新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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第七話「別れの後の歓迎会......答えは身近に」

 〝ノーネーム〞本拠地、貯水池。

 

 亜音がルイオスと待ち合わせいた日の夜、子供達を含めた〝ノー ネーム〞一同は水樹の貯水池付近に集まっていた。その数、一二七人と一匹。数字だけを見れば中堅以上のコミュニティとも呼べるだろう。

 子供達が黒ウサギ進行の歓迎会にワッと歓声を上げ、周囲には運んできた長机の上にささやかながら料理が並んでいる。本当に子供だらけの歓迎会だったが、それでも新たな同志達は悪い気はしなかった。問題児三人は小さく会話を交わす。

 

「だけどどうして屋外の歓迎会なのかしら?」

「うん。私も思った」

「黒ウサギなりの、精一杯のサプライズってとこじゃねぇか?」

 

 実を言えば、〝ノーネーム〞の財政は想像以上に悪い。あと数日で金蔵が底をつく。

 四人が本格的に活動し始めたとしても、百人を超える子供達を支えるのは厳しいかもしれない。ましてやその中で、魔王との戦いや仲間達の救出を行わなければならないのだ。

 こうして敷地内で騒ぎながらお腹一杯飲み食いをする、というのもちょっとした贅沢になるほどに。その惨状を知っている三人は苦笑していた。

 

 

「それでは本日の大イベントが始まります みなさん、箱庭の天幕に注目してください 」

 

 

 ふと黒ウサギの明るい声が皆の耳に入る。

 皆がそれぞれの場所から、空を、箱庭の天幕に注目し見上げた。

 その夜も満天の星空だった。空に輝く星々は今日も燦然と輝きを放っている。

 異変が起きたのは、注目を促してから数秒後のことだった。

 幾数もの白き光が弧の軌跡を描いて夜空を駆け抜けた。すぐに全員が流星群だと、気が付き、口々に歓声を上げている。

 そこでさらに黒ウサギは十六夜達や子供達に聞かせるような口調 で語りはじめた。

 

「この流星群を起こしたのは他でもありません。我々の新たな同士、 異世界からの四人がこの流星群のきっかけを作ったのです」

 

 これには問題児たちも驚いた。

 

「箱庭の世界は〝天動説〞のように、すべてのルールが此処、箱庭の都市を中心に回っております。先日、同士が倒した〝ペルセウス〞のコミュニティは、敗北の為に〝サウザンドアイズ〞を追放されたのです。そして彼らは、あの星々からも旗を降ろすことになりました」

 

  刹那、一際大きな光が星空を満たした。

 そこにあったはずのペルセウス座は、流星群と共に跡形もなく消滅 していたのだ。

 言葉を失う彼らを余所に、黒ウサギは進行を続ける。

 

「今度の流星群は〝サウザンドアイズ〞から〝ノーネーム〞へのコミュニティ再出発に対する祝福も兼ねております。星に願いをかけるもよし、皆で鑑賞するもよし、今日は一杯騒ぎましょう♪」

 

 そして、黒ウサギは夜空を見上げて笑みを浮かべる十六夜に、したり顔で声を掛ける。

 

「ふっふーん。驚きました?」

「やられた、とは思ってる。だがそのおかげで、いい個人的な目標もできた」

「おや?なんでございます?」

 

 コミュニティの目標ではなく、十六夜個人の目標。黒ウサギでなくとも興味があるに違いにない。

 十六夜は消えたペルセウス座の位置を指さし、

 

「あそこに、俺たちの旗を飾る。............どうだ?面白そうだろ?」

 

 今度は黒ウサギが絶句する。しかし途端に弾けるような笑い声を 上げた。

 

「それは............とてもロマンが御座います」

「だろ?」

「はい♪」

 

 そんな二人を亜音は長机の席から遠目に眺め微笑むと、目の前の子供に声を掛ける。

 その子供は男の子で、ゆっくりと腹を撫でている。もうお腹一杯なのだろう。

 

「もう限界か?少年」

「えっ?」

「少しだらしないのでは?.........女々しくリタイアするか?少年」

 

 亜音の挑発的な態度に男の子は単純に、亜音を敵視し箸を勢い良く手にした。

 そして、男の子は十六夜バリの不敵な笑みで亜音へ問いかける。

 

 

「お兄さんこそ、少し顔色悪いんじゃない?」

 

 何気無い一言。けれど、亜音はつい男の子を十六夜とダブらせた。まるで、核心をつくようなセリフに亜音はつい表情を硬くする。

 その様子に男の子は、オドオドし始めてしまった。亜音はすぐに我に帰り、自分の分の皿を男の子の皿に、微笑みながら全て移す。

 

「隙あり!.........男は食わないとダメだぞ?」

「えー」

 

  男の子はうなだれながらも山盛りの皿に箸を伸ばす。

 その様子に亜音は安堵し、亜音に背もたれている両端の女の子二人 に声を掛ける。

 

「ごめんね、ちょっとトイレ行ってくるよ」

「うん 分かった!」

「また戻ってきてよ、お兄さん」

「了解♪」

 

  亜音はそう言うと、本拠地の屋敷の方へ歩き始める。

 その背をメイド服のレティシアは料理を運びながら、怪訝な表情で見つめる。

 

「.........亜音殿?」

 亜音は夜の道を歩きながら、ふと囁く。

 

「無理が無意識に顔に出てたのか.........まだまだガキだな、俺は」

 

 亜音はもう子供ではない。こういう時こそ、しっかり歓迎会の輪に参加して、迷惑を掛けさないようにしなければならない。

 それもまた亜音が大切な者から学んだ、決して忘れてはならない教えだった。もっと厳しくいかなければと、心の中で亜音は気合を入れる。それにカロル・メルスは亜音へ、秘密結社の本拠地で眠りにつく前にこう囁いてくれたのだ。

 

『封印される前の数百年という長い人生よりも、今この一瞬が、亜音と過ごしているこの刻の方が価値のある人生、鮮やかな色がついた幸福 な時間だったわ。本当にありがとう』

 

 そう言われては、落ち込んでいる方が無理な話だと亜音は思っているが、おそらくそう思えるのは彼だけだろう。なのに、子供に自分の無理を見抜かれるなど、亜音は自分が恥ずかしすぎて笑えてきてしまう。亜音はため息を尽きながら、後ろへ声を掛ける。

 

「それで気配を絶っているつもりか 、女性三人組」

「「げっ 」」

「ふむ、やはり亜音殿も相当やるようだな」

 

 暗がりより、真紅のスカートドレス、木彫りのペンダント、金色の錦糸の束が後ろに現る。

 亜音は首だけでなく身体も後ろに振り向かせ、飛鳥、耀、レティシ アと相対する。

 

「俺のトイレに美人ぞろいの女性三人組がストーカーするって、どんだけ贅沢なんだか」

「亜音がそんな冗談を言うなんて、余程重症のようね」

「今日............何かあったの?」

 

 この空気からして、いじりが半分、本気が半分ってとこだろう。

 亜音は心の中で、どんだけ信用されてんだよ、とツッコミをいれていた。心外である。自分だって下ネタは言うし、キモいことも言うと弁解したいが、そんなこと豪語したら、亜音は早急に看病を受けることになるだろう。

 

「とりあえず、主賓が三人もいなくなるのはよくない。三人共、すぐに戻りなさい」

「亜音く.........亜音はどこに行くのかしら?」

「いやいや、本当にトイレだから。次ついて来たら、十六夜にいじりネタとして提供するからね」

 

 その言葉に飛鳥と耀は、戦略的撤退という名目で戦線を離脱すべく亜音に背を向けて歓迎会の和へと戻って行った。

 レティシアは亜音の背をその場で動かずに見送り、唇を噛み締めた。またまともに話すことが出来なかったと、心の中で舌打ちするレティシアだった。

 

 

 亜音はトイレを済ませて、本拠地の屋敷を出た。

 亜音はついため息を吐いてしまい、横目で館の入り口に立っているレティシアを見つめる。

 

「レティシアさん..................はぁ...分かりました...分かりましたよ。少し談話室で話しますか?」

「っ........本当か!?」

「はい。というより、そんな嘘誰もつきませんよ」

「そ、そうか............それもそうだな、うん!」

 

 亜音の言葉にレティシアは、あからさまに表情を変えた。

 とは言っても、笑顔になったのではなく、何か思い詰めるような顔つきから、ただ目を見開いている表情になっただけだった。それでも、亜音に何を求めていたのか、分かりやす過ぎた。

 レティシアが前を歩き、その後ろを亜音がついて行く形で、館内に 入って行くのだった。

 

 

 

####

 

 

 談話室。

 レティシアと亜音の二人は相対するように席につき、レティシアの用意したコーヒーを亜音は口に含む。レティシアは少し緊張した様子で、亜音を見つめていた。 亜音は首を傾げて、レティシアに聞いた。

「俺の顔に何か............ああ、そういうことか、コーヒーのこと?」

「あ、ああ。どうだ?」

「いや、俺はコーヒー好きだけど詳しくないから、他の」

「亜音殿の好みでいいから答えてくれないか?」

「.........うーん」

 

 亜音は視線をコーヒーカップに移し、焦げ茶色の液体を揺らす。 亜音は元の世界では、コーヒーの味は時間帯で変えていた。簡単に言えば、朝から夜にかけてだんだんと甘くしている。しかし、この世界ではそもそもの生活サイクルが違う。朝、コーヒーを飲む暇はこれまでなかったし、これからもそうだ。

 

「もう少し甘くしてもいいかな、まぁ微調整なら自分が」

「いや、メイドとして完璧な仕事をしたい。それには主たちの助力が不可欠、亜音殿どうか」

「............わかった。それと俺の事は呼び捨てで構わないよ。レティシア」

「了解した。これからよろしくお願いします。亜音.........それと」

 

 

「本当にありがとう。..................改めてこの身を救っていただいたことにお礼を」

 

 

「お礼ならその身体で」

「......っ...いきなりだな............亜音は私が好みか。...ふむ......少しばかり抵抗はあるが、主の命令ならば」

「冗談ですよ、何を本気にしてるんですか ......まったく...誰も俺の冗談を冗談として捉えないんだな」

 

 レティシアの重い気持ちを軽くしようと冗談を言ったのだが逆効果みたいになってしまい、亜音は頭を抱え、レティシアは少し残念そうに笑う。

 

「いいではないか、それほど亜音は信用できる人なのだ。それに何と無くだが、勢いで亜音とそういう関係になっても亜音は自分をとても大切にしてくれる、一緒にいると余計にそう思えるのだ。」

「悪い気はしないけど、それだとまるで俺が誰にでも手を出すように聞こえるんだが......なんとも言えない、微妙な心境だよ」

「ふっ確かに。.........亜音は少し鈍感そうだ」

「レティシア??......しょうがない.........こういう時こそ話を変えようかーーーーー」

 

 

 亜音とレティシアは歓迎会が終わるまで、時間を忘れたように冗談を交えた言葉のキャッチボールを投げ交わすのだった。

 

 

#####

 

 

 それから数時間経過し、亜音とレティシアは歓迎会の後片付けのた めに貯水池付近の会場に戻ってきていた。

 その裏では、亜音とレティシアの口論があった。レティシアは亜音に休むように言ったが、亜音はそれを拒否、決闘になりかけそうになった時、リリが屋敷の入り口前を通ったのでなんとか事を亡きに終えたのだ。

 それでもレティシアは納得がいってないかのように終始、片付けが終わるまで亜音を睨みつけていた。これには亜音も苦笑するしかなかった。

 問題児三人と子供達は先に屋敷と別館へ戻っており、その場に残っているのは、黒ウサギ、レティシア、リリ、亜音の四人。ジンは子供達を寝付かせに行っている。祭りの後は浮き足立つ、そういう事だろう。ジンも子供の割には立派に保護者を務めている。

 ゴミなどをまとめて、後は屋敷に長机や皿を持って行くだけなのだが、数が桁違いである。

 そんな状況なのにも関わらず黒ウサギ、レティシア、リリの三人は某然とその様子を見つめていた。亜音が全ての長机とお皿を黒い霧で持ち上げている様を。まじでデタラメである。全てを終える頃には、日にちが変わろうとしていた。

 談話室で少し休憩した後、黒ウサギ、亜音、レティシアはそれぞれの部屋へと戻って行くのだった。

 

 亜音は屋敷の廊下を歩きながら身体の怠い、重さに萎えていた。

 今日は体力を使い過ぎた。色々な事があったから無理もない。それに今日は悲劇の後に、祭りをやったので、余計に疲れていた。

 それでも、トレーニングは欠かす気はない亜音は、うつむかせていた視線を上げた。

「!..............リリ?」

「あ、亜音さん 」

 

 亜音の自室前でリリが立っていた。リリは亜音の存在に気が付くと、狐耳を跳ね上げつつ何かを後ろに隠して亜音に駆け寄る。

 もちろん、亜音も大体は察して、自然を装ってリリに話しかけていた。

 

「今日はご苦労様。美味しかったよ」

「あ、ありがとうございます!」

「お礼にお礼を返されるなんてね............それで、何の用かな?」

「あ、はい!..............えーと、亜音さんは毎朝、朝食は何も食べないのですか?」

「忙しいからね」

 

 亜音の苦笑いに、リリはソワソワして戸惑う。けれど、リリは小さな勇気を示すかのように、狐耳と尻尾をピン!と伸ばすと同時に両手にブツを持って、亜音の前に差し出した。

 

「もしよかったら、食べてください!」

「これ、もしかしてお弁当?」

「はい .........おかずの種類が少ないですけど、それでもーーーー」

 

 

 亜音は意識が浮いたような感覚に襲われる。

 それと同時に身体から怠さが一気に消えた。身体の怠さよりも亜音は素直にリリの気遣いがとても嬉しかったのだ。

 そして、誰かの手作りお弁当は、亜音にとって初めての体験である。小学校も中学も給食で、弁当がいる日はコンビニか、自分で作ってい たし、両親は弁当を作る暇もないほどに忙しかった。だから両親に対して不満は一切なかった亜音だが、それでも当時、 少し寂しかったのもまた事実。

 亜音は大事にリリの弁当を受け取り、身近な〝本物の温もり〞を味わう。こんな何気ないところにも温もりがあったことに亜音は気が付いたのだ。

 それとこの時、ふと〝孤独な女神〞、〝完璧な存在〞を救うきっかけが此処にあるような気がした。だが今はそれよりも、この温もりを〝彼女〞へ、分けて上げたかっ た気持ちの方が強く、その思いのはけ口として、亜音はついリリの頬に手を添え、撫でてしまう。

 その途端にリリは、年相応の可愛さを存分に発揮させるように慌てふためき、顔を紅く染め上げていく。これまで以上に尻尾が興奮してフリフリ揺れていた。

 

「......ふ...ぇ...え、あ、ああの......んさん?」

 

 そんなリリを面白おかしく見つめている亜音は、暖かみを体現したヒマワリのように満遍の笑みを浮かべてリリの頭を撫でつつ、リリから手を離す、

 リリは頬を染めながら、上目遣いで亜音を見上げて、ようやく亜音の表情に気が付き、

 

「...............ぁ」

 

 声を漏らしていた。

 そんな驚いた表情をしたリリに、亜音ははっきりと伝えた。

 

 

「ありがとう、リリ。本当にありがとう。とても嬉しいよ」

 

 

 その後のリリの反応は、言うまでもないだろう。

 おそらく将来は、女神ばりの美人さんになるだろうと、亜音はリリの喜ぶ顔を見て強くそう思うのだった。

 

 

 

 

 

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