新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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第三話「炎熱地獄」

 〝ノーネーム〞別館前。

 

 黒ウサギや子供達が起床する少し前。

 亜音はいつもより早めにトレーニングを切り上げて、出掛ける準備を始めた。

 シャワーと着替えを終わらせ、別館の前の芝生に座っていた。

 そして、亜音の中で幾つか重要な出来事が夜中にあった。

 それをもたらしてくれたファインプレー者は、この前救った霊体達、八人のニュンペーと若様、獏の十名だった。

 少し話を逸れるが、ガルドに殺された一部の四十人の子供達と上記の者達は、元気に精神世界で暮らしている。

 完全に死んでいるため、亜音の身体を数分しか貸すことができないが、それでも現状には満足しているようだ。

 唯一、〝蚩尤〞だけが亜音と意識を完全に交代できるが、〝蚩尤〞も〝蚩尤〞で忙しいらしくわがままを言ってこない。

 忙しいといのは、〝蚩尤〞は他の霊体達相手に学校の授業をしている。元の世界の知識は亜音の記憶より作られた教科書をすべて覚えたらしい。

 亜音もこれには驚いた。自分も記憶力には自身があったのだが、やはり上には上がいるらしい。それでいて、〝蚩尤〞は歴史に詳しい。

  特に異国、中国には詳しく、さらに兵器開発もできるので、戦闘の戦術や経験値もある。見かけによらず博識で文字通りの天才なのだ。

 それでいて、世話好きだから、亜音が口を挟むこともない。勉強だけでなくスポーツや体育もやらせるなど、もはや外の世界と違いがあまりない幸せを〝蚩尤〞は提供していた。

 もちろん、〝蚩尤〞は厳しい先生だ。霊体達に無理矢理『先生』と 呼ばせている場面は、亜音にとって想像するのは容易だった。

 近況はそこまでにすることにして、亜音が皆を自分の世界に迎え入れたおかげで、思わぬ副産物をもたらした。

 それが、最初に言った重要な出来事である。

 一つは、超巨大コミュニティ“サウザウンドアイズ”に名を連ねる〝ペルセウス〞についてだ。

 〝ペルセウス〞は最下層コミュニティに対して、常時、伝説に乗っとったギフトゲームを開催しているらしく、その前にとあるギフトゲ-ムをクリアすることで、〝ペルセウス〞に直接挑めるとのことだそうだ。

 それと亜音はそもそも〝ペルセウス〞相手に交渉する気は殆どなかった。あったにはあったのだが、到底一週間では取り引き相手の1.5倍の大金は用意できる金額ではなかったので、それに代わる物、または嫌でもギフトゲームをさせる状況を作ろうとしていた。ちなみに1.5倍の金額とは億単位の4桁単位である。それだけの金額を出せる相手の方がペルセウスよりやばそうである。でそこに朗報が〝蚩尤〞を通して亜音に届けられたのだ。

 そして、二つ目が亜音にとって最も重要なことだった。

 亜音は一つの、この世界の法則に気が付いたのだ。そのきっかけは、くしくも〝ペルセウス〞の件だった。

 当初、亜音は黒ウサギのことを悪く言われたことに対して相当憤慨していた。二度と煉獄の炎など見たくもない、口にもしたくない、耳にでさえいれたくなかった。そんな状態の時に、ルイオスは平気で黒ウサギを責め立てたのだ。亜音自身、よくあそこでルイオスの首を斬り落とさなかったのが不思議なくらいだった。こうなったら、〝ペルセウス〞を箱庭から消し 去ってやろうかと冗談半分に思った時、亜音はふと考えた。

 箱庭は歴史の体現の世界、その世界からもし〝ペルセウス〞が消え たら、歴史にも少なからず何かしらの影響を及ぼすのではないか 、 とそう考えた。

 

 

 

 つまり、歴史の書き換えができるのではないか?

 

 

 悲惨な過去を変えることができるのではないか?

 

 

 

 そう考えた時には、すでに亜音は精神世界にいる〝蚩尤〞に言伝を頼んでいた。

 そして、ニュンペー達、若様、獏が、亜音の方針を決めてくれる情報を提供してくれた。それを聞いた時の亜音は、これまで誰にも見せたことのないような表情を浮かべる。希望と言ったところだろうか。もはや亜音にとって、〝ペルセウス〞との件は寄り道程度にしか認識されていなかった。

 

 その情報とはある一つのコミュニティ、いや元の世界では秘密結社として有名な組織名だった。

 元々、亜音のいた世界は人類史の中でも現代的な世界だが、その世界にはおそらくどの世界にもない、裏表という見えない境界線がある。表はもちろん、普通の人が普通に暮らしている世界観で、魔術、神話やオカルト話も、特有の神性を帯びている。

 だが、裏はオカルトや神話、魔術、錬金術などの知識と力が本当に実在し、表には知られていないような知識や歴史がある。

 つまり表と裏では神話にも大きな“差異”があるということだ。それと今は亡きセラリアが思っていたほど元の世界には、普通の人はそこまで多くないし、力を持った人間もそこそこ存在する。

 ただ、外見にあれほど変化のある者は聞いたことも見たこともなかったので、亜音は余計なことを、裏の世界のことをセラリアに一切口に出すことはなかった。

 少しばかり後悔はあるが、今はそれすらもどうでも良かった。

 

  そこで、子供達と他の者達が起きたのを悟った亜音は別館を後にして、〝ノーネーム〞の居住区画の荒れた地を高速で跳躍し駆け抜けたその間、飛行より足の方が速いのは、ある意味問題だなと亜音は一人で苦笑するのだった。

 

 

#####

 

 

 

 〝ノーネーム〞本拠地、亜音の自室前。

 その頃、亜音の自室前には飛鳥を筆頭に、十六夜と耀、黒ウサギが集まっていた。

 十六夜は眠そうに欠伸をし、耀と黒ウサギは心配そうに飛鳥の背を見ていた。

 飛鳥はドアノブにさえ手を置けずにいた。というよりノックすることすら、お嬢様である飛鳥は忘れてしまっていて、端的に緊張していた。

 

「ヘタレだなーお嬢様」

「ぐっ............」

 

 飛鳥は言い返すことすらままならなかった。

 いや言い返す言葉すら見つからなかった。まずは気を取り直すように胸に手を置いて一度深呼吸し、決死の思いを胸に秘めて忘れていたノックをした。

 やっとできたことにホッとする飛鳥だが、少し待って気がつく。

 

「...............まだ寝てるのかしら?」

 

 飛鳥は仕方なく無断でドアを前に押し開く。

 ゆっくり部屋に入り、それに続くように耀と黒ウサギ、十六夜がついてくる。

 

「亜音............いない」

「またお風呂で寝てるのかしら?」

「二度はないと思いますよ?」

 

 

 そこで十六夜が脳天気に、

 

 

「亜音ならさっき出掛けたぞ?」

「それを先に言いなさい!この問題児」

「それを先に言ってください!この超問題児」

「..................眠い」

 

 盛大な突っ込みを十六夜に突っ込んだ二人を尻目に、耀は三毛猫を抱きながら盛大な欠伸をするのだった。

 飛鳥は緊張すら何処かに吹き飛ばしてしまい、知らず知らずに亜音のベッドに座る。黒ウサギも同じように十六夜に呆れながらベッドに座り込む。

 耀に至っては三毛猫と一緒に豪快に寝っ転がる。

 そこで耀は匂いに違和感を感じる。

 

(匂いがしない.........私の嗅覚でも匂いが分からないなんて、それじゃあ、まるで新品のベッド.........亜音、ここで寝てないのかな?............)

 

 そこで耀はフェードアウトしそうになるが、飛鳥と黒ウサギの驚きの声で目が覚める。

 

「亜音君、一人で〝ペルセウス〞に挑む気なの?!」

「さ、流石に亜音さん一人では無謀です!」

 

 耀はなんとか身体を起こして、話に聞き耳を立てる。その横では三毛猫がダウン中。盛大にお腹を見せて寝ている。

 十六夜は三人と一匹を見下ろした後、視線を窓の外に向けた。

 

「まぁ落ち着けよ。………亜音を止めるには〝ペルセウス〞の門前で待つのがベストだが、それは現実的じゃない。というより最悪、〝ペルセウス〞に追い返されるのがオチだ............どちらにせよ、待つしかない」

 

  十六夜はそれだけを言い残して、亜音の自室を出て行く。

 飛鳥と黒ウサギは同じように背を丸めて、俯いていた。その背を耀 は不安げに見つめ、何かないかを考えるが、何一つ閃くことはなく、三 人と一匹は十六夜のいう通り、待つしかないと心の中で呟き、亜音の自室を後にした。

 

 

#####

 

 

 

 あれから数時間が経過した頃、亜音はようやく目的地に辿り着き、 ゲーム盤である異次元に招かれる。

 暗雲が空を埋め尽くす波打ち際の浜辺、本来なら広大な波打ち際が見れるのだが、その場所には視界を覆い尽くすほどの怪物とそれに乗る 怪物が亜音を見下ろすように居座っていた。

 巨躯の持ち主の化け物は、ウネウネと紫色の体表をテカらせて何本もの極太の触手を蠢かす。三つの青き宝珠のような瞳を持つ、その者の名は伝説の海の怪物、〝クラーケン〞。イカではなく、タコに近いクラーケンだ。地を這う様はまさに怪物。

 そして、その上にフードを被りコートに身を包み、緑色のしわくちゃな体表をもつ者達。黒髪をハゲ散らかし肩まで中途半端に伸ばされている様は年老いている特徴だった。

 さらに一番の特徴は顔のど真ん中に配備されている白い目の赤き瞳。それらの特徴を持つ者が三人クラーケンの上に立っており、名を 〝グライアイ〞という。ギリシア神話に登場する三姉妹の魔女である。体は三つだが歯と目が一つしかないため三人で共用していると いう説がある。その通りなら、目を見開いている一人を除く二人が目を閉じている理由に納得できると亜音は考えた。

 亜音は怪物達に図太い声で何かを言われているが、聞く耳を持たず、一人で思考を続ける。

 

(ゲーム盤なら............壊しても大丈夫だろうか)

 

 因果応報の概念が介在しないかどうか体に宿る恩恵の反応を伺う。

 亜音は微かな反応が“無いこと”を悟りそのまま考えつつも、クラーケンを見下ろす位置まで浮き上がると、亜音の視界には海と混沌とした空が広がる。

 クラーケンとグライアイはその様子を見上げて首を傾げるが、次の瞬間、亜音のいる位置から熱波が吹き荒れ、ゲーム盤全域を青と白の閃光が混じり合い爆発する。

 圧倒的な炎熱地獄が巻き起こっているのが、視界を奪われていても誰もが理解できるだろう。

 それほどまでゲーム盤の中の気温が上昇し、グライアイとクラーケンの肌が爆発の余波だけで焼き付いた。

 それに爆風も相当な物で、クラーケンでさえ地に伏せて吹き飛ばされないように耐えていた。

 まるで重量の如く吹き荒れる暴力に彼らはなす術がない。

 

 

 

####

 

 

 

 数分後、空気が高熱によってピリピリする中、ようやく徐々に視界がクリアになり、グライアイとクラーケンは爆発源である後ろに振り向く。その直後、グライアイとクラーケンの瞳がオーバーリアクションと驚きで飛び出そうになっていた。だがそれは無理もないだろう。

 なぜなら、湖の深さしかないにしても、広大な海が綺麗さっぱり消え去っていたのだ。

 そして、広大な海があった場所は干上がったように地表が見え、その広大な地表さえも黒く焦げて白煙と黒煙を上げて いた。

 亜音は少し肩で息をして、因果論が反映してないことを悟ると、静かに下の砂浜に降り立ち、怪物達に問う。

 

「────“事を構えるつもりはない”、この意味よく考えて欲しいかな?」

 

 人のような形をした奴が神々の力を行使した場合、余程の馬鹿でなければわかるだろう。

 ただの人が神々の力を持つわけがない、であるなら人の形をした神、化身と考えるのが妥当だ。

 もし上位の化身が訪れたら、そもそも試練は成り立つのだろうか、それは否である。社会的に言えば別会社のさらに大企業の社長が報復にやってきた感じだろうか。しかもちゃんとした手続きをとって、である。

 もはやギフトゲームとかではない、そもそもお前らは神々と戦争したいか?と言われているに等しい。

 クラーケンとグライアイは自ら敗けを認め、二つの赤と青の宝珠を、神を相手にしているかのように亜音に捧げた。

 その直後、ゲーム 終了のお知らせが鳴り響き、亜音はゲーム盤より笑顔で帰還するのだった。二つの宝珠はもちろん、ギフトカードに収納していた。

 

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