新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ 作:行くよ!!!!
遅くなりました!
よろしくお願いします。
地球育ちの青少年は困っていた。
目の前に存在するパニック状態のうさ耳少女(どこを見ても変なところを見ていると思われそうな服装のバニーガールもどき)をどう落ち着かせたものか、悩ましい限りだが、あまりユニコーンを待たせるわけにもいかない。
という事で、至って簡潔に言った。
「火柱は俺がやった十六夜さんとはまだ合流してないそれと十六夜さんは絶対に大丈夫だ、だから頼む…………泣かないでくれ」
『ぎゃあっはははは 、こりゃあ傑作!!笑えるぜ!』
亜音は外ではなく内でため息をつき、黒ウサギが気づいていないであろう存在を彼女に教える。
「ぅうう、」
「黒ウサギ、後ろにユニコーンいるよ」
「へ 」
それを聞くと今気づいたかのように、顔をあげ振り向く。すると、驚天動地のリアクションをしながら、声をあげた。
「…………これはまた!ユニコーンとは珍しいお方が !〝一本角〞の コミュニティは南側のはずなのですが 、気付くのが遅れてしまい申し訳ございません」
『いえ、気にしないで下さい。あとそれはこちらの台詞です。箱庭の東側で兎を見ることなど、コミュニティの公式ゲームの時ぐらいだと 思っていましたよーーーーと、お互いの詮索はさておき。あなた方の探す少年が私の想像通りならば、私の目指す方向と同じです。森の住 人曰く、彼は水神の眷属にゲームを挑んだそうですから』
「うわお」
黒ウサギは立ち眩み、そのままガックリと膝を折った。
その姿を見て、亜音はドンマイとしか言いようがないなと思うが、この場合、逆効果になりそうなので、沈黙を選ぶ。
黒ウサギの知識、〝世界の果て〞と呼ばれる断崖絶壁には箱庭の世界を八つに分かつ大河の終着点、トリトニスの大滝がある。現在その浜辺に住む水神の眷属といえば龍か蛇神のいずれかしかない。ただの“人”が紛争地域に突っ込んだ、と言われたら、それは慌ててしまっても仕方がないだろう。
「本当に...............本当に............なんて問題児様..........!」
亜音は今の黒ウサギが痛々しくて見ていられず視線を横にずらし、 頭を抱える。そして、亜音の精神内では、
『ぎゃあっはははは!』
これも頭を抱える原因の一つだった。図太い声の大笑いは直接頭に響くから、流石に堪える。空を仰ぎたい気分なのだが、黒ウサギの手前それさえもできなかった。
泣き崩れる黒ウサギにユニコーンは喝を入れる。
『泣いている暇はないぞ。少年が君たちの知人ならば急いだ方がいい。ここの水神のゲームは人を選ぶ。今ならばまだ間に合うかもしれない。背に乗りたまえ』
「は、はいーーーーわわ、」
黒ウサギが背に跨ろうとした、その時だった。
突如、広大な大地を揺らす地響きが森全体に響き渡ったのだ。すかさず、大河の方角を見ると、彼方には肉眼で確認できるほどの巨大な 水柱が幾つも立ち上がっている。
それは通常のゲームが行われているのなら、あり得ない現象であった。
「...............すいません、やっぱり黒ウサギ一人で向かった方がよさそうです」
そこで、亜音は疑問を抱く、俺は?と。
しかし、そんなことは雑草のごとく、話が進んで行く。
『むぅ...............乙女を一人で危地にやるのは気が進まないが ............私では不足かい?』
亜音は心の中で、呟く。
(わざとか、わざとなのか?)
「いえ、もしもの場合に貴方様を巻き込んでしまう可能性があります。それに失礼ですが、駆け足も黒ウサギの方が速いのですよ、お気持ちだけいただきます。」
ユニコーンはそれに対して苦笑いしながら、数歩下がる。
もはや、亜音は黒ウサギの後ろで影となっていた。
『気を付けて。君の問題児君にもよろしく』
黒ウサギは頷くと、緊張した表情のままトリトニス大河を目指して 走り出す。躊躇なく、亜音を置いて。彼女の姿は瞬く間に遠くなる。風を追い抜き、木々をしならせ、光の如く森を駆け抜けて行く。
亜音は意識をブラックアウトさせたい気分になる。
だが、それと同時に自分に言い聞かせる。
(黒ウサギさんはあの子じゃない、それは分かっていたことだろ)
『普通に置いていったな、亜音のこと。.........一回しばくか?』
『冗談でもそんなこと言うんじゃない、黒ウサギさんだって必死なんだから。それも人の命が関わってくるとなると尚更、周りが見えなくるもんだよ』
亜音は少し深呼吸をすると、黒ウサギが去った方向に目をやっているユニコーンに声を掛けた。
「人語、分かるか?」
『ああ、分かるが、それはこちらの台詞だ、貴方は』
「分かるよ、さっきの会話も理解してたしな」
『っ そうなんですか、なら聞きたいのですが、あの炎の恩恵は一体』
その問いに答えるか、しばし、亜音は思考する。この世界も元の世界もそうだが、持ち札を晒すのは、自殺行為に等しい。弱点をついて、と言ってるようなものだ。
「内緒だ、でも、ヒントはーーー俺はある仏の眷属だ」
『仏の神、ですか、仏は多いですからね、日本神話も一部仏教が定着して仏の分類に入っていますし、多すぎてわかりません。ですが、貴方
は先ほどの箱庭の眷属と同等以上の力を持つということですか 』
「さあな、黒ウサギの実力はそこまで知らないからな、わかんないよ」
黒ウサギとあの子が別人ならば、今日黒ウサギと会ったばかりの自分に何もわかるわけがない、そう心の内で吐き捨てる。
亜音は少しユ ニコーンから視線を逸らして、空気を吐く。
『............そうですか』
とそこで亜音は、先ほど黒ウサギが駆けて行った方向に踵を返し、ユニコーンに声を掛ける。
「じゃあ、俺は行くよ、またね」
『また会いましょう』
黒ウサギと同様にすべてを風塵で薙ぎ払うかの如く、疾風が街道を駆け抜ける。
大気を突き抜ける度に、黒髪は激しく揺れ、地を踏みしめる度に亀裂が走った。
そんなこと我関せずに突き進み、眼前が開け、僅か数瞬で森を抜けて大河の岸辺に出た。
その瞬間、一つの雄叫びが響き渡った。
『まだ............まだ試練は終わってないぞ、小僧ォオオ!!』
その声の主は、身の丈三十尺強はある巨躯の大蛇だった。
それが何者か問う必要はないだろう。間違いなくこの一帯を仕切る水神だ。一目で強者、上位の存在とわかる。
「お 亜音、ずいぶん遅かったじゃねぇか」
「え、亜音さん?ああああ!」
「ええ、まぁ、黒ウサギさんに普通に無視されて置いていかれたショックを胸にゆっくり走ってきましたよ」
自虐的なことを優しそうな亜音が満遍な笑みで言ったので、黒ウサギはうさ耳を小刻みに震えさせ、十六夜はそんな彼女にヒソヒソと問う。
「黒ウサギ、お前、何したんだよ 」
「あ、いえ、そ、それはですねー つい必死に」
三人はこの状況で普通に会話をする。神の眷属を前にしてその態度、蛇神のこめかみに青筋が立つ。
『我を舐めるのも大概にしろォ 人間共ォ 』
水神の大蛇は空を仰ぎ、雄叫びをあげる。すると、大蛇の眼前に風で巻き上がった水でできた水柱が立ち上る。
黒ウサギと亜音が周囲を見れば、戦いの傷跡とみてとれる捻じ切れた木々があちらこちらに散乱していた。
なるほど、あの水流に巻き込まれたら、こうなるのか、と納得する。
「十六夜さん 下がって!」
黒ウサギは庇おうと走り寄ろうとするが、十六夜の鋭い視線と亜音 に手首を掴まれる。その時、内なる者が変な声を上げるが、亜音は完 全に無視する。
「何を言ってやがる。下がるのはテメェだろうが黒ウサギ。これは俺が売って、奴が勝った喧嘩だ。手を出せばお前から潰すぞ」
本気の殺意が黒ウサギに向けられる。黒ウサギも始まってしまっ たゲームには手出しはできないと気付いて歯噛みする。
そんな黒ウサギに亜音は、フォローする。
「まぁ、十六夜さんの言ったことを鵜呑みにするなら、世の言語からから喧嘩の仲裁を消さないといけなくなるが、でも黒ウサギ、これは十六夜の試練、闘いでもあり、黒ウサギさんに剣となり、力となるかどうかを示すいい機会だ、ここは見守ろう」
黒ウサギは、もはや手遅れであることと、亜音の言葉に渋々引き下 がり、二人は金髪少年と水神の闘いを見守ることになった。その最 中、亜音の精神内では、
『この小僧、昔のワシにそっくりだ!よくこうして、目の前に現れた敵に片っ端から喧嘩を売りまくってやったからな!あっはは』
図太い高笑いを亜音は苦笑してやり過ごし、目の前の光景を見つめる。
亜音はふと思った。十六夜みたいに皆がなれば戦争は起きないんじゃないかと。
でも、それは望みではないし、正解とも言えない、実現も不可能。
星の数だけ人格があるのに、それを一つの個性に縛るのは天を支配すると同意義だ。
だが、この少年を見ていると、可能性を亜音は感じた。
「見せてくれ...........“.逆廻十六夜”、人類の“可能性”を」
その瞬間、蛇神の雄叫びが空気を振動する。それに応えるように、川の水が嵐の如く巻き上がる。竜巻のように渦を巻いた水柱は蛇神 の丈よりも遥かに高く舞い上がり、何百トンもの水を吸い上げる。
先ほど作った竜巻を合わせて、竜巻く水柱は計三本。それぞれが蛇 神の化身の如く、生き物のように唸り、まっすぐ十六夜に襲いかかる。
この力こそ時に嵐を呼び、時に生態系さえ崩す〝神格〞のギフトを持つ者の力だった。
流石に心配になってきたか、
「十六夜さん!!」
黒ウサギが叫ぶ。しかし、もう遅い。
圧倒的な力量を持つ竜巻く水柱は川辺を軋ませ抉り、木々を捻じり、十六夜の身体を激流に呑み込まんと、十六夜に肉薄する。
しかし、十六夜の表情は、不敵の笑み。
「ーーーーーーハッーーーーしゃらくせぇ!」
突如発生した嵐を超える暴力の渦。すべてをなぎ払う竜巻く激流を、十六夜は眼前で拳をぶつけた。
たったの一振りで竜巻く水柱は跡形もなく霧散する。
『馬鹿な?!』
「うそ!ーーーってなんかこちらに向かってきてません??」
と思いきや、左端の水柱は勢いは殺され、小規模になるものの、陸地を削りながら黒ウサギと亜音に襲いかかる。
亜音は視線を動かし、 十六夜を見る。そして、ため息をつく。 流石だよ、十六夜さん。
黒ウサギは亜音を守ろうと前に出ようとするが、亜音はそんな黒ウサギの肩を掴み、言う。
「黒ウサギ、任せろ」
「え、え、え?」
黒ウサギは人間を相当弱く見ているのか、あまり信用していない。
だから、十六夜も回りくどいことをして、力を示した。ならば、自分 もそうすべき、と十六夜のご指名で、亜音は苦笑する。
だが、それどころではない。目の前に人の数倍の高さを誇る水柱が、亜音と黒ウサギを呑み込まんと川辺を進行中なのだ。
それなのに亜音は、顎に手をあててるだけ。
その様子に黒ウサギは青ざめていく。流石に黒ウサギといえども、水柱に無防備でぶつかれば、最悪吹き飛ばされて、世界の果てのどん 底行きである。
「あ、亜音さん??何を考え」
「よし、決めた」
そこで亜音は脱力しながら、右手を横にかざす。すると、突如そこから黒い霧が生まれる。
そして、黒い霧は徐々に形を変えーーーーーー手頃な刀へと姿を表す。
黒ウサギはその動きに目もくれず、身構える。冷や汗が流れるのを感じながら、前に出ようとするが、そこで亜音から小さな息の音と軽 やかな金属音が鳴り響く。
「フッ!」
突如、黒ウサギの視界が、眼前の扉が開かれて行くように光が漏れ、 クリアになっていく。
「は ...............えええ!」
「すげえな、こいつは」
黒ウサギは目の前の光景に唖然とする。
なぜなら、たったの刀剣による下から上への運動で、視界を覆い尽くすほどの水柱が真っ二つに引き裂かれ、瞬間水柱は跡形もなく吹き飛んだのだ。技と力、二つ揃って初めてできる芸当なのは皆が知るところである。
しかし、“それだけ”では終わらない。亜音が世界に刻んだ剣の軌跡は、その先にある大滝の豪水を二つに分つ。その真っ二つになった大滝のすぐそばに立っていた蛇神は、少し後ろに視線を動かし、驚きよりも恐怖する。
他の者がゲームに飛び入りするなど不可能であり、ルール違反になるが、それをわかっていても、もし軌跡に立っていたらと思考すると、 言葉がでなくなる。加えて、だ………………。
「ふぅ……………“一刀流・火之一葉”、一応加減できたかな?」
その軌跡からは“湯気”が立ち上がっていた…………すなわち、その斬撃は熱も帯びていたようで、焼き斬った、という所だろう。圧倒的な剣術と炎熱系の恩恵の合わせ技である。
そこで、蛇神は意識を戻す。
『.....................っば、馬鹿な!ただの人間がこんなことできるはずが、、』
ようやく蛇神は我に帰り、目の前の現実に驚愕する。
眼前にいる人間が、水神である自身を、そして己が人智を、遥かに超越した力を持っていることが信じられない。彼女とて今まで人間にここまで打倒されることなどなかったのだ。
我に帰っても、思考の輪廻から逃れられずにいる蛇神に、十六夜は獰猛な笑みを浮かべて蛇神に伝える。
「............ま、中々だったぜオマエ」
大地を踏み砕くような爆音を高々に鳴らし、人間離れした速度で跳躍する。
その先は蛇神の胸元。 胸元に飛び込んだ十六夜はそこへ、蛇蛇の全霊を砕いた威力を誇る 力を込めて蹴りを一撃必殺を打ち込む。
『っがぁ!ぁああっく』
小さな叫びをあげた蛇神は十六夜の前で力尽き、水飛沫を上げて川に倒れこんだ。
その衝撃で川が氾濫し、森が浸水していった。
「くそ、今日はよく濡れる日だ。クリーニング代ぐらいは出るんだよな?黒ウサギ」
冗談めかした十六夜の声は二人には届かない。
亜音は十六夜の奇跡を見て、小さく微笑む。
黒ウサギは、頭の中でパニック、しかし、それでも思考を止めない。
(人間が............神格の攻撃を粉砕し、あまつさえ神格を倒した?それも二人ともただの力と技で、そんなデタラメがあるのですか?!)
これが、人類最高クラスのギフト保持者、そう心のうちで黒ウサギは驚愕するしかなかったのだった。
感想、アドバイスお待ちしております!