新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ 作:行くよ!!!!
〝気〞─────それは等しく〝生命を宿す何某達〞から自然と溢 れ出ている、いわば未知の精霊。
それは星とて例外ではない。火山も呼吸をし噴火で土地を作るし、 海とて呼吸をし土地を削ってはその栄養を生命に与える、そして星は地殻変動を起こして破壊、再生を繰り返す。
すなわち、仙人に信仰される〝気〞の規模は、星の息吹、〝森羅万象〞に匹敵するもなのである。
これは余談だが─────中国では『抱朴子』などによると、金を作ることには「仙丹の原料にする」・「仙丹を作り仙人となるまでの間の収入にあてる」という二つの目的があったとされている。辰砂などから冶金術的に不老不死の薬・「仙丹」を創って服用し仙人となることが主目的となっている。これは「煉丹術(錬丹術)」と呼ばれている。厳密には、化学的手法を用いて物質的に内服薬の丹を得ようとする外丹術である。仙丹を得るという考え方は同一であるが、気を整える呼吸法や瞑想等の身体操作で、体内の丹田において仙丹を練ることにより仙人を目指す内丹術とは区別される。
つまり彼らは〝気〞だけでなく、〝錬金術〞にも詳しく─────おそらくは〝不老不死の錬金術〞にも詳しいのだろう。
しかし、錬金術の恩恵、権能を有している存在は限られている。
錬金術を行える者は人類の幻獣種・詩人よりもさらに希少であり、時代の風潮と科学の発展によって退廃した霊格を持つ人類。遥か昔に偉大な信仰を受けて、神霊、人間の神と謳われていたその者達こそが─────歴史の星屑・〝錬金術師〞なのだ。
彼らはそれぞれが特有の逸脱した頭脳を持ち、その知識から独特の錬成陣を編み出して魔術や魔法のように物理を再構成すると言われている。まさに神の御技。なので、〝仙境蓬莱〞にいる者たちには錬金術は使えないし、臥遠曰く、服の修繕や土地の修復ぐらいしかできないとのこと─────いや、十分すごいと思った亜音だったが─────。 八割、手作業なのね............だが、錬金術を誰でも発動できる方法が一つだけある。
それが形無き神具とも謳われる〝錬成陣〞。錬金術師が遺した権能、錬成陣は、ある程度の霊格を保有していれば容易く起動するもので、それを求めて太陽の主権並みの戦争が起きたこともあるそうだ。そして錬成陣や彼らの築いた法則は、一種の宇宙観、小規模の擬似創星図とも称されている。
これらの余談は亜音の─────ここに来る前に持っていた既存の知識。ニュンペーからいただいた知識だ。一部は違うが。
そしてここからが臥遠に説明された〝気〞の事、ここ〝仙境蓬莱〞 の事である。
気を使うとその作用にとって、雲のようなモフモフの羽衣が体に天女の如く纏わりつくが、それは気の精霊と呼ばれているらしく、特に意味はないし、害を及ぼすこともない。ならばその無駄にもふもふした物の役割は─────その羽衣で未熟か判断する、基準である。
主に一般的なのが、赤、黄、水色または黄緑。
赤は初心者。
黄色は中級者。
水色と黄緑は上級者である。
次に、ここ〝仙境蓬莱〞では内丹術とかではなく、〝気〞を操る。
仙法を大きく二つに分けて改名されている。それが─────仙汰術と世汰術。
名前から察することができたと思うが、二つは上位互換になっており、下手をすれば仙人次第で天と地の差ができるほどに扱う規模は違ってくる。 それを分かってもらうには、二つの仙法を知って置く必要がある。
・仙汰術ーーーとは言わば、内に気を取り込む技術、自分自身の治癒力や身体能力、危機管理、視力や聴力、嗅覚、あらゆる面が向上する。自分自身の霊格エネルギーも増大させる。但し、体内に維持するのにも、取り込むのにも元の体力が必要なので、無限のエネルギーではない。気を抜けば自然と気エネルギーは抜けていくし、体力が無くなった場合もそうである。臥遠曰く、体力が無い状態や不十分な場合、最悪ーーー〝気〞によって逆に支配され、霊格が爆散、あるいは物理限界を超えて分解されて肥やし、あるいは別人格に上書きされることさえあり得る。
だが、普通そうなる前に気を維持できずに放出するか、〝気〞をかき集めることさえ不可能なので、そこまでの心配はいらないらしいが、時折いるらしい─────根性で集めたり、体内に維持できる者が。その点を─────特に無理ができる亜音は注意を強く受けた。天武の才が諸刃になる、そういうことだろう。
そしてもう一つが─────世汰術、上位互換の上に当たる仙法である。
・世汰術は、簡単に言えば外の膨大な〝気〞を支配し操る技術、武器や物に纏わせることで硬化させ威力をあげる。飛ぶ斬撃、炎の総量と温度を上げ、破壊力も上がる。つまり技の規模を拡大させるのだ。他にも他の者が漂わせている気を支配し膨張させて爆発させること で意識を刈り取ることも可能で、言わば気による霊格の増大、凡庸性が高く、規模も扱う者次第で半端ではない。
鎧のように纏うこともでき、その場合、皮膚を硬質化する場合と霊気外装、加えてその二つを二重に纏う方法がある。
さらに探知機のように一定範囲なら感知もでき、亜音の飛行速度と飛行できることを仙人たちが知っていたのは、まさに探知で把握していたのだ。自分の周囲に展開、纏えば死角からの攻撃も感知し、目を瞑ってでも戦える。銃弾などなら、パチンコ玉のように見えない壁で弾けるだろう。ただ、見えない壁や鎧は空気を硬質、霊格を与えているのでエネル ギーの消費料に合わないほどに脆く、展開するのにも相当な集中力が必要、精神力もすり減ってしまう。魔王相手には論外に等しいが、要は使い様である。
ここまでを簡単にまとめると外の気を支配し、自分以外の物に纏わせたり、霊格を増大させたり、探知したりする技術。
ただ時折出てきたように、この仙法は扱う者次第で差があり、気の支配領域は、もはや本人のセンスとしか言えず、探知範囲はさらに個人差が激しい。
これはおまけだが探知されたことに気がつけるのは、気を感じれる仙人のみである。
ただ注意して欲しいのが、二つの仙法に分けられてはいるが、特にしていることは“変わらない”。外に漂う〝気〞を支配して、扱う。その規模の違いと、内と外か、という話なのである。後は自分が対象か、それとも自分以外が対象、と言ったところだろうか。
☆☆☆
夜に照らす蛍。狭苦しい部屋で神秘的な空間。
そんな部屋で、亜音と臥遠、初代仙神が相対していた。
「─────中でも特別な色、黒と白の羽衣は、それぞれが異なる使 命を背負う〝仙神〞として選ばれたという証拠だよ」
「黒が革命と破壊を、白は守護と庇護を、先ほど初代様が言ったことはそういうことだ」
「俺が選ばれ、た ............世界の精霊に?」
亜音は信じられないと両手を広げて閉じて、訝しげに視線を落とす。
だが、もし箱庭に来てから選ばれた、という話ではないなら─────“選定者”には心当たりがある。
そんな亜音を見て、初代様はフッと微笑むと、
「よし、ここからは私が直々に修業をつけよう。ついでに舞夏も一緒にな」
「本当ですか............あ、でも」
「某に構う必要はない。存分に自分の力を高めるといい、亜音」
「ありがとうございます。臥遠さん」
「さん、は余計だ」
「あははは、すいません」
########
三人は当初、至って和やかに会話をしながら歩いていたが、臥遠と の別れ際。 初代様が急に雰囲気を変え、鋭い眼光を臥遠に向けていた。
「それにしても臥遠、君はいつここを出て行くのかな?」
「っ...............某は一生、貴方様の」
「恩を感じる必要はない、というよりウザい、ここではもうお主の力は高まらんのはわかってるだろう?ならば新たな出会い、もしくはコミュニティを作るのも悪くない。なんなら他の三人も連れて行って構わん、三人も臥遠も私から教えられることはもうないんだ」
「なんと言われようと某はこの旗を守るため力を使う、某の使命です」
初代様の言葉を吹き飛ばして、己の信念を見せつける臥遠。
それに対して、馬鹿が、と初代様はぼやき、
「勝手にしろ。もう私は知らん、だがいつでも出てっていいからな?」
臥遠はそう言われても最後まで立ち去る初代様に頭を下げ続けていた。
亜音は初代様の後ろを追従し、庭が垣間見える廊下を歩きながら眉 を顰める。
「初代様............」
「フム............少し言い過ぎた、か。む、そんなに睨むでない。私とて別に臥遠が嫌いなわけではない」
「いや別に睨んでないですよ、ただ世の中上手くいかないな、と感慨深くなっただけです」
「それは悪かったな。フム............少し昔話をしようか」
「許可は?」
「いらんだろう.........それとも君はベラベラ喋るタイプか?」
亜音は静かに被りを振って否定し、一度足を止めていた初代様は再度、歩み始め、少し視線を上にあげた。
「そうだな、あの頃はまだ私がこの世界、箱庭の世界に〝山ごと〞招待されたばかりだった頃か」
「山ごと、ですか?」
その脅威な召喚に亜音は一瞬、目をパチクリさせる。
ふふふ、と亜音の反応に微笑ましく笑う初代様は、そのまま話を続けた。
「まぁ、私も生まれたばかりでこの土地から出ることを恐れ、迷子になることが多々あった。とはいっても仙神としての力を使えば容易く帰られるがな」
「結構、冒険心旺盛だったんですね」
「ははは、確かにそうだな。でだ、そんな毎日のある一日、野党の集団が魔王に襲われとるのを見つけた」
「ああ、それで魔王を倒して助け」
「いや、私は見て見ぬ振りをして帰ろうとした」
「そこは助けましょうよ」
おちゃらける初代様に亜音は苦笑しながら突っ込む。
しかし、そこで初代様はすこし真剣な表情で、
「そんな時だった。野党の集団は壊滅し、私が帰ろうとした時、一人の男が私に頭を下げた」
「それが臥遠さん、だったんですか?」
「ああ。だが、そうだな、フム............いやー今思い出しても見事な土下座だったな。最終的に私の股間に顔を突っ込んで、勢い余って魔王ごと吹き飛ばしてしまった」
「そんなオチ、シンジラレません」
今までの真剣を返して欲しくなるど台無しなオチだった。
しかしそれを語る初代様の顔はとても清々しく敬意すら感じられた。
「あいつが頭を下げて言った言葉、本人のプライバシーを尊重して短くだが『俺を奴隷にしてもいいから、皆を、俺の仲間を助けてください』ってな」
「プライバシー守る気ゼロにしか見えないんですが............」
「そうか?ーーーーでな、私も突っ込まずにはいられなかったよ、お前も助かる気満々だなと。」
「言われてみれば確かに............でも奴隷は生き地獄」
そこで初代様は不敵に微笑み、
「君は、私がそんな酷いことをできる奴に見えるのかね?」
「臥遠さんはそこまで計算して............」
「まだ少し幼かった私を見て、ハァハァ言ってたのは内緒だ」
「..................」
プライバシーとか秘密とか、もうその全てがどうでも良くなった。
聞かなければよかった。あの人の顔が見れない。
「それで、仕方なく唯一生き残った臥遠を引き取ったというわけだ」
「生き残ったの彼だけなんですね............」
「話は変わるが.........」
この人の自由奔放さは尊敬に値する、ものではないなと亜音は結論付けた。
白夜叉様とはまた違った駄目な匂いがする。
これからのことを心配しながら、亜音は耳を初代様の言葉に傾けるが、
「今日から君は私達のコミュニティに所属しろ」
「え...............?」
「断れば.........デッド」
「帰ります」
「即答だと、」
亜音はそさくさと歩き始め、初代様は目を見開いてテンヤワンヤする。
そして亜音は初代様を理解した。この神は知識と力を与えられた長寿の大人ぶった神、と。
「まぁ待て、今のは冗談だ」
「...............」
「失礼な視線を感じるが.........」
「気のせいです」
亜音の哀れみな視線に初代様は瞳を鋭利にするが、亜音は華麗にスルー。 なぜそうできたかというと、単純に初代様が挙動不審だったから だ。わかりやす。
「フム.........ならば仕方あるまい、しかし私とて暇ではない。修行には条件を付ける」
「条件?」
「ああ、でも修行はそれと並行して行うから協力してくれるだけで構わん」
「...............跡取りである、二代目のことですか?」
ほう、と初代様は感嘆しながら小さく笑うと、堂々と条件を叩きつける。
神としてそれはどうなんだろうと、亜音はこめかみを押さえていた。
「俗に言う、あうとそーしんぐ、だ。舞夏の育成に協力を要請する、君への条件は以上だ」
「......はぁ、.........分かりました、その条件呑みます」
亜音は二代目の素行を思い出しながら顔を歪めて仕方なく、その条件を呑む。
これからが心配すぎる、まじで。