新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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よろしくお願いします。
ペース早めていきます。


第六話「沈黙の爆弾」

「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で我慢してくれ」

 

 案内された和風の中庭を進み、縁側で足を止める。

 障子を開けて招かれた場所は香のような物が焚かれており、風と共に全員の鼻をくすぐる。

 個室というにはやや広い部屋に入る。

 上座に腰を下ろした白夜叉の横に、割烹着の店員が正座した。

 

「もう一度自己紹介しとこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。黒ウサギとは少々縁があってな、コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやってる器の大きい美少女と認識しとおいてくれ」

「はぁ〜…………はいはい、お世話になってますよ、本当に」

 

 こんな空気の中で投げやりな言葉で受け流す黒ウサギに、お世話になっているが同じぐらい苦労させられているのだろうということが容易に良く分かる。

 

「それとだが…………………、先ほどはすまなかった、“つまらん”嫌がらせをしてしまった。黒ウサギ、亜音殿」

「っ、申し訳ございません」

 

 目の前の二人は座ったまま深く頭を下げた。それに対して黒ウサギはあたふたし、亜音は冷静に返した。

 

「いえ、もう終わったことです、それに俺も感情的になってしまい、言い過ぎました、すいません」

「…………ふむ、では、水に流すかわりに────」

「それは“必要”ありません、どちらが先かなんて関係ありません。それは、“復讐”を正当化するようなもの、ですから」

 

 亜音は少し下げてた顔を上げ、満遍の笑みで、二人に言った。

 

「おあいこ、ということにしてください」

「そうか、その懐の大きさに感謝しよう............おんしももうよいぞ、上がれ」

「...............はい」

 

 割烹着の店員は皆に軽くお辞儀をすると、重い足取りで、その部屋を出ていく。

 それを見送るのは、中々、精神に強く罪意識を芽生えさせた。主に黒ウサギと亜音。

 そんな二人を心配した白夜叉は、静かに声を掛ける。

 

「大丈夫だ、あやつもいい年、いい勉強になっただろう。明日には元気になっておる」

「ですが、」

「確かに私達、“サウザウンドアイズ”は客を選んでいる節がある、いやルールにもなっている。だが私がこの“東西南北”で一番治安の良い“東”に求めているのは、“そんなこと”ではない。」

「そんなこと、“ルール”がですか?」

「黒ウサギ、ルールは大事だ。だが、私達の仕事において“外聞”もまた大事。ノーネームと“分かっていながら”名を訪ねる性悪店員、手持ちの少ないお客様を冷やかしに来たような物言いをしてくる最低の店員、などなど、つい最近も中小コミュニティと関連のある大型コミュニティとの取引が“同じようなこと”で流れ、“ルール”に背いたわけではないが件の店員は“解雇”。私もこっ酷く取引先の顧客からも、風評からも、上からも叩かれたな。故に顧客と直接相対する者達にはもう少し“サウザウンドアイズ”の顔だということに自覚と責任を持って欲しいのだ。この世の中、“誰”が見ているか分からん。たとえ“どのような”お客様であっても親身に対応しなければあっという間に顧客は離れていく、ルールさえ守ればいい“商売”なんてものはありはしない。それにおんしらもだ。“ノーネーム”でなくなった時、果たしてあのような対応で未来に、良い関係を築けるかどうか。故にな、軽はずみな発言は必ず未来に軋みを生み落とすだろう────まぁ、今回に関しての風評は全て誰かが代わりに背負ってくれたようだがのぅ〜?」

「ほほん、なるほどな〜」

 

 白夜叉と十六夜の視線につられ、飛鳥と春日部、そして黒ウサギ達も一人の少年を見つめる。

 そんな注目を浴びた少年は、

 

「────たまたまでしょう。それに言いすぎたことに変わりはありません。」

「やれやれ、意外に頑固なのだな、亜音殿は。ではこのような事態を招いた黒ウサギとあやつには、特装で」

 

 その瞬間、黒ウサギのウサ耳が瞬時に反応し、

 

「それ以上は言わせませんよ!?それになぜ黒ウサギの名前が!!」

 

 そんな黒ウサギの言葉に、三人の問題児達が反応を示す。口がへの字になっていた。

 

「「「突然呼び出して湖に叩き落とし半ば騙してコミュニティに引き込もうとし挙句に閉店ギリギリのお店に一緒に滑り込ませるウサギ」」」

「ぅ、すみません…………」

 

 黒ウサギは両手を地につけて落ち込む。

 それを見て苦笑を浮かべ合う白夜叉と亜音。

 と、冗談はそこまでにして、というように黒ウサギは。

 

「ですが、白夜叉様、許していただけるのは助かるのですが……………」

 

 黒ウサギはやはり、その視線を女性店員が出ていった襖を見つめた。罪悪感はそう簡単には消えないのだろう。

 それを亜音は気にしながら自分が“最後に言った言葉”を噛みしめ、立ち上がった。

 

「夜も遅いです────俺が送ってきます」

「いや、そこまでせんでも」

「いえ、自分の言った言葉には“責任”があります、それに俺は別にあの人のことが嫌いなわけではないんです」

「そうか…………ではすまんが、実際少し心配でな。今のおんしなら“上手く”やってくれそうだしのう?」

「さぁ、どうでしょうね」

 

 白夜叉自身、いま現在、亜音に対して信用し過ぎていることを感じていた。

 しかし、それほどまでに亜音の発していた一字一句に、《自分には及ばないにしても》裏付けされた経験値の重みがあった。

 だから、白夜叉は店から終始、外のやり取りの様子を見ていても、店員を助けることが“できなかった”。白夜叉も亜音の言葉に魅入られた中の一人なのだ。この世界であのようにはっきりと当たり前のことを口に出せる人間はそうはいないのだから。

 そんな白夜叉の前で、亜音は立つと、黒ウサギに一言。

 

「少ししたら戻ります、だから、黒ウサギさん俺を待たずにお話は進めてください、後で十六夜さんに聞きますから」

「わかりました」

「おいおい俺かよ」

「ついでに聞きたいこともあるんだろう?ずっと俺を黙って観察してたみたいだし」

 

 亜音の言うとおりで、十六夜は亜音の素姓を探るべく終始、無言で言葉を録音し、弱みを握ろうとしていた。その理由は、ただ、神を思 わせるポーカーフェースのような笑顔をしわくちゃに歪ませ、主導権を握り、困らせたいだけだとされる。言わば心理戦ゲームを十六夜は一人で始めたのだ。

 

「そうだな、でも今は一言言いたいことがある」

「ん?」

 

 十六夜はわざと皆に聞こえるように声を発する。特に黒ウサギに。

 

「隅に置けない野郎だな」

「どうも、褒め言葉として受け取っておくよ」

 

 しかし、容易く亜音はそれを受け流し、十六夜の言葉はただの冗談として扱われる。十六夜と亜音は互いに少し笑うが、心境は別々だ。

 十六夜は子ども扱いされたことに腹わたが煮え繰り返る気持ちになり、亜音はそんな十六夜を面白そうに見つめ、すぐに和室を出て行っ た。

 

 

 

 

 

####

 

 

 

 

 

 割烹着の上に軽い羽織ものを着ている女性店員は、重い足取りのまま、店を出て、そのまま俯きながら街路を歩き始めていた。

 

「...............はぁ」

 

 今の心境は、なんとも言えないものだった。反省ももちろんしてはいるが、少しだけ、いや中くらい、いや結構亜音に対して怒りが向けられている。しかし、それはどこに捨てることもできないし、どうすることもできないと、女性店員は諦めた。

 そこへ後ろから足音と声が響く。

 

「店員さん」

「っ!.........亜音さん 、どうして?」(...............げっ 、ていうかなんで?)

 

 突然の出来事に店員は少し戸惑うが、なんとか心を落ち着かせ、口を動かした。

 それに対して、亜音はいつも通りの笑顔で頭を掻き、返事する。

 

「もう遅いですから、送ります」

「あ、え?いえいいです、いいです。私は別に」

「それに一番は…………………貴方に謝りたかったんです」

 

 女性店員は今の言葉が、さっきほど自分に対して罵倒した人と同一人物の口から出たものとは到底思えなかった。

 それほど、今の亜音は温和な声音だった。

 亜音は店員の前に立ち、深々と頭を下げる。

 

「凄く、…………言い過ぎました、そして自分はただやり返しただけの最低な人間でした、本当にすいません」

「え!?ぇ...えーと............」(この状況、どうすればいいの??許すと言えばいいの?どうみても“上”からになってしまうじゃない!)

 

 さっきの件で懲りている女性店員にとって、今どのような対応をしたらいいのか全然分からないようだ、というよりも頭はパニック状態である。

 女性店員は少し視線を逸らし、街路樹を見つめる。白い電灯の光の下、彼女は、頭を下げる亜音に頭を抱える。

 そして、口を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返した挙句に出た言葉は、

 

「もういいですから、帰ってください」

 

 冷たく返すことしかできなかった。店員にとってこれが精一杯の返しだった。

 目を瞑り、亜音の横を通り過ぎた。 だが、その時、下駄の紐が片方ほどけてしまい、女性店員は真正面から地面に倒れる。

 

「きゃ!」

「だ、大丈夫ですか?!」

「.........痛っ .........平気ですこのくらい────」

「少し動かします、ジッとして」

 

 亜音は転び方と着物の膝あたりの汚れから、大体の怪我の程度を把握し、傷を出来るだけ早く治し残さないために迅速に動く。

 

「え .........キャ!な、なに?!」

 

 亜音は無言で女性店員の膝下に手を差し込みながら肩を抱えて持ち上げる。そのまま街路樹とは反対側の建物の方に歩く。そのまま手際良く、彼女を楽にするために壁に背もたれさせる。

 そして、終始無言で、リュックからガーゼと消毒液、絆創膏を取り出し、女性店員の着物を下から捲り上げる。白い生足が見え、その両膝 に少し痛々しい擦り傷ができていた。

 

(なんてことに、!)

 

 亜音は自分のせいだと、自分たちのことばかり考えてしまったから、こうなったと悔やみながらも迅速に手を動かす。膝を立てさせ、皮膚を伸ばし傷を綺麗にさらけ出させる。

 

「少し、染みます、我慢してください」

「んっ!...........っ」

 

 女性店員は、痛みで顔を歪め少し顔を赤くするが、あまりの手際の良さに、いつの間にか亜音の一つ一つの動作に吸い込まれていた。治 療にかかった時間は数えなくても分かる。一分もかからなかった。

 

「まあ、少しだけ傷が残るかもだけど、お嫁さんに行く時には消えてるよ」

「.........ありが」

「それに下着もいい“趣味”してるから、 ほんの小さな傷跡なんて誰も」

 

 着物をまくったせいで、白い生足の太ももと青いレースの下着が見えてしまい、女性店員は意識をはっきりと覚醒する。

 

「え .........キャアアア!?」

「ぐっはぁ!」

 

 顔を叩かれ、腹蹴りを決められる。

 亜音は少し腹を摩り、女性店員は股の間に両手を置き、女座りして隠し閉じ、頬を赤く染め上げながら亜音を鋭く睨みつける。瞳の端に雫が溜まっていた。

 

「あ、貴方はただの最低な変態だったようね………!」

「あいやーでも、俺はまだ荒削りだけど、結構、色々な人達を性別関係なく治療してきて、女性を相手にする時は逆にそういう冗談を言いながらやってあげた方がお互い抵抗なくできるんだよ、それにそう言うと皆、喜んでたくれたんだけど、今日、例外もあったよ」

「れ、例外ってなによ!例外って!!」

「さてと、どうしますか 」

「............何が、ですか?」

 

 女性店員が今だに不機嫌の状態の中、

 

 

「“裸足”で帰るか、それともお“姫様抱っこ”か、どちらにしますか?」

 

 

 亜音は、満遍の笑みで、眼下の女性店員に問う。

 女性店員は花魁のように乱れていた着物を手繰り寄せて、少し考え込む。

 

「……………っ、」

「どうしますか?」

 

 そして、亜音の笑顔を見て、とうとう悔しそうに顔を歪めながら、

 

 

「...........せ、................せめておんぶでお願い.........します」

 

 

「………ぷっ」

「今、笑いました 」

「いえ、貴方がすごく可愛く見えたので余計なことは気にしないでください。」

「どうゆうことですか?!」

「まあまあ、流石に人気はないとはいえあまり此処に長居するのもよくないでしょう、行きましょうか」

 

 亜音はそう言いながら、リュックを前にしょいこみ、女性店員の前で背中を見せてしゃがむ。その背中を見て、仇を見るような目で少し見つめ、声を発しながら、亜音の首に手をまわす。

 

「お、お世辞はいいです.........どうせ、ダサいとか思っているのでしょう?」

「いえそんなこと一回も思ってないですよ。それにお世辞じゃない────お!これはいい発育をしたお嫁さんに」

「うるさいっ!」

 

女性店員は小さく怒声を上げて、見えない亜音の額を、首に回していた右手で的確に叩いていた。

 

「いっつぅ.....................、でもさ幸せは人によって色々だけど、女性の幸せは、なんといっても『花嫁』、俺が出会った女性や女の子たちは“星を見るように”口を揃えてそう言ってました、貴方もいい人見つけないとですよ」

「こんの!余計なお世話です!!、黙って歩きなさい、」

「あはは、怖い怖い」

 

 そこで亜音はふと思う。過去の悲劇の“彼女”。その子がもし生きていたのなら、今ごろは誰かと結婚して幸せを甘受していたかもしれない。

 その誰かに“自分”はなれなかった。それどころか守ることさえできなかった。そんな自分にできることは、皆が幸福になるのを手伝う以外にないのかもしれない。そして、今日、再確認した自分の夢との、途方もなく見えない方法()と距離に亜音は、ただ哀愁漂う笑みを浮かべるしかなかった。

 その頃、女性店員はドッときた疲れと少しの肌寒さに参るように絶賛、亜音の肩に顔を埋めて、体温を温めていた。“おんぶ”されてわかったが、亜音の身体は鋼のような肉付きをしていて、果てしなく逞しかった。身体がすぐに彼の体温で火照ていくのを感じて、背中もとても 大きいと、彼女は笑顔で心地良さを感じて────────“眠ってしまった”。

 亜音は少し無言で歩いていて、そこで、ようやく気が付く。

 

「あ、そういえば家、何処です?.............................もしもし?、もしもし!もしもし!!」

「........................スゥ......」ちーん

「おい、嘘でしょ?......................」

 

 そして、そこへ畳み掛けるように、タイミング悪く内なる者が覚醒────目覚める。

 

『こいつは傑作!なんだぁー?起きてみたら、まさか女を口説き落としているとはな 、よーしゃ!!このワシが培った夜の十連発砲台で極 上天国行きのテクニックを教えてやるぜ亜音!!』

 

 

  一応────戦神です。いや、夜の戦においても神なのか?

 しばらく亜音は色々と参るように某然と立ち尽くすのだった。

 この後のことを予想して空を仰ぎ、一言。

 

 

 

「ありえんよ………………まじ」

 

 

 

#####

 

 

 

 

 

 その頃、問題児三人は白夜叉が東区画最強の階層支配者と分かる否や、白夜叉へ無謀な挑戦を試みるも、圧倒的な霊格とそれを表現する 広大な白夜の湖畔と雪原を見せつけられ、決闘ではなく、試練のギフトゲームを受けることとなった。その試練を受け、見事クリアしたの は、大人しい女の子、“春日部耀”だった。試練の相手がグリフォンだと分かるや、ビシッと誰よりも早く手をあげ、命を賭けてグリフォンにぶつかって行った。試練の内容は、グリフォンに跨って湖畔を一周という単純明快なのだが、しかし、グリフォンに乗る者を、圧倒的な衝撃波を放つ風圧と体感気温マイナス数十度の温度差、その二つの壁が立ちはだかる。普通の人間では到底耐えられるものではない。落下したら最後、 無残な死体となるのは目に見えていた。

 しかし、最強の魔王と謳われる白夜叉が興奮気味に買い取りたいと言うほどの“人類最高クラス”の恩恵を宿していたおかげで、見事、グリフォンの特性を手に入れると共にゲームを制し、誇り高き幻獣と心を交わした。

 

 そのあと、白夜叉より十六夜曰く「素敵アイテムってことでオーケー?」らしい物を問題児三人は受け取る。

 その素敵アイテムの名は、ギフトカード。正式名称、“ラプラスの紙片”。全知の一端。

 顕現した恩恵を収納することができ、恩恵の名を知ることができる。鑑定をする必要もなく恩恵の正体を大抵、把握できるとのこと。

 

 

  ワインレッドのカード、久遠飛鳥。

・〝威光〞

 

 

  パールエメラルドのカード、春日部耀。 ゲ ノ ム・ツ リー

・〝生命の目録〞

・〝ノーフォーマー〞

 

 

 コバルトブルーのカード、逆廻十六夜。

・“正体不明(コード・アンノウン)

 

 

 そうして、白夜叉の霊格を模したゲーム盤より和室へ帰還し、数分経過して今に至る。

 気だるそうに十六夜が、ボヤいていた。

 主に亜音という名を思い出してから、不機嫌になった。

 

「あー気にイラねぇ...............」

 

 その横で黒ウサギは苦笑し、十六夜は不機嫌そうに心の中でその理由を並べていく。

 まず、年下だからと子ども扱いすること、口には出してないがおそらくしてるだろう。二つ目、自分より強いと思っていること。三つめ、これが一番認めたくないが、何か明確な目的を持って行動している亜音が精神的な面で、自分より遥か先に立ち、見えている世界が数倍、広大だという事実。おそらく、自分と亜音の違いは、目的があるかないか、それだけの違いしかなく、その違いだけで大きく差がある。それに亜音が自分を子供扱いしているように見える理由はそこにあるのかもしれない。

 今の亜音は、世界という広大なものを見ている、だが、そのせいで黒ウサギや春日部、飛鳥、といった身近な者に構っている暇がなく、意識的に見ていないか、見えていないのかもしれないと十六夜は推測する。

 

 

 

 

「はぁー気にイラねぇー.........」

 

 

 

 

 数分後。

 十六夜は前言撤回した。十六夜は今、最高の玩具を見つけたのだ。

 その玩具とは、寝こけながら着物を着崩す女性店員をおんぶした、マジで笑っていない無表情の亜音だった。

 

「「じ────ぃ」」」

 

 十六夜に便乗し、問題児三人は変な効果音を発しながらニヤニヤ亜音を見つめ、黒ウサギは唖然、白夜叉は呆れ返っていた。

 

「お主、見かけによらず、手が早」

「それ以上言わないでほしい、頼みます、いえお願いしますッ!!」

 

 必死か!と突っ込みたいところだろう。

 十六夜の不機嫌は一ミリも残さず消え去り、満足げな顔でケラケラ!笑っていた。

 黒ウサギは、亜音に問い掛けた。

 

「どうして、そうなったのですか?」

「黒ウサギ、説教と何かを悟らせようとしなくていいから」

 

 段々、亜音の顔に影がさし、雲行きが怪しくなってきた。それでも問題児三人は微笑を浮かべる。そこに白夜叉が助け舟を出す。

 

「コホン。黒ウサギ、すまぬが亜音から其奴を受け取って別室に寝かせておいてくれないかの?私は亜音殿と少し話をするのでな」

「は、はい、分かりました」

 

 黒ウサギは立ち上がり、亜音の後ろに回り込み、女性店員を引き剥がし抱きかかえる。

 着物が少々はだけているので、亜音が脱いでいたコートを被せた。

 そこで亜音は、一息つき、問題児三人に並ぶように正座して座る。

 そして、黒ウサギは少し頭を下げて、反転しようとした瞬間、

 

 

「............亜音さ......んの〜............ぃがいにぃ〜大きくて、........たくましぃんです.........ね」

 

 

 一番抜いちゃいけないとこを抜いたファンタジスタは、笑顔で寝息を立てている。

 

「...............」

「............」

「..................」

 

 

 全員が思った。

 今笑ったら、ヤバイということを。

 

 三毛猫でさえ鳴かない。

 亜音は無表情で、この場にいる者に問い掛けた。

 

 

 

「何か言いたいことはある人はいますか〜?」

 

 

 

 静かな圧力が和室を支配したのだった。

 

 

 

####

 

 

 

 

 

 それから、白夜叉による箱庭についての話を亜音は聞いた。数分で終わることだったので十六夜に聞くのはやめて、白夜叉と話をしなが ら聞いた。

 ・箱庭の階層と外門。箱庭の階層を示す外壁にある門を外門。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいる。名のある修羅神仏が割拠する完全な人外魔境。下層と上層の差。七桁から六桁が下層、五桁は中層、四桁より上層になっているらしく、四桁と五桁では天と地の差があるとのこと。

 ・神格。神格とは生来の神様をそのものではなく、種の最高ランクに身体を変幻させるギフトを指す。さらに神格を持つことで他のギフトも強化されることもある。

 その話をしている間。うちなる者は白夜叉を見て、

 

『あいつ幼女のフリして、ワシより歳上のクソババアだぜ!』

 

 もちろん、亜音は無視した。

 そんなことは言われなくても分かる。修羅神仏の世界で最強の幼女は、何千年と生きてきた神、と決まって いるのだ。

 

「さてと、お主にもこれを渡そう」

 

 白夜叉はそう言いながら柏手を打つ。

 すると、亜音の眼前に光が出現、舞い降りて、それを亜音は手に取る。

 それは一枚のシルバーグレーのカードだった。

 

「これは?」

「ギフトカードというものでな、自身の恩恵の名が分かる。さらに顕現した恩恵を収納することができる、優れものだ」

「なるほど..................」

 

 亜音は試しに腰にさしてある刀に、ギフトカードを掲げる。

 すると、光の粒子となって刀は、吸い込まれた。

 シルバーグレーのカード。榊原 亜音。

 亜音は、一覧を見て、ふむ、とうなづいて、カードをポケットへ仕 舞おうとする。

 

「ちょっと待って!」

「ちょっと待ちなさい!」

 

「仕舞うの早いわ!感想ぐらい述べんかッ!!」

 

 飛鳥と春日部が同時に静止の声をあげる。そのあとに続くように白夜叉が突っ込みを入れてくる。亜音はそんな三人を面白おかし 見ていた。だが、内情はよろしくない。その原因の中心はというと──────精神内に声が響く。

 

『お前がボケるなんて珍しいな、何かいいことでもあったか〜?』

『はぁー分かってる??アナタの名前もカードに乗ってるんだよ?すぐバレるぞ?』

 

『あ ...........................おやすみ、ワシは寝るぞーい』

 

 《あ、じゃねーよ》とは言えなかった。そう言いかけてしまう自分に、ツッコミキャラに移転しまいかけた亜音は内心で羞恥と書いた石を積み上 げていた。そもそも、冷静な自分がおかしくなったのは、主に別室で絶賛!寝息を立てていらっしゃる人のせいだ。自分は悪くないのだ。

 そんな中、十六夜が、突如、呟き始める。

 

「炎…………黒い霧、武器の生成または顕現、俺と黒ウサギ並の身体能力、複数所持しているのは明白だろ。区切るとしたら、身体能力。炎に、黒い霧、 武器の生成、確かそれができる“王”が」

「十六夜、ストップ」

「............その反応、図星か?」

 

 亜音は少し息を吐くと、いきなり爆弾を放り込んだ。

 

 

「...............初めましてと述べようか! 問題児ども、クソババア」

 

 

亜音は膝を立て、十六夜のように姿勢を崩し始める。

 その様子に呆気に取られ、皆が目を奪われていた。黒ウサギもそこへ駆けつけて、亜音の様子がおかしいことに気が付く。

 今まで見たことのないような軽薄と邪悪な笑みを浮かべて、亜音は和室でくつろぐ。

 

「あ、亜音さん………?」

「お!こいつは、亜音のことが大嫌いな黒ウサギじゃねーか!」

「ひっ!」

 

 黒ウサギは突如、真反対な性格をした亜音を前に怯え始め、声がひっくり返っていた。

 飛鳥は口の端を軽くヒクヒクさせ、耀はもはや空いた口が塞がらなかった。

 そんな中、十六夜は、冷静に問い掛けた。

 

 

「お前、何者だ 」

 

 

 その言葉に亜音は、十六夜と至近距離で向かい合い、亜音の声で図太い笑い声をあげて、

 

「やはり貴様が最初に気付いたか 、ならばせっかくだ!ワシの名を高々と名乗ろうではないか!」

 

 

「『兵主神』、『五兵の発明家』、『帝王神』、『機動要塞』、『戦神』数多の名を古代中国神話に轟かせた化け物─────『蚩尤』様だァ!」

 

 全員が某然とする。意味がわからないのだ。恩恵の名を言ったのか、それとも、亜音とはまた別人の者が名乗ったのか、正確な判断ができなかった。

 しかし、そこで、雰囲気と姿勢が大人しくなる。

 

 

「........................まあ、こういうことです」

 

 

「どういうことよ!」

「何なですか!今の亜音さん!!」

「ヤハハ、こいつは面白いな!」

「............頭大丈夫?」

 

「説明せんか!というか、誰がクソババアだぁ!!ごらぁああああ!」

 

 亜音の精神内に声が響く。

 

『...............さてと、ワシの役目も終わったし、クソババアとも言えた、やっと寝れるぜ』

 

 外も内も問題児を抱えると、本当に大変だと亜音は身に染みて思うのだが、さて、眼前の嵐のような状況をどうするか。

 それを考えた結果、もう考えるのをやめなさいというお告げを聞いた。

 問題児を前に、自分の思考は、諦めを神託するのだった。

 

(自分の言葉に責任か、………まさにこの状況こそブーメランだな、ハァ〜)

 






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