えるのならばそう、まるで、子供を探している時の親猫のように。
『グ、………ぅ、グルル………グゥ』
『…………、泣いてるの?』
写真立てに写るのは、間違いなく人種だった。
何に悲しんでいるのか、わからないが、都合のいいことには変わりはない。
数多くの子供達を殺してきておいて、“それ”はない。
虎の瞳から落ちる雫を見て、肩を震わす耀。
『お前は殺したんだっ、………貴方の子供と変わらない、普通の子供達を殺したんだッ!』
耀の怒号は静謐に響いた。
しかし、ガルドもまた叫ぶ。
『うるさいッ!!…………オレはもう戻れない、こんな姿のオレをアイツも子供も許容できるわけがねぇんだ、』
『自業自得だよ、ガルドさん』
『ガハハ…………確かにそうかもしないな、………だがな、たとえそうだとしてもこのゲームに勝ち、妻と子供だけは“必ず取り戻す”ッ!』
『取り戻す?……………どういうこと?』
『オマエには関係ナイッ!オレはどうしても、“最後”になるとしても会いにいかなければならないんだッ!!!』
先程と違い、隙だらけの突進だ。
あの写真をキッカケに理性を取り戻したせいだろうか、覇気もない。
これならばこの一合で、勝負を決められる、そう思っていた。
だが、耀は自分の手に違和感を感じた。
(ど………どうして!?)
肩から腕にかけて震えが止まらなくなっていた。
まるで、春日部 耀としての迷いを体現しているかのように。指針がブレまくるコンパスのように。
彼女の決意が消えかかっているのだ。醜く走る虎の王、涙を流し、家族を呼びながら、猛る。その姿に剣を突き立てなければいけないその事実に。
だが、その迷いはこのゲームにおいては致命傷と言える。
“殺傷”を許されたこのゲームでは、容赦はない。
『ガァアアアアアア!!』
『きゃァ、ア!』
致命傷を避けれてはいたが、腕を切り裂かれ、そのままの勢いで窓の外へと吹き飛ばされる耀。
そして、その時、走馬灯のように亜音の言葉が紡がれた。
(そういうこと、か………なら、二つ目の言葉は必ず守らなきゃ………だよ、ね、)
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・天道は、空を飛ぶこと、自身の痛みを和らげる恩恵。
・人間道は、仏門に帰依し、仏にまつわる神の眷属となれる。相手は断れないがそのあとで破門可能。その主への信仰心と知識を持たなければ殺されるというリスクがある。そして、その主、仏の神次第で、あらゆる恩恵を授かれる。
・修羅道は、仙人自らの肉体を鍛え、鬼神・阿修羅の霊格、強力な 身体能力を手に入れる。
・畜生道、本能を完璧に支配。本能の世界で本能を抑え込み、知識 を使う。そこから、天武の才能、観察眼、上達の速さ、思考速度、超 速進化、鍛えて戦って得られる経験値は通常の倍。サイ○人と例えら れている。
・餓鬼道、純真な精神、特殊武装の巨大金砕棒。
・地獄道 幻を見抜き、魂と肉体を色別に見ることができる。また他の罪さえ見抜くと言われる眼。
『六道仙人の徒』 世界を渡り歩く存在としての霊格とされている。
榊原家のすべての者が必ず得た霊格。
あらゆる者が“神童”と言われていたことから神性、『神格』がある。ただ神格とは言っても単体では、人としての基礎能力の向上だけである。
またあらゆる生物と話すこともできる。おそらく声を発せる物ならすべて。
霊体をその身に宿すことができる救世の精神世界を保有し霊体に触れることができるが、この霊格だけでは“見ること”はできない。つまりはそこまでの役割を持たないことを指せるだろう。
「全部じゃないですが、大体、上記の通りです。先代が残してくれた“力”の事についての書類は憶測でしかないですが、俺が使える“力”の特徴にほぼ合致しています」
精神内にいる〝蚩尤〞も落ち着き、和室の空気から重みが消えた。
そして、話題は〝六つ〞の恩恵についてだった。
「なるほどな、〝蚩尤〞がおんしの中に居れる理由は、そういうカラクリか」
「少し違います、かの“王”はまず、未だ死んでいません」
「霊体ではないということか?」
「はい。霊格が消えかけていた時、死ぬ間際に俺と“同化”しました。前にも言いましたが、俺が亡くなればそこで〝蚩尤〞も死にます。肉体を共有しているということです」
霊体とは幽霊。特別な存在とて見ることのできない存在。
それに適応した、特化した存在でなければ触れることすら不可能だ。白夜叉も例外ではない。その代わり、霊格が大きければ、おそらく霊体がその者に干渉しようとしただけで霊体は爆散する。黄泉や地獄にすらいけない。
「つかぬ事を聞くが、おんし嫌じゃないのか?」
「愚問ですね」
「そうか............それと、一つ気になっておるのだが」
白夜叉は少しニヤつきながら、スゥーと目を細めて、亜音に問う。
「おんしの瞳、みせてもらえかのぅ?」
亜音はやはりそう来たかと、笑う。この話をすれば必ず瞳に行き着くだろうとは最初から思っていた。“サウザンドアイズ”が特殊な瞳を持つ者の集まりと聞いた時から。
亜音は目を閉じ............ゆっくりとその瞼をあげる。
その瞬間から彼の瞳は紫色に染まっていて、幾千の輪廻と黒い核を有したものになっていた。
「ほう、それが」
「はい。これがーー“輪廻眼”です」