新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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第十四話「ジンの決心」

 XXXの紛争地域、教会と屋敷の立つ森林より、少し離れた河川。

 

 

 ウサ耳を内緒にしていたセラリアだったのだが、皆とっくに気づいていたらしい。

 そして、シスターおばさんが子供達に口止めしておいてくれたそうだ。いつか、自分から言ってくれることを信じて。

 セラリアは泣き崩れて、ワンワン泣き、俺はそれを優しく抱きとめた。その様子を見て、俺は良かったと思った。なぜなら、俺がセラリア に言ったのだ。自分から言った方がいいと。でも、言うように勧めた、といっても不安が一切無かったわけではなかった。だから、とりあえずは一安心である。

 その後、シスターのおばさんは頬を赤く染め、子供達も俺たちを新婚さんのように煽った。

 そのおかげでセラリアは冷静になり、俺の首を締めにかかったのだが、いかんせん、セラリアの胸は爆弾級、マシュマロみたいに柔らかく張りがあって高反発、俺の頬は自然と紅くなる。それに気付いたセラリアも赤い髪のように、頬を紅潮させ、肉弾戦闘へと移行するのだった。

 皆が笑い、俺達はコメディのように鬼ごっこをする。 そんな幸せが俺が去るまでの間、ずっと続くと思っていた。

 

 だがそこでーーーーー晴天の世界は歪み、あの日へと姿を変えるのだった。

 

 結論から言うと、間に合ったと言うべきだろうか。

 服は刃物で破られたかのようにボロボロ、頬は叩かれたように赤く腫れ涙で濡れていたセラリアと女の子は先に教会へ帰らせておいた。

 本当は自分が教会まで慰めながら連れて行きたかったのだが、今はやることがある。でも、不安が募っていく。俺はそう思いながら少量の雨が断続的に降り注ぐ森林の地を歩く。俺の視界の先には、逃げ惑う三人の“ネズミ“。肥満の男と坊主頭は下半身を曝け出し、もう一人はナイフを持って走っていた。

 俺の手には、天下五剣の一振り、〝鬼丸〞が抜かれていた。シンプルなデザインの刀だが、とてもよく斬れる名刀、俺の愛刀である。

 天下五剣とは、数ある日本刀の中で室町時代頃より特に名刀といわれた五振の名物の総称。

 俺は一度、ポツポツと雨を降らす灰色の空を見上げる。そして、ゆっくりと逃げ惑う三人の背に視線を向けた時にはもう、 俺の目には殺意しかなかった。

 緊張した状況では、感情を殺すというより現実を遠ざける感覚に近い。俺はただ単純作業のように、力を全身に込める。途端、俺の足元から地面にヒビが走る。逃げ惑う男達にとっては、一瞬だったろう。軍人達は痛みも、後悔も、もう感じることはない、全員揃って首が宙に踊っていた。血の噴水が綺麗な水音を奏でながら湧き上がる。俺は刀を軽く振り、刀身についた血を払う。その後、慣れた手付きで元の鞘にカチンと抜き身を収めた。同時に後ろから誰かの頭のような、何かが落ちて地面を叩いたような鈍い音が聞こえ、その後に三人の身体が地面に倒れ伏した。

 俺の顔は少しばかり生暖かい赤い血で塗られ、そこへさらに雨粒が混ざっていく。

 後ろへ振り返ると、水溜まりが深紅に染まり、首が三つ、身体が三つ散乱していた。

 自分はこれまで明確な殺意を持って人を殺したことはない。実践は何回も経験はしていたが、命まで奪ったことは一度もなかった。実践を知り、人の殺し合いをこれまで何回も見て来たせいか、いざ、人を殺す時、心を押し殺し躊躇なく刀を振るって首を落とすのは、案外簡単だった。

 俺は最後に、赤い鬼火を周囲に顕現させ、死体を火葬する。雨に打たれてもその火は消えない。焼け石に水、もはや、燃え盛る隕石に水ぐらいの差がこの火と雨の間にはあった。俺はその火を見て思う。ここが日本だったら、俺は犯罪者であり、完全犯罪がいとも容易くできてしまうなと。俺は今ごろ自分が途轍もない程の化け物だという認識をした。

 自分は認識し自重しなければならない。でないといつか、人を斬る、人を殺すことに慣れてしまい、自分で気付かないうちに、人を救う医者、救済者側から堕天し、

 

 

 

 ただの殺戮者になってしまうのだから。

 考える事をやめ、殺意に従い人を殺すマシーンの完成だ。

 死体が骨も残さず灰となり土に還ったのを見送った後、俺は顔に付いた返り血を洗い落とすために河川にやって来ていた。岸辺に膝を付けて屈み、少し淀んでしまっている川の水を手ですくい上げ、顔に何回もぶつけて洗う。少し砂利ついていたが、血よりはマシだと我慢した。

 

 ふと俺は思った。

 逃がせば良かったのではないか、と。

 だが、すぐに自分で撤回する。 教会の場所を知られた可能性、人がここにいる事を敵軍に知られた以上、殺すしかないのだ。そのまま、生きて返せば、教会が血の海になることは目に見えていた。

 だから、自分は即断で軍人たちの首を切り落とし、痛みも感じさせず、それがせめてもの優しさだと、刀を振るったのではないか?、そう自問自答をする。

 

 

「人を助けに来たのに………………殺すことになるなんてな」

 

 皮肉げに呟く。

 今頃、襲われた二人は教会で怯えているだろう。こういう時こそ、年齢的にお兄さんである俺が慰めに行かなければならないのに。

 雨に隠れて涙を流し、曇天の空を仰ぐ事しかできなかった。ふと、自分の両手に視線を落とし、立ち上がる。

 血は全く付いていない。でも、確かに罪を着たような赤い血が両手を汚していた。あの時、以来だったと思う。手が赤で埋まるほどに汚れたのは。あの、初めて手術を成功させた時、だけど、今回とその時とでは、汚れた赤い手の持つ意味合いは全く別物だ。

 前回のは、人の命を助けた証、ならば。

 今回浴びた血は人を助けた証ではなくーーーーーー命を奪った証だった。

 思考は真っ白、いや真っ黒というべきだろうか、考える余地さえない。ただ罪に汚れ、涙を流す事しか、自分に許されていないかのように。胸の中にぽかんと穴が開いてしまったようなーーーーーーーー。

 だから、俺はーーーーーー荒れ始めた川に歩み、身を投げてしまったのだろう。

 途中、声が聞こえた気がしたが、振り返る、立ち止まる選択肢はなかった。

 もっと息苦しいと思っていたが、綺麗に瞼を閉じれるほどに安らかに眠れそうだった。

 解放された、“世界との戦い”から、“救世主としての重責”から、ようやく解放される、“もう誰も失いたくない”。これで………終わるんだ。

 俺は意識を閉ざし、流れに身を任せるのだった。

 

 

 意識が完全に回復した時、俺の目に映っていたのは、互いの鼻と鼻がくっ付きそうなくらい近くにあるセラリアの顔だった。

 そして、セラリアの柔らかい唇が俺の口に添えられていた。マウストウマウス、ではない。普通のキスである。

 俺は目が点になるほど驚愕し、セラリアはゆっくりと瞳を開けて、 儚げに揺れる目、頬を少し紅く熱を帯させたような顔を俺に見せてくる。そして今、ようやく岸辺で自分がセラリアに膝枕されているのに気が付いた。

 そんな時、ふと小さな声が耳をくすぐった。

 

「………ヤ」

「……?………セラ」

「イヤ、 ……死んじゃイヤだよ………死んじゃイヤなの………ぅ」

 

 セラリアは言葉にできない思いをなんとか言葉にしようとするかのように声を絞り出し、一変して、涙を流して泣き始める。忍び泣きが嗚咽に変わり、ぽろぽろ涙が零れ落ち、うわづった声を漏らす。セラリアの瞳が悲しみの色で染まり、目がしぼんでいく。

 そんなセラリアの涙が俺の頬を打ち、皮肉にも俺の身体にそれが一番よく効いた。

 虚無感で満たされた虚ろな心に、熱が戻ってくる。

 俺は儚げに笑い、言葉を紡ぐ。

 

 

「…………ありがとう」

「…………あんぽんたん、」

 

 セラリアはしわくちゃな顔で笑う。

 その笑顔を見て、ふいに寂しさを感じた。

 俺は自然とセラリアの頬に右手を添え、優しく撫でる。

 その行動にセラリアは目を見開いて驚くが、すぐに優しい笑顔を浮かべる。俺もそれに釣られるように微笑む。

 俺とセラリアは自然と唇を重ね、今までしてきたキスより、とても深くキスをした。悲しみを分かち合うために。

 濡れた赤い髪を撫でながら、俺はただ、セラリアの温もりを感じていく。セラリアもそれを受け入れるように強く俺を抱きしめ、背中をさすってくれた。

 だが、血の記憶が俺を正常にもどす。

 俺は顔を離して起き上がり、セラリアに背を向けたまま声を掛ける。

 

「…………こんな汚い手で、君にもう触れたくない…………帰ろう」

「イヤだ」

 

 即答かよと、ついツッコミそうになるが堪えて、震える声でセラリアに言う。

 

「ごめん、俺は」

「何も言わなくていいッ!」

「だが、これ以上」

 

 そんな俺の口をセラリアは回り込んで強引に塞ぐ。さっきの俺より積極的に唇を重ね、舌を入れてくる。

 ただ二人は“慰め合いたい”それだけだった。

 だが、俺はこれ以上我慢できそうになかった。………誰よりも君のことを愛してしまう。

 だから、俺は少々手荒く、セラリアの首裏に手刀を入れる。

 

「うっ!……あ……のん………」

「おやすみ、セラリア...............ごめん」

「.........ぃ、や」

 

 セラリアはゆっくりと俺の胸に倒れ込み、俺はそっと抱きしめる。

 それを境に雨は強くなっていく。目を開けるのも辛いほどに。

 俺は優しくセラリアをお姫様抱っこで抱えたまま立ち上がり、教会まで駆け抜けるのだった。

 教会へ帰ると、シスターのお婆さんが屋敷の玄関先で雨宿りしながら待っていた。

 

「…………」

「…………」

 

 会話が起きないまま、お婆さんにセラリアを預け、俺は先にお風呂に入る。

 心も身体も温まり、外見の汚れは落ちていったのだが、血で汚れた手にはあまり意味を成さなかった。

 お風呂から上がり、パジャマを着て洗面所を出ると、

 そこにはーーーーーーセラリアが後ろに両手を隠して俯き立っていた。

 俺は咄嗟に少し肩を揺らすも、重たい空気を押し退けながら静かにその横を通る。

 その時、少しだけセラリアの肩が震えていたように見えたが、俺は見なかったことにし、その場を後にした。

 次の日も、その次の日も、俺達はすれ違っても一切会話をすることは無かった。

 

 

 

 

 

#####

 

 

 

 

 

ーーーー境界壁・舞台区画。大祭本陣営、貴賓室。

 

 

 ジンは貴賓室の扉の前で緊張した面持ちで立ち止まっていた。

 これから、魔王を相手に審議決議をする。そのテーブルには、サンドラ、マンドラの他に、もう二人必要だった。

 その募集にジンは即断で手を上げた。十六夜もこれには目を点にして驚いていた。自分だって過去の自分がこの状況を見たら、息が止まってしまうだろう。だけど、

 

「..................僕がやらなければならないんだ」

 

 ジンは目を瞑り、亜音がサンドラとレティシアに運び込まれた時の ことを思い出す。

 亜音の汗だくになって苦しむ姿は、見ていられなかった。

 悪夢にうなされ、痛めつけられる姿は痛々しい。本来はこれほど早く病にかかることはなかったらしい。だが、かかってしまったのだ。自分たちのせいで。亜音はこれまで 〝ノーネーム〞のためにギリギリの生活をして来てくれたのだ。そんな無茶は本来、リーダーであるジンが止めなければならないことだ。だが、いかんせん、無理しているのに気が付いたのは昨日である。まさに、後悔先に立たず、である。

 その事実にジン、リリは空気を重くした。

 そして、さらに事態は最悪な展開になっていく。

 サラマンドラの医師からーーーーーーーー亜音の余命宣告を受けた。

 おそらく、最初の死亡者は彼であり、四日持てば奇跡だ、と言っていた。何より、呪いの侵攻スピードが異常に早い。一体どうしたら普通の人がここまで精神と身体を同時に弱らせることができるのか、不思議でならない。そして、病に掛かる前、見事に倒れるか、倒れないかの 瀬戸際を保っていた、と医者は告げて、次の患者の所へと向かっていった。

 そして、さらに医者は去り際にこう付け加えた。

「あくまで余命宣告は予想だ、もし彼の体力が尽きたら、もっと短い.....................覚悟はしておいてください」

 

 医者の言葉を聞いたのは、ジンとレティシアのみ、ジンはリリに他 を手伝うように告げておいたのだ。耀とリリの二人で手伝っている だろう。

 ジンとレティシアは、亜音の隔離部屋の前で立ち尽くす。

 このままでは、自分達の不始末のせいで、亜音が死んでしまう。ジンは両手に拳を作り、震えていた。その様子にレティシアも慰めようとは思わなかった。それはもはや逆効果でしかない。

 ジンはそこで、ふと声が聞こえた気がした。いや、その声は過去の記憶からの声だった。

 

『頑張ってくれよ、リーダー?』

 

 その声で、目が覚めた。自分はリーダーなのだ。そして、まだ諦めてはならない。

 亜音は今も死の呪いと戦っている。

 であるならば、自分もリーダーとして戦わなければならない。

 そう決意したから、ジンはここに立っている。

 そして、その扉を開き、ジンは少し大人びた表情で魔王を倒すべく審議決議に参加するのだった。

 

 

 

####

 

 しかし、状況は最悪だった。

 審議決議、開始早々に魔王の不正疑惑を箱庭の中枢に確かめ、疑惑がなかった上に、疑惑を向けたペナルティとしてあちら側に交渉権が渡ってしまう。そして、白黒斑の少女は、さも同然のように告げたのだ。ゲームの再開の日取りを一ヶ月後にすると。

 もし、それが通ってしまえば、亜音だけでなく、全員が死んでしまう。

 その死因は、魔王、白黒斑の少女にあり、少女の名前は〝黒死病〞 なのだ。

 〝黒死病〞とは、十四世紀から始まる寒冷期に大流行した、 人類史上最悪の疫病である。

 この病は敗血症を引き起こし、全身に黒い斑点が浮かんで死亡する。グリム童話の〝ハーメルンの笛吹き〞に現れる道化が斑模様であった事。そして、黒死病が大流行した原因である、ネズミを操る道化であった事。

 この二点から、〝一三○人の子供達は黒死病で亡くなった〞という考察が存在するのだ。

 そこからの問答も魔王側の空気に流されていき、ペストは怪しげな 笑みを浮かべて皆に告げる。

 

「……………此処にいるメンバーと白夜叉。それらが〝グリムグリモワール・ハーメルン〞の傘下に降るなら、他のコミュニティは見逃してあげるわ」

「なっ!?」

 

 サンドラは声を上げて驚く。

 

 「私が捕まえた紅いドレスの子もいい感じですよ、マスター♪」

 

 ペストの隣に座るラッテンが愛嬌たっぷりに言うと、〝ノーネーム 〞のメンバーの顔が強張る。

 人質として飛鳥が捕まってしまっている。交渉材料にしないところを見るに飛鳥がどこのコミュニティに所属しているかはわかっていないようだ。

 

「ならその子も加えて、ゲームは手打ち。参加者全員の命を引き換えなら安いものでしょ?ーーーーー特に、吸血鬼のお仲間さんの男、確 か.........亜音と名乗っていたわ。その人を死なせたくないでしょ、ジン」

 

 微笑を浮かべ、愛らしく小首を傾げるペスト。

 しかし、その笑顔の裏にあるのは真逆の意。従わなければ皆殺しと、この少女は言っているのだ。

 そして、その言葉に黒ウサギと十六夜は怪訝な表情になり、サンド ラは俯くジンを心配そうに見つめる。ジンはまだ二人には教えていない。亜音が余命宣告を受けていることを。

 その事実があるからこそ、ジンはここで引くわけにいかない。

 

「.........これは白夜叉様からの情報ですが、貴女達〝グリムグリモ ワール・ハーメルン〞はもしや、新興のコミュニティではないですか?」

「いきなり、何 、それと答える義理はないわ」

 

 即答だった。

 しかし、それが逆に不自然さを浮き彫りにしてしまう。

 十六夜は亜音のことから思考を切り替え、すぐさま畳みかける。

 

「成程、新興のコミュニティ。優秀な人材に貪欲なのはその為か」

「............」

「おいおい、このタイミングの沈黙は是なり、だぜ?魔王様」

 

 切り口を見つけ、挑発的に笑う。

 ペストは笑みを消し、眉を歪めて二人を睨んだ。

「.........だから何?私達が譲る理由はないわ」

「いいえあります、十分な理由がちゃんと存在します。その理由は.........一か月も時間が経てば、ほぼ全員が死んでしまう、人材は全く手に入りません。貴女達は、優秀な人材を無傷で手に入れたいと思っている筈です。違いますか?」

 

 更にジンは不屈に続けて口を開く。

 

「死んでしまえば手に入らない、だから貴女はこのタイミングで交渉を仕掛けた。実際に三十日が過ぎて、その中で失われる優秀な人材を惜しんだんだ」

 断言して言い切る。

 今回に限ってだが、ジンはこの解答に絶対の自信があった。

 しかし、ペストはそれでもなお憮然と言い返す。

 

「もう一度言うけど、だからなに?私達は最初に再開する日取りを言質した。つまり、今からでも自由に変える権利がある。一か月でなくとも.........二十日。二十日後に再開すれば、病死前の人材を、」

「では、発病したものは全員殺す」

 

 ギョッと全員がマンドラへと視線を向けた。

 その瞳は真剣そのものだ。

 

「例外は認めない。たとえサンドラだろうと、〝箱庭の貴族〞だろうと、この私であろうと殺す。」

 

 絶句する。たとえブラフだとしても過激すぎる発言だ。

 だが、それはナイスプレーでもある。マンドラの言葉だからこそ、その言葉に真意性が宿ったのだ。とはいえそのままそれを適用させると真っ先に亜音が殺されてしまう。ジンは少し焦り始める。

 十六夜は黒ウサギに視線を動かし、問う。

 

「黒ウサギ、ルールの改変はまだ可能か?」

「へ?..は、はい」

 

 黒ウサギは戸惑いながら返事をし、十六夜はペストに笑いかける。

 

「交渉しようぜ、〝黒死斑の魔王〞。俺達はルールに〝自決・同士討ちを禁ずる〞と付け加える。だから、再開を三日後にしろ」

「却下。二十日」

 

 即決を下される。

 しかも、数字は全く変わっていない。

 十六夜の考える理想的な期間は、例の謎解きの事も考えて一週間。

 つまり、ジンは十六夜の後、一人で交渉をしなければならない。できなければ、亜音の死を意味する、それだけだ。

 十六夜は他に交渉出来るモノはないかと見渡し、黒ウサギと目が合 う。

 

「今のゲームだと、黒ウサギの扱いはどうなってるんだ?」

「黒ウサギは大祭の参加者ではありましたが、審判の最中だったので十五日間はゲームに参加出来ない事になっています。.........主催者

側の許可があれば別ですが」

「よし、それだ魔王様。黒ウサギは参加者じゃないから、ゲームで手に入れられない。けど黒ウサギを参加者にすれば手に入る。どうだ?」 「二週間」

「ちょ、ちょっとマスター 〝箱庭の貴族〞に参加許可を与えては........!」

「だって欲しいもの、ウサギさん」

 

 焦るラッテンに素っ気ない一言で返答する。

 黒ウサギを引き合いに出しても二週間が限度。

 だが、これ以上に相手が食い付く交渉道具があるのだろうか。やはり、材料として弱いのだろうか。

 不安が参加者側に広がった時、ここからが、リーダーである自分の仕事だとジンは立ち上がる。その目は不屈の闘志を宿していた。

 

「それなら、もう二つほど、条件を加えます」

「二つ?」

「一つめ、ゲームに期限を付けます。今日をいれて三日後、つまり再開は四日目。ゲーム終了は、その日の夜中の零時。そして、ゲーム終了 と共に主催者の勝利とします」

 

 ゴクリ、と黒ウサギやサンドラ達の息を呑む音が貴賓室に響いた。

 だが、ペストは無表情に言う。

 

「ダメね。最低でも、一週間後」

「だから、もう一つ付け加えます」

 

 この場にいる全員が、ジンの言葉に耳を傾ける。一体、他に何を提示するのか、誰にも予想がつかない。

 ジンは額に汗を滲ませ、唇を噛みしめる。今から言うことは、途轍もなく相手に有利なこと。一歩間違えれば、開始十分で敗北するかもしれない。〝サラマンドラ〞や他のコ ミュニティから恨み言を買うかもしれない、それを考えると余計に怖い、涙が溢れそうになる。緊張と恐怖が心を蝕み、今すぐにでも逃げ出したい。

 でも、ジンは引くことだけはできない。引きたくても引けない。

 ここで亜音を見殺しにするようでは、先代を超えるなど一生無理だ。

 先代はこういう時こそ、命を掛けていく者達だ。しかも、こんな困難な状況に喜んで飛び込んでいく。不屈の精神を持っていた。

 亜音とてそうだ。ずっと苦しくても笑ってきた。

 ジンは震える拳を握りしめーーーーー告げた。

 今度は、僕が亜音さんを助ける番だ!

 

 

「二つ目、我ら〝ノーネーム〞、黒ウサギ、逆廻十六夜、ジン=ラッセル、そして榊原亜音の四名のうち、一人でも降伏または死亡した場合も主催者側の勝利とします」

 

 

 

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