新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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初日B「成り行きで............乙」

 

「いや、済まなかったな。 少年よ」

 

 ガタイのいい長身の男に小さなクレーターから引き起こされた亜音は、微妙な笑みを浮かべながらも握手を交わす。だがそれも無理はなかった。というより当然だろう、自分の言葉は聞いてもらえず、それどころか出会い頭に攻撃されたのだから。最後の攻撃も亜音でなければどうなっていたか、最悪死んでいたかもしれない。

 

「まさか某の攻撃を攻撃で防ぐとはー............あっぱれだ」

「は、はぁーどうも」

 

 長身の男は気分がいいのか、嬉々に亜音の手を握りしめて来る。別にそれは構わないんだが、何かこうモヤモヤするのだ。近しい感情としてはおそらく調子のいい野郎、呆れに近いものだと亜音は思考する。話はそれるが長身の男が言っていた通り、亜音は最後の必殺攻撃に対し、類稀なる戦闘センスを発揮させ、爆発的な火炎を拳に纏わせつつ針の糸を通すように相手の拳にぶつけたのだ。人は基本、攻撃されると咄嗟に守りに入ってしまうもので、反射で攻撃を繰り出すには本当に長い年月の訓練で体にその行動を染み込ませるか、亜音のように戦闘センスを持ち合わせているかに限られて来る。まさに伝家の宝刀と等しい価値を持つ才覚なのだ。戦闘センスとは、ようは勝つための動きである。

 

「臥遠、そろそろいい?」

 

 少女の声に長身の男は、ハッと我に返ると石畳みの道から外れ、後方にいた少女に道を譲る。

 そして、亜音の目の前、数メートル近くまで歩いてきた水色の髪と赤い瞳が特徴的な少女は、亜音を足先から髪先まで観察し終わるとーーーーー。

 

 

 

「────才能ない、帰れ」

 

 

 

「..................?、」

 

 亜音は一瞬、何を言われたか分からなかったが、すぐに把握した。何をどうして自分が才能がないのか分からないが、とりあえずこの人がおそらくここで一番偉く、〝気〞を知っている者だろうと推測した亜音は、すぐに頭を下げた。

 

「お願いします!!どうか一日だけでもいいですから、修行を付けてください!」

「っ!?」

 

 まさかそこで正直に頭を下げてくるとは思いもよらなかったのか、 少女はあからさまにたじろぎ、口の端を引きつらせる。しかし流石にそんな狼狽えを亜音に見せるわけにはいかないので、すぐに調子を取り戻して口を開く。

 

「じゃあ聞くけど............えーと」

「榊原 亜音といいます」

「じゃあ亜音、聞くけど............何故力を求め、力を欲する?」

 

 少女の赤い瞳が鋭利に細められ、亜音の下げられた頭の後頭部に強い視線が注がれる。その様子を四人の仙人は黙って見つめていた。

 途轍もなく緊迫した空気の中、亜音はただ真っ直ぐに言葉を紡ぎ始める。

 

 

「俺には夢と、変えたい運命.........そして、無慈悲な戦争を無くすという目標があります」

 

 

「俺は巻き込まれていく人々を見たくないっ!」

 

 

「それが我ら『榊原家』先祖代々からの夢で、今の俺ではその夢を実現することは不可能です」

 

 

  不可能だということは北の一件で充分理解したのだ。だから亜音は断言でき、今の自分の立ち位置、夢との距離を正確に把握していた。

 例えその距離が途方がなくとも、途方がないことが分かるだけでも違うものだ。井の中の蛙とはよく言ったものだと亜音は思う。自分はどこかで夢が手に届く所にあると錯覚していたのだ。

 だから断言し、口に出すことで己に理解させる。

 

「────俺は弱い、だから強くなりたい。............時代を変える力が俺には足りないから」

 

「ここに来たんです!!.........どうか......っ...お願いします!」

 

 

 亜音のその身に宿す奇跡と才覚を悟っている四人の仙人は、亜音の真っ直ぐさに小さく感嘆をもらし、評価を改めた。まさに稀に見る天才、救世主に等しい器を持っていると。

 だが、二代目・仙神と呼ばれていた水色の髪の少女は、何かにイラついているかのように肩を震わせてーーーーー。

 

「帰れぇええええええええええ!この」

 

 その先は口を開くことができなかった。それより先に少女の頭に拳骨が振り下ろされ、その拳と共に説教じみた声が上がったのだ。

 それをモロに食らった少女は、仙神の威厳を破砕するように────。

 

「いい加減にしろ」

「イッタアアアアアアアアアアアアアアアアイ!」

 

「????」

 

 少女は頭を抱えて地に伏せて震えていた。

  流石にこの状況には亜音もついて来れず、口を半開きにしながら、棒立ちしていた。

 そこへ少女の頭へ拳骨を降らせた張本人、臥遠と呼ばれていた長身の男が、先ほど浮かべていた表情より遥かに申し訳なさそうな顔で頭を下げて来た。

 

「本当にすまない。.........後ほど詳しく説明するがこのお方は一応、このコミュニティのトップに選ばれてはいるが、〝気〞を扱うのがまだこの中でも一番下手くそな────悪ガキだ」

「おい、コラぁああああ!誰が悪ガキだ!」

「やれやれ、カイ、レオ、テン。 話の邪魔だからしばらくそのじゃじゃ馬を押さえとけ」

「了解です!!!」

「離せぇええ!」

「ダメです!!!」

 

 映像化が難しいこのやり取りを見て、亜音は初めて思考ができなくなった。というより意味不明の一言で片付けたいぐらい考えるのがめんどくさいと半ば呆れていた。

 とりあえず、問題児にも希少種というものがあるんだな、と図鑑に記すことにした。そしてあの時、少女に対して同情した自分の気持ちと時間を返して欲しいと突っ込みたいぐらい、少女の株は大暴落である。

 亜音の遠い目はそのままずっと、モザイクが掛かった四人のやり取りに注がれていて、臥遠も苦笑いしながら口を開く。

 

「改めて自己紹介するが、某は臥遠、呼ぶ時も呼び捨てで構わん。...............それで、あの悪ガキは鬼理澄舞夏(きりすまいか)、適当に呼べば反応はするが、めんどくさいのが嫌なら二代目と呼んでやってくれ」

「そうします」

 

 以前として遠い目をしている亜音は、即答する。その反応で相当、病んでることを悟った臥遠は、申し訳ない顔から涼しげな笑みを浮かべて、

 

「悪ガキと某がした非礼のお詫びだ、某が修行を付けよう。一応某は、ここにいる連中に気を教えた師範だ。」

「ほ、本当ですか!?」

 

 その言葉に亜音はコンマで表情に生気が戻り、嬉々に顔を和らげる。その表情に少し臥遠も表情を和らげるが、少し厳しい声音で口を開く。

 

「だが、これは特別だ。本来、我らのコミュニティは門下生を集っておらんし、来たところで教える気もない、だが今回、お前だけが特別なのだ、それを忘れないでいて欲しい」

「────分かった」

 

 亜音は臥遠の真剣な眼差しを真正面に受け、しっかりとした声で返事を返す。

 こうして亜音は、変な成り行きで修行を付けてもらえることになったのだった。まさに奇想天外の箱庭の外である。

 

「なんだよ!もう!!私はただ追い払おうとしただけなのにー!!」

「「「どう見ても私的感情が入ってた」」」

「黙れええぇえええええい!!こうなったら」

 

 ズドォン、ボガァン!ドンデンドン!などと蚊帳の隅から幻聴が聞こえるが亜音は完全にシャットダウンし、

 

(あの子、問題児ぶりに神がかってるよ、100%間違いなく純正だ。..............だって十六夜の問題児性が霞んでいくもん)

 

 対話が難しい、とてつもなく難しい。問題だらけだ、あの少女は。

 これからどうなることやら、亜音は心の中で頭を抱え、幸先の良くも悪くもないスタートを切るのだった。

 

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