新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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エクストラ・プロローグ【始まりの少年・六道仙人】

 

 

 世界も時空も、そして───────神話が神話と定義される前の無窮さえも“始まり”を忘れ、“終わり”すら忘れて、争い続ける、奪い続ける、否定し続ける。

 己が存在を高めるため。

 己が存在を肯定するため。

 己が宇宙を確立するため。

 己が領域を拡大するため。

 外界という大海の如く広大な可能性の覇権を巡り巡って。

 彼等は“なんでもあり”の戦争をしていた。

 誇り、尊厳、ルール、そんなのものはない。

 偽り、誇張し、貶め、騙し、裏切る。

 砂粒のように命が舞い散り、廃棄物のように命が焼かれ、嵐に降る雨のように大地に命が叩きつけられる。

 生命に泣く暇などなく、ただこの争いが終わることを祈ることしか出来なかった。

 ただ彼等が居座るだけで荒れ狂う天地、次の瞬間には太陽が大地を焼き、その次の瞬きの間に、落雷が降り注ぐのだ。

 修羅神仏の争い、その眷属達の争い、それらはただ生まれた生命を散り屑のように扱っていた。

 だが、そんな時代に否を突きつけた一つの集団が現れる。

 

 《このまま争えば、星々が滅び、全てが灰に消える》

 《我々は互いを認め、正しい歴史を作らねばならない》

 

 と彼等は叫び、一つの旗を掲げていた。

 だが、混濁する泥水のような争いの最中である、誰が耳を貸せる?

 始まりは誰だ?終わりはどうするのだ?と口々にそれを押し付け、怒鳴り合う。

 始まりと終わりの見えないこの争いに名はなく、時代としての記録もない。

 正しく始まった争いではないからだ。

 始まりを理解できなければ正しく終えることはできない。歴史に残すことはできない。

 争いは争いを紐づける。まさに混沌。

 ならば!と集団達は散りゆく生命を想い、叫んだ。

 

 《始まりと終わりの円環を、その罪、その役目を我らが背負う!》

 

 だが彼ら神仏の集団には、自らの本質を見定める“基準”が存在しなかった。

 故に一つの覚悟を飲み込み、彼等は宇宙に散らばる生命の代表者として─────まだ年端も行かぬ一人の男の子を喚ぶ。

 知識は無く、人格も不完全、感情も豊かではない。

 だからこそ、彼等はその少年を選び、生命の未来を託す。

 十六の混成群の集団である彼等の旗の元に呼ばれた少年は、一つの役割を与えられる。

 

 《始まりを決め終わりを定める。始まりと終わりの定義、役割を決めよ》

 

 だが少年には知識もなければ、人格も構成されていない、そう言われても何も決めようがないだろう。

 故に彼等は、一つの“権能”を与えた。

 

 《私たちを識ることのできる新たな“灯の光”を与えましょう》

 

 十六の柱から伸びる黒い影が集い、二つの影にまた分離し、少年の瞳の光を覆い尽くす。

 少年は暗闇に飲み込まれ、己が命の終わりに絶望を抱き始めた─────その刹那、暗闇に滲み出るように次々と燃え盛る様々な色の灯。

 七色に比べれば、綺麗な色ではないかもしれない。

 それでも少年はその瞳を輝かせ、誰も見たことのない景色──────宇宙が開闢する瞬間を見つめていた。

 だが、その次の瞬間には─────新たな知識と歴史、可能性という情報が大量に頭の中へ流れ込み、彼等のことを“勝手に理解”し、定義し始める。

 それに伴い、あらゆる個性を表したかのような灯の色は、やがて二つの色に塗り分けられる。

 それは白と黒の時もあれば、赤と青の時もある。

 要は人類の主観により“定められている”二つの正反対の性質を最速最短最小で表せるのならば、なんでもいいのだ。

 

 一つの宇宙観、一つの旗印の元に集った彼等の繋がり、歴史を、少年は二つに分ける。

 故に起点が位置付けられ終わりが視えた、この時、彼等の神話はいっときの完成を果たした。

 その結末と宇宙の波動は、全宇宙、神群に伝わり、ここに今、最強の神群が誕生した。

 それをさらに後押しする要因となった始まり終わりの優位性遺伝、光と闇、善と悪を新たに紐付けられ、彼等は一神教に最も近く、世界最古の一神教と人類史に刻まれる。

 

 宇宙観を完成させ、神話の始まりと星の終末さえも定めたその功績は莫大なものになり、あらゆる神話に介入し、影響を及ぼし、争いを平定することになる。

 その圧倒的な影響力になったその一人の少年は、のちに原典候補者として覚醒し、一つの試練と世界を背負うことで完成することになる。

 善と悪、光と闇、創造論と終末論、その間に生まれた新しい人の子。

 

 始まりと終わりを決めた少年の瞳は幾重にも輪廻が描かれ、彼の神話が始まるのだった。

 

 

 

#####

 

 

 

 ─────箱庭座標“XXXXXXXXX”、拝火の都市、城下町の郊外。

 

 

 祭りの喧騒が響き、暗闇を照らすような篝火が遠くに見えるこの場所は誰も立ち寄らない、通らない街の片隅。

 その片隅の小さな広場は、昼間は様々な種族の子孫が集まって色々な趣味趣向を凝らして遊んでいるが、夜になると完全に暗くなるので、誰も来たがらない。誰も来ないから悪魔や鬼達もここには来ない。今頃、鬼や悪魔の類は、その辺の出店で人間の真似をして酒でも飲んでいるのだろう。

 数多ある彼等の影を見て、少年は小さくこぼす。

 

「来るもの拒まず、か……………あのババぁも怖いもの知らずってかぁ?アホらし」

 

 少年の独り言が紡がれると同時に、暗かった広場の中央に焚き火の火柱が静かに燃え上がった。

 その焚き火の近くには、前もって準備してあっただろう小さなテントが張られていた。そこからひょこっと顔と頭だけ出し、熱気で暖を取る一人の少年は、直す気が欠片もないと断言できるほどの寝癖を描いて嘆息をこぼす。

 その嘆息ははたから見れば、独り言に見えただろうが、意外にも焚き火の火柱が小さく弾けた瞬間、怪しげな声が響いた。

 

《お前は文句ばかり言う割に、誰よりも仕事をサボってるだろうが。》

「あー?決めつけは良くなくね?俺だって忙しいんだよ」

《いやどう見ても、一人でキャンプしてファイヤーする、サボり魔で可哀想なぼっちだろ》

「おいあまり無責任なこと言うなよ、完全なブーメランになるぞ、お前」

《それを否定できないのが悲しい》

「なんなら、お前があの長ったらしい会議に出てくれてもいいんだぜ?」

《………………………》

 

 焚き火の火が気持ち小さくなった気がする少年。

 しばしの沈黙が続く中、祭りは最高潮なのか、太鼓の音や喧騒が都市の方より大きく響いてきた。

 

《本当にいいのか?祭りの主役は────俺たちなんだろ?》

 

 そう、今行われている祭りは、少年の誕生祭。加えてこの集団、組織の旗頭である、本来ならば主役としての責務を果たし、舞台挨拶や挨拶回りなどしなければならない。加えて他の組織とも縁を結ぶためにも、そろそろ婚約者探しもしなければならない時期である。────正直、どこの貴族の話だ、って感じである。

 とはいえ、この誕生祭も箱庭に来てから、もう十回目である。修羅神仏達にとってはさほどかも知れないが、人の種である少年にとってはとても長く重い年月だ。その度にこんなに仰々しく“誕生日会”をやられては羞恥どころの話ではない。まして少年はその瞳以外は普通の少年である、周りからの思惑や、いや悪口や噂が一番気になってしょうがない。過去に身に纏っている服や力の強さ、家系、繋がり等の力関係で糞餓鬼共にマウントを取られることが多くあったのもひきづっている。

 それに今頃は、この世界の不思議な力で影武者を立てている頃合いのはず────。

 

《田舎の島国から来たモンキーボーイ、童貞、ビビり、………言われ放題だったから、出たくないのも分かるがね》

「アイツらほんと陰湿だったぜ?もし俺が優しくなかったら、世界は五回は滅びてる」

《おー、意外に謙虚だな?俺なら二十回とか言いそうなのに》

「………うるせー」

 

 唾を吐き捨て悪態をつく少年は、星々を見上げる。

 この世界の星々は外界とは違い、飾りといえば飾り、権力といえば力とも言う。刹那にその輝きを失うこともあれば、座標が変わることが多々ある。人間の常識に当てはまることはできない宇宙だ。にもかかわらず、自分は呼ばれ、神群の中心に祭り立てられた。

 人類の思想と生命のあり方から始まりと終わりを演算し、各神話の終わり方をシュミレートさせ、信仰によって超巨大なパラダイムシフトを起こす。人間風にいえばこう言うシュミレート、観測する役割が、この少年だった。

 そしてそのあり方は各神話にも影響を与え、人類史を中心に世界は回り始めた。

 

「………………そろそろか」

《やっぱり、あの集まりには出るんだな?》

 

 少年は立てたキャンプ用の小さなテントをたたみ、荷物を肩に背負う。

 帰る支度を済ませる頃には、微かに残る火の粉が鎮火しそうで、話し相手の息遣いの気配が小さくなっていた。

 そして、焚き火の灯火が暗闇に吸い込まれそうになった時、少年は言った。

 

 

 

 

「そのために、俺たち………………“榊原亜音”は呼ばれたんだ、当然だろ」

 

 

 

 

 少年こと────榊原亜音は遠方に見える宮殿を目指し、ゆっくりと喧騒の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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