新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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・オープニングテーマ《青い未来》参照先アニメ《ブルードラゴン》

・激闘・戦争イメージソング《Meteor-ミーティア-》参照先アニメ《ガンダムSEED DESTINY》


第三章【最強種“巨龍”召喚と北東大戦】
第十五話「集う〝仙神〞。それぞれの想いを抱き今、 箱庭を背負う。虚無と奈落の気配」


 ──────東○○○○○○○外門。最前線の奥、居住区 画。

 

 怪物達が呻き声が響く一つの家屋。

 二階建ての居住で豪奢な作りになっているのだが、残念なことに誰かに荒らされたようにとっ散らかっており、カーテンが全て閉じられているせいで夜のように暗い。

 そんなカーテンの隙間から日光がさせば埃が目に見えるように舞っている。

 唐突に台所より響く咳混む声。

 

「ケホッ.........ケホッ.........!」

「っ............大丈夫 」

「うん、だいじょぶだよ、おねぇちゃん......」

 

 台所の隅で息を潜めながら会話を交わしていたのは二人の子供。

 一人は十歳ぐらい女の子で、もう一人は六歳ぐらいの男の子。

 女の子は男の子の背をさすりながら、苦渋の顔を浮かべる。

 その理由はすぐにわかった。

 

「ねぇ、おかあさんと、おとうさんはどこ?」

「っ、...........うん、今ね助けを呼びに行ってくれてるから、もうすぐ..................戻ってくると思うから」

 

 女の子は男の子を抱きしめて小さくなる。そしてふと居間、廊下の先にある部屋に倒れている二つの影をみて、すぐに逸らした。──────自分はお姉ちゃんなんだ、しっかりしないと。

 だがその時、台所の何処かで金属に何かが当たったような音がした。

 カン、キィ......カンカン..........................................。

 

「............おねえちゃん、今のお」

「シッ............静かに」

 

 女の子は男の子の口に手をおいて黙らせる。なるべく女の子は笑顔を浮かべようとしていたが、汗だけはどうにも止まらない。

 そして同時に鳴り響く──────複数の場所からの複数の音。

 ..............キィ......キン.........カン。“何か”が動いてその際に当たったような金属音。

 ............ガァ.........ガッ............。“何か”が動こうとして他の物が動き地面をするような音。

 ......ダァン!..................カツ.........カツ.........カツ。台所の流しより聞こえる何かの足音。

 心臓の音が跳ね上がるが、それでもなんとか息を潜め続ける二人。

 ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ、とア ラームを心臓が言っていた。

 もし物音を立てれば一斉に〝それら〞は襲いかかってくるだろう。

 一挙一動が、呼吸さえも命取りになるこの状況に嫌な緊張感がどんどん溜まって行く。

 

「ケホッ.........ケホッゴホっ、」

 

『GYAAEE KISHAAAAAaaaaaaaaaaa!!」

 

「や、ヤバ............い!」

「ご、ごめんなさ」

「今はいいから走ってッ!!」

 

 女の子は男の子の手を取って走る──────と同時に床を這い寄るようなカサカサカサカサという音が騒ぎ始める。数は一匹や二匹ではない、間違いなく数十匹いるだろう。

 不意に女の子は足を止め、男の子は声をかけようとしたが、眼前の光景に戦慄する。

 廊下の天井より糸を引いて漂う人の顔サイズの大蜘蛛、その下には廊下を塞ぐように床を這う大サソリが赤い瞳を光らせて蠢いていた。

 

「............おねえちゃんっ!」

「............っ............、」

 

 二人は床に倒れこみ、抱き合う──────もうこれまでなんだ、と諦めた。その時、窓を突き破って剣閃が迸り、飛んで来た二つの刃に毒蜘蛛とサソリは切り裂かれた。その刃は子供達の前を通って台所の適当な場所に突き刺さって止まった。

 

「上げるわ、その刃。............さっき折られちゃった奴だからさ!」

 

 そう言って窓から入って子供達の前に立ったのは、白い羽衣を纏いし水色の髪の少女。

 少女は蒼穹のギフトカードより、二刃のカットラスを新しく取り出して、二人の子供に告げた。

 

「もう大丈夫、私が守ってあげるから。それと少し丸まって待ってて、 すぐ終わるから────よッ!」

 

 突風を吹き荒らして廊下を突貫、急停止し正確に手のひらサイズの蜘蛛やサソリを切り裂いていく。圧倒的までに無駄な攻撃はなく、正確な位置を目で捉え切れていないのにも関わらず正確に退治していた。普通、あの速度で動いていたら視界がぶれて細い所まで把握しきれないのに。

 それなのに彼女は疑念すら感じさせない、精密機械のように、数十匹もの怪物たちを斬り殺した。

 廊下はそんな退治した怪物達の多種多様な体液で汚れ、吐き気を誘うような光景だった。故に水色の少女はカットラスを仕舞ってすぐ子供達を抱きかかえ、有無を言わさずに外に飛び出た。

 

「しっかり掴まってね!」

「え、ちょま...きゃああああああ!?」

「うわああああああ、あっはは!」

 

 水色の少女は窓から飛び出ると同時にすぐ大気を蹴って空を舞う。

 そんな浮遊感に子供達は絶句して男の子は、嬉々とした顔をしていた。

 水色の髪の少女は一度、ここから離れる気なのか、南に向かって空を駆け始める。

 そんな少女に女の子は首を曲げて顔を上げ、問いかけた。

 

「助けてくれてありがとうございます............でもあなたは一体 ............階層支配者様の兵隊さんでしょうか?!」

「違うよ!!よっと!」

 

 水色の少女はさらに大気を蹴って遥か空の上まで跳躍すると、言った。

 

「私は鬼理澄舞夏。──────今から箱庭を救っちゃう〝仙神 〞様よ♪」

 

 

 

 

 

#####

 

 

 

 ──────東○○○○○○○外門。〝元〞最前線。

 

 亜音が不自然なことを言ってから数分後。

 すると亜音が先程まで向けていた視線の先、空に一つの影。

 段々と姿が見え、一人の少女が大気を踏みしめてこちらに向かって走ってきていた。

 その少女は着地とともに白い羽衣を消し去って、周りに軽く挨拶代わりのように頭を下げた後、目下の光景に口元をひくつかせた。

 そんな少女へ目下の亜音は声を不思議そうに掛けた

 

「.........遅かったな?」

「しょ、しょうがないでしょ、子供達を避難地まで送ってたんだから─────…………で、亜音は何してるの?」

「ああ、ちょっとな......白雪姫を......医者の端くれとして診断したら、結果がこれ、“元気百倍”!」

「私の素肌を覗き込もうとしただけだろうが」

「質問を変えようか、なんで〝上半身裸〞なの!」

 

 服を着ろ、変態!!と舞夏は怒鳴り、亜音は戦地で大層なマントと長袖シャツを焚き火の前で乾かしていた。

 故に傷だらけの上半身裸だった。

 

「男の裸で騒ぐことはないだろ?」

「黙れ、場所を脇甘えろと言ってるんだっ!周りを見ろ、皆女性だよ?馬鹿なの??アホなの??」

「申し訳ございません、亜音さんを止めなかった私が悪いんです。だからあまり責めないでく」

「なんで貴女が謝る必要があるのですか?」

「そうだぞ、こやつが畜生だからいけないのだ。故にもっと虐めてもいいと思うぞ」

 

 女性店員に舞夏と白雪姫がまくし立て、亜音は一人小さく〝お前ら、初対面なのに噛み合いすぎ〞と突っ込んでいた。

 周囲にいた騎士や兵士達はもう呆れ果ててこの騒動に見向きもしていなかった。ちなみに亜音は大真面目に上半身裸である、決してふざけているわけではない、というのがなおタチが悪いのだろうな。

 

「──────というわけで亜音には常識、紳士の振る舞いや女性に対する態度の認識を変える為の教育係、育て屋が必要です。「ちょと待て?その言い方だと俺がヒモみたいじゃないか、俺はこれでも「そしてこの中では私が一番、相応しいと思うので、私がやります」

 

「ちょっと待ってください!」

「待てッ!小娘!

「なんでしょうか?」

「この中でなら我が一番相応しいと思うがな?」

「へぇーなんでですか?」

 

 舞夏、声はいつもより高いのに、笑ってないよ。と亜音は少し肌寒さを感じた。

 

「我はこいつに幾度となく弄ばれた、その挙句の当てに侮辱まで受けた。拷問、教育に相応しい。何よりストレス発散も兼ねておる。──────なあに、殺さない程度にいや殺すつもりで加減してやる」

「言語がおかしいと思われ「ダメですね。私利私欲が見え見えです──────では次は貴女ですか」

 

 亜音は女性陣に無視されたので仕方なく焚き火の火加減に集中し、いそいそと乾いた服を着込んでいく。

 そして舞夏司会の元、話はどんどんエスカレートしていた。

 

「私は亜音さんのことをこの中では一番理解していると思います」

 

「は?」

「何か?」

「小娘、少し静かにしておれ」

「ぐぬぅ.........」

 

 ──────何このガールズトーク、嫌だ、怖すぎる、これ以上聞きたくない。というか白雪姫の俺に対する偏見がどんどん歪んでいる気がする〜。

 と、亜音は火に集中したふりをしながら、鼻歌を歌う。

 加えて舞夏と店員の、女性二人の短くも低く重い声に、周りの人々も後ずさっていた。ドン引き、というのがしっくりきそうだ。

 だが、この後の女性店員の言葉はさらに《亜音にとって》その遥か上をいく暴言だった。

 

「では続きを。──────その証拠として私はなんでも知っています。生活のサイクルや何を毎日食べているか、夜中までトレーニングしていて、そ のメニューとか、コーヒーの味が幅広いのも知っています「おいそれはどういう「朝風呂が大好きなことも!リリさんの作る唐揚げがお気に入りだということも!〝飛鳥という女性〞とベットで〝間違えて〞!抱き合ってしまったことも、全てです。ふふ、これでも、私より亜音さんのことを理解していると思いますか?」

 

 女性店員はかしこまる様に手を前に重ね、割烹着を抑えながら静かに強くそう最後まで告げた。

 結果は一目瞭然──────皆がその目を見開いて戦慄していた。

 

「うん認めるよ............貴女は正真正銘のド変態だったということをね」

「我もドン引きぞ............」

「へ..................っえ.........え?」

 

 不意に女性店員の肩に乗せられる亜音の優しき手。

 

「貴方に少し聞きたいことが.........」

「あ、あ、あ、あ──────ッ──────〜!」

「え………… ──────?」

 

 

「いやああああああああああアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

 ここ一番での雄叫び、悲鳴?だった。

 と同時に放たれる溝打ち。悶絶する少年A、証拠隠滅を図ろうと動く女性B。

 結果──────亜音はその先のことを覚えていなかった。ということにしている。

 そして先ほどの一連の会話は亜音の夢だったという話になり、どうしたらそうなる?と聞くのは野暮だろう。故に亜音は忘れることにしたのだった。亜音は先ほど乾かしたマントを羽織り、舞夏に問う。

 

「で──────そっちはどうだったんだ?舞夏」

「あーうん、大丈夫。どうにか間に合っ、てないわね。でもまさか三頭龍の分身体でさえあそこまで弱いなんてね、拍子抜けしちゃった」

「それは多分、ノラが言っていたように分裂しすぎて、あいつらは第三世代以降になったんだろ──────下層の人々のおかげだ」

 

その会話に白雪姫と女性店員は──────、

 

(さっきのは第二世代だぞ............)

(亜音さんもそうですが、この少女も桁外れに強い.........、)

 

 と突っ込むものの二人の圧倒的な強者は、

 

「まぁ、そうだけど。ようやく私も〝気〞を扱える体質になったのになー」

「文句を言うな。遅れて来た分、俺達は働くだけだ。─────行くぞ、 舞夏」

「はい、はい」

 

 亜音の擦り切れそうなほどに鋭い覇気に自然とその場の空気が変わり、各々戦いの準備をし始め、早急に終わらせた。

 そして舞夏は亜音より指示を受けてその場から姿を消して去り、亜音は女性店員と白雪姫の二人を連れて急ぎ外門に向かうのだった

 

 

 

 

#####

 

 

 

 舞夏は同じ外門に残り、隣の外門区画より新しく入って来てしまった怪物達の始末に当たるため、隣の外門との境界線まで来ていた。

 そこで舞夏は人の三倍はありそうな人型のトカゲ、赤茶色い皮膚を纏う仁王立ちしたリザードの群勢と遭遇していた。そして厄介なことにこいつらは火を吹くので、歩く火炎放射器だ。ほっとけば街は炎上祭り、故に早期撃墜しなければならない。

 舞夏は知性が薄そうなくせにボス面している傷だらけのリザードと戦っている最中で、取っ組み合いをしていた。外見上、むきむきと腕を鳴らしているリザードの方が押し合いに勝つと思われていたが、 舞夏の余裕の笑みに、リザードは必死そうに地を削って踏ん張ると同時にその瞳は恐怖に揺らいでるようにも見えた。

 他のリザード達も恐ろしげに自分たちより小さい少女を見て呻き、 後ずさって行く。

 だがはっきり言ってもう遅い。

 

「フーン。私をただのすばしっこい美少女だと思って力比べにしたんだね............でも、残念」

 

 舞夏はリザードの両腕首を、キシ、ギシ!!と鳴らしてさらに力を込めていき、リザードを前に押し戻した。

 そして舞夏は不敵に微笑み──────、

 

「遊んであげたいんだけど、貴方ばかり相手してられないのよ、ね!」

「GYAAAaa!?」

 

 舞夏は鋭くリザードの顎を蹴り抜き、その勢いのままバク転で跳躍しながら、双剣のカットラスを腰から鋭く引き抜いた。

 さらにそのまま大気を蹴ってまっすぐ加速し、リザードに肉薄するが、リザードは奇跡にも彼女の速度に反応して片手の爪を光らせる。

 だがそれでも舞夏は止まらず突っ込み──────

 

「フゥンッ!」

「Gaァ!!」

 

 右手の剣閃で受けてパリィし、リザードの爪を後方へ弾くと、右手と左手を仲良く泳ぐ魚の様に並行して構える。そのまま勢いよく旋風を纏いて回転し、二刃でリザードの首と胸部を鋭く切り裂く。

 リザードの脇を抜け出た際に青のパーカーと白い羽衣が揺れ、優雅に着地した舞夏はカットラスの鮮血を振り落とすと同時に、彼女の背後でドサっとリザードが地に伏し、首を転がした。

 

「さて、今ので数秒無駄にしたから、次は二秒で殺す」

 

 カットラスを両手に携え、疾駆する舞夏。

 刹那に羽衣を脇に顕現させ、刃と身体能力を強化し、次の獲物である蛇を見定めると左右に電光石火した後、空より鋭く回転しながら真っ二つに斬り下ろした。悲鳴すら上げることもできずに沈黙した大蛇を見向きもせずに、その地より駆けて去る舞夏であった。

 

(この力は私のもの。“私の意思”で守るために使う。それだけが私の“生きる意味”、──────私の信念なんだッ!)

 

 

 

 

 

 亜音はというと白雪姫と女性店員に見送られて、アストラルゲートを通り、次の外門の区画にやって来ていた。元は多種多様な店が並んで商店街のように賑わっていた場所らしい。が、今では多種多様な化け物が繁殖していて、その数を増やして待ち構えていた。

 亜音はすぐに黒い羽衣を纏いて、探知をし始める。まるでその場所 を見たかのような視覚情報が亜音の中に入り込み、この辺一帯を全て把握し切った。

 

「全部で──────五六二.........三か。一匹増えたな」

 

 亜音は明後日の方向を見ながらも、今現在進行形で襲って来ている敵の怪物達を、黒い霧を鋼鉄からさらに硬度を上げたように黒い霊気を纏った無尽の棘と成して鋭く貫き、正確に怪物達を蜂の巣にして退治していた。

 

「この分だと.........東区画だけで兵力一万を越えるかもしれない」

 

 今日一日でどうにか東は終わらせたい。北のほうにも行かねばならないから。

 亜音は顎に手をおき、少し瞠目した後、考えるのをやめた。

 

「とにかく敵を倒す............一日ぶっ倒れるまで付き合うぞ!化け物共ッ!!」

 

 黒い霧から生成された刀を黒い霊気で染めて黒刀となし、燃え盛る蒼炎も黒い霊気で染めて炎熱の槍と成すと、亜音は輪廻眼を見開いて地を駆け抜けた。

 怪物達、巨亀やサソリ、双頭龍、大蛇などの群勢のど真ん中に鎮座すると、亜音の軌跡が記されるかのように一筋の道の怪物達が炎に燃え、バラバラに切り裂かれて地に沈む。

 相手からの反応を待たずに亜音は、眼前の火を吹くリザードの胸を黒く燃え盛る火炎の槍で貫き、左手の黒刀で漆黒の斬撃を薙ぎ放ち、 横一線で怪物達を真っ二つに沈めた。

 

(トリシューラは作るのにでさえ力を使う。節約しないと.........)

 

 同時に亜音は探知し、己に言い聞かせるような囁きを零し始める。

 これはただのルーティーンや言い聞かせではない──────これまでの人生、その全てに問いているのだ。

 

「あと四七八──────俺は覚悟を決めた、勇気をもらった、力を貰った。ならもう、あとは行動するだけだ。俺は全てを救う!そして全てを正す 俺の邪魔は誰にもさせないッ!!」

 

 そしてその先で待つ〝彼女〞を瞳に想い描いて、亜音は鬼神の如く 殺意を神速で振りかざす。

 彼の前では怪物達は皆平等に塵芥の如く扱われて鮮血を撒き散らし、刹那の内に箱庭から消え去っていく。まさに静かに怒り狂う鬼神、阿修羅そのものだろう。彼ら怪物達は蹂躙されるしかない。しかし亜音は何も感じてはいなかった。強くなった実感も、夢に近づいた実感も何も感じない。確かに強くなったのに、確かに経験力も、知識も、精神力もつけたのに、なぜか冷たい。灰色のコンクリートのような感覚に近いだろうか。

 だがそんなことを考えていても亜音の手は止まることを知らずに、 怪物達を炎で貫き、黒刀でバラバラに切り裂いていく。 ──────まだ何かが足りないのか?!いや、そんなことはないはず、俺は強くなった。理屈も知識も経験も、まだ世界を知ったと言うには足りないかもしれないが、それでも正しい答えを導き、正 せる力を手に入れたはずだ。亜音はより一層、攻撃の手に力を込め、全ての迷いを捨て極限まで集中力を高めていく。その時の亜音の瞳は気持ちばかり、色が薄らいでいたようにも見えたが──────亜音は気にせず紅き殺意を揺らして手を振るっていた。

 〝完璧〞に救って見せる、後悔もしない、失いもしない、絶対に──────。

 

「世界を全てを正し、全てを救うッ!その道にお前らは邪魔だ、俺の前から消え去れ............ッ!!」

 

 己の強さを証明し、正しさを示し、本当に大切な者の為にその先へ──────〝一人の少年〞は一人で沈んでいく。

 

 

 

 

 亜音は不意に問うて、虚無に入る。

 

 ──────その先の、〝その〞とはなんだった........?

 ──────わからない、いや〝理屈〞から考えて夢の前の行程だから…………… ──────箱庭を救うことか、そうだったな。こいつらを殺すことだ。 ──────そして......あれ、夢はなんだった?確か…………戦争を無くすことだったか?──────だがその前に彼女を助けないと。

 ──────待て、その前の前に箱庭を正さなければペルセウスのような屑が。

 ──────〝ノーネーム〞の旗と名を取り返さないと、どこの魔王かを調べれなければ。

 ──────そういえば〝ペスト〞の傷は、同士を失ったばっかりだから側にいてやらないと。

 

 南に現れた巨龍は俺が倒さないと、白夜叉は当てにできないだろうあと怪物達何体倒せば終わるんだ 予想では二万近くだと思うが 、黒ウサギ、いつも元気だな、無理してなきゃいいが。黒ウサギには十六夜がいるから安心か.........。耀は三毛猫を責めてないだろうか、そんなことはしないか、むしろ自分を責めてしまう子か、飛鳥が味方になってくれてるといいんだが、ジンは死んでなきゃいいが、まぁ進んで最前線に立つことはないと思うが 、コミュニティを出た後、新しいコミュニティを築くべきか?リーダーをやるべきか、リーダーは自由に動けないのが難点か、資金とどこの区画に組織を作るか考えないとか、 あと同士の調達、雑用もろとも外から引っ張るか。そういえば南には黒ウサギがいるから審議決議が、幾日かは猶予があるな?十六夜なら巨龍を倒す手段を持ってそう.........?あるかな?南に〝万全〞で行けるのは最短でも三日目、審議決議が発動してるなら余裕か?母さんと父さん、シルバレンは元気だろうか、箱庭と外界を行き交いできる方法を見つけるか?そういえばなんで白夜叉は太陽の主権なんて手に入れたんだ?太陽神に恨みでもあったのだろうか?根掘り葉掘り聞いたら怒るかな? 〝絶対悪〞の三頭龍、その眷属が現れた、復活の予兆か?

と南、北の襲撃、新たな屑どもの産声か?必ず表舞台に立たせてやる。

 

 

──────少年の心は休まることを知らない。

 

 

 思考を止めない、“止められない”。

 それでも少年は戦闘をし続けていた。

 そして何かが壊れ始める、いやもう壊れていた、というべきだろうか。

 

 きっかけはいつかだって?

 母親に殺意を向けられた時か?ちがう。

 カケル君を見殺しにしてしまった時か?ちがう。

 

 その全てが違う。きっかけとはもっと些細なもので、誰もが“持っているような”日常の中で起きる物事。

 崩壊なら既に始まっていたのだ、そして皆が知りたくなかった救世の現実を思い知ることになるだろう。

 

 

 化けの皮が剥がれるとはまさにこのことだろうと、少年の心の奥で“誰か”が笑っていた。

 

 

 




・エンディングテーマ《Blizzard》歌:三浦大知
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