新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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オープニングテーマ《paradise》歌:AAA


さあ、始まりました。
この章より、“本番”です。
こちらは少し短めです。


よろしくお願いします。


エクストラ・プロローグ【沈む世界】

 

 

  ──────黄金の宮殿、その郊外。

 

 宮殿の外は、“雨が降り続けていた”。

 降りしきる雨は、時折その勢いを弱めることもあるが、止むことを知らない。

 ニ日間降り続けるこの異常気象に、流石の戦神もその重い腰を上げるしかなかった。

 曇天の空の下、傘をさした白いスーツのおじさんが喧騒のない街道を一人で歩いていく。

 

(先より降り続ける雨、…………“情報遮断”。亜音に何かが起きているのか、)

 

 それは本当に突然だった。

 蚩尤と亜音、二人の関係性は普通ではない。ミリや子供、ニュンペー達はその魂を六道に委ねている。だが、蚩尤は生きている状態で亜音と同調した。呑まれているとも言えよう。故に蚩尤のみ、亜音の見ている景色を共有できる。だが、今は共有どころから亜音から呼びかけしても返事すら帰ってこない。

 そしてこの世界での“天候”の本来の役目は、亜音の意識がどこまでこの世界に来ているかを具体的に示し、住人に対してのプライバシーを保護していくためのものだった。

 

(二日間にもかけて連絡が取れん、雨は降り続ける…………そして雨の日にのみ現れ、浸水し、噴き出す、”世界の穴”)

 

 世界の穴。晴れている日には影すらない、亜音の精神世界に唯一あるマンホールぐらいの穴。

 見つけたのは偶然だった、突然雨が降り出した時に、子供が一人落ちそうになったことがある。その助ける時に軽く蚩尤も潜ったのだが、数メートル下には一メートル幅ぐらいの階段がうっすら見え、子供を抱えながら進もうとした。

 その瞬間だった──────まるで泳いでいるかのように、階段の周りを“巨大な影”が漂っていた。

 もちろん、蚩尤は子供のためにも即座に引き返した。とはいえ、子供がいたからというだけではない、戦神の蚩尤ですら恐怖を感じた存在、ただのデカブツではないのだろう。

 だが、今は恐怖している場合ではない。

 

(徐々にだが……ワシの感覚に間違いなければ………この都市は“沈んでいる”)

 

 蚩尤の白いズボンの裾が、水面に着いてしまっている。街道を歩いているのにもかかわず、だ。

 この状況が続けば、おそらくこの世界は深海と同じ景色を見せることになるだろう、そうなれば死にはしないが一生溺れ苦しみ続けるか、“アレ”に呑まれるのか。戦神だとしてもこれには流石に見当もつかない。

 故に早急に原因を究明しなければならない、ならば──────飛び込むしかないな。

 

(着いた、カァ)

 

 蚩尤が足を止めた先には、本当に街道の隅に小さな穴が空いていて、水面に揺れていた。

 前回はしっかり観察せずに後退したが、今みれば分かる─────あの先こそ、亜音の真実がある。

 その真実を知ることがこの世界を救うきっかけになる可能性は高い、だが、それは亜音の許可なく勝手に記憶の中を掘り起こすことを意味する。世間で言うのであれば、墓荒らしにも等しい行為だ。悲しみ、怒り、喜び、愛、そして絶望を漁る。─────亜音との関係は最悪の結末を迎える可能性すらある。

 それでも、亜音を“救わなければならない”。─────この世界は亜音そのものなのだから。

 

(まァ、その類は再び戦で解決すればいいなァ。────シカトしたツケは安くはないぞ、亜音)

 

 蚩尤は傘と上着を横に放り、拳を胸の前で鳴らす。

 そして、いざ参ろう!と穴に近づいていった時だった。

 

『─────お待ちしておりました、蚩尤様』

 

 微かな響きだったが、確かに聞こえた少年の声。

 同時に“水面に揺れる穴”から一人の男の子が浮上してきた。

 歳的には亜音に近いというよりは十六夜たちと同い年ぐらいの容姿で、ライトブラウンの髪色、あとはなんといっても服装が年齢に合っていない。喪に臥したような黒いスーツを着用していた。

 

「はじめまして、ボクは此処の案内人をしています。名前はございませんので、『案内人』とお呼びください」

「案内人…………ダァ?ガキじゃねえか?」

「あーこの容姿ですか?お気になさらず。ボクに“人格”はございません」

「……………」

 

 その時、蚩尤は少し眉を顰める。

 ─────亜音が、命を創造し、それに人格すら与えなかったのかと。

 だが、それは杞憂だと少年は首を振った。

 

「ボクは創造されたモノでありません。どちらかといえば精霊に近いのではないでしょうか?それも生まれたばかりの、ですね」

 

 そう言って少年は頭を掻いていた。

 このような仕草からは、とても人格がない、とは感じられなかった。加えて少年は嬉しそうに笑っていた。

 

「今回、此処を案内するのはボク初めてなんですよね、だから少し嬉しいです。それに今日は“二人”も案内するんですから」

「ハ?二人だとォ?」

 

 

 

「あら、気づかれていたのね。………面白いわね、僕っ子くん」

 

 

 

 カツカツ、と突如蚩尤の何も無いはずの背後から足音が響き、白いおじさんは大剣を生み出して構える。

 そうして蚩尤が振り返った先には、もう音はなく、なんの姿もない、代わりにまたもや何もないはずの背後からまた足音が響く。

 すぐさまその脅威を理解し大剣を振りかぶるが、

 

「野蛮なオジ様だこと─────邪魔」

 

 パン!と高速で横なぎに振るった大剣を、ただの平手打ちで弾き飛ばす女性。

 蚩尤はその全てを持って相手の実力を悟る─────化け物だと。

 

「貴様、何者ダ?」

「わー怖いわ〜、でも突然この世界に私がいたらびっくりしちゃうわよね?だから許してあげる。」

 

 その女性は少年と同じように水面の上に浮上したまま、足踏みし、華麗に蚩尤へ振り返る。

 燦爛と靡く黒き髪、細い体型であるが、起伏はしっかりしており、イブニングドレスがさらにその色欲を高めさせる。纏う空気は、妖艶ながらも底は見えず、とてつもなく近くに感じながらも、触れたらこちらの身が吹き飛んでしまいそうな圧力がある。

 そんな女性は、蚩尤にその名を告げた。

 

「カロル・メルス─────カロルでいいわよ、僕っ子くん、おじ様」

 

 そうステップを踏むように軽やかに微笑むカロル。

 最強種の神霊、その中でも最強である彼女は、その在り方ゆえに以前霊格を消失させてしまった存在である。

 蚩尤もそれは見ていたから、この存在を知っていたが、まさか此処で復活して出てくるとは思わなかったのだろう。弾かれた大剣を持っていた手がいまだに震えていた。

 

 

 

「さあ、行きましょう。この世界を識るために」

 

 

 






エンディングテーマ《名前のない怪物》歌:EGOIST



最後までお読みいただきありがとうございます。
ご感想アドバイス、お待ちしております。

また、過去の部分ですが、散乱していて読みにくいと思いますので、どこかでまとめて出します。
それでは次回もよろしくお願いします。
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