新・問題児と人の神が異世界から来るそうデスヨ   作:行くよ!!!!

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第七話「現代に誇りて抱く少年」

 20xx年 10月10日──────12:00。

 

 日本の首都に“中国”より持ち込まれた古代中華神話に伝わる『戦神』の“遺産”。

 その正体は、黄帝が、捕え殺した戦神『蚩尤』の霊媒と肉体だった。

 それをわざわざ集めてしまった人類の歴史学者によって────。

 

『ウォオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 ビル群が並び立つ首都の“ど真ん中”に、“戦神”が降臨した。

 その姿は────足は獣の黒毛で覆われ、歩くたびに地を蹄で打ち鳴らす。胴体は腹筋が割れ胸板も逞しく、体表は茶色。巨躯にしては身体は鍛えているのか、細く締まっている。少し人間の面影を感じさせるようだった。さらに特徴的な極太の捻れ角を左右から生やし、すべてを殺すとい う意思が見て取れる血の瞳を有していた。

 巨躯にしては細いその腕には、その巨躯に見合う巨大な包丁剣をぶら下げている。

 人々は恐れ、逃げ惑う。どこに逃げればいいかなど誰も考えず、ただ道を走る様を神は見下ろすが、全く興味がなさそうに空に視線を移した。

 そして、自身の力を解放する。

 戦神は身体中から黒い霧を溢れさせ、晴天だった空を数秒で覆い尽くす。

 その霧は、もちろん、地を染めようと這いつく。車道と街路をまとめて、埋めていく霧はまるで自然災害の津波を思わせる。

 そして、そこには、一人の子供を抱えて走る父親の姿があった。

 しかし、それをあざ笑うかのようにジリジリ迫ってくる。父親は必死に子供を守ろうと、いや絶対に守り抜くという意思で抱きしめ飽きめらず走りつづける。その時、足を黒い霧が捕らえ、父親は転倒し、子供は空へ放り出される。

 その子供に“明確な意思”を持って黒い霧は襲いかかる。ただ、“命”を喰らうために。父親は黒い霧に飲み込まれていく足など気にせず、子供に手を伸ばす。泣き叫び、子供の名を呼ぶ。こんな形で自分の日常が崩れるなんて思いもよらなかったのだろう。

 理不尽に父親は叫ぶ。

「どうしてあの子が死ななきゃいけないんだぁ────っ!!!」

  視界が暗くなろうとした時、ふと声が聞こえた。

「その通りだと俺も思います。あの子はまだ死ぬ時じゃない────“これからだ”」

 その瞬間、パァァンッ!!という音と共に黒い霧は跡形もなく霧散した。

 父親は眼前に立つ少年の行為が信じれなかった。

 たったの一振り..................手を払っただけで黒い霧は乾いた音を立てて、消えたのだ。

 そしてその少年は言った。

 

「諦めるな、生きろ。それが生きる者の責任、死んだ者達にできる最大の償いだ」

 

 少年は小さな子供を抱えながら、もう片方の手で父親へと手を伸ばす。

 父親は名を尋ねた。恩人にして超人、大志をその胸に秘めた少年に。

 黒い髪を靡かせ、微笑を浮かべながら口が微かに動いた。

 

「名は言えないから、こう名乗るよ」

 

 

 

 

「戦争をなくすために生まれた人の神────『六道仙人』とね」

 

 

 

 

#####

 

 

 

 

 “サウザンドアイズ”支店、和室。

 少し時間をおいて、ようやくその場の空気が落ち着き、亜音は説明した。

 

「どういうことだ?おんしの中に“蚩尤”がおるのは分かったが…………」

(ああ、やっぱり、こうなったか)

 

 亜音は溜息をつく。

 “蚩尤”のことがばれた時のことを予測していた亜音は、予想通りの展開に頭を抱えていた。いわゆる、“芋釣り”。

 

「白夜叉様、“蚩尤”は魔王として有名。“黄帝”さんからしてみれば、 蘇ったと知ったら、即“蚩尤”を狩るギフトゲームを開始しますよね?」

「うむ、そうじゃろうな、“蚩尤”はその霊格だけでどこの“国”とも戦争ができる力を持っておる、“機動要塞”とはよく言ったものよ。」

「そこでなんですけど、このことは秘密にしておいてくれませんか?“蚩尤”も改心して、俺の夢を叶えるために力をくれて生死を共有してくれてるんです。ダメでしょうか?」

 

 白夜叉は少し難しい顔をして視線を横にそらし、扇子で口元を隠す。

 亜音は頭を下げたまま、白夜叉の言葉を待った。

 

「一つ聞く」

「はい」

「お主、バレた場合はどうするのだ?」

「決まっています」

「戦うと?中国の神群と?」

 

亜音は顔を上げ、皆に爽快な自信を溢れさせる顔を見せる。それを見て、大体、答えは分かっていた。

 これまでの亜音を見てきた問題児三人も、黒ウサギも、白夜叉も表情を硬くした。それはつまり、一人で戦いに挑むのだろう、遠くに行ってしまうのだろう、神に逆らうのだろうと。

 みんなの視線を受けて、その期待に亜音は答えた。

 

「全身全霊全力で逃げます♪」

「逃げるんかい!」

 十六夜でさえずっこけていた。

 斜め下の解答に皆がずっこける。

 黒ウサギは呆れて笑っていた。

 

「おっほん、気を取り直して、つまりその時はコミュニティを出て行くのだな?」

「当たり前です」

 

 亜音は即答する。まるで、答えを最初から用意していたかのように。

 飛鳥と春日部は少し眉を顰め、黒ウサギは亜音がいつかコミュニ ティを出て行くことを知っているので、ただ俯きそれを受け入れた。十六夜も同じくだ。

 その様子に白夜叉は扇子を閉じ、目を見開き口を開く。

 

「あい、分かった。このことは口外せん、安心せよ」

「ありがとうございます、白夜叉様。」

「ふむ、ではその代わりに答えてもらおうか、お主のカラクリをのぅ」

 

 亜音はここにきて顔を険しくする。

 白夜叉は最初から口外する気はなく、別の目的のために芝居をしたのだと亜音は理解した。

 わざわざ口止めと話題をそらしてきたのに、そこに戻っては、全部無駄になってしまう。

 だから、亜音は白々しく、決めゼリフのように応えた。

 

「うん奇跡ですね」

 

 その瞬間、その場の空気が重くなる。もはや亜音はほら吹き野郎にしか見えないのだろう。ごまかしは効かなかった。

 白夜叉にしては、目が笑っていない。冗談ばかり言ってると消すぞと言っているようだ。

 

「仕方ないですね...............この事を説明するには、祖先と先代、の話をしなければなりません、少し長くなります。なので、明日、またこちらに来ます」

「今話すのではダメなのか?」

「ええ............そうですよね?十六夜さん」

「........................だな」

 

 十六夜と亜音がアイコンタクトし、亜音は視線を白夜叉に戻す。

 

「それと自分のせいで〝サウザンドアイズ〞全体に迷惑を掛けてしまいました、黒ウサギさんがお世話になっていたのにもかかわらず、本当にすみませんでした」

 

 亜音は土下座をし、白夜叉は戸惑う。

 白夜叉はこちらに非があることを完全に受け入れていた。しかも、 黒ウサギの世話をしているのは当たり前のことだった上に、今日召喚された亜音にはほとんど関係ない話だった。

 それを顔色を見ずに頭を下げたまま読みとった亜音は言葉を続ける。

 

「〝ノーネーム〞に所属している以上、黒ウサギさん達は仲間であり、“ノーネーム”のメンバーに俺個人のことで迷惑を掛けるわけにはいきません。これからもどうか、変わらず黒ウサギさん達、いえ私達に力を少しでいいので、貸しては頂けないでしょうか?、白夜叉様」

 

 黒ウサギは感激していた。飛鳥はこれほど仁義を通す人を見たことがないと目を奪われ、耀は亜音の誠実さに見惚れていた。

 十六夜もへぇーと微笑を浮かべる。

 白夜叉は亜音に暖かい眼差しと笑顔を向けて、即答する。

 

「当たり前だ。そんな心配をするな。私は器の大きい美少女であり、仁義に溢れた美少女でもあるのだ。だから、もう顔をあげぃ」

「ありがとうございます、しかし、〝サウザンドアイズ〞の評判を少なからず落としてしまったことには償わなければなりません。そこで、明日話ついでに、一日仕事をください、もちろん“タダ”で働きます」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 そこで、黒ウサギが待ったをかけた。

 その理由はおそらく明日のギ フトゲームのことだろう。

 それを口に出させる前に亜音は、声を掛ける。

 

「俺は必要ないだろう?それに見に行かなくても飛鳥さんと耀さん、ジン君なら勝てる、それとも俺が応援しないと、まさか負けると黒ウサギさんは思ってるの?」

「いえ、ですが……」

 

 そこで、飛鳥と耀が黒ウサギの後ろに立ち、うさ耳を左右に引っ張る。

 

「いててててて!」

「そうよ、黒ウサギ。私達は負けないわ」

「心配性の黒ウサギ.........天誅」

 

 その様子を見て、白夜叉が首を傾げて、落ち着いている十六夜と亜音に声をかけた。

 

「明日、ゲームでもやるのか 」

「ああ、まあな、だが相手は格下だからつまんねーよ」

「それより、白夜叉様。自分の提案は?」

 

 亜音は上手く話を逸らす。白夜叉がガルドのことを知ったらおそらく、ガルドはチリもなく消されるだろう。証拠など必要なく、その力で。

 十六夜もそう考えたんだろう。だから、格下と言ったのだ。

 

「あ、ああ、そうだったな。.........うむ......その話はまた明日にしよう、明日までに仕事を用意できるか分からんからな」

「わかりました、できれば〝サウザンドアイズ〞の評判をあげるものがいいですね」

「心得た、ではまた後日な」

 

 そこで、話は終わり、黒ウサギは耀と飛鳥に耳を引っ張られながら、十六夜、亜音、白夜叉は支店前に来ていた。

 

「最後に、主に女子二人のおんしらに言っておくことがある」

 

 飛鳥と耀は黒ウサギの耳から手を離し、白夜叉に向き直る。

 

「今のお主達では、魔王と戦えば確実に............命を落とすぞ」

 

 強烈だった。

 飛鳥も、耀も、反論したかった。

 しかし、白夜叉の目がこれまで以上に真剣だった。二人は押し黙る。

 そこに亜音が言った。

 

「だからこそ、俺達は強くなります、それに二人は自分なんかより才能があります、それは確信して言えることです」

「ほう、亜音、もし狂言だったら二人は死ぬぞ 」

「この世界は人を舐めすぎですよ、白夜叉様。人は可能性を等しく持っている、そして、可能性を可能にするには『強き心』が必要、たとえ力の才能がなくとも強くなろうとする姿をみたら他の人はそれに惹かれ力を貸していく、強き心は皆を引っ張り、伝染するんですよ、それを二人は持っている、たとえ“白き夜”より強い魔王が来ようとも負けません」

 

 白夜叉は驚く。最強の魔王を打ち倒すための、白夜叉が思い描いていた真の方法を────────魔王を知らない箱庭を知らない亜音が言ったからだ。白夜叉自身、その方法を見て経験したからその方法を悟ったのにもかかわらず、亜音は経験せずにそう言った。

 白夜叉は、笑う。これだから下層はいい。原石の山だと。

 

「よかろう。では私は待っておるぞ?その言葉を証明してくれる日をな」

 亜音が返事をしようとした途端、飛鳥と耀が割って入る。

 

「覚悟しなさい、白夜叉。私は必ず強くなって貴方を打倒するわ」

「負けない」

「ふふ、期待しておるよ」

 

 そうして、〝サウザンドアイズ〞支店を後にした直後、亜音は嵐に合う。

 

「ちょっと亜音君! 誰が庇ってなんて言ったかしら?」

「そうだそうだ」

 

 飛鳥は本気で怒っているが、耀は悪ふざけで乗っているだけ。見て聞いてすぐ分かった。亜音は視線を動かし、助けを────黒ウサギはダメか、十六夜は問題外だと思い、視線を隣を歩く飛鳥に戻す。

 

「飛鳥さん、ごめんね。でも本当のことだからいいでしょ?」

「え 、ええ、まあ、そうね。」

 

  飛鳥は急に頬を染め俯く。耀も照れ臭そうにしていた。まさか、真正面からはっきりそう言ってくるなんて思いもよらなかったのだろう。二人は先ほどの、白夜叉のキツイ言葉を事実として受け止めていた。白夜叉の強さを目の当たりにしたので尚更だった。そんな中で、亜音は断言してくれた。二回も。そのうちの一回は今、目の前で言ってくれた。二人は素直に嬉しかったが、いきなりなので、どう反応していいか分からなかったのだろう。それを亜音は二人の人間性を理解し悟ってか、話題を変えた。

 

「明日は頑張ってね?これはジン君と二人だけのギフトゲームじゃない。みんなを見守ってるのは自分たちだけじゃないよ」

「了解」

「わかってるわ。子供達が見てる、と言いたいんでしょ?」

「ならいい、これは、逃げられるリスク、報酬やルールを決めなかったから〝自己満足”なゲームになってしまったけど、〝自己満足”なゲームというのは吐き捨てて、自分達の正義をぶつけよう」

「そうね」(言われなくとも......必ず勝つわッ!)

「うん」

 

 二人は微笑み、応える。

 十六夜は星空を見上げながらこれからのことを考えていた。此処からの舵きりが重要なのは明白だからだろう。故に先の一件の揉め事は最初の一手にはうってつけなのは間違いない。亜音と十六夜は静かに視線を合わせて、次へと動き出す。

 黒ウサギはというと……………“亜音”のことを考えていた。〝いつか去る〞そのことを考えると、黒ウサギは少し物寂しく思うのだった。

 

 

 

 

 

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