新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ 作:行くよ!!!!
今回も謎に迫る始まりのプロローグになります。
色々、描写できていない過去とかありますが、時間がなくてすいませんって感じです。
──────20XX年、外界、地下医療施設。現在時刻、25時すぎ。
「手術は成功です。あとは拒絶反応、後遺症等がないか、定期的に検診に来てください」
「「ありがとうございます!」」
此処は欧州連合特別医療施設。
アスクレーピオスとケーリュケイオンの紋章を刻んだ敷地面積推定140平方メートルの建造物。
その地下にも広大な設備が存在していた。
最先端の通信技術、AI技術、医療、情報、人材が集まってできた場所。
世界有数の起業家も莫大な資産を投資しており、間違いなく世界トップクラスの技術が集まっている場所である。
その地下五階の廊下は、節電のためか天井にある電灯が半分ほど消えており、薄暗い。
少し照らされた静けさ漂う廊下で、榊原明人は二人の夫婦に頭を下げられていた。
「あとは過度な運動も控えてください。お子様のDNAを元に製造されてますが、移植した臓器は培養されてからまだ五年です。言うなれば五歳の大きさの臓器ということです。お子さんは十歳ですので、体に臓器の方がついてこれないでしょう。」
「わかりました。」
「本当にありがとうございますっ、」
少し徹夜通しで疲れ気味な男性の夫に対し、女性の奥様は頬を濡らしながら頭を下げ続けていた。
ようやくお子様の退院の目処が経ち、学校に行けるようになったこともそうだが、不治の病が完治し、この先も生きていけるようになったことが心から嬉しいのだろう。
「それでは私はこれで」
そういって踵を返した明人に、二人はその背中が見えなくなるまで頭を下げ続けていた。
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──────地下医療施設、七階、研究室。
「フゥ〜…………………少し疲れが出たか」
明人は嘆息を零しながら、レザー製の椅子に腰掛ける。
手術は難易度にもよるがそれでも途轍もない集中力を要する。どんな手術も手を抜けば、一手間違えただけで惨状になる。失敗は許されない。
その時少し仮眠を取ろうとした明人の前に、コーヒーカップが置かれた。
「ほら、よ。コーヒーいれたぞ」
「ん?…………アスタか、悪いな」
「その呼び方は慣れねーな。そろそろ普通に呼んでくれ」
「アスタロトなんて、公衆の面前でよべんよ」
「いや、本名はシルバレンだから」
シルバレンはやれやれと頭を振りながら、コーヒーを啜る。
横目でそれを見た明人もコーヒーを啜り、白いデスクにカップを置いた。
「にしても此処は暗くて空気が悪い。よく一週間もこもっていられるな」
「正確には二週間はいるがな。それに意外だな、悪魔はこういう暗がりは好きなんじゃないか、と思っていたが、」
「馬鹿いえ、俺は子供大好き“人間”だぜ?外で遊ぶ方がいいに決まっている。」
「遊び相手が小学生とはな、少し前に誤解でPTA、学校、警察から指名手配された時は笑ったぞ?」
「それを言ったらお前、戦争だろ!」
いい歳した奥様方と鬼ごっこを楽しんだ挙句、警察に捕まったあと、保護者としてわざわざ海外から日本に帰ってこさせるとはこの悪魔め、いい度胸である。
明人はその時のことを眉をピクピクして思い出していた。
だが、そんな楽しい空気も終わりが来た。
「……………裕子はやっぱり連絡もつかないか?」
「ああ、ケータイは圏外。亜音が高校生になってから足取りが掴めん」
明人はクイっとコーヒーを飲みきり、紙コップを握りつぶす。
シルバレンはその様子に先程までのように口を開くことはできなかった。
何せ榊原裕子はこんな明人が愛した人である、巷ではロボットとすら言われるほどに感情に起伏がない。
シルバレンは天井を見て考えるそぶりを見せながら、憶測を立てた。
「………やはり、亜音と“同様”ではないのか?」
「…………………………箱庭、か」
「いつしか言っていたろう?榊原家には“死亡”した“事実”がない。もちろん法律的に死亡扱いにされているだろうが、だがそこまでの過程は全員同じ──────行方不明、だ。」
「……………………」
シルバレンはズレたサングラスを掛け直し、コーヒーを飲み切ると明人と同じように紙コップを握りつぶす。
「さらにこの世界は“おかしい”。神霊に近しい存在が何体もいる。この場合、箱庭側がこの外界を放置するわけがない。にもかかわらず、箱庭からのアクションはなく、唯一の接点といえるのは榊原家のみ。」
手の中にある潰れた紙コップを見つめるシルバレン。
たいして明人は腕を組んだまま、その口を固く結んでいた。
「俺がこの世界に来たのは偶然なのか?誰かが喚んだのか?それは分からん。だが、はっきり分かるのはどいつもこいつも神群にしちゃ“弱すぎる”」
「なんだ?全員に喧嘩でも振ってきたみたいな言い草だな?」
「そうだが?」
馬鹿か、コイツは。と明人は嘆息をこぼす。
何せ、最近やたらと周りからの風当たりが強いと感じていた原因が身近にいたとは思いもよらなかった。この施設の支援を停止した企業もいた。
「で、シルバ。お前は結局何が言いたい?」
「さあな、俺も考えがまとまらんのよ。それに今日はめでたい日だから来ただけだしな」
「あら、それはいい心掛けね。ランドセルにしか欲情できない馬鹿と思っていたけれど。」
「うーわ、お前もいたのかよ、穂乃果」
「当たり前でしょ、私がこの子のお世話を何年やってると思ってるの」
キチキチと少しの金属音と共に研究室に入ってきたのは、車椅子を押して歩く一人の女性。身長はさほど高くなく、一五○センチあるかどうか、年齢は十五才、まだ成人には遠い。しかし生半可な生き方はしていないのだろう、看護服がかなりしっくり来ており、化粧も薄く髪型も動きやすさ重視のベリーショート。顔はハーフを感じさせ、肌は少し白いが違和感はない。
車椅子には全身に包帯を巻いてその上から患者服を着た重傷者。
穂乃果は近くまでくると車椅子の駐車ブレーキをタイヤにセットすると、明人に振り返る。
「明人様、私のために開けといていただけるのは助かりますが、誰がくるとも限らないのでこれからはお閉めになられた方がよろしいかと思います。ただでさえお二人はお口はゆる、コホン、お口は閉めにくいのですから」
「ああ、そうだ「喧嘩売ってんなら買うぜ?おう?」
顎をしゃくれさせ、サングラスを額に持ち上げながら昔のチンピラみたいに詰め寄るシルバレン。
だがそれをそよ風のようにスルーする女性はスタスタと歩き、一つのファイルを明人に手渡す。
「こちらが今日までのまとめたカルテになります」
「………何か変わったことはないか?」
「特にはありません。体の経過は良好で、お顔はもう包帯を取っても大丈夫です」
「そうか、ようやく息子の顔が見れるようだ、これも穂乃果のおかげだ、すまないな」
「いえ、私は拾っていただいた恩を返しているだけです。加えて“肌”のことも…………あの賞に立ち会えたことをとても誇りに思っています」
深々とその頭を下げる穂乃果。
あの賞とは世界的に画期的な医療や記録を残した者に送られる権威でもある。
人類の業を抑止し、かつ病すら治したその功績は生半可なものではない。
神群に属しながら悪魔の烙印を持つシルバレンも、それには驚嘆した。
「俺も聞いた時は、この目で見るまで信じられなかったからな。白い肌を染めるなんて、な」
「へー貴方はそういう事には疎いって思っていたけれど、」
「いやいや、これでも人類の味方だぞ?どんなに遅かろうとも人類の業は減るに越したことはない」
「シルバの言う通りだが、あいにくまだこの部門は未完成だ。年齢制限もあるのに加えて、寿命にはいい影響を与えれていない。」
「それでも私は外を安心して“歩けるように”なりました。本当にあり「あーわかったわかった、それよりも俺の息子の話に戻ってくれ」
これ以上は照れくさいのか、頭を激しく左右に揺らす。
わかりました、と小さくうなづいた穂乃果は車椅子に近寄る。
その様子を見ていたシルバレンが明人に問いかけた。
「あの子が前に言ってたもう一人の息子か?」
「ああ、全身に酷い火傷があったが、奇跡的に助かっていたんだ」
「確か裕子から聞いた話だと、“自殺”未──────いやすまん」
「大丈夫だ。もう前のことだからな。」
「──────お待たせしました。それではご覧ください」
そう言って、穂乃果は包帯を手にして二人の前から横に移動した。
すると、目の前には一人の少年が車椅子に座っていた。
顔しか包帯が取れていないことから、まだ火傷は完治していないのだろう。
それでも顔は少しの傷が残っていても火傷の後は綺麗に消えていた。
そんな一人の少年の顔を見て、明人は急に立ち上がって、少年の頬を撫でる。
「よかった……………本当によかった、」
「はい、体の方も順調です。あとは目を覚ますのを──────」
二人は感極まったように肩を揺らしていたが、シルバレンは違った。
いや肩を小刻みに揺らしてはいたが、その顔からは血の気が引いていた。
「おい、明人………………もう一人の息子って、言ったよな?」
「……………………ああ」
シルバレンの問いかけに穂乃果も明人も変に静まり返る。
物音がしない地下施設は、異様な静けさを漂わせ、シルバレンは背中に嫌な汗をかき始める。
それでも、元人間としては問わずにはいられなかった。
「明人……………その息子の名前を教えろ」
「「……………………」」
だんまりを決め込む二人。
我慢の限界を超えたのか、シルバレンは明人の白衣の胸ぐらを乱暴に持ち上げる。
「おい、黙ってたらわかんねぇだろうが」
「…………………」
明人はシルバレンに逆らうこともせず、シルバレンと視線をぶつけ合う。
だが、その時だった。
「“ディア”、それぐらいにしてやってくれナイカ?」
“ディア” ──────単なる愛称のはずがそれを聞いた瞬間、シルバレンは無造作に明人から手を離した。
声のした方へ視線を移動すれば、車椅子で寝たきりだったはずの少年がその瞳を開き──────連なる黒き輪廻と紫の瞳がシルバレンを捉えていた。その瞳に映るシルバレンは、額の汗を光らせている。
「おいおい、冗談はよせ、……………それともたまたまか?」
「偶然でもないな?まぁ、無理もないか。私の“化身”は奈落に堕ちたからなぁ。加えてこの顔だ」
顔を見た瞬間、懐かしい、とかそういう次元の衝撃ではなかった。
加えて“天界戦争”時の愛称を使ってこられては、さすがのシルバレンも動揺を隠すことすらできなかった。
「とりあえず、私の名を名乗ろう。私は
とりあえずはこれでプロローグは一旦、終わりになりますが、本編を進めながら随時プロローグは上げていきますので、よろしくお願いします。
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またここまでついてきてくれている方もありがとうございます。
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