新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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よろしくお願いします。


第一話「否定する存在」

 

 

 今日は特別の日なのか、やけに騒がしい。

 此処〝仙境蓬莱〞の本拠地には使用人やら兵士やらは一切いないし、もっと言うなら〝上級仙人〞以上の達人、その数人しかいないはずなのだ。

 それなのに建物の中は季節外れの熱気が充満し、尚且つ雄々しい猛者どもの声のせいで境内がやかましかった。ご近所様があったら、大変なことになってたであろう。

 

「どっけえええええええ!!」

「ふざけじゃねーよ!!お前のヨメ様は〝箱庭の騎士〞だったろうがっ!!そんな奴は自分のう○ち(ピー)でも食って、死ねばいいんだ!!」

「といいながら貴様はロリ火龍、サンドラちゃんに人生を捧げるって、仏の前で叫んだではないかっ!!」

 

  ハゲ二人が廊下を疾走しながら口論していた。

 そしてその後ろからもう一人のハゲが、爆走してくる。

 

「〝箱庭の貴族〞、黒ウサギ様はオレの嫁だぁああああああああああ!!」

「「クソして死ねッ!!」」

 

 そう彼らは昨夜に届いた亜音からの手紙を見て、箱庭の貴族が来ることを知り......ウェェエエエイ!?いう風に気持ち悪く狼狽え、 乱舞していた。

 まぁ彼らの気持ちは分からんでもない。

 箱庭の貴族は黒ウサギ以外ほぼ全滅してしまい、彼女自身は白夜叉から提供される仕事柄、認知度が異常に高い。何より彼女は可愛いし、綺麗だ。

 スラーとした背丈やボンキュボンのスタイルは非常に大人っぽいが、仕草や性格はまだあどけなく、守りたくなるようなフェロモンを出している。加えて体術と共に与えられた恩恵も強く、時折凛々しい...............男にとって理想そのものだろう。

 そして彼ら、箱庭の〝外〞に住む者にとって、彼女は遥か遠き土地の人.........いや、遠過ぎた。故に亜音と共に黒ウサギが来ると聞いたとき、彼らは、いや彼らの脳内は炎上したのだ。

 だがそんな三人の前に、修羅のような覇気を纏った二人。少し伸びてきた水色の髪を靡かせ、カットラスの刃を光らせる〝鬼里澄 舞夏 〞と、袖のない白色の武闘着を着こなしている〝臥遠〞が仁王立ちしていた。

 

「仙法・龍刻」

「仙法・白蘭」

 

 臥遠は腰を落として、右手の指を鍵爪のように鋭く立てる。

 舞夏は一本のカットラスを指一本で観覧車のように回転させていく。

 もちろんハゲた三人は共に急ブレーキを掛けている............が、色気付き似合わない服装、くるぶしソックスを履いていたために............止まれねェエエエ!?と叫んでいた。

 溢ればかりの自然エネルギーがこの境内に運び込まれているのか、不自然にも複数の方向から同時に風が吹き込んでいる。そしてその風はもちろん、三人の視線の先にいる二人に渦巻いていく。

 

「────〝爪跡〞(そうせき) ッ 」

「気持ち悪いわ逝ね────〝 一千散華 〞(いっせんさんげ)ぇえええッ!!」

 

臥遠の右手が横薙ぎにキラめき、カウンターの要領で二人共に巻き込みながら左の彼方へ吹っ飛ばす。

 一方の舞夏は弾丸を彷彿とさせる迫力で奴の懐へ入り込むと、すでに八時の角度で回転を止めてあったカットラスの柄の先で、ドッ!と顎をかち上げる。そして彼女は立て続けに右手を振り上げた勢いを利用し、左足を鞭のようにしならせ宣告する。

 

「あの世へ行ってこいヤァアアアアアアア!!」

「ぐっ.........フォッオうううううううぅぅぅぅぅ────…………………」キラーん!

 

 股間を蹴られた哀れなハゲは気持ち悪い悲鳴を上げ、曇天のような霧の中を、見事に貫いていくのだった。

 

「ふっぅ...............スッキリしたぁ.........!」

(亜音、お前は...........................このじゃじゃ馬はめんどくさいぞ)

 

 彼らの成敗に反対はしなかった。いやむしろ、大切なお客様を迎える前に一度喝を入れ浮ついた空気を吹き飛ばす必要がある、そう臥遠は思っていた 。だが、ここまでしてしまうと男としては少し罪悪感が生まれ、はっきり言って────やり過ぎである。二人共に峰打ちぐらいまでに抑えて〝仙法〞を使ったが、本来〝仙法〞は 〝殺す〞 と決めた相手にしか使ってはならない────そのレベルにまで達してしまった奥義の事だ。その判断を下すのはもちろん、初代様である。

 再度思い返してもやはりやり過ぎてしまった────燦々とした笑顔を浮かべている舞夏を見て、臥遠はただ小さくため息を零すしかなかった。と言ってる間にも、舞夏はまたもや不機嫌になって────なぜか胸に両手を当てていた。

 

「あの胸か............あの胸なのかぁあああああああああ!!────ハッ?!あんなエr......くろウサギが一つ屋根の下っ、.........はぁ.........ぁあ、今の内に始末......スルベキカ?」

(聞かなかったことにしよう)

 

 必然的に彼女が面倒くさそうな時は面倒くさい事にしかならない ので、精々巻き込まれないために臥遠は静かに自室へ戻っていくのだった。

 

 

 

#####

 

 

 

 

 ────〝仙境蓬莱〞本拠。和室の大広間。

 

 

 宴会でもしそうな大きな和室。

 そこには長机を挟んで片側には一人が、もう片側には三名が礼節をわきまえて座っていた。

 

「私が此処、〝仙境蓬莱〞を治めている初代仙神・ノラだ。」

 

 最初に口を開いたノラは、客人が来ても相変わらずだった。

 巫女服はサイズが違いすぎて所々肌が漏出してずれ落ちており、渋いキセルを咥えながら、背後では優雅に大きな狐尾を今回は五尾だけ顕現させて躍らせていた。髪だけは気まぐれなのか、小さなポニテー ルにして整えている。加えて最初が肝心だとでも思っているのか、必要性を一切感じない白銀の羽衣をも顕現させて、どれだけ自分が偉大か、迫力で語ろうとしていた。

 それをジン=ラッセルの右隣に座る亜音は、すぐに見抜いた。

 

(俺たちがあの、最強のフロアマスターである〝白夜叉〞様と知り合い.........ということを気にしてのことだろうけど..................世話になっておいて失礼なんだろうけど............白夜叉様と比べると............やはり〝子供〞?)

 

 あくまで白夜叉様と比べる.........とだが、その彼女は仕事だけで功績を積み上げ、その精神は人の心を解きほぐす。好きで馬鹿をやっているのではな...............い、その辺はちょっと断言できないが、少なくとも彼女は気遣いのできる人だ、責任感が強い人だ、そして何より彼女とて自分たちと同じ人格を持っている。

 

 だから、凄いのだ。だからこそ、彼女もまたその偉大な功績を誰にも気付いてもらえない。サンドラの件だって、本来なら彼女の案件ではなかったはずだ。たとえ、東下層を任せられているフロアマスターであっても。亜音の視界であっても彼女は...............背負いすぎに見える。北には複数のフロアマスターがいることが、そのことを示唆している。何より彼女は出来てしまうから.........引き下がれない。先の魔王の襲撃だって、普通ならその件をキッカケにフロアマスターの任を降りてもおかしくはなかった。

 ふと亜音が我に帰る頃には、二人の自己紹介を終えて、本題に入る所だった。

 ノラと対面して座るジンが頭を下げ、

 

「この度は我々、〝ノーネーム〞のコミュニティがお世話になり、大変なご迷────」

「ジン=ラッセルよ、それ以上は言わんでよいわ」

 

 ノラにフルネームで呼ばれたジンは怯えたように背筋を伸ばし、 黒ウサギは肩を揺らす。

 二人は、彼女は気難しい人なのだろうか、とそう思っていた。

 しかしキセルで灰皿を叩いた彼女は亜音に視線をやり、口を開くと同時に亜音から視線を逸らした。

 

「その物言いは我は好きではない.........それでは亜音が悪いように聞こえるだろう。だから、まぁただ礼を述べるだけでよい...............と思うが.........フム、やはり我には小難しいことは分からんな、柄でもないしなぁ、ぅん」

 

 と頬を少し掻くノラ。

 そんな不器用な彼女に黒ウサギとジンは安心したような表情をし、 亜音は小さく微笑む。

 そして三人同時に頭を下げて、〝短く〞お礼を述べたのだった。

 

 

 

 

 

 

####

 

 

 

 

 

「オレ、か、かか、......か」

「早くしろよぉッ!」

「ぅ、うるさいなぁ......っ!わかってるよ.........」

「つ、次俺だかんな......なっ!」

「ぇ、えーと.........?

 

 

 〝仙境蓬莱〞、その本拠地の門前で黒ウサギは三人の坊主頭の仙人たちに囲まれていた。

 彼らは色々とボロボロながらも彼女の帰宅までには間に合わせたようである。

 ジンと亜音は臥遠と舞夏と共にその光景を遠巻きに見ていた。

 

「加減し過ぎたか」

 

 とそう述べながらカットラスをゆっくり抜刀する舞夏。

 臥遠は見て見ぬ振りをしているのか、彼女に背を向けて、煙で何も見えないのに遠くを見ている。亜音の修行以降から臥遠はこの調子で、やはり楽なのだろう。

 亜音はジンと共に苦笑いをしつつも、一人で舞夏の前に立つ。

 

「大丈夫だよ、舞夏。黒ウサギはああいうのに慣れてるから」

「そう?...........でもそれはそれでムカつく」

 

 頬を膨らませてそっぽを向く舞夏。そんな誰かとはまた違った不器用な仕草に彼女の、肩に付くぐらいまで伸びた水色の髪が相まって、時間の経過を感じさせ、亜音は少し寂しく感じた。彼女とはライバル関係であったし、亜音は彼女に負けたこともある。口には出せないが、黒ウサギ達よりも深く交わってきた、かもしれない。というよりこういう彼女の性格のせいで、亜音自身感情的になりやすかっ..................た...............、そうか.........と亜音は何かに気付いて、ポカンとした。

 

(そう............か、.........彼女は少し.........)

 

 ふと赤い何かが風景に紛れ込み、亜音は我に帰る。

 そこには不安そうに見上げてくる舞夏が.........いや、亜音が周囲を見渡すと、みんなが心配そうな顔をしていた。

 何が起きているのか、亜音には分からなかった。

 周囲の情報が一切わからない、指の感覚さえ分からない。

 そんな状況下の中でも、彼女達の声だけは聞こえた。

 

「亜音.........どうしたのっ!?」

「亜音さん.........どこか具合でも.........悪いのですか?」

 

 いつの間にか黒ウサギが眼前に来ていて、舞夏と二人で亜音に詰め寄っていた。

 亜音はというとただ胸の前で、手を振り、二人と距離を置こうとする。

 

「べ、別になんでもない......からさ、少し離れてくれない、か 」

「また隠すのですか.........」

「え?」

 

 黒ウサギから少し剣呑な雰囲気とセリフが漏れたような気がしたが、

 

「もしかして亜音.........気付いてない、の?」

「は?.........だから大丈夫だ......って、だから〝二人〞とも少し離れ.........」

「ふたり?」

「え、そこまで............?」

 

 黒ウサギと舞夏がぼやける視界の中でそうやり取りして、舞夏と黒ウサギは今度こそ言った。

 

「亜音...............なんで泣いてるの?」

「亜音さん、.........皆すぐ側にいるのですよ?」

 

 亜音は目を見開きながら頰に手を当て、その感触に肩を揺らした。

 そして我に帰った勢いでゆっくりと辺りを見渡すと、半円状に均一の距離でみんなが側にいた。

 自分の目を疑い、自分の涙を疑い、亜音はただ沈黙を貫く。

 とりあえずと、黒ウサギが呆然とする亜音を支え、ジンが代わりに転移結晶を起動させた。

 微かに紫色に色付く黒い渦に視界を包まれ、数秒間、暗闇を彷徨う三人。

 そんな中で、亜音はふと懐かしい声が聞こえたような気がし、自分に言い聞かせるように心の内に言葉をこぼす。

 

(分かっているさ............どんな事があっても救うよ......救うことを正当化するために、そして責任を果たすために......わかってる、............分かってるから)

 

 誰かに乞うように紡がれた言葉は深海の底へ消えていく。

 だが、それでもその声は亜音の心に波紋を提起し続けていた。

 

 ─────ああ、君はもう“ダメ”なんだね。

 ─────だから嗤ってあげるよ、否定してあげる。

 ─────君なんかが救世主なわけないのにね?

 

 少女の声がはっきりと自分を嗤い、自分を否定してくる。

 もはや幻聴ではないことを少年は理解していた。

 

(巨龍との一件以降、蚩尤、ミリ、ニュンペーとも連絡が取れなくなった………………なのに)

 

 より一層、昔の記憶が夢に出てくるようになったのだ。

 前々から寝ている時に見る夢が昔の出来事が多かったが、ほぼ毎日、そのような夢ばかりである。

 

(“私”は大丈夫なはず……………私は榊原亜音…………私が榊原亜音なんだ…………!)

 

 亜音がそう言い聞かせると少女の声はもう届いてくることはなかった。

 やっと消えてくれた、と亜音が安堵すると、ちょうどノーネームの本拠地に転移が完了した。

 

「亜音さん、」

「亜音さん……その、僕でよかったら………そのお話を───!」

「大丈夫だよ。俺は一人でも大丈夫だから」

 

 優しい声音だったが、二人の口を明確に固く結ぶ。

 黒ウサギもジンも、亜音と少なからずの時間を共有してきたが、逆により一層少年のことを理解できなくなっている。心の距離があまりにも遠く感じていた。

 仲間であるはずなのに、同志であるはずなのに、少年は“優しく”否定するのだ。

 亜音はそんな二人を無表情に一瞥したあと、二人に背を向けるのだった。

 

 

 

 






とりあえず本編のプロローグの続きですね。
書いている自分が鬱になりそう。
読んでいる人はもっと鬱になりそうですかね?

榊原亜音、救世主、仙術、欧州、輪廻眼、化身、六道仙人、父親の明人、etc

少しずつ物語は収束していきます。
ついきてくださってる方には感謝しかないです。
また感想や評価を頂けることにあらためて、ありがとうございますと言いたいです。

今月中には収穫祭を終えるつもりでいきますので、よろしくお願いします!!
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