新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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よろしくお願いします。


第二話「出会って数秒で行方不明」

 場所は箱庭2105380外門。ベリベッド通り・噴水広場前。

  亜音のせいで一時、空気が重くなったあと、箱庭についての説明を聞き、あらかた世界の構造とルールを問題児三人と亜音は知ることができた。

 そして、いざ、黒ウサギは皆を引き連れて、

「ジン坊ちゃーん!新しい方達を連れてきましたよー!」

 その声に一人の、小さな体躯に似合わないダボダボなローブを着た幼い少年が反応し、顔をハッとあげる。

 外門前の街道から黒ウサギたちが歩いてきた。

 

「お帰り、黒ウサギ。そちらの“女性二人”が 」

「はいな、こちらの“御四人様”が──────ほぇ?!」

 

 黒ウサギは目を見開き、ギロリ、クルリと振り返る。

 すかさずカチン、と固まる黒ウサギ。リアクションに隙がない、さすがは箱庭の貴族。

 

「ああはははは、おかしいのですよ、えあれ?もう二人いましたよね?!目つきが悪い問題児様と少しよく分からない優しそうな殿方が!」

 

 とそこで、今気づいたようにわざとらしくポンと額に手を当てた飛鳥。

「ああ、十六夜君と亜音君のこと?そういえば十六夜君は〝ちょっと世界の果て見てくるぜ(キラン)〞と言って駆け出して行ったわ、亜音君はそんな十六夜君が去って行くの見て〝一人じゃあ心配だから俺がついて行くよ〞、と言って尾行して行ったわ、あっちの方に」

「亜音いい人」

 

 春日部の呟きを余所に、飛鳥が指を指す方向にある上空四千メートルから見えた断崖絶壁の方向に黒ウサギは視線を移す。

 街道の真ん中で呆然となった黒ウサギは、ウサ耳を逆立てて二人に問いただす。

「亜音さんはともかく、なんで止めてくれなかったのですか!」

「〝止めてくれるなよ(キラン)〞と言われたもの」

「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!」

 

両手を広げて、黒ウサギは猛抗議する。

「〝黒ウサギには言うなよ(キラン)〞と私が言ったから」

「嘘で────って貴方様が言ったのですか!共犯者ですか!!流石にそれは許しが」

 

「全部ウソ」

 

 雷が落ちるとはこのことだろうか。

 ぐぬぬぬ、と少し怒りを露わにするが、怒っても無駄だという結論が黒ウサギの脳内に出てきたので、諦めて身を前のめりに倒した。力が抜けて、抜け殻の屍のように返事はない。

 黒ウサギは脱力し、新たな人材に胸を踊らせていた数時間前の自分を疎ましく思っていた。

 そんな黒ウサギとは対象的に、ジンは蒼白になって叫んだ。

 

「た、大変です 〝世界の果て〞付近には強力なギフトを持った幻獣がいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ちできません。」

「あら それは残念。もう二人はゲームオーバーかしら?」

「ゲーム参加前にゲームオーバー ............斬新?」

「冗談を言っている場合じゃありません!」

 

 ジンは必死に事の重大さを伝えるが、二人は叱られても肩を竦めるだけである。

 黒ウサギはため息を吐きつつ、顔をあげて、立ち上がる。

「はぁ...............ジン坊っちゃん。申し訳ありませんが、御二人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「うん、わかったよ。黒ウサギはどうするの?」

「問題児様と亜音さんを連れて帰ります。事のついでに………ぐぬぬ!〝箱庭の貴族〞と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります」

 

「ねぇ、亜音君は多分...............いえ、やっぱりなんでもないわ」

「ん?」

 

 飛鳥は確証もないことを言おうとしていたことに気が付き、すぐに口を閉ざした。

 その様子に疑問を持った黒ウサギだったが、それどころではないことを思い出し、怒りのオーラを全身から噴出させ、艶のある黒い髪を淡い緋色に染めて行く。

 

「一刻ほどで戻ります。皆さんはゆっくりと箱庭ライフを御堪能くださいませ!」

 

  黒ウサギは踏みしめた地に亀裂を走らせ、全力で跳躍する。そのスピードは何処ぞの青きハリネズミを思わせるほどの弾丸速度で、あっという間に三人の視界から消え去っていった。

 

「...............箱庭の兎は随分と速く跳べるのね。素直に感心するわ」

「ウサギ達は箱庭の創始者の眷属。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限を持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが............」

 

 そう、と飛鳥は空返事をする。飛鳥は心配そうになっているジンに向き直り、

 

「黒ウサギも堪能くださいと言ってたし、御言葉に甘えて先に箱庭に入るとしましょう。エスコートは貴方がしてくださるのかしら?」

「え、あ、はい!コミュニティのリーダーをしているジン・ラッセルで す。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。お二人のお名前は?」

「久遠 飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが」

「春日部耀」

 

 ジンが礼儀正しく自己紹介する。飛鳥と耀はそれに倣って一礼した。

 

「さ、それじゃあ箱庭に入りましょう。まずはそうね。軽い食事でもしながら話を聞かせてくれると嬉しいわ」

 

 飛鳥はジンの手を取ると、胸を踊らせるような笑顔で箱庭の門をくぐるのだった。

 少し後ろに戻って、くぐる前に飛鳥と春日部はヒソヒソとジンに聞こえないように会話をする。

 

「さっき、亜音のこと言おうとしてたけど、それってやっぱり 」

「ええ、黒ウサギのために、十六夜君を追っていったんじゃない、って言おうと思ったけど、確証がないもの、でも、なんとなく亜音君が黒ウサギに対して何か特別な感情を抱いていると思うわ」

「私もそう思う、目にゴミって言ってたけど嘘っぽかったし」

 

 そんな二人に無垢な瞳でジンが問い掛ける。

「何を話しているのですか?」

 

そんなジンに二人は、少し微笑みにやつくと、

 

「まだ、ジン君には早いわ」

「うんうん」

「??」

 

 

 

#######

 

 

 

 

 黒ウサギが疾走する前に戻り、場所は森林。

 緑の木々が生い茂る中を亜音は忍びの如く、枝を次々に飛び移り、 高速で移動していく。

 黒ウサギと同等かそれ以上の速度である。まさに人外の身体能力だった。

 そんな中、亜音は精神内に声をかける。

 

『黒ウサギさんが言っていた、修羅神仏、その中に君も入る?』

『ああ、そうだろうよ』

『なら、この世界には君が昔争ったのもいるってことでいいか 』

『............多分な』

『ていうことは、俺達のとっておきは使えないな.........使ったら一発で居場所ばれちゃうだろうし、この世界で追われる身になるのはごめんだしな、でも時折体は貸すから安心していいよ』

 

 内なる者は、そのセリフに照れ隠しをするかのように舌打ちし、悔しがる。

『ちぇ、会ったらボコボコにしてやろうかと思ったんだがな』

亜音はその態度と言葉を聞き、密かに口角を上げ、微笑む。

『その機会もあるよ、まだ先だけどね』

 

亜音の言葉に不思議そうに、内なる者は呆気に取れて言葉を呟い た。

『止めないのか?』

『止めないよ、純粋な闘いは見るのもやるのも楽しいからな、応援するよ』

『つくづく変わった奴だ、亜音は』

 それにしてもと、亜音は一向に姿が見えない十六夜に感嘆を漏らす。

 なぜなら、自分の移動速度で追いつけないということは、それと同等か、それ以上の速度で十六夜は駆けていることになる。それに上空四千メートルから大した距離に見えなかった、自分達が落下した湖から世界の果てに伸びる街道は、亜音の見方によると、途方もない距離だった。気配も全く感じない。

 木々の枝から飛び降り、亜音は周囲の道を確認する。

 それと同時に周りから、複数の気配が膨れ上がる。

『............コイツらは』

『知り合い?』

 

周囲の森林から聞こえる怪しいうめき声に、亜音は眉一つ動かさず、冷静に見渡す。

 そんな亜音に内なる者は声を掛ける。 ちみもうりょう

 

『こいつらは────魑魅魍魎の一端だ』

 その言葉で、亜音は内なる者の言わんとすることが理解できた。

 なるほど、それなら知っていてもおかしくはないと亜音は納得した。

 とその時、後ろから黒い何かが亜音を覆いつくそうと、襲いかかる。

  亜音は知らないが、大抵、ゲーム参加表明などしてから闘う、襲いかかるのだが、おそらく何も力を持たない、箱庭から力を失って出てきた無力な人間と思われたのだろう。

 純粋な妖怪の餌として標的にされたのだ。

 

『馬鹿が、誰に向かって攻撃しようとしてんだかなぁ、オイ』

 

  蚩尤の言葉と周囲の敵を一瞥した亜音は不敵な笑みを浮かべ、誰も自分に襲いかかって来ないように、実力の差を教えるように、圧倒的な力を解放する───────そして次の瞬間。

 

 ────天を炎の柱が突き刺した。

 

 

細い火柱だが、熱量はその辺のドラゴンが吹く火の比ではない。火だけに。

 なぜなら、細くとも、天に炎を届かせたのだから、地力が半端ではない。

 つまり、箱庭世界の創始者、上層クラスの持つ力、炎を生み出す、いわゆる生み出す側、与える側の力、神の力なのだ。さらに細心の注意で放たれたことがわかるように数メートル周囲の木々に爆風が吹き荒れるだけで、あの火力で周りに一切、火が移ることはなかった。

 完璧に人智の世界を飛び越えた力を、制御し、自分の物としている 何よりの証拠である。

 

『あちゃーだから言わんこっちゃない、しかし、亜音、手加減し過ぎじゃないか?』

 

 何千メートルもの高さを上り詰めた炎の奔流を、内なる者は、簡単に手加減していると吐き捨てた。亜音は炎の竜巻の中心に立ちながら、返事を返す。

 

『手加減しないと、森林が焼け野原になるのに、馬鹿を言うな、それに命を奪う気はない』

『そうかよ...........................わりぃな』

『あはは、 “戦神”が人に頭を下げるなんて、前代未聞だな』

 

 その言葉に、内なる者は猛抗議するべく大声で叫んだ。

 

『馬鹿野郎!お前が人間?、アホ抜かせ!戦神のオレをボコボコにした人間がこの世に居てたまるか ってんだよ!』

『褒め言葉として受け取るよ、さてと』

 

 亜音は意識を周りに戻すと同時に、吹き荒れる炎を一瞬で足元に収縮させ消し去る。

 気炎が手足のように制御されていた。

 先ほどのうめき声は一切ない、気配も全くなくなっていた。ビビっ て逃げ出したようである。内なる者は、亜音が相手では無理もないが、だらしないと吐き捨てた。それに対し、亜音は苦笑するのだった。

 

 そこへ、二つの気配がやってくるのを亜音は感じた。

一つは、木々の茂み、魑魅魍魎がいた場所から、高貴な蹄な音が響いてくる。徐々に音は大きくなり、それと同時に姿も少しずつ比例して見えてきた。

 現れたのは艶のある青白い胴体と額に角を持つ馬、ペガサスやバイコーンなどと並ぶほど有名な馬────ユニコーンと呼ばれる幻獣だった。

『おお こいつは驚いた!聖馬を見られるとは、歴史的瞬間だぜ!亜音』

 内なる者のアゲアゲテンションの声を無視して、もう一つの存在の気配に視線を移す。

 亜音が立つ街道のはるか後方から猛スピードで動く影を亜音は捉える。

 そして、数秒で、その存在は、亜音とユニコーンの中央に跳躍し着陸した。その際、街道にピシッと亀裂が入るが、黒ウサギは気にせず、亜音に迫る。

「十六夜さんは十六夜さんはど、どこですかぁ!、あ、そういえばさっき、炎の柱がこの辺から上がってて、それで、それでわ、私はここにーー!」

『かなりパニックてるぜ?ウサギちゃん..................亜音、正直に 言っていいぞ、参ってるだろ?』

 

目の前の状況は、これまで経験した中でもあまりない状況、困難とかそういうベクトルではなく、比べること自体間違っているにちかい。亜音の専門外な状況なのだ。 だから、亜音は内なる者にこう返す。

『...............参ったわ』

 




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