新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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遅くなりました。
2話連続です。
よろしくお願いします。

・オープニングテーマ《ALONES》参照先アニメ《BLEACH》


第八.五話「吸血鬼と狼の約束・収束点を離れた先の進化」

 ──────話は幾百年と遡る。

 

 箱庭の黎明期に舞い降りた伝説の〝吸血鬼〞達。

 その吸血鬼達は超強大な空中都市に乗って箱庭にやって来た。そこを本拠地にして活動を開始し、箱庭に展開された大天幕による太陽の庇護を受けながら、徐々に支配力を高めていき、己に宿る強大な恩恵で悪鬼羅刹の魔王共をを次々と駆逐していった。そのおかげで吸血鬼達はとうとうこう呼ばれるようになった──────“箱庭の騎士”。

 太陽の恩恵を受けられる唯一の世界、吸血鬼の夢の世界なのだから誰よりも守護意識が高いのは明白、瞬く間にその名は箱庭に轟き、傘下に入るコミュニティも多くいた。

 だが、そんな吸血鬼の時代の中で、彼らに対して、一つの“正規”のコミュニティが反旗を掲げた。

 彼らは吸血鬼ほど規模はでかくはないが、それでも一地域を支配下に置く、今でいうところのレギオンマスターであり、かつその一地域にあるコミュニティは全て傘下のコミュニティであり命令に逆らうことさえ許されない上下関係を築いている、いわば独裁国家を築いていた

 だが多少はその関係に不安の声は上がってはいるが、それでも魔王に支配された地域よりは幾分か良心的で、別に独裁というほどそこまで酷い命令はない。そしてなにより彼らは“強い”、現に魔王が襲撃してきたのに対して〝撃退した〞回数だけは、吸血鬼達に勝っているのだ。通常、魔王を駆逐しに行くより、撃退するほうが大変だ。なぜなら、そこのコミュニティを狙う魔王達はその場所をあらかじめ事前に調べてから襲っているはずだ。ごく稀に特攻する頭空っぽみたいな魔王もいるが、それが通じたのは最初だけである。これからは魔王だって考えなければならないし、その霊格だけで勝つことは難しい時代に成長した。

 だが、そんな未知の相手に彼らは負けを知らないのだ。

 彼らは吸血鬼との不仲説が有名な──────〝人狼〞。それもただの人狼ではない。

 この箱庭ではまだ観測されていない存在、別の言い方をすると解明されていない生命体が存在する。手を付けられていないといったほうがいいのだろうか。その名はいにしえの龍と書いて──────“古龍”と呼ばれる存在である。

 ただ龍という名前に踊らされてはならない、彼らは解明されてはいないとはいえ、最強種ではない、というよりはカテゴライズできるほどまだ解明されていないのが現実だろう。中には最強種の強さを持つ古龍もいるが、全く力を持たない古龍もいる。そして、もちろん古龍に名はない──────ラプラスでは手の出せない領域であるために、純血と同じく“存在不可侵”なのだ。さらに加えると龍と名前が付いているが、その由来は元々“龍”は謎多きアンノウンだからだ。それに比べたら神霊や星霊はわかりやすいものだろう。なにせ龍の純血種のことでわかっている事は、突然発生する生命体、系統樹を司りし者、創造主、そのぐらいしかわかってはいない。故に、古龍だからといって龍だけを示すわけではなく、龍ではない全く別物の個体も含まれていた。

 ラプラス曰く、彼ら古龍は──────何かの生命体、もしくは世界軸そのものが、世界の収束、可能性の収束からかけ離れて、0.00000000000000……%単位、認識不能の単位でしか繋がれていない領域にまで独自に離れた古龍、進化した何某かの存在で、未知でなければ彼らは存在することすらできない者、なのかまたは、未知ゆえにあらゆる可能性とつながり合い、拡大解釈による霊格膨張、顕現を成した者、または箱庭の庇護を介さずして“種”を完成させた者と推測されている。独自であるからこそ年代記に縛られることもなく、遥かに希少でありながら脆い存在だとラプラスは予測した。であるならば辻褄が合う。どこまでが許される未知の領域なのかはわからないが、仮に姿を見られその存在を視界情報として知られた所で完全なる未知ではなくなるとしたら、その全ての確認された古龍が“一度”しか箱庭に出現していないことにもうなづける。何かをした後にその古龍の存在は、消えた、もしくは完全に箱庭から独立したか、その二つに結末は絞られている。

 そして、その中でも仮の名で有名でかつ、龍という存在に外見がとても近しい存在。龍というよりは飛竜だろうか、しかし四つの足と翼、引き締まった銀色に輝く肉体はまさにドラゴンだろう。

 そのドラゴンの名は箱庭の夜を泳ぐように廻りてその姿を現した星海の皇帝(Kaiser・Stardust・Sea)。その古龍こそ彼ら 〝 人 狼〞の原点で創造主、なんでも消える寸前に産み落とされたのが、今亡き存在のご先祖〝銀龍帝〞らしい。まさに未知の力と既存の知識の力が合わさった〝主催者権限〞のゲームは敵なしと謳われるほどに強力なもので、もちろんラプラスによる解読もできず、本人ですら未知に対してお手上げ、力の半分も引き出せなかった。本人自らすぐに使用を禁止し種に宿りし〝主催者権限〞をギフトという形に変え未踏の地へ封印したらしい。ご先祖は何よりも種の繁栄を優先にしたのだ。

 そのおかげで沢山の種と交配しては繁栄し、幾百年という時を経て未知は薄らぎ、脆くて危険だった霊格が、明確な霊格となりて箱庭に刻まれた。だがその中でもご先祖を大事にし、血を濃く受け継ぎし高位生命体の種族が─────彼ら、人と銀龍と狼の霊格を保有した吸血鬼に並ぶ夜の支配者〝人狼〞である。そして反旗を上げた理由は別に不仲説があるからではない─────ただ単純に〝夜の支配者〞という立場と誇りを守るためであり、〝月光を駆けるのは我らだ〞、と主張したのだ。そこからはもう単純だ、 最初は互いの一部だけが言い争っていたが、段々と悪口の言い合いが悪化し、とうとう文字通り〝なぜか狼と吸血鬼は不仲〞という説が出来上がった。そして時が経ち、彼ら両者は大きなギフトゲームを開催し、互いの支配権と誇りを賭けて─────戦争が始まった。 だがやはり数の差が歴然しており、なおかつ傘下は互角だったのに対して主力であるはずの〝人狼〞と〝吸血鬼〞の霊格に、圧倒的な差があったのだ。勝敗は〝人狼〞の大敗で幕を閉じ、彼らは〝箱庭の騎 士〞の傘下に下った。だが本来敗戦国は戦争が終わった後、少し荒れるものだが、(主に傘下のコミュニティによって)ただこの戦争で自分の支配者が〝 人狼〞から、〝箱庭の騎士〞である〝吸血鬼〞に変わっただけなので、逆に新なる強力な支配者の庇護下に置かれて喜んでいる者達の方が大半だった。もちろん、その影で〝人狼達〞だけが地団駄を踏んで悔しがっていたのは目に見える。

 

 

 

###

 

 

 

 そして戦争終結の日から数年後のある日だった。〝人狼〞が治めている、吸血鬼達が彼らにそのまま任せた一地域で、吸血鬼の姫様の誕生日と平和を祝う祭典が開催された。まだ傷は癒えてはいないが、しかし嘆いていても仕方ないのもわかっている彼らはしかし、そんな素振りを一欠片を見せない熱気を湧かせていた。紙吹雪のような花びらが舞い続ける街の大通り、吸血鬼達が軍隊のように行進し、さらにそれを守護するかのように前と後ろに傘下のコミュニティの代表集団が旗を掲げて並んでいた。そして一番その中でも傘下の中心に置かれたのが、〝人狼〞のコミュニ ティ。信頼はともかく実力があることを表に出し、吸血鬼達は信頼関係を築こうとしていた。それには〝人狼〞達もやぶさかではなかったらしく、代表で歩いている小集団の〝人狼〞達は少しにやけている。そんな日差しを浴びて輝く大行進を、横の影で小さく見つめている男の子がいた。

 その男の子の視線の先には─────吸血鬼の姫様、まだ十歳いっていない同い年の女の子、なのに自分とは何もかもが違う存在。煌びやかな服装に対して自分はボロ雑巾のような服装、白く透き通った肌は日差しを浴びて白く反射して輝き、金色に輝く長い髪は生まれ持っての王威を示し尚且つ、彼女をとても美しく魅せていた。

 ─────住む世界が違う、やっぱり凄いな、〝箱庭の騎士〞。

 箱庭において夜を支配下に置いたのは純血の吸血鬼で、自分達は大きなギフトゲームに敗北した。その時から上下関係が確立し、実力も天と地の差があったためにライバル視されることもなくなった。そして、巷で人狼達は─────〝挫折の貴獣〞と呼ばれて貶められていた。

 どんなに吸血鬼達が自分たちを立ててくれても、やはり世の末は敗北者には優しくはないのだ。

 そんな中に彼はいる。

 大きな祭典、我らが主の祭り、主を祀る祭典、華々しい光景のその隅で、小汚い少年が悔しそうに、いや惚れるように見入っていた、見入ることしかできなかった。

 そして本当に彼女は美しかった。

 そんな彼女の名は、レティシア=ドラクレア。

 ふと自分の姿を見下ろし、彼女を見た少年は。

 

「...............くそ」

 

 男の子は手の届かない世界を見て皮肉な笑みを浮かべる。

 握りこぶしを作って俯き、その光景に背を向けた時だった。

 

「そこの者。少し待て」

「...............」

 

 なんだろうと、男の子は耳に軽やかで強い女の子の声が入ってきて 疑念を抱く。

 だが少年にとっては、そんなことはもうどうでもよかったのだ。なぜならこんな自分に声を掛けてくれる仲間どころか、女の子から声をかけられることすらあり得ないのだから。

 しかしそんな少年に金髪を揺らしている女の子が声をかけている。

 周囲もその光景に絶句し、その場から動けずにいた。彼女が強いことは皆が知っているので、下手に刺激することは許されないのだ。

 

「聞こえてないのか?......そこの者よ......待つのだ!」

「...............はぁ」

 

 紅い煌びやかな服装を着た金髪の美幼女は、額に青筋をプチプチと立て始める。まさか自分がここまで自然に無視されるなんて思いもよらなかったから、余計にカァーと頬が紅く火照り、周囲の目もあい余って後に引けない。周囲もそんな彼女の様子に戦慄し、少しずつ後ろへ後ずさっていった。

 そしてとうとう彼女は、シュダンッ!!と跳躍し、数十メートル先を歩く少年の背後に鬼の形相で迫る。周囲からはどよめきが響き渡る。

 その周囲の変化と突如視界が影に染まり、かつ後ろから感じる大きな重圧に少年は流石に異変を感じて──────その暇もなく、何かが風を切った。

 

 

「待ってと、言ってるだろうがッ!!」

「え、ぐぶォぅ!?」

 

 ハンマーのように拳を頭上に振り下ろされた少年はスロットのように瞳を上に移動させ白目にされ、悶絶するように全身を微動させながらしゃがみ込む。

 その後ろで、金髪の凛とした少女、レティシア殿下が腕を組んでプンスカしていた。

 

「ぃィ──────イテテテテテ............っておい! 何すん...だ.....ぇ......は?」

 

 少年は思わず絶句して間抜けな顔をする。目が点になり、下から上へ視線を動かして目の前の人物が〝本物〞かどうかを確かめて、本人と分かると大口を開けて心臓をバクバクさせながら再度驚愕していた。

 そんな少年にレティシア姫殿下は口角を小さく上げ、先ほどとは一転して、凛とした態度を取り始める。

 

「ようやくこちらに振り向いたか............また無視されたら流石に事が面倒になっていたので、肝を冷やしたぞ」

 

 そう言って彼女は周囲を見回して、少年もそれに続くように周囲を見回した。

 思わず、うわーと漏らしそうになった。

 どっから作って持ってきた文明なのだろうか、LOVE☆レティシア姫殿下という旗を掲げた〝人狼〞、吸血の集団、普通の人狼が三つ巴状態で睨み合っていた。最初の生き物は理解できないが、流石に純血の吸血姫様を無視したクソカギを、他の吸血鬼が放っておくわけが無い

 自分たちの威厳であり、旗頭なのだから当然と言えば当然なのだろう。しかし──────。

 

「はぁ.........なんでこんなにめんどくさい関係なんだよ」

「私もそうは思うが............だがそれはきっと今のコミュニティ間の関係では修復できないものだろう。なにより、私の一存ではどうしようもできない。だから少しでも仲良く古参の人狼達と話を持とうとしているのだが、やはり私はガキにしか見えないのか、誰も聞く耳を持たない。それに私の家族や重鎮もどうも頭が硬いのだ。──────そこで私が目をつけたのが君だ」

「は .........僕ですか?」

「ああ。大人達の悪影響を受けていない。尚且つ私と同じ年齢ぐらいの人物が好ましい。それに合致したのが、君だ」

「僕は別に、皆のように強くな─────」

「大丈夫。力なんて努力すればつけられるものだ」

「で、でも僕は足もはや──────」

「大丈夫。大人になれば早くなる」

「で、でも」

「大丈夫」

「あのー」

「大丈夫」

「ふざけてます?レティシア姫様」

「ああ、大丈夫」

「もう帰っていいですか?」

 

 流石にいじりすぎたか、少年はボサボサの茶髪の頭を掻きながら、ペコペコとそして青筋を額の隅に立ててレティシア殿下に問うていた。

 レティシア姫殿下はそこで少し小さく優雅に微笑み──────すまないと言って口を開く。

 

「冗談だ。それに、ふふ。.........なるほど君はからかいのある奴だよ。私の幼馴染みで親友にピッタリだ。──────ということで今日から君は私の幼馴染みで私の親友だ」

「何がということ、ですか!?勝手に話を」

「大丈夫。悪いようにはしないから」

「なんか怖ぇ──────あ、怖いです、はい」

「ふふふ、君は本当に可愛いな」

「嬉しくないです.........」

「ふふふ.........フフ.........あ、そういえば名前を聞いてなかったな。君の名前は」

「ヴォルフ=レイヤ、です」

「そうか、君はヴォルフ=レイヤというのだな。うむ.........ではヴォルフ、これからよろしく」

「よろしくお願いします、レティシア姫殿下」

「早くお互いに呼び捨てで呼び合えるようになりたいな──────ヴォルフ?」

「............」(胃が痛い.........)

 

 目の前で朗らかに笑うレティシア姫殿下を見つめている小汚い少年はこの時、とても嫌な顔をしていたが、でも心の中では目の前の美しき姫様の笑顔がとても眩しく暖かった。──────心臓の高鳴りがずっとやまない。

 だから少年はこの時の出会いを無駄にしないために、彼女を目指して強くなることを決意した。仕方ない、姫殿下との約束を守るために強くなろうと。そして、互いに強くなったその時、花びらが舞う草原で──────互いに名を堂々と呼び合えるその夢と約束の日を見据えて、少年は笑っていた。捨てられ、路頭に迷い、毎朝ゴミ箱を漁る毎日を送っていたそんな自分を捨てる覚悟を彼女の笑顔とともに深く、心の奥にまで刻み込むのだった。

 

 

だが、そんな強くなった彼にレティシアが最初に頼った願いは──────。

 

 

「頼む、私を殺してくれ」

 

 燃え盛る古城の最奥でレティシアと相対した彼が取った行動は──────逃げることだった。ペナルティを恐れたのもあるが、自分では全く解けない文面のギアスロール、そんなの逃げるしかない。でも、逃げる勇気すら当初、自分にはなかった。

 そんな彼の止まった足を後押し、代わりに動かしてくれたのは、やはりいつでも彼女だった。

 

「逃げろ...............弱き者にできることは何もない、頼むから──────私の前から失せてくれ!!はっきり言って目障りなんだ……、」

「............ッ!」

 

 ヴォルフは息を飲んで玉座に背を向け、ガムシャラに走り出す。

 自分はまだ誰とも戦ってはいない、つまりまだペナルティは課せられていない。なので、ここから戦わずに離脱すれば助かるのだ。

 だから、見なかったことにした──────彼女が泣いていたのを。そして自分の心には、また強くなって戻ればいいと言い訳をして納得させる。今助けなければ手遅れになるかも知れないのに、彼女を失うかもしれないのに。

 だが、今の少年の力では跋扈する怪物たちにすら意味をなさない──────故に文字通り彼にはここで“する事”は何もないのだ。

 

(ごめん、レティシア──────ッ!!)

 

 ヴォルフは空中都市を雫を目から落としながら駆け抜け、外角にたどり着いたと同時に空へ身を投げてその姿を消したのだった。

 古城の最奥で──────レティシアは瞳を閉じて、心の中でヴォルフに最後の別れを告げる。

 

(すまない............そしてさようなら、私の唯一の──────真なる友よ)

 

 

 

「誰か..................くっ」

 

 

 

 レティシアはその先を口にせず、ただ玉座に縛られたまま俯き、涙を静かに落とす。

 そしてその玉座の間には、そんな乾いた水音だけが寂しく響いていたのだった。

 

 




・エンディングテーマ《Blizzard》歌:三浦大知


高評価、ご感想お待ちしております。
より多くの方に読んでいただけたら、嬉しいです。
またこの作品をリメイクする前から読んでいただいてる方、もう少しで前回のところまで行けそうですので、お付き合いいただけたら助かります。

よろしくお願いします。
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