新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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第八話「北の逃走劇!?.....謎の女性」

 紛争地域、教会と屋敷の立つ森林。

 榊原亜音こと、俺がこの教会に来て初めての夜を過ごした次の日。

 朝から早く俺は子供達の手伝いをしていた。

 手伝いとは大量の洗濯物を干すことである。この教会には多くの子供達が引き取られて暮らしている。そうなれば、あらゆる運動量、物量が増えるのは自然なことだ。

 教会の右側面にちょっとした広場があり、そこに物干し台が置かれている。そこで俺は子供達と一緒に洗濯物をパンパンとシワを伸ばし、物干し竿にかけていく。

 そこで俺はやばい物を見つけてしまった。そのブツは、洗濯カゴにあった。

 黒と赤のレース、バキューム!!!

 

「こ、これは............もしや!」《セラリアの?》

 

 そこで隣にいる子供が俺に声を掛ける。

 

「あ それ、おばあちゃんのだぁ!!」

 

 はい、デンジャーと俺は静かに洗濯カゴに戻した。

 しかし、そんな俺に子供は厳しい発言をしてくる。

 

「何をしてるんですか?、干さないと洗った意味がないじゃないですか」

「あ、ああ、うん。............ついな」

 

 女の子はそう言い、バキュームを洗濯バサミに挟んでいく。

 俺はそれを見て吐き気を覚えるがなんとか平静に耐え、次の物を適 当に手に取るが、

 水玉の白いショーツ ーーーーーーって。

 

「子供のか.........」

 

 そう思うと自然に下着のシワを伸ばせることができ、洗濯バサミに挟もうと俺は手を動かそうとした。

 途端、俺の目の前を疾風の影が突き抜けた。追い風に視界を奪われてはいたが、それでも手に持っていたはずの下着のショーツが無くなっていることには気が付く。

 俺は両手に視線を移し、ついでに芝生の地面を見渡す。落としたのではないことを把握し、すぐさま風が吹いた方向に視線を動かすと、そこには顔を自身の赤い髪以上に染め上げていたセラリアがいた。

 その手には握り潰すつもりほどの迫力で、水玉のショーツが握られていた。おまけにセラリアの目は少し涙目だ。

 俺は馬鹿ではない。大体は察したので、なんとか被害を減らそうと声を掛ける。

 

「か、可愛い下着だな?」

「............さっき」

「ん?」

 

 セラリアはなぜか、フルフル肩を震わせ始め、顔を俯かせていた。

 俺はすぐに嫌な予感に刈られるが、時すでに遅しだった。

 

「さっき子供っぽいって思ったでしょ!このチンなし野郎!!」

 

 

 そこから一日期間の特別サービス〝鬼ごっこ〞が始まり、最終的にセラリアが根負けてして大泣きしてしまい、俺は罪悪感に襲われセラリアに謝ろうと近づいた。だがそれは罠で、顔面に本気のめり込みパンチを喰らい、俺は絶賛、 鼻血ブーブーになるのだった。

 そして、この日の夜は、俺の歓迎会として外でバーベキューをすることになっていたのだが、俺は火元を見る係になっていた。炭火の加減を確認しながら、歯ぎしりをする。別に自分の歓迎会なのに雑用という待遇に怒っているわけではない。 その原因は、お婆さんと俺の二人で火元を見ているので二台あるの だが、俺の前で俺の分の肉をかっさらっていく鬼が、俺の台に取り憑 いていたからだった。

 

「あのーセラリアさん ?........俺の歓迎会なんだけど」

「ああん?.........雑用は黙って、火だけを見てなさいよ」

 

俺は両手に軍手、右手に火ばさみトング、左手に団扇という完全装 備、食べる暇などない。

 つまり、言われたとおり黙るしかなかった。

 目の前でうまそうに甘味が効いた焼肉ダレをつけて肉を頬張る様は、俺に殺気を帯 びさせるのに充分だったのだが、

 

「おいしい〜 ふふ」

 

 セラリアの笑顔を見てしまうとその殺気も自然と萎えてしまった。

 それに子供達も幸せそうに食べていたので、余計に勢いも削がれていく。

 此処へ大量に食材を持って来て本当によかったと思いつつ、これだから人助けはやめられないと気合を入れて叫ぶのだった。

 

「どんどん食えよ!」

 

 俺は食べるのを諦めて、赤いプラスチックの箱を椅子にして座り込み、皆の様子を眺めていた。腹が減って胃がキリキリするのを我慢するのは骨が折れる。

 

「亜音.........」

 

 そこへなぜか、視線を合わせないセラリアが俺の横にやって来ていた。

 両手は後ろに行っており、モジモジと身体を少しよじらせている。

 

「もう限界か、鬼さん?」

「う、うるさい!.............はい、コレ」

 

 セラリアは肉や野菜が彩る『おそらく自分の皿』を俺に差し出してきた。

 どうやら、先ほどの俺と同じように罪悪感を感じて小さな優しさを提供したいらしい。

 だけど、俺の手は埋まっていた。

 

「また後で食べるから、セラリアが食べていいよ」

 

 セラリアも俺の両手を見て何かを悟ったのか、俺の右手から火ばさみを無理矢理奪い取ろうとする。

 

「あ、馬鹿!」

「あ、熱!......イッっ!」

 

 案の定、火元に近過ぎて、弾け飛んだ熱々の肉の油がセラリアの指を焼いた。

 

「馬鹿 、そんな態勢で無理に来るな!火に突っ込む気か!」

「ぅ.........うう......ひへぇ?!」

 

 俺はすぐにセラリアの指を口に含む。すぐに冷やさないと火傷の後がくっきり残ってしまうのだ。

 少し離れた所には大量の水が入ったバケツが置いてあるが、火元を離れる訳にはいかない。ここでできることをするしかない。

 

「あ............ああ.........、」

「...............よし、後はバケツに指から痛みがなくなるまで入れとけ、いいな?」

「....ぅ.....うん、分かった」

 

 セラリアは少し落ち込んだ様子で大人しくバケツが置いてある影に消えていった。

 その背を見送り、すぐに地面に置いておいた火ばさみを手に取った俺は、ついため息を吐いてしまう。

 正直にちょっと強く言い過ぎたことを反省した。

 だが医者の経験がある者からすると跡が残るか残らないかは、特に女性のケースの場合は敏感になっていく場合が多い。しょうがないとも思ってしまう所はまだ子供だなと再度反省するのだった。

 

 

 

 

 

#####

 

 

 〝ノーネーム〞本拠地、亜音の自室。

 

 

 

 〝新たな同志の歓迎会〞から幾日か経過した、その日の朝。

 榊原亜音は今日の朝もそうだが、ここ最近珍しく朝からベッドの上で寝ることができていた。もちろん毎日トレーニングは欠かしてはいない。リリの弁当を食べた後に爆睡したのだろう。ベッドの反対側にある机には空の弁当箱が置かれていた。だが、そんな安眠は一時間ちょっとでぶち壊されるのだった。

 ノックなしに十六夜を筆頭に問題児二人、あわわと慌てるリリとジ ンが入室してくる。

 

「おい、起きろ!お寝坊野郎!」

 

「...............うーん、いや」

 

 亜音は寝言でそう言い、問題児三人に青筋を立てさせる。

 例え相手が榊原亜音と言えども、問題児三人には関係ない。差別意識がない分、誰にでも生意気に通すのだ。

 十六夜は掴みやすい位置に居たジンの襟を掴み、不敵の笑みを浮かべる。

 ジンはその顔を見て、蒼白する。

 

「い、いざ」

 

 ジンが言い終わる前に即行動、十六夜はジンを亜音が寝てるベッドへ放り投げた。

「ジン君!!」

 

 その瞬間、突如、黒い霧がジンを抱え、寝ていたはずの亜音が身体を起こして、優雅に欠伸をしていた。

 その様子に飛鳥と耀は舌打ち、リリはホッと息をつき、十六夜はやはりなという顔で亜音に声を掛けた。

 

「やっぱり起きてたか」

「いや、リリちゃんの声のおかげで起きれたんだよ。」

 

 亜音はそう言いながらゆっくりと、目を回していたジンをベッドの上に優しく下ろす。十六夜はそんな亜音の物言いが気に入らないようだった。まるで、もっと前から亜音が起きていたと思っているかのように。

 そこで飛鳥が声をあげて、一通の手紙を亜音へ差し出す

 

「緊急事態よ!亜音」

「緊急事態、緊急事態」

 

 耀も便乗して言い、亜音は眉を潜めてその手紙を受け取る。

 緊急事態の割には、君達は生き生きとしているね、とは言わずに置いた亜音だった。

 

 

「北の祭典〝火龍誕生祭〞か............」

 

 

 亜音は手紙が隠されていたこと、それですべてのことを悟る。

 これまで亜音は東の階層を、東全体に比べればまだまだだろうが、ある程度回ってきた。なので、まず境界門の金は払えないことは必然に理解し、黒ウサギが自分達に黙っていた気持ちも分かった。そして、何よりここから北までの距離は途方もないことも東の広さから理解できる。

 封のシールからして、この手紙は〝サウザンドアイズ〞からのだろうと思った亜音は、

 

「なんにせよとりあえずは〝サウザンドアイズ〞の店へ行こうーーーー」

 

 ジンの代わりに途方もない距離だということを説明したら、問題児 三人は素直に亜音の意見を受け入れ、亜音には内緒で置き手紙を残し ていくのだった。

 

 

 それから、数十分後。 一人の子供が持ってきた問題児達からの置き手紙を見た黒ウサギは、農園で箱庭の全土に向けるが如く雄叫びを上げていた。

 そして、その手紙には、自分達を見つけなければコミュニティを脱退する、という冗談表明が記されていた。黒ウサギ達にとっては笑えない冗談である。

 特にこの件に、亜音が関わっていることが黒ウサギ達にとってさらなる不安を募らせているのだった。

 

 

######

 

 

「つーわけで、責任とって俺達を北まで連れてけや、コラ」

「はは…………すいません、白夜叉様」

 

 さすがは問題児筆頭、と素直に亜音は関心し、白夜叉はそんな十六夜を座らせた。

 という所から話は進んでいき、

 ・階層支配者

 ・〝サラマンドラ〞の世代交代

 ・11歳の少女、サンドラというジンとリリの知り合いが頭首、階層支配者の一角を担うこと。

 ・東と北の共同祭典、多岐に渡る事情で他の北の階層支配者が協力的じゃないこと。おそらく幼さゆえのことだろうと、十六夜は言い、 白夜叉は言葉を濁していた。

 ・その上で、魔王打倒を掲げたジンに白夜叉から正式な依頼があるとのこと。

 主に下から二番目の、それが亜音にとって一番気になり気に入らないことだった。大人の事情というものがあるんだろうが、少女一人頑張ろうとしているのを素直に応援できないのか?たとえ〝サラマンドラ〞との間に溝があろうともだ、と思うのだが、事情が深刻なものかもしれないので、亜音はその件には口を閉じることにしたのだった。ちなみに、ここには今、問題児三人、リリ、ジン、三毛猫、亜音、白夜叉がいる。

 そこで、依頼について白夜叉が説明しようとしたら春日部耀が、 焦って口を開く。

 

「ちょっと待って。その話、長くなる?」

「そうだのぅ、最低でも一時間は」

 

 いつの間にか問題児三人は目の色を変えていた。

 亜音はというと一人置き去りにされながらハテナマークを浮かべ て、問題児達の焦りを見ていた。

 十六夜は少し強めの口調で白夜叉に言う。

 

「白夜叉、今すぐ北に向かってくれ!」

「別に構わんが............依頼の件は受諾でよいのか?」

「構わねぇから早く!それに何より、その方がおもしれぇ」

「そうか、面白いか。フッ、なら仕方がないのぅ」

 

 パンパン???!

 白夜叉は突如二回ほど柏手を打ち、笑顔で皆に告げた。

 

 

「よし。北側に着いたぞ」

 

 

 その言葉には問題児三人、リリ、ジンはもちろんのこと、亜音も絶句だった。

 

 

 

####

 

 

 

 全員が外に出てみれば、そこは東とはまた違った異文化が広がっていた。朱色に染まる都市。色とりどりのステンドガラスが街中に並び、多くのランプが街を照らす。その他にも街中にあらゆる物が飾られており、そこを歩む者達の祭りの気分に拍車をかける。

 その多くの者達も種族がバラバラで、ファンタジーに溢れていた。その様子に一人のお嬢さまこと、久遠飛鳥は喜々にはしゃぐ。

 

「綺麗 、本当に綺麗だわ!」

「へぇー東とは随分と文化様式が違うんだな」

「今すぐ降りましょう!あの硝子の歩廊に行ってみたいわ、いいでしょ?白夜叉」

「構わんよ。続きは夜にでも」

 

 その瞬間、何かが流星の如くその場に降り立った。

 その者は、うさ耳が特徴的で、うさ耳から流れる髪の先までをピンク色に染め上げた黒ウサギである。

 

「見ぃーつけたのですよぉおお、フッヘへへようやく見つけましたよ?問題児様方!!」

 

 黒ウサギは不敵の笑みを浮かべ、豊満な胸を張り、腰に手を置きながら堂々と宣言した。

 その後すぐに、十六夜が叫ぶ。

 

「逃げろ!」

「??」

 

 亜音はイマイチ状況が分からず、首を傾げている。

 そして、十六夜は飛鳥を抱えて街の方へひとっ飛びし消え、それに続くように耀が飛び去ろうとしたが、残念なことに鋭い手が空に踊り出た耀の足首を捉えた。

 

「逃がすかっ!」

「ヒィッ?!」

 

 黒ウサギは嗤う。

 

「フヘヘヘ、後でたっぷり!お説教タイムなのですよ」ニヤリ

「りょ、了解」

 

 耀が口角をヒクヒクさせた瞬間、黒ウサギは耀を振り子のように振り回し、少し離れた所にいる白夜叉に放り投げた。

 

「ブォヘェ!」

「きゃっ!」

 

 白夜叉は耀を受け止め 、後ろにひっくり返る。盛大に耀を受け止めた白夜叉は、勢いよく半身だけを起こし、黒ウサギに叫ぶ。

 

「こ、コラ!黒ウサギ 、最近お主いささか礼儀を欠いて「耀さんをお願いしますッ!黒ウサギは他の問題児様方を捕まえに参りますので」

 

 力説に語る黒ウサギに白夜叉も先ほどの勢いは消え、声がひっくり返っていた。

 そこで、リリが小さく呟いた。

 

「亜音さんがいない...............!」

「え?」

「へ?」

 

 黒ウサギも予想外の呟き、というより物凄いデジャブを黒ウサギは感じた。

 なんだか、この前もそうだったような 。

 ジンはそんな黒ウサギにある事を伝えた。

 

「亜音さんはあの置き手紙の内容を知りません。だから亜音さんは大丈夫、ではないと思いますが」

「そうですか、なら先に十六夜さんと飛鳥さんを捕まえましょう、」

 

 黒ウサギは少し勢いを削がれ亜音というイレギュラーに顔色を悪くしながらも、街に降り立ち、風塵を巻き起こしながら駆け抜けるのだった。

 

 

 

####

 

 

 

 とりあえず、亜音は逃げることにした。こういう時は事情を知るまではその場の空気に任せるのが一番と亜音は思っているのだが、今は少しその判断に後悔していた。

 なぜなら残念なことに、榊原亜音を追う者は誰もいなかった。というより追える者がいない、の方が正しいだろう。おそらく黒ウサギと レティシアは問題児二人に手こずるはず、いや間違いなくそうなる。 ジンとリリでは駆けっこにもならない。

 また空気のような存在になるかも、と思いつつ亜音は朱色に染め上 がる街中を歩く。

 

「どうしたもんかな ......はぁーあ。そういえば今日はまだ一、ニ時間ぐらいしか寝てないな、どこか休める場所を探すか」

 

 という事で昼寝をする場所を探す事にした亜音は、欠伸を連発しながら周囲を見渡す。

 活気がすごい、さすが、国をあげての祭り、と亜音が感想を抱いていると、

 

「ん .........喧嘩 ?」

 

 目の前には野次馬のような人の壁が亜音の前に立ち塞がっていた。

 亜音は空に躍り出て、浮かび上がり、状況を把握しようと上から見渡す。

 

「なるほど.........ナンパからのトラブルか、まぁ無理もないか」

 

 亜音はすぐに状況を把握すると、一人の女性に視線を移す。その人こそ、このトラブルの中心人物で、一言で凛とした美しい姫または騎士といったところだろう。

 十六夜の二段階ぐらい濃いクロムイエローの、背を覆い尽くすほどの長髪ポニテール。鋭く気高い白き瞳、白と黄色の華やかなドレスス カート、白きブーツ。さらに外見だけでやり手だということが誰にでも分かるほどの覇気を纏っていた。美しく気高いその女性は、眉一つ 動かさずに棒立ちしている。その女性を囲うのは、亜龍と人のハーフの色男達。

 驕りがプンプン臭う。亜音はどうするか悩んでいたのだが、その時、亜龍の一人が女性の肩に手を伸ばそうとし、女性から物凄い殺気が放たれた。

 

「我に触れようというのか、駄龍共」

「ぐっ!」

 

 その気迫に亜龍の色男達は怯み後ずさるが、この野次馬の前でおめおめと逃げるナンパどもはいない。亜音の予想通り、色男達は雄叫び をあげて、かぎ爪を立てながら女性に襲いかかった。

 

「な、なんだあれは?!」

 

 その直後だった。野次馬の一人が空を見上げて驚く。

 さらに大きな影がその場を染め上げ、皆が空を見上げる。

 

「で、でかいぞ!鳥なのか?!」

 

 そこには黒き巨大な鳥がいた。

 正確には宙に浮く亜音が足元から黒い霧を生み出し作り出した鳥 の影である。一応、鳥ではあるものの形は絵に描いたような大雑把な物だ。

 そこで、さらに鳥の尻尾の付け根あたりから斜めに黒き階段が作られ、女性の足元まで伸びた。階段の先にはもちろん空が見え、亜音が いる。

 女性は少し迷っているのか、足元を見つめる。

 それも無理はないだろうと亜音は思う。いきなり現れた得体の知れない“化け物”の群生に、不用心に乗るのは危険すぎる。だが、女性は最後に亜音を見て小さく笑った。

 亜音は手を差し伸べ、微笑む。

 すると、すぐに女性は階段を駆け上がる。まるで、うさぎのように階段を飛ばし飛ばしに。

 それを呆然と見ていた色男達は我に帰り、自分達の獲物を渡したくないのか、諦めずに階段を登ろうとするが、亜音は呟く。

 

「定員オーバーです☆」パチン

 

 亜音は指を鳴らし、黒い霧で作られた階段を消滅させていく。

 女性がちょうど亜音の後ろに降り立ち、鳥の付け根の穴は消滅、そして黒き鳥は幾千もの黒い線を周囲に爆散させた。

 亜音は後ろにいる女性に声を掛ける。

 

「どうぞ、好きな方へ逃げてください。追われる心配もないですよ」

「貴方はどうされるか?」

「俺は得体の知れない者、一緒に行動するのは危険です。お互い様に」

 

 亜音の言葉で空気がピリつく。

 それも無理はないだろう。亜音のセリフはつまり、互いに敵同士と言っているようなものだ。

 しかし、女性は一転して亜音に頭を下げた。

 これには亜音も驚き、思考が止まった。

 

「助けて頂き、ありがとうございます。それと此度のお礼ですが、代わりに忠告しておきます」

「なんです?」

「もうすぐここへ〝天災〞が迎え入れられます。すぐにここから去ることをお勧めします.........死にたくなければですが」

「......〝天災〞だと.........?」

 

 亜音は何処かで聞いたフレーズだと思い、記憶を思い返した。

 ようやくそのことを思い出した頃には、目の前から金髪の女性は一瞬にして姿を消していた。

 気配が消えたことに亜音でさえ気付けなかった。おそらく思っていた以上の実力者だということを亜音は思い知り、思わず呟いた。

 

 

「〝天災〞............魔王がここに............?」

 

 

 その時、遠くから爆音が響き渡る。

 亜音は無理矢理思考を切り替え、その方向に目をやると、呆れ顔で溜息をつく。

 なぜなら亜音の視線の先で、時計台の尖塔をぶっ壊した問題児筆頭様こと、逆廻十六夜殿が高らかに笑い声をあげていたからだ。

 

「オゥ、マジでクレイジー………ったくなにやってんだ、あいつ」

 

 亜音は頭を抱えながらも、すぐにその場から空へ躍り出て十六夜の元へと向かうのだった。

 まさに色々と前途多難である。

 

 

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