新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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投稿遅くなり申し訳ございません。
よろしくお願いします。


エクストラプロローグ【ロストネーム1】

 

 

『オラ、着いたぞ。金よこせ』

 

 このアジア圏では珍しい欧州で使われている英語だった。

 褐色の肌に民族風の衣装を着た一人の男が馬車を引いたまま、手を出し何かを催促している。

 榊原亜音こと少年は馬車から降りて、財布から欧州紙幣を数枚取り出した。

 

『迎えには来れますか?』

『それは無理な相談だな。オレが来てる頃にはてめぇらは死んでる、じゃあな』

 

 森林の影に向かって馬車を走らせ、男は早々に来た道を帰っていく。

 亜音はそれを見送りながら、そのまま天を仰ぎ、大きく嘆息を零した。

 

「最悪だ、………」

「はぁ〜あ、もう着いたの?……………って、なに此処!?」

 

 黒色のウサ耳アクセサリーをつけた赤髪少女が、少年の横で欠伸をしてすぐ目の前の光景に顎を落としそうになっていた。

 現在、少女の服装は紛争地域の教会にいた時の修道服ではなく、現地に溶け込むための衣装を着ている。先進国のような派手な服を着れば格好の的であり、暑いからと肌を出せば虫と一緒に色々なものがやってくるだろう。故にシンプルに茶色の長袖服、黒ズボン、靴は亜音から奪った運動靴。しかしどうしてもということで布帽子ではなく黒いウサ耳のアクセサリーで本来の耳を隠す。教会のみんなにもそうやって素性を隠しているセラリアだが、すでに周りにバレてるのではないだろうか、と常々亜音は思っていた。こんなポンコツに隠せるわけがない、とはいえ外部の人間が掻き回すのもあまりよろしくないので、本人の希望に沿って少年は少女に合わせていた。

 

(外見は可愛い………んだが、中身がなぁ)

 

 と少年は横に立つ絶望したセラリアを見て、現実逃避していた。

 だが、そうも言ってられない。何せ、隣の災害がプルプルと肩を震わせ始めたのだから。

 亜音は我に返って慌てて、地図とコンパスを取り出し、弁明を始める。

 

「い、いや!大丈夫だ!現在地はコンパスを見れば、………あれ磁気不良かな?でも地図によれば“大体”この辺だ!地図には“載ってない町”だが、俺たちの足ならなんとかなるだろう、だからな?………お手柔らかにぃいいいい!?」

 

 

 

 

 

「完全に迷ってんじゃないのよォオオオオオオ!!!!」

 

 

 

 

 

 そう、教会の食糧問題を解決すべく冒険の旅ならぬ、デート旅行ならぬサバイバルに旅立つことになった二人。

 シスターおばさんからのおつかいをこなすために、現地の案内人、商売兼運び屋を使うことにしたのだが、最悪なことに野盗に落ちかけの荷馬車に間違って乗ってしまい、とりあえずその辺の町に降ろされてしまっていたのだ。

 

「ねぇどうして!?どうして!?どうしてなのよぉおお!!」

「し、仕方ないだろ!あいつ、自信満々に『オレ!オレだよ、早く乗んなぁ!』って言ってきたから俺はてっきり」

「それ、オレオレ詐欺じゃぁあん!!」

「ウサギだけに?」

 

 少年は砂の地に向かって思いっきり背負い投げされ、叩きつけられた。

 

「ごほぉ!?」

「くそつまらないしバッカじゃないの!?それどころじゃないでしょ!!?」

 

 亜音は砂を払いながら立ち上がり、目の前に広がる廃墟を見渡す。

 セラリアは青ざめた表情で肩を震わし、言葉を零した。

 

「これ“あにめ”でも見た“せいぶげき”みたいなところでしょ……?完全にヤバい奴らの町じゃない!!?」

「俺たちは完全に網にかかった獲物だな」

「ねぇ、いつまでふざけてるの!?わたしかえりたぁい!!」

 

 セラリアは地団駄を踏むが砂地のため、音はせず、無駄に体力を吸い取られた。

 と同時である、ガシャッと嫌な音がやけに響いた。

 

「お、おい、冗談だろ?」

「…………………」

 

 右も左もわからない土地、地図に載らない廃墟に近い町、磁気が狂う特殊な場所、そして無法地帯。先ほどの荷馬車も迎えに来ることはない。そんな状況でも必ず使う場面が出てくるもの、そう東西南北を指すコンパスをウサ耳少女は帰りたいと言いながら見事に踏み抜いた。つい先ほど背負い投げされた拍子に落としていたのだろう、砂が少し被っていた為に気付けなかったに違いない。

 

「「………………帰りたい」」

 

 これ以上にないほど自分達の首を絞めた二人は怒りすら忘れて、己の願望をこぼすのだった。

 

 

 

####

 

 

 

 

「……………とりあえず、まずは食料と水、物資の確保。情報収集もそれを中心に行いながらも宿と帰るための手段を見つけるぞ、いいな?」

「……………………えらそーに」

 

 砂の混じった風が吹き付ける中、亜音とセラリアは廃墟を散策し始める。

 とはいえ、完全に絶望的ではない。人の気配はする、動物もいる、流通がかろうじて生きているということは小さな町が奥にある可能性が高い。帰る手段も最悪は人の域を超えた力を駆使すれば長距離も難しくはない。だがそれはあくまで最後の手段、目立つ行動をすれば戦争の火種や良からぬものを呼び寄せてしまい、無駄な被害を出す可能性もある。

 だからこそ、目立ちたくはないのだが………………、

 

「クソ……………くそっ、砂………砂ばっか、!」

「……………はぁ、」

 

 隠密どころか、もはやコスプレして目立とうとしているとしか思えないバニーガールが隣を歩いているのだ。

 完全なる人選ミスとしか思えない、なんならセラリアと一緒だったからこうなったと言えるぐらいだろう。

 時折、すれ違う難民達を警戒しながらもセラリアに注意を払う亜音。正直、いつどんなトラブルを起こすかわかったものではない。

 警戒の割合としては周囲三割、思考二割、奴五割、という計算具合。

 少年は周囲に聞こえないように少女の横頬に口を近づけ、

 

「え!?いゃああああ!?」

「っ、お、おい!は?…………は?」

 

 セラリアはあろうことか敵地かもしれない往来で絶叫をあげ、亜音からたった一歩でかつ、尋常ではない速度で数メートル距離を取った。

 右頬と少しの髪を手でさすり、亜音を《信じられない、この変態が!》とでも言いたげに睨みつける馬鹿野郎。

 素早い身のこなしはさすがというべきだが、

 

「アンタい、いま、私にち、ちゅーしようとしてたでしょ!」

「…………………」

 

 あまりにも現実が遠くにあった場合、反論する必要性すら感じなくなるのを理解できるだろうか。

 亜音はとりあえず一歩で瞬時にセラリアの肩を正面から掴み、何かを避けるようにしゃがむ。

 その途端、銃撃音が数回鳴り響き、周りから悲鳴が上がった。

 

「ぇ、………え、え!?」

「落ち着け。俺たちを狙ったものじゃない。流れ弾だ。」

 

 亜音は腰を低くしたまま、周囲の騒ぎに紛れるように建物の影に隠れ、セラリアをさらに奥へ放り投げる。

 

「ぅわぁあああ!きゃっん?!」

 

 セラリアの間抜けな声に吹き出しそうになりながらも、影から騒ぎの中心を見定める。もちろんその目は紫と輪廻でそまっていた。

 場所は食堂と飲み屋を併設した平屋、その近くには出店も見える。

 

『やれやれ〜!!』

『酒のつまみにしてやるから、派手にかませやぁあ!』

 

 騒ぎの中心を囲うように集まっている見物人達から、喧嘩を止めるどころか煽るような、これまた様々な言語の声が飛び交う。

 間違いなく喧嘩ではあるものの、こうも言語が統一されていないとなるとそもそも喧嘩が成り立つのか。

 少年は騒ぎの原因を探ろうと影から少し身を出そうとした瞬間、頭に鈍くて強い衝撃を受ける。

 

「ぃ、ぃいイッタ!?………は!?いてぇ…………お前、」

「一回は一回って私は習ったわよ?」

「…………」

 

 グーで固めた拳をもう片方の手で撫でるセラリア。先ほど投げられたことに対しての報復だろうが、思わず亜音は輪廻眼を収めて唖然とする。なにせ、習った相手が自分より低い年齢の子供、しかもアニメに出てきたクソガキみたいな奴から学んだものである。どうしたらそうなる?と疑問を抱きながらも、一つの疑問が解消された。

 そうか、あそこで喧嘩して奴らってコイツらか、と。セラリアとあそこで喧嘩している賊もどきを一括りにして結論を出す亜音。

 とりあえず、頭を摩りながら、元の騒ぎのあった方へ視線を戻す。と同時に視界の隅を一つの影が掠めた。

 

「っ!?…………なんだ?」

「え、え、いま人が飛んでこなかった??」

 

 セラリアも見たのだろう、さすがの彼女も場所をわきまえたのか、少し戸惑いの声を漏らす。

 だがそれはまだ序の口だった……………何せ、次のシーンでは目の前をロケット弾が通り過ぎていたのだから。

 

「え?」

「やば、!おま、ぇ馬鹿!伏せろぉっ!」

 

 ぼーっとしていたセラリアの頭を抱え込み、地面に伏せた刹那に爆音と共に突風が吹き抜ける。

 砂塵が舞い、あらゆるところから阿鼻叫喚が上がり、騒動が収束するどころかより大きくなっていく。

 

「え、え、え、ぇええ?!」

「静かにしろ、それにこれはただの威嚇砲撃だ」

 

 亜音は着弾した箇所を土煙の中でも正確に見据え、セラリアに告げていた。

 とはいえ、いくら直撃していないとはいえ生身の普通の人間なら、至近距離の爆風だけでも重傷を負いかねない。

 その威嚇のような明確な攻撃からは、百戦錬磨の容赦の無さを感じさせる。

 身動きを取ろうとするセラリアを制しながら、亜音は砲撃元に視線を動かしたが、

 

「おや、お前さん、もしかして日本人かい?」

「え…………?」

 

 突然聞こえた大人の女性の声に、亜音は驚愕する。

 何せここはある種の魔鏡である、日本語でそれも普通の女性の声で話しかけられたら驚きだ。

 顔をどこぞのテロリストのようにバンダナで鼻先から下を覆い、長い黒髪は邪魔にならないよう肩で切り揃えて入るが、手入れは行き届いてないように見える。服装もつぎはぎだらけの民族衣装で、見た目的には完全に難民である

 だが、観察どころか驚いている暇もなく、女性があるものを容赦なく放り投げた。

 

「ウサギちゃんちょうどいい、これ持っといてくれ!私はちょいとブツをとりいってくるよぉ!」

「ぇ、おおお!?ぇえ?!」

 

 ガシャんとセラリアは単発式ランチャーを抱え込むように受け止める。

 彼女が顔を上げる頃には、先ほどの女性は土煙の向こうへ消えていた。

 

「ぇ、ええええ!?これ、どうするのよ?!あ、アンタが持ってなさ」

『おいテメェーよくもやってくれたなぁああ!!』

『お前のケツにぶち込んでやる!!』

「え、!なんかこっち来ちゃってるよ!!?」

 

 セラリアの抱えてるブツをみて、案の定、先の喧嘩の中心にいた輩とばっちりを受けた野次馬どもが怒声をあげて突っ込んできた。

 何を言ってるかわからない上にめちゃくちゃ激怒しているのは伝わってくるため、セラリアはその勢いに気圧されパニックになっている。

 亜音は仕方なくバニーガールとランチャーをそれぞれ脇に挟むように抱え、走り出す。

 

『ガキがぁ!!こんなことしてタダで済むと思ってんのか!?』

『クソ垂らす穴ぁ、たくさん作ってやるからこっちこいやぁああ』

「何言ってるかわかんないけど絶対野蛮なこと言ってるよぉお!」

「ちょっとは静かにしろ!」

 

 少女が涙目になりながら慌てふためく中、少年は追手を体力切れでまくため、徐々に速度を上げながら距離を離すのだった。

 

 

 

 

 






最後までお読みいただきありがとうございました!
今回は短めですが、次回は長めに投稿予定です
よろしくお願いします。

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