新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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第二章【高校二年生の心】
プロローグ「大嫌いだ」


 今日、月が映える夜空。

 “サウザンドアイズ”支店。

 誰もが目の前の光景を信じられなかった。明かりがついた和室に、 十六夜、黒ウサギ、飛鳥、白夜叉、英霊の名を持つ旗ペルセウス、そのリーダーであり、〝“ノーネーム”の敵、ルイオス。そしてそのルイオスに恥を捨て、プライドを捨て、頭を下げている一人の青少年がいた。

 それに対して敵国である彼は笑顔を保ち、優雅に膝を立てて見ていた。

 そんな不遜な輩に青少年はずっとただ無表情に頭を下げるだけ。

 確かにこれまで、礼儀正しく 周りに接してきた、時には頭も下げていた青少年こと亜音。だが、“敵対勢力と判断した相手にまで頭を下げるなんて、誰が予想できただろうか。

 今すぐにでもやめさせたいと誰もが思うだろう。一刻も早く。

 だがそんなやりとりを誇り高き久遠飛鳥はただ歯を食いしばって見てることしかできなかった。

 

 

 

#####

 

 

 

 ───────なぜ、こうなったか、少し時間を遡る。

 ガルドの本拠地より帰還し、〝ノーネーム〞の本拠地に帰ってきた一行は、そのまま耀の容態を確認しに行く。コミュニティの工房へと耀は運ばれて静かに寝ていた。

 見舞いの後、十六夜、亜音の二人で冷茶を飲みながら、あるギフトゲームのことを話していた。

 

「仲間が景品のギフトゲームには十六夜、一人で出るつもりなの?」

「気に入らないか?」

「いや、自分も出て─────」

 

 亜音のセリフが言い終わる前に談話室へ黒ウサギが入ってくる。ただ、とても浮かない表情で。

 加えてその口から出た言葉は、十六夜を余計に不機嫌にさせる。

 

「ゲームが延期?」

「はい............申請に行った先で知りました。このまま中止の線もあるそうです、」

 

 黒ウサギは自慢のウサ耳を萎れさせ、口落ちそうに顔を歪める。

 亜音は少し黒ウサギを見て眉をひそめるが、すぐに落ち着いた表情でお茶を飲み始める。

 十六夜は肩透かしを食らったようにソファーに寝そべった。

 

「なんてつまらないことをしてくれるんだ。白夜叉に言ってどうにかならないのか?」

「どうにもならないでしょう。どうやら巨額の買い手が付いてしまったそうですから」

 

(どこの世界も............同じか)

 

 十六夜が悪態をつき、それを黒ウサギが宥めた。

 そして、話は自然と景品の仲間の話になった。おそらく十六夜なりの気遣いだろう。

 

「ところでその仲間ってどんな奴なんだ?」

「一言でいえば、スーパープラチナブロンドの超美人です。加えて思慮深く、黒ウサギより先輩で」

 

 とそこで亜音が一言告げる。

 

「……………誰かいる」

「へ?」

「そうみたいだな?」

 

 十六夜は亜音を試したような口ぶりをする。亜音はそれに対し嘆息をこぼす。

 と同時に凛々しい呟きが響き、窓が強引に外側から開かれた。隠れる必要性がなくなり、遠慮無用といったところだろう。

 

「まさか、黒ウサギ以外の誰かに気付かれるとは思いもよらなかったよ」

「れ、レティシア様?!」

「様はよせ。今の私は他人に所有される身。〝箱庭の貴族〞ともあろうものが、モノに敬意を払っては笑われるぞ?」

 

 談話室にそう言って入ってきたのは、美麗な金の髪を特注のリボンで結び、紅いレザージャケットに拘束具を彷彿させるロングスカートを着た、黒ウサギの先輩と呼ぶには随分と幼く見える美少女だった。

 

「こんな場所からの入室ですまない。ジンには見つからずに黒ウサギと会いたかったんだ」

「そ、そうでしたか。あ、すぐにお茶を淹れるので少々お待ちください!」

 

 久しぶりに仲間と出会えた事が嬉しかったのか、黒ウサギは小躍りするようなステップで茶室に向かう。

 レティシアはそこで、十六夜の奇妙な視線に気が付く。

 

「どうした 私の顔に何かついているか?」

「別に前評判通りの美少女だと思ってな。目の保養に観賞してた」

 

 十六夜の真剣な回答だったのだが、レティシアは心底楽しそうな哄笑で返す。口元を押さえながら笑いを噛み殺し、上品さが板についているかのように亜音と十六夜の二人と向き合うように席に付く。そんな中、亜音は一線の壁を作ってるような雰囲気を漂わせ無表情でお茶を飲む。

 レティシアはそんな亜音を一瞥したあと、十六夜に向き直る。

 

「ふふ、なるほど。君が十六夜か。白夜叉の話通り歯に衣着せぬ男だな。しかし観賞するなら黒ウサギも負けてないと思うのだが、あれは私と違う方向性の可愛さがあるぞ」

「あれは愛玩動物なんだから、観賞するより弄ってナンボだろ?」

「ふむ。否定はしない」

「否定してください!」

 

 紅茶のティーセットを持ってきた黒ウサギが口を尖らせて怒る。

 温められたカップに紅茶を注ぐ際も少し不機嫌な顔だ。とそこで、そろそろかなという様子でレティシアは視線を亜音に移し、少し微笑みながら声を掛ける。

 

「榊原 亜音。貴方の事も白夜叉から聞いている。貴方は────」

「一つ聞きたい」

「ん、なんだ?」

 

 亜音に話を折られて、少し戸惑ったレティシアだったが、すぐに持ち直して平静に問い掛けた。

 少し不穏な空気が漂い始めた中、亜音は机にカップを置き、無表情で口を開く。

 

「なぜモノに甘んじている(・・・・・・・・・)貴方が、此処に来れたのですか?」

「っ!」

「あ、亜音さんいきなり何を言ってるのですかっ!あ甘んじているだなんて、そんなわけないでしょう!失礼にもほどがありますっ!」

「…………」

 

 亜音は黒ウサギの叱咤とレティシアの驚愕の視線、十六夜の鋭い目つきに晒されながらも臆することなく言葉を続ける。

 

「“俺”にはそう見えたんだが、そもそも“俺”は」

 

 そこで少し窓の外を見つめる亜音。

 遠くを見るような彼の目にレティシアは少し引きつけられたような感覚に陥る。

 だがそんな感覚に冷水をかけるような言葉が彼から出た。

 

「この箱庭(せかい)が大嫌いだ、いや嫌いになったと言う方が正しいな。これ以上話す気もない、俺は自室に戻る」

「亜音さん!」

 

 亜音はそう言い残し、談話室を早足に後にした。箱庭を嫌いと言っ た理由、浅いのか、深いのか、それを判断するには言い出した相手が悪い。レティシアを含め誰一人、亜音の真意に辿り着けずにいた。

 そして、談話室に残った三人の空気は最悪だった。レティシアは胸を抉られたような感覚を味わっていたが、納得もしていた。

 

(なるほど............白夜叉が言っていた通り、これまでに例のない人間だな)

 

 レティシアは少し気を取り直して、本来の目的と事情を説明していく。

 ガルドを当て馬にしたこと。新戦力の把握を兼ねていたこと。しかし、ガルドでは弱すぎた。

 そこで、十六夜の実力を直に試すべく、三 人は自然と中庭に降り立つのだった。

 

「決闘か、それは実に分かりやすいな。面白い」

「だろ?ということで、決定だな」

 

 そんな二人のやり取りにさえ、黒ウサギは突っ込めずにいた。

 亜音が言ったことがショックだったのだ。自分たちのせいで、この世界を嫌いになってしまったかもしれない、そして、レティシアに言った暴言、黒ウサギの脳はパンク寸前だった。

 

 

####

 

 

 亜音はというと、珍しく、分かりやすくイラついていた。と同時にすこし悲しげな表情で、自室のベットに寝っころがる。

 脳内に響く単語が、彼を苦悶させていた。

 

(モノ……………道具…………ゴミ。あの子たちは………モノじゃない、命は皆等しく尊い、なのにレティシアという女の子は………俺は絶対に認めない)

 

 

 亜音は嫌な記憶を消そうと枕に顔を埋め、シーツをしわくちゃにするほど暴れる。

 しかし、どうやっても、記憶から消えない。それどころか、もっと鮮明になっていく。

 そして、亜音はいつの間にか、前の夢の続きを見るべく、無意識に眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 晴天の下にある森林、豊かな自然に囲まれ日向を充分に浴びる教会と屋敷、だいぶ紛争から遠ざかり、静かな平和を自然な光景が高らかに謳っていた。

 そんな屋敷の右横にある教会の聖なる部屋で、俺は皆の前に立ち、

 

「初めまして、俺は榊原亜音といいます。今日から一ヶ月半、お世話になります」

 

 そう言うと、一番前の席に座っていたシスターのおばさんが笑って 言ってくる。

 

「お世話になってるのはこちらの方ですよぉ。本当にありがとうございます」

「いえいえ、当然のことです。それに俺も此処に泊めさせてもらうので」

「はぁーあ」

 

 俺の言葉に対して、あからさまなため息を零したのは、此処に訪れた際に現れた希少種の女子。ものすごい美人なのだが、反比例した中身がアレで男の活力を意図も簡単にしならせる。

 そんな女は、現在、絶賛俺にメンチ切っている。

 

「シスターじゃなくて、ディザスターだろ、この女」

 

 ちなみにディザスターの意味は────大きな不幸、または災難である。

 もちろん、その場の皆も理解している。だからこそ、目の前の女は、青筋を立て、俺の眼前に立っている。

 

「さきの続きをご所望かしら?それとも救いという名の地獄行き(アーメ○)が欲しいのかなぁ?」

「なるほど、この異様な覇気、君はもしや冥王ハデ“エロス”か」

 

 こんなことを口走る自分の頭が心配になるが、

 

「はぁっー私がハデス .........なるほど、相当目が腐っているようね、 私の服装を見てよく」

「腐っているのは君の耳だろ。俺はハデエロスと言った。エロスを忘れるな、下ネタ大好きシスター(笑)処女よ。間違えた少女よ」

 

 外見は大人に近しい二人が子供以上の暴言を吐きくる姿は、子供達に大受けらしく、そこかしこから小さな笑いが聞こえてくる。

 しかしそんなのは気にしてはいられない、相手が相手である。

 

「こんのっ!!い、今すぐぶっ殺してやるんだからッ!この童貞野郎!!」

 

  とそこで、女の後ろから一人の子供が見兼ねたように飛び掛かる。

 

「ケンカはめー!」

 

 しかし、その可愛らしい声とは裏腹に、大事件が発生する。

 先の暴言が嘘かのような、俺は仄かな甘い香りと柔らかい感触を口で味わっていた。

 そう、俺は今、先まで罵詈雑言を吹き出していた口と接吻をしてしまっていた。紛争地域に来て、キスとか、なにそれ?俺は此処にナンパしにきたのかと思ってしまう。

 俺の目の前には目を見開く女の赤面した顔がある。おそらく俺も 同じように赤面だろう。

 そんな中でも、マイペースなおばさんは落ち着いた表情で、言葉を紡ぐ。

 

「おめでたね?セラリアちゃん」

 

 とそこで、二人は臨戦態勢に入る。

 口を離し、セラリアという女は平手打ちを、俺はそれを迎撃すべく平手打ちに平手打ちを喰らわす。

 そのまま握手し、セラリアは自己紹介する。

 

「私は此処のシスター、セラリア・アストラーリ。夜露死苦(殺してやる)

「あはは............どうも」

 

 

 俺とセラリアは、何十人という子供たちとおばさんの前で、仇敵を見つけたかのようにしばし睨みあうのだった。

 次の日、正確には夜中の二時。

 俺は屋敷ではなく教会にあるとても小さな何もない部屋で一人寝ていた。少し肌寒い。布団を借りようとはしたのだが、セラリアに取り上げられた。だが、季節のおかげで助かった。その時、小屋の古い木製のドアが軋む音を響かせる。

 

「何の用だ?────ディザスターの申し子よ」

「ちっ、起きてたのか」

「今ちって言ったよね?まあ何する気だったかあえて聞かんわ。それと少しは女の子らしくしろ、で、話があるんだろ?

 

 俺は半身を起こし、胡座をかいて薄い敷布団に座る。そして、俺はセラリアに同じく敷布団の上に座るよう指で指して促す。

 少し嫌な表情を、頬を膨らませていたが、仕方なくのようにセラリアは“正座”する。

 そうしていれば、世界一可愛いと言えるのだが、

 

「ケッ」

 

 これだからな。

「一つ............聞いてもいい?」

 

 セラリアは唐突に口を開く。この子、天然で空気を読めないようだ。

 俺は戸惑いつつも、うなづく。

 

「貴方.....................何者ですか?」

 

 声が真剣だった。

 いきなり、取調室にワープしたような錯覚を俺は感じ取る。

 それほどまでに、セラリアの纏う空気は激変していた

 

「貴方は屋敷の戸の前で私の攻撃を軽々避けた、単純な攻撃だったけど、ただの人間にあれは避けられない。完璧なタイミング、速さだったもの。しかも、反撃まで。それに私を庇った時も、階段から落ちて全く痛がる様子もない。冷静に考えたら、あり得ないわ」

 

 俺は心臓を握り潰された。と思うが、少し落ち着こうと上に息を吐き捨て、バラすかバラさないかを考える。どちらでも良いのだが、目立つのはあまり良くない。特に紛争地域ではな。争いの種になり得るかもしれない。

 だから、まずは、その判断材料を集めることにした。

 

「それは逆に君も────ただの人間ではないと言っているものだが、」

「ぬっ!」

(その顔...............この子、アホなのか?おいおいそれじゃあさらに、宝の持ち腐れに拍車をかけてるぞ。まったく)

 

 互いに普通の人間ではないと把握した。俺はそう思っているが、相手はあのアホ(会って二日目)だからな。

 セラリアは自分のことはまだ疑われているだけと思っているかもしれない。そんな中、何を思ったのか、突然シスターの髪を隠している部分の白い生地のベールを後ろに脱ぎ去った。

 

「う、うさ耳??」

 

 俺は小さな声で驚く。まさに俺の言ったとおり、目の前には絹糸のように艶のある赤髪とバニーガールがつけているようなウサ耳が生えていた。もちろん、頭上からだ。飾りだとは思ったが、にしてもあまりにも逆に違和感がない。

 

「そうだ、私は“月の兎”に関わる力を持ってるの」

「………だから、ウサ耳が…………それで?」

「え?」

「え、じゃなくて、何か理由があって、そんな可愛らしいウサ耳を見せたんだろ?何を怯えてるかは知らんが、」

「か、可愛らしい?!」

「ああ、普通に可愛い。てかよく似合ってると思うぞ、しかしお前の中身がなー」

 

 セラリアは某然と亜音の反応を見ていた。亜音の最後の方は耳には入っていない。

 彼女は我に帰ったように、口を開く。

 

「こ、怖くないの?」

「逆に聞くけど、どこが怖いの 、まぁ他の人はビビるかもだが、俺は別に…………ちなみに…少し触っていいか?」

「え、あ、うん」

 

 あまりにも急展開すぎて生返事しかしない。本当に触って大丈夫かよ。

 それになぜか頬を赤らめて、少し頭を俺に下げてきた。マジでいいのかよ。

 俺はなんとなくセラリアが、ウサ耳にコンプレックスを抱いていることを感じ取り、できるだけゆっくり優しく触れていく。ただ手をお くようにスーと赤いフサフサの耳をなぞっていった。少しくすぐったそうな彼女は少し愛らしく見える。

 

「もういいよ、ありがとさん」

「う、うん。………」

「それで、このこと、────皆知らないんだな?」

 

 知っているなら先言っていたんだろうな。

 

「言えるわけないよ。だって、私は“人間”じゃないかもしれないのに」

 

 セラリアは声のトーンを小さくして、そう呟く。本当に昼間の女の子と同一人物か疑わしくなってきた。普通に可愛らしい女の子にしか見えない。

 そのせいで、俺は彼女を意識せずにはいられなかった。

 だからこそ気になった、たった二日目の対面しかしていない俺なんかに、

 

「それをなんで、俺には見せたんだ?」

「............なんとなく」

 

 これは嘘だな。

 いつもならこの嘘をそのまま鵜呑みにしてやれる器用な自分だが、今回は余裕がない。

 

「嘘を言うな。俺もただの人間じゃない、そう思ったからなんだろ?」

「ごめんなさい.........」

 

 即答の謝罪に少しがっかりする自分にビシッと心の中に喝を入れ、口を再度開く。

 

「ま………まぁ、その通りだけど、詳しくは言えない。俺一人の問題じゃないからな。」

「つまり、家族も?」

「そういうことだ」

 

 

 セラリアはホッと息を吐いていた。彼女は自分だけだと思っていたのだろう。

 残念だが、君だけだよ。そんな男のハートをど直球でぶち抜く武器を持っているのはな。

 セラリアはベールを被り直し、立ち上がった。何も言わないまま、出口に向かっていくのを見て、俺は呆気なさを感じつつも、黙って寝っころがろうとした。そこで、セラリアは扉の取っ手に手を掛けたまま立ち止まり、俺に声を掛ける。

 

「ねぇ............寒くない?」

「布団をとった本人がそれを言うか?」

「............」

「............大丈夫だ。それにこの方が涼しくていい」

「そう...............おやすみ」

 

 セラリアの小さな呟きは、俺には届かず、セラリアは扉の向こうへ と姿を消すのだった。俺はというと、幻聴だったのか、と疑問を抱くが、とりあえず眠かったので、周囲を警戒しつつ眠りにつくのだった。ここは平和と言っても、紛争地域だ。警戒するに越したことはない。

 それにしても、昼間と今、どっちが本物のセラリアなのだろうか、二重人格で納得してしまいそうなほどまでに落差がある。そんな疑問 を抱くのだった。

 

  

#####  

 

 

 夢から目が覚めると、なぜか亜音の胸元に飛鳥が顔を埋めていた。

 亜音は寝ぼけていたが、なんとなく状況を把握した。おそらく起こしにきた飛鳥を自分が寝ぼけて抱き寄せてしまったのだろう。飛鳥は赤面したまま硬直していた。しかし、亜音はそんなの我知らず、ゆっくり半身を起こし、飛鳥の両肩を掴み離してあげていた。

 

「大丈夫か?」

「う、うん。大丈夫よ............亜音君、本当に逞しいわね」

「まぁ、鍛えてるからな。............そういえば、何か用があったんじゃないのか?」

 

 飛鳥はようやく現実に戻ってきたようで、真剣な表情に変わり、亜音に告げた。

 

「これから〝サウザンドアイズ〞に行って、レティシアを取り戻すわ」

「っ、……….ふー………」

 

 亜音の不機嫌な表情とため息に飛鳥は首を傾げる。

 しかし、飛鳥が口を開く前に、亜音が行動を開始した。

 

「仕方ない、とりあえず行くか...............行こう、飛鳥さん」

 

 亜音はベッドの横に立ち、飛鳥に手を伸ばす。

 それを見て、飛鳥は頬を少し染め上げながら手を伸ばす。亜音は照れ臭そうに伸ばされた飛鳥の手を優しくそれでいて力強く取って、ゆっくり立ち上がらせた。その後二人で微笑み合いながら、亜音の自室を後にするのだった。

 

 

 

 

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