新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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よろしくお願いします。


第四話「“久遠”の力」

 箱庭2105380外門・内壁。

 

 あらゆる種族が行き交いし、賑わいを見せる噴水広場。

 その近くに、白く清潔感の漂う洒落た感じのカフェテラスが幾つも存在していた。

 そのうちの一つ、〝六本傷〞の旗を掲げるカフェテラスに、飛鳥、ジ ン、耀、三毛猫の三人と一匹は訪れていた。

 飛鳥は紅茶を飲みながら、ここに来てからの出来事を思い出していた。

 ・吸血鬼が存在していること

 ・都市を覆う天幕は、吸血鬼に太陽の下を歩かせられること。

 ・動物と話せる人

 でもこれはまだ序の口。これから、もっと自分を驚かせてくれることがあると飛鳥は未来に期待していたのだが。

 まさか、幸先のいい時に、こんなゲス野郎をお目にかかるとは思いもよらなかった。

 今、そのゲス野郎、ちなみに名はガルド。突如ナンパ師の如く自分達の席に堂々と合席してきた、二mを超える巨躯のピチピチタキシー ドで身を包む男は春日部さんに押さえ込まれて地に這いつくばって いる。

 なんでこんな経緯に至ったか、この男がなぜゲス野郎なのか、それを思い出しただけで腹立たしい。

 自分が暴いたとはいえ、そこからゴキブリが何十匹這い出させてしまったような後味の悪い後悔に襲われる。

  私の力は、いわば、質問解答をスムーズに、抵抗させずにできる言葉の力。

  あまり好きな力ではないが、やはり必要な力だとこの時ふと思う。

 ガルドのコミュニティは〝フォレス・ガロ〞。

 この辺りをちょっと見回れば、ガルドの胸に刺繍されている虎の紋 様をモチーフにした旗印が広場周辺の商店や建造物に飾られていた。

 つまり、旗印は縄張りの証で、この地帯をほぼ支配しているコミュ ニティ。

  ガルドはそのリーダー。後ろ盾には三桁の強者がいるとのこと。

 さらにコミュニティの存続を賭けた闘いに無敗。

 何処かの財閥のボンボンみたいな話だ。

 で、その話をする前に、ジン君のコミュニティの過去を聞かされた。

 いちいち馬鹿にしながら話していてウザくてたまらない。チャッ チャッ話しなさい、とは言わず私も財閥の娘なので、そこは我慢した。

  話を聞くと、昔の神話を連想した。繁栄していた王国が突如、滅ぼされ壊滅、生き残りは新たな国を作ろうと切磋琢磨。

 ジン君のコミュニティも昔は東区画最大手のコミュニティだったらしく、ジン君の前のリーダーはギフトゲームにおける戦績で人類最高の記録を誇っていた、伝説の最強コミュニティ。

 それを滅ぼしたのが箱庭では最悪の天災と謳われる『魔王』。

 たった一夜で滅ぼされた、その真実は魔王の恐ろしさを簡単に理解させた。

 魔王とは〝主催者権限〞という箱庭における特権階級を持つ修羅 神仏で、彼らにいどまれたギフトゲームはどんなに理不尽なゲームも断ることはできない。

 魔王と書いて理不尽と呼べる、理不尽の権化。

 そして、その悲劇は、あらゆる被害を被ったらしい。コミュニティの主力メンバーは散り散りに、コミュニティの名を、旗印も奪われた。

 現実世界で言うところの自分の名前を失い、身分を証明することができなくなった状況。現実世界と違うのは、新たな旗と名を掲げることが許されていること。

 残ったのは土地、子供達、ジン、黒ウサギ。

 しかし、それでも、その救いの選択をジン君と黒ウサギは選ばなかった。

 散り散りになった仲間の帰る場所を護りたい、再興したい、そう望み、その力として私達を呼んだ。

 そこでガルドは言ったのだ。

 

「黒ウサギ共々、私のコミュニティに入りませんか?」

 

  私はそれを聞いた時、こう翻訳した。

 

『ジンとガキ共捨てて、こちらに来いよ』

 

 それで大体、ガルドがどんな性格をしているのか。ゲス度がハッキリした。

 だから、私は言った。

 

「結構よ。だってジン君のコミュニティで私は間に合っているもの」

 

 そのあと、春日部さんとお友達になったのが、唯一の救い。

 で、私は言い放ってやったわ。

 

「私、《久遠飛鳥》は裕福だった家も、約束された未来も────おおよそ人が望みうる人生の全てを支払って、この箱庭に来たのよ?それを小さな小さな一地域を支配しているだけの、組織の末端の末端として迎え入れてやる、などと偉そうに言われて魅力的に感じるとでも思ったのかしら?だとしたら自身の身の丈を知った上で出直して欲しいものね、このエセ虎紳士」

 

 その後の問答はほとんど覚えていない。

 私の中で“復唱”された言語の欠片。人質、子供、部下、殺した、喰わせた。

 私の額が青筋が立ち過ぎて爆発しそうになったわ。

 そして、同時に寒気も感じた。牢獄に入れられた子供達は、獣を前にして一体どれほどの恐怖を抱いたのか、信じ難い真実。

 本当は怒りのままに暴れたい、でもここで怒りを振るうわけにはいかない。

 子供達も自分以外の子供が襲われてるところを見て、拳を握りしめていたに違いない。悔しかったにちがいない。しかし、それは幼き身 体では無力と化す。

 それに比べて私には与えられた力がある。だから、簡単にガルドを粉砕できる。 しかし、それは理性のない暴力。簡単に振るってはいけないのだ。なればこそ、私は言った。

 地に這いつくばる理性のない生物に。

 私が法になり、子供達の代わりに裁く。それを胸に秘めて。

 

「私達と『ギフトゲーム』をしましょう。貴方の〝フォレス・ガロ〞存続と〝ノーネーム〞の誇りと魂を賭けて、ね」

####

 同時刻、トリトニスの大河と大滝。

川辺の岸。黒ウサギと十六夜がイチャイチャしているのを亜音は無表情で見つめる。内なる者はそれを何か別の意味で捉えたらしい。

 

『十六夜をぶっ飛ばさないのか 』

 

 返すのさえ億劫になり、ため息すら吐かず、ただ事の成り行きを亜音は見つめていた。

 十六夜の身のこなしは、中々のものと評価しながら。そこで、十六 夜は切り替えた。

 

「ま、今はいいぜ。後の楽しみにとっておけばいいしな」

「左様ですかって、何をする気ですか?!」

 

 ヤハハと笑う十六夜、超新星の申し子を黒ウサギは睨みつけて、天敵になり得るかもしれないと、一瞬だけ遠い目をした。

 

「と、ところで十六夜さん。その蛇神様はどうされます?というか生きてます?」

「命までとってねえよ。戦うのは楽しかったが、殺すのは別段面白くないしな、〝世界の果て〞にある滝を拝んだら箱庭に戻るさ」

「ならギフトだけでも戴いておきましょう。ゲームの内容はどうあれ、十六夜さんは勝者です。蛇神も文句はないでしょう♪」

「あん?」

 

 十六夜が怪訝な表情で黒ウサギを見つめ返す。黒ウサギは思い出したように補足した。

 

「神仏とギフトゲームを競い合う時は基本的に三つの中から選ぶんですよ。最もポピュラーなのが〝力〞と〝勇気〞と〝知恵〞ですね。力比べのゲームをする際は相応の相手が用意されるものなんですけど............十六夜さんはご本人を倒されましたから。きっと凄いものを戴いけますよー!これで黒ウサギ達のコミュニティも今より力を付ける事が出来ます♪」

 

 黒ウサギは小躍りでもしそうな足取りで大蛇に近寄る。亜音はそろそろかなと十六夜を見る。

 そんな亜音に内なる者は声を掛ける。

 

『いいのか フォローしなくてよ』

『............フォローが甘やかすことになると思うんだが、憶測がハズレの可能性もある、それに十六夜は、誰の意見にも左右されない性格

だろう、君に似ているならね』

『亜音は例外だろ、それにワシは左右されたから此処にいる、違うか? 』

『それは、俺たちは友だから左右されたんだろ 、違うか?』

『ぐぬぬ..................フン』

 

 内なる者はそれ以上言い返せず、黙り込んだ。

 亜音は小さく笑い、 少し離れた所から十六夜と黒ウサギを見守る。

 十六夜は笑みを消し、黒ウサギの前に立つ。

 

「...............」

「ど、どうしたのですか?十六夜さん。怖い顔をされていますが、何か気に障りました?」

「............別にィ。オマエの言うことは正しいぜ 。勝者が敗者から得るのはギフトゲームとしては間違いなく真っ当なんだろうよ。だからそこに不服ねぇ、だがな、黒ウサギ」

 

 ふっと十六夜の軽薄な表情と声が完全に消える。空気もまたピリつき、黒ウサギもまた表情を硬くする。

 

「オマエ、なにか決定的な事を隠しているよな 」

「...............なんの事です?箱庭の話ならお答えすると約束しましたし、ゲームの事も」

「違う。俺が聞いているのはオマエ達の事ーーーーいや、核心的な聞き方をするぜ 。黒ウサギ達はどうして俺達を呼び出す必要があったんだ?」

 

 表情には出さなかったものの、黒ウサギの動揺は激しかった。まるで、潮が引き過ぎてしまったような心境。何もかもさらけ出されたよ うな。

 なぜなら、十六夜の質問は意図的に黒ウサギが隠していたものだからだ。

 

「これは俺の勘だが、黒ウサギのコミュニティは弱小チームか、もしくは訳あって衰退しているチームか何かじゃねぇのか?だから俺達は 組織を強化するために呼び出された。そう考えれば今の行動や、最初に俺がコミュニティに入るのを拒否した時に本気で怒ったことも合点がいく、ーーーどうよ?黒ウサギ」

「.............. 」

 

 亜音は今の光景に少々ストレスを感じたのか、小さく息を吐いた。

 もはや黒ウサギは針のムシロ、見てて痛い。

 黒ウサギはというと、内心で痛烈に舌打ちした。この時点でそれを知られてしまうのは余りにも手痛い。苦労の末に呼び出した超戦力、 手放すようなことは絶対に避けたかった。

「沈黙は是なり、だぜ?黒ウサギ。この状況で黙り込んでも状況は悪化するだけだぞ?それともほかのコミュニティに行ってもいいのか?」

「だ、駄目です!いえ、待ってください!!」

「だから待ってるだろ。ホラ、いいから包み隠さず話せ」

 十六夜は川辺にあった手ごろな岩に腰を下ろして聞く姿勢をとる。

 しかし黒ウサギにとって今のコミュニティの状態を話すのはあまりにもリスクが大きかった。

 

(せめて気づかれたのがコミュニティの加入承諾を取ってからならよかったのに.........)

 

加入承諾を得た後ならコミュニティの状況を知られても簡単に脱退することはできない。

 なし崩しにコミュニティの再建を手伝ってもらうつもりだったのだが............ジンにせよ黒ウサギにせよ、くじ運が悪かった。

 相手は世界屈指の問題児集団なのだ。

 

「.........話せば、協力していただけますか?」

「ああ、面白ければな」

 

 ケラケラと笑うが、やはりその目は笑っていない。黒ウサギはようやく己の目が曇っていたことに気がつく。

 コホン、と咳払い。内心ではほとんど自棄っぱちだった。

 

「............分かりました。それではこの黒ウサギもお腹を括って、 精々オモシロオカシク、我々のコミュニティの惨状を語らせていただこうじゃないですか、ではまず」

 

 そこで、十六夜が一言。

「亜音はいいのか?」

「あ、そうでした!」

「なるほどな、さっき亜音が怒っていた事にようやく合点がいったぜ、俺でも怒るな、しかも二度めのスルーか」

 

 十六夜は小さくそう呟いていると、黒ウサギの間抜けな声が、囁かれる。

「亜音さんが..................いない...............!」

 

その言葉に十六夜も目を見開き、辺りを見回す。

 しかし、やはり亜音の姿がなかった。黒ウサギは膝を落とし、口を開いて愕然とする。

  十六夜はそんな黒ウサギに言った。

 

「勝手に解釈して行っちまったようだな」

「そんな...............」

「因果応報だろ 、内情を隠して、二回も存在を無視。お前、亜音のこと嫌いなのか?」

「そんなわけないのですよ!」

「でも、そうとしか思えない態度しか、亜音にとってないだろ 黙って去ってくれただけで感謝もんだ。反省しろ」

「...........................はい..................」

 

 十六夜は耳をしおらせて落ち込む黒ウサギを見て、少し笑うと頭を掻いた。

 またいつか亜音と邂逅することもあるだろうと。

 

「とりあえず、話をしろ、それからだ」

「...............はい」

 

####

 

夕刻に差し掛かる時間帯。

黒ウサギの話を聞いた十六夜は、視線を空にやりながら、

 

「............ふぅん、魔王から誇りと仲間をねえ」

 

 深く頭を下げて黒ウサギは懇願している。

 しかし、必死の告白に十 六夜は気の無い声で返していた。その態度は黒ウサギの話を聞いて いたとは思えない。

 黒ウサギは、博打に近い確率に、いやほぼゼロの 確率に肩を落として泣きそうな顔になる。

 

(ここで.........ここで断られたら.........私達のコミュニティはもう............)

 

黒ウサギは唇を噛み、強く後悔する。こんな事なら、最初から話せばよかったと。

 肝心の十六夜は組んだ足を気だるそうに組み直し、 たっぷり三分間黙り込んだ後、

 

「いいな、それ」

「ーーーーー...............は?」

「HA?じゃねえよ。協力するって言ったんだ。もっと喜べ黒ウサギ」

 

 不機嫌そうに言う十六夜。

 呆然として立ち尽くす黒ウサギは二度三度と聞き直す。

 

「え.........あ、あれれ?今の流れってそんな流れでございました?」

「そんな流れだったぜ。それとも俺がいらねぇのか?失礼な事を言うと本気で余所行くぞ」

「だ、駄目です駄目です、絶対に駄目です!十六夜さんは私達に必要です」

「素直でよろしい。ほれ、あの蛇を起こしてさっさとギフトを貰ってこい。その後は川の終端にある滝と〝世界の果て〞を見に行くぞ」

「は、はい!!」

 

 それから、数十分、黒ウサギと十六夜は水神より水樹の苗を貰い、川辺を歩き始めた。

 そして、そろそろ世界の果てが見えてきそうな距離までやって来 た。

 

「さてと、何とかして亜音を探し出さないとな〜)

「そうですね...............でも、十六夜さんがいれば大丈夫ですよ 」

「黒ウサギ、それ亜音の前で言ったら、」

「大丈夫ですよ 、お話すら聞かずの薄情者の亜音さんは今はもうここにはいな」

 

 十六夜はそれを聞いて、現金で反省の色が見えない黒ウサギに少しお灸を据えようと横の森林から視線を黒ウサギに動かそうとした。

 その瞬間、二人は、凍ったように固まった。

 正確に言うと、黒ウサギが固まってから、十六夜が固まったのだ。

 

「..................話は終わったようだね?」

 目の前には、トリトニスの大滝、夕焼けの光を浴びて朱色に染まり、跳ね返る激しい水飛沫が、数多の虹を創り出している。

 その夕焼けをバックに川辺の終わりに立つ亜音は、まるで、太陽のような微笑みを浮かべて、十六夜と黒ウサギに振り返り声を掛けた。

 しかし、顔は夕陽をバックにしているせいで影が差し、よく裏で暗躍 する隠れボスのような存在感を放っていた。

 風向きは亜音の後ろから吹き荒れ、亜音の黒い髪とコートの両手が中にあるポケットから下の裾を、十六夜と黒ウサギの方角へと揺らし ていた。

 

 

 

 




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