新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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※長めの前書きです、すいません。

おはようございます、いくよ!です。
これから執筆スピードを上げていきます。よろしくお願いします。
あと章ごとのイメージソングを書いてみました。よかったら、聞いてみてMVをイメージして欲しいです。

亜音キャラクター・ストーリーイメージソング《mysterious》参照先アニメ《名探偵コナン》
        ・イメージラブソング《HOME》と《YES》歌:CHIRO
飛鳥キャラクター・ストーリーイメージソング《LEVEL5-judgelight》
(いつか、とある魔術で問題児達のキャラクターを混ぜて別小説やっていきたい)理由は飛鳥が絶対カッコいいからぁ!!(ジャッジメントよ!大人しくお縄につきなさい、この下郎供!)

第一章・オープニングテーマ《ASTERISK》参照先アニメ《BLEACH》
    オープニングテーマ《Black†White》参照先アニメ《問題児達たちが異世界から来るそうですよ?》
第一章・エンディングテーマ《NO MORE CRY》
第二章・オープニングテーマ《-Autonomy-》参照先アニメ《東京レイヴンズ》
   ・オープニングテーマ(対ブリュンヒルデ)《The Beginning》

   ・激闘~亜音の叫び劇中曲《M》Classicalバージョン

第二章・エンディングテーマ《夜に駆ける》
   ・エンディングテーマ《ONE》参照先アニメ《劇場版名探偵コナン》
   ・エンディングテーマ《always》参照先アニメ《劇場版名探偵コナン》

第三章・オープニングテーマ《桜》歌:FIRE DOG 69
   ・オープニングテーマ《ALONES》参照先アニメ《BLEACH》
   ・オープニングテーマ《courage》参照先アニメ《ソード・アート・オンライン》
   ・オープニングテーマ《青い未来》参照先アニメ《ブルードラゴン》

   ・激闘・戦争イメージソング《database》参照先アニメ《ログ・ホライズン》
   ・狼と吸血鬼の宿命《Tell me》参照先アニメ《Fate》
   ・激闘・戦争イメージソング《Meteor-ミーティア-》参照先アニメ《ガンダムSEED DESTINY》
   ・ゲーム終了・レティシア《Dragon night》オーケストラバージョン
   ・戦争の終結後イメージソング《Wings of Courage - 空を超えて》piano ver

第三章・エンディングテーマ《Reason》参照先アニメ《ガンダムSEED DESTINY》
   ・エンディングテーマ《Blizzard》歌:三浦大知
   ・エンディングテーマ《inside you》歌:milet

第四章・オープニングテーマ《paradise》歌:AAA

あくまで自分のイメージとBGMなので、スルーでも構いません。自分の好きな曲で聴きながら見てもらってもいいかもです。
四章以降でアジさんまでの打倒までもほぼプロットはできており、ラストエンブリオ編は迷っています。
あと、この作品を見て思い付いたおすすめの劇中歌や、聞いていた曲などがあれば教えてほしいです。
ご感想、アドバイスお待ちしてます!!


第一話「南の奇跡、その名は〝アンダーウッド”」

 数日後の夜。

 収穫祭─────詳しくいえば、収穫祭の日程の内の、前夜祭日程を賭けた戦いが人間の、本来小さくて儚いはずのその身に余る、大きな奇跡を宿した問題児達によって行われ、結果。

 湯気が溢れるこの場所、〝ノーネーム〞本拠地のお風呂、温泉と言ってもいいほど広い場所。そこに、普通ではあり得ない絵面が広がっていて、異世界ならではだろうーーと、これを見た者達に嫉妬させるのは間違いない。

 なぜなら、その絵面とはーー狐娘のリリの髪を十六夜が洗い、湯船にはレティシアが『極楽だな〜』と呟きながら浸かっており、少し離れた湯船では亜音が呆れ顔で十六夜を見つめているという、言わば混浴状態である。しかも、レティシアは絶賛大人version。湯船に漂う金色の髪はまさに─────神秘と呼ぶべきほどに美しい。

 

「…………」

 

 亜音は視線を十六夜からレティシアへ移し、レティシアというよりかはレティシアの髪を見つめていた。そして、いつの間にか、目を奪われ、時間を忘れるほどにその煌めきに引き込まれていた。その様子に気付いたレティシアが何やら得意げな笑みを浮かべて、亜音に声を掛ける。

 

「どうかしたのか?亜音殿。私の髪に何かついてるのか?それとも?」

「いや、なんでもない」

 

 亜音はレティシアの思考を感じ取ったのか、即座に素っ気なく返して視線を水面下に移す。レティシアはというと亜音にいじりの出鼻を挫かれ、苦笑いしていた。そのせいでこの二人の間に微妙な空気が 漂い始める。数日前のやりとりが少し尾を引いている、いや亜音にとってはその方が都合が良い具合だ。

 

(“レティシアと混浴”になったのは十六夜の差し向け、か?それともただの探究心か、まぁ乗ってやる義理はないな)

 

 誰もいない方に向いて、亜音はため息をする。

 そこへ、リリの髪を洗い終わったのか、十六夜とリリがやってきて湯船に浸かり始める。

 そして十六夜は、ん?、とすぐにレティシアと亜音の微妙の空気感を悟り、話題を提供しようとしたが、意外にも亜音によってそれは防がれる形となった。

 

「それにしても、よくこの短期間で“レギオンマスター”の権利を、しかも名無しのままでもらえるとは、それに加えて東区画下層の無償での水源確保ーーーーー何処の政治家だって話だよ」

「…………まぁ、白夜叉が居なきゃできねーことだったがな」

 

  珍しく謙遜する十六夜。

 そんな十六夜にレティシアは小さく笑みを浮かべつつ、口を開く。

 

「いやいや、たとえ白夜叉殿の力添えが有ったとしてもだ、主殿の功績であるのは間違いないのだ。謙遜なんてらしくないと思うぞ」

「なら、ここは素直に皆さんからの賛辞をお受けしておきますかね.........フゥー」

 

 十六夜は首まで湯船に浸かり、嘆息を気持ち良さそうに零す。

 この様子とこの会話からもうわかるだろうが、問題児達の戦い、前夜祭を賭けた戦いは十六夜の圧勝という形で幕を閉じた。

 順位は、上から十六夜、春日部、飛鳥、そして亜音。一応、亜音も〝ノーネーム 〞のためにゲームに参加していたのだ。

 ちなみに亜音は、ノーネームの生活費、二ヶ月分の金貨である。我ながら地味な戦果だったと、亜音は今思い出しても、天を仰ぎたくなる気分だった。なにせここだけの話、あまり褒められた方法をとっていなく、理由は初めてサウザンドアイズを訪れた時の揉め事で、亜音だけの悪評が広まり、かつその後のニュンペー達の事件を階層支配者の代わりに解決したこともかなり影響していた。だから、わざとギフトゲームを連敗し、カモでカモ釣りをした……………なんて真実は亜音の記憶にはもう残っていなかった。とはいえ相手もホストとしてギフトゲームを開催するだけでもメリットを受けているのだ…………許せ。

 一方の飛鳥は家畜など、農園に関する戦果。長い目で見ればノーネームにとっては相当助かる戦果である。そして、耀はさらにその上をいく、大きな戦果を上げた。その戦果とは、〝ウィル・オ・ウィスプ〞が主催したギフトゲー ムの目玉景品、外界とは違って文明が遅れている箱庭において超高級品と言っても過言ではない、なんと─────炎を蓄積することのできる巨大キャンドルホルダーを、“無償”で手に入れたのだ。毎日、金庫と睨 めっこしているノーネームにとって、いや普通のコミュニティでも喉から手が出るほど欲しいものだろう。耀もこれを披露した時は、自信満々の笑みを浮かべていた。

 亜音は午前を別のことで費やしていたのが少し響いたのかもしれないが、それでも女性陣の頑張りに、後ろめたさというものを少々感じ、お披露目会では終始無言、空気に徹していた。

 だが、そんな女性陣の頑張りと目を見張る成果を、十六夜はレベルの違う思考力を発揮して打ち砕いた。その成果というのが簡単に略すと─────地域支配者の権利を名無しであるノーネームに授与されたのだ。しかし、十六夜のした事はごく簡単なことである。水源の確保としてトリトニスの滝の主、水神様こと『白雪姫』を隷属させ、白夜叉の元へ連れてきただけの話。だがそのおかげで、東区画の下層に無償で水が手に入る施設の建築計画が確立し、ノーネームとジンの名はまたさらに多売れすることだろう。そんな功績をもつノーネームはもはや一コミュニティにしておくのは逆におかしな話、なので、外門利権証の契約書類と共に地域のリーダーとなったというわけである。ちなみに、外門利権証があれば〝境界門〞をただで使用する事ができ、他のコミュニティの使用料の八○%を納める事ができる。これには黒ウサギも大喜びし、亜音は内なる者、蚩尤に今の今までいじられ続けるのだった。

 

「はぁー…………」

 

 いろいろな方面の苦労を受け止めきれないように、思わず大きな嘆息をこぼしてしまう。

 そんな凡ミスのようなやらかしのせいで、いらぬお気遣いが生まれてしまった。

 レティシアが優しげな笑みを浮かべて亜音に声を掛ける。

 

「そう落ち込むことはないと思うぞ、亜音。 人には得意分野というものがあって、主殿が少し悪知ーーーおっと、裏の知略に優れていたのであってな」

「おいおい、我がメイドさん。 主の扱いひどくねぇか?」

「む...............そうだったか ?私の中ではお褒めの言葉なのだが」

「あくまで正義と謳うかーーーーなら、メイドの教育として罰が必要だなー 手始めに………まずはそのタオルを」

 

 十六夜は横目でレティシアを見ながら鋭くギラつかせる。レティシアも『主がそう言うのではあれば』と悪ノリし始める。

 そんな二人 をリリは可愛い声を慌てて上げて止めていた。

 その光景を亜音は遠目で見つめながら、ふと黒ウサギが会議で泣き喚いたことを思い出す。

 レティシアにフォローしてくれと頼まれていたはずの亜音だったが、結局はしなかった。する必要がなかったのも主な理由で、フォローするよりこれぐらい心の距離があった方が縁を切りやすいと判断したのだ。これぐらいというのが亜音の中でも曖昧ではあるが、少 なくとも亜音の中では皆のことを〝協力者〞と認識している。友達でも仲間でも…………“同志”でもない、ただ放っておけないレベルだっただけで亜音はここにいるのだ。─────誰に言われるまでもない、この世界でも自分は………わかっているのだ、そんなことはな。

 故に十六夜や飛鳥、耀が頑張れば頑張るほど─────別れが早くなる。なんともまぁ、寂しい反比例と亜音は思うと─────。

 

「.....................フッ」

 

  亜音から小さな笑いが漏れた。

 その笑いが少し卑屈で悲しそうに見えたのは気のせいだろうか、レティシアと十六夜は密かに観察しながらも、亜音を少しも理解することはできなかった。とそこで、レティシアはふと疑問を抱く、というより興味を抱いた。

 

 

「ん?…………そういえば主殿と亜音は…………故郷ではどのような生活をしていたんだ 」

 

 

「いきなりだなぁ………まぁ、俺は別にいいが………」

 

 少し戸惑い不思議がる十六夜はふと亜音に視線を移す。

 

「…………」

 

 亜音は沈黙し、レティシアも十六夜に習って亜音に視線を移して、 ハッと気が付く。レティシアと十六夜の視線は亜音の肉体、肩や首の後ろなどに固定され、意識も固まった。亜音の過去は亜音の体を見れば大体は予想できる。なぜならその肉体には数えきれない程の過去の名残である傷跡があり、茨だらけの森林を通ってきたように刻み込まれているのだから。リリも最初はそれを見ただけで怯えたのだから、その傷の詳細はさらに深い闇だろう。亜音は少しその傷跡を見つめたまま静かに思考し始め、タオルを腰に巻いたまま立ち上がった。そのままの足で更衣室の方へ歩いて行く。

 その様子にレティシアと十六夜はやらかした感を味わうが、それは杞憂に終わった。

 亜音は更衣室に向かう戸に手を掛けながら、

 

「とりあえず、上がってから話そうか。 俺も十六夜さんの過去、気になるからさ」

 

 そう言って笑顔を浮かべたまま亜音は風呂を後にし、レティシアはホッと息を付くのだった。

 だがこの後、また新たな問題が浮上することになった。

 

 

 

 

######

 

「はぁー…………」

 

 

 耀は自室で一人、ため息を吐く。正確には一人ではなく、耀の眼下、 腕の中に心配そうに耀を見つめる三毛猫がいた。

 そして、ため息の原因は十六夜に負けてしまったことであり、今回のゲームでの成果は飛鳥と二人でとってきたもので、いわゆるズルをしてでも勝ちにきていたからだ。もちろん、飛鳥と協力したことは飛鳥以外には内緒である。だが、それでも負けてしまったのだ。

 卑屈になりそうな自分が怖い、いやもう遅いかと耀は天井を仰ぐ。

 今回の戦いはビリだけが前夜祭に行けないので、耀は二位も辞退していた。理由は明白、飛鳥に手伝ってもらっておいて十六夜に敗北した、そんな自分が飛鳥を差し置いて前夜祭に参加するのは飛鳥の友達としてしたくはない。でも行きたかった、とそう思った時、窓際からやや肌寒い風が吹き込み、ヒュゥと耀の頬を静かに撫でる。

 

「─────十六夜は凄いよ。水不足を解決したり、レティシアを助けたり。魔王の謎を解いた時も、私はただ病室で寝てるだけだった」

 

 だから、仕方ないーーーーそう自分を納得させる、納得していない納得しようとしない自分を。

  耀は小さく笑い、満天の星空を見上げる。気分を変えようと思ってそうしたのだが、皮肉にも星空で一番輝いていたのは、十六夜の月だった。

 今回、耀は土壌の復興に向けて、十六夜によって水が供給され、飛鳥と亜音が育んだ土地、そこへ自分が苗を用意し、農園は四人で作ったことにしたかったからゲームに勝ちたかった。プラス、これまで耀自身、コミュニティの主力としてなんにも成果をあげられていない。だから、魔王と戦うための力、南の地で多くの出会いをしたくて、十六夜に勝ちたかった。

 こんなにも十六夜に嫉妬してしまう自分が嫌で嫌で仕方がないの に。

 

「十六夜と飛鳥…………亜音は凄いね」

 

 口に出してしまった。

 それと今回、亜音は目立った成績を上げてはいなかったが、それは仕方ないことであり、いつも午前中は別の用事で本拠にはいないのだ。それに亜音も十六夜とは別の理由により下層でのゲームが禁止されているのにも関わらず、あれほどの大金をかき集めてきた。しかも、誰の手も借りずに。白夜叉や黒ウサギ、ジン達に相談は一切していない。

 十六夜は感嘆するような凄さがあるが、比べて亜音は─────目に入れていると“格の差”を思い知らされるような、未来が暗くなるイメージばかり出てくる、そんな強大さ、異質、耀の動物的感覚でいえば、十六夜の凄さが人類的だとしたら、亜音の凄さは“自然界”の規模を彷彿させる。そう─────亜音は間違いなく“世界に選ばれた人間”だ。

 あの時もそうだ、ブリュンヒルデとの戦いも亜音が負けるイメージが出てこなかったのだ。結果的には負けてしまったが、それでもなお、あの亜音がもう負けるわけがない、断言できてしまう。未だに亜音の全開を見たことはないが、全開をイメージした時、やはり“大海”に身を投げるような感覚になる。

 身近に迫る巨大な存在、だからこそ余計、少女の心は曇ってしまっていく。

 耀は視線を落とし、静寂が支配する部屋で儚げに呟く。

 

 

「私は...............ほんと弱い.......」

 

 

 三毛猫は耀の瞳が少し揺れているように見えた。

 そして、耀は夜空に映える星と月を眺め、結論を吐いた。

 

「今の関係を維持する力が、私には─────ないなぁ」

『...............お嬢』

 

 三毛猫は掛ける言葉が見つからず、ただ耀の手に優しく擦り寄る。

 耀もそれに応えるように顎の下を撫でてやる。耀はそのまま両手で抱え、膝ごと抱きしめるように丸くなった。まるで、自分の感情を無理矢理抑え込むように。

 その腕の中で三毛猫は自分の生涯、最後の一仕事を果たすことを決意した。

 少し経った後こっそりと寝室を抜け出し、悠々と十六夜のあるブツを咥えて脱衣所を後にし、一仕事を終えるのだった。

 

 

 

 

######

 

 

 

 

 その翌朝、十六夜は南の地へ行く事をやめた。そして、十六夜の代わりに耀が前夜祭に行く事になった。

 理由は昨夜、四人の戦果を労う軽いお祝いの席を設けた後、十六夜とレティシア、亜音とリリの四人が風呂に入っている間に十六夜のトレードマークであるヘッドフォンが脱衣所より何処かへ消えてしまったからで、子供達も総動員させて夜通し探したのだが、本拠のどこにも見当たらなかった。なので前夜祭に向かう耀、飛鳥、黒ウサギとジンを見送った後、太陽が近くに感じられ始めた時間帯、農園地に休憩所が建設される予定 の場所にある、白いテーブルセットに十六夜と亜音、レティシアの三人は集っていた。

 

「それにしても本当にいいのか?ヘッドフォンなら自分達が」

「いや、いい。これだけ探して見つからないなら、隠した奴にしか分からない場所にあるんだろうよ」

 

  十六夜は肩を竦めて飄々と語り、レティシアは手提げ鞄よりティー セットを取り出しながら、顔を少し曇らせる。

 

「ならば、なおのこと前夜祭に行ったほうが良いのではないか?」

「それとも」

 

  ん 、とレティシアと十六夜は突然、口調を強めた亜音に向き直り、亜音は少し笑う。

 

「本当はもう犯人の目星はついていて、犯人の意図を汲んであげたのかな?」

「そ、そうなのか、主殿?」

 

 レティシアはつい反射で戸惑いを出しながら疑問の声を上げる。

 ノーネームの先輩としてもそうだが、メイドとしてもあまり動揺を皆に見せたくない、 今までも見せてこなかったレティシアだったが、しかし今回の事はどうしようもなく仕方ない事だろう。なぜならもし、亜音の言うとおり十六夜が犯人の意図を十六夜なりの“優しさ”を発揮して汲んでいたとしたら、犯人はもはや片手で数えられる人数に絞られ、つまりそれは犯人が〝ノーネーム〞の誰かという事になってしまう

 それは長年、〝ノーネーム〞に所属していたレ ティシアにとって驚くよりも、とても─────とても“悲しい現実”だ。

 十六夜は横目で暗い雰囲気を漂わすレティシアを一瞥し、そこから 亜音に向き直り、軽く頭を振りつつ、口を開く。

 

「犯人が分かってたならここにはいねーさ。それに春日部の方が前夜祭を有意義に過ごせるだろうしな、ヘッドフォンは単なるきっかけに過ぎねーよ」

「そっか、それは残念」

 

  亜音は両手を広げてふざけた様に言い、十六夜もクックと小さく笑う。そんな二人のやり取りにレティシアは不思議そうに小首を傾げたら、お茶請けの用意をし終わり、二人と同じ様に席についた。

 そして、そこからの話は自然と、桁外れの奇跡をその身に宿した二人、亜音と十六夜の過去へと移り変わるのだった。 

 

 

 

#####

 

 

 

 

 ーーーーー七七五九一七五外門〝アンダーウッドの大瀑布〞フィル・ボルグの丘陵。

 

 東の二一○五三八○外門にある境界門を通った黒ウサギ、飛鳥、耀、 ジンの一行を最初に出迎えたアクションは、

 

「わっ…………!」

「きゃ……っ!」

 

 ビュゥ、と丘陵に吹き込んだ冷たい風は耀と飛鳥に軽い悲鳴を上げさせる。

 多分に水を含んだ風に驚きながらも、吹き抜けた先に広がっ ていた景色に二人は思わず、我を忘れて息を飲んだ。その風景はまさに─────大自然の栄華だった。

 ここにくるまでーーー外門を通る瞬間、数秒前まで一同は十六夜の事が心配で、気がかりだった。なにせ十六夜は極楽主義の超問題児であり、さらに外門利権証まで手に入れて勝ち取った前夜祭日程を、ヘッドフォンがなくなったくらいで簡単に譲ってしまったのだ。つまり、それはあのヘッドフォンが少なからず他の物にはない特別な事情が絡んでいるということになる。耀もペンダントを大事にしているので、その事に同調していた。だから、二人は余計に心配だったらしいのだが、その心配は大自然の前では─────。

「す............凄い なんて巨大な水樹......!」

 

 丘陵より眼下を見下ろすとーーーーまたもや驚かされる。樹の根が網目模様に張り巡らされた地下都市と、清涼とした飛沫の舞う水舞台だった。

 遠目でも確認できるほどに巨躯な水樹は、トリトニスの大滝に通じる河川を跨ぐ形で聳え、数多に枝分かれした太い幹から滝のような豪水を景気良く吐いている。

 

「飛鳥、下!水樹から流れた滝の先に、水晶の水路がある!」

 

 耀は今まで出した事もないような歓声で飛鳥の袖を引く。今まで出した事もない………それは当然の事だろう、なにせここは元の世界とは かけ離れた奇跡をもつ異世界なのだから。その象徴に遥か空の上には、鹿の角を生やした鳥が何十羽と飛んでいった。まず間違いなく、 幻獣の類だろう。耀は神秘の宝物たちを前に、子供のように目を輝かせて右往左往していた。ちなみに、耀の言っていた水路は、巨軀の水樹から溢れた水が幹を通して都市へと落下したその先に存在し、華やかな水晶で彩られ、その水路を通過して街中を勢いよく駆け廻っている。大樹 の根が網目模様に地下都市を覆い、その隙間を縫うように作られた水路は、加工された翠色の水晶で出来ている。巨軀の水樹と、河川の隣を掘り下げられて作られた地下都市。

 これらを総じて〝アンダーウッド〞と呼ばれているのだ。

 耀がはしゃぎ、飛鳥が水路の水晶に『北側で............確か』と、デジャヴを感じていたその時、少し乱暴な旋風と共に懐かしき声が、詳しく言えば、動物の声が分かる耀と黒ウサギにとって懐かしい声がその場に掛けられる。

 

『友よ、待っていたぞ。ようこそ我が故郷へ』

 

 巨大な翼で激しく旋風を巻き上げて現れたのは、〝サウザンドアイ ズ〞のグリフォンだった。なんでも今回の収穫祭には〝サウザンド アイズ〞も関与しているらしく、その護衛でグリフォンはやってきていたのだ。そこからは言わずもがな、ここからは少し距離がある〝アンダー ウッド〞までグリフォンが四人を運んでくれた。ちなみに途中、ジンが宙ぶらりんに、三毛猫が可愛くそして醜く歯茎を見せて叫んでいた事はまた後日十六夜の笑いネタとなることだろう。そして、これはおまけだが、先ほど遥か空の上に飛んでいた、鹿の角を生やした鳥、幻獣はペリュドンと呼ばれ、 何処ぞの神が先天性の呪い、『人を殺せば本来の自分の影を取り戻せる』、つまりはペリュドンは己とは全く別の、異形な影を持っており、それを治すには人を殺すしかないのだ。そのペリュドン達は元は外来種らしく、かの伝説の大陸、アトラン ティスより来たとされている。そして、そのさらにおまけでは、何処かの箱庭上層には、水の都アトランティスと称される場所が存在すると、グリフォンは風の噂で聞いたと言っていた。その水の都では、すべての海の生物が生存するという伝説まで存在しているらしい。

 まさに伝説の─────水の都である。

 

『では、また後ほど。耀達は〝アンダーウッド〞を楽しんで行ってくれ』

 

 そう言い残しつつ頼もしい姿を魅せるグリフォンこと、グリーを見送った後、すぐさま新たな知人の声が黒ウサギ達御一行に掛かった。

 その者達は見た瞬間、愉快という言葉が浮き上がるほど愉快な者達、 〝ウィル・オ・ウィスプ〞の道化カボチャことジャックと、小悪魔ツ インテールの少女、正確には小悪魔ではなく地精霊のアーシャであった。そんな彼らを加え、一段と賑やかになったパーティーは、荷物を宿舎に置いてから地下都市を登り、大樹の中心に位置する収穫祭本陣営まで足を運ぶのだった。

 その先で彼らを出迎えたのは視界を丸ごと遮る大樹、そして七つの旗。

 黒ウサギ曰く、真ん中に鎮座しているのが連盟旗であり、他の六つ の旗が本来のコミュニティの旗らしい。

 その六つのコミュニティの名は─────〝一本角〞、〝二翼〞、〝三本の尾”、〝四本足〞、〝五爪〞、〝六本傷〞。

 

 そして、それらを総じて─────〝龍角を持つ鷲獅子〞、の連盟旗を掲げる連盟の名である。

 この箱庭において連盟が利点と意味なす主な理由は、天災と言わしめる魔王に対抗するためであり、連盟加入コミュニティならば、魔王とのギフトゲームにお互いに介入することができるのだ。とはいえ、 勝算がなければ介入はしないらしく、ちょっとした気休めである。

 そして、最後に彼らを出迎えたのが─────〝一本角〞の新頭首にして、〝龍角を持つ鷲獅子〞の議長、サンドラの実の姉である存在でサンドラと同じ赤い髪を長く涼しげに靡かせ、健康的な褐色の肌をセクシーかつ大胆に露出し、踊り子のような衣装を着こなす彼女は、強い意思を感じさせる瞳で皆を一瞥し、サンドラよりも長く立派に生え育った二本の龍角が彼女の、亜龍としての実力を猛々しく物語っていた。

 だが、彼女の─────『サラ・ドルトレイク』の覇気は最後の会話で台無しとなった。

 北側の技術を流出させた疑いが彼女から晴れた後、彼女は持ち前の気品と気遣いで、

 

「立ち話も何だ。皆、中に入れ。茶の一つも淹れよう─────」

 

 手招きしながら本陣の中へ消えゆくサラを追いかけようとした〝 ノーネーム〞一同とジャックとアーシャだったが、そこでサラがふと足を止め、疑問を投げたのだ。

 

「そういえば─────」

 

 サラは誰かを探すように皆を一瞥していき、そんなサラを皆は小首を傾げで様子を伺い─────サラは吐露する。

 

 

 

「『白夜叉を打倒して土下座させた〝ノーネーム〞の貴族(クレーマー)』と噂される御仁は来ていないのか?一度お会いしたかったのだが、ざん───」

 

 

 

 言わずもがな─────〝ノーネーム〞一同一人も残さず一斉に吹いたことは当然のことだろう。あの亜音がクレーマーとは、タチの悪いジョークだ。本人にとってだけは。

 ジンですら後で使ったことのない筋肉を使った後遺症で腹を痛めていたらしい。そして、ノーネームの、無法者の貴族と称されるその御仁は、サラの言葉を聞いてきっと真面目にこう返すだろう─────『心外だ』と。

 サラと亜音が顔を合わせるのが楽しみになった、そう顔に書いたように飛鳥と耀は笑いを噛みしめるのだった。

 

 

 

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