助けてください
「やっとだ……やっとヤツに引導を渡すことができる……」
俺から彼女を奪ったヤツに、復讐を誓ったあの日から1年もかけてこの復讐の機会を狙っていたんだ。
絶対に成功するはずだ。
思えば生まれ変わったと自覚してからもう20年もたつのか……時間が流れるのは早いものだ。
あれは……そう、公園で遊んでいた時に頭をぶつけていた時に思い出したんだっけ。
この世界に生まれる前……いわゆる前世というものでは、何の変哲でもない普通のサラリーマンだった俺は、通勤中突如としてやってきた車にひかれてそのまま死んでしまった。
その時既に親は死んでいて天涯孤独の身だったから、自分が死んでも誰も悲しまないのはよかったのかよくなかったのか……思い返してて悲しくなってくるな。
記憶を思い出した時は、とても驚いたと同時に転生したことを喜んでいたけど、特殊な力とか特別顔がいいとか、そんなものは何もなかったからすぐに転生チートとかそんな熱は冷めてしまったことはいい思い出なのかもしれない。
それからできるだけ親に迷惑をかけないようにしてちゃんと勉強したりして大きな会社に入って、第二の人生をいいものにしようと頑張っていた。
そして今の職場で、前世でもいなかった念願の彼女を手に入れたというのに、会社の社長の息子である奴に彼女を取られてしまった。
俺に魅力がなかったとかそんなのだったら悔しいがあきらめるしかなかっただろう……だがヤツは卑怯にも彼女の親を人質にとって無理やり俺と彼女を引き離したのだ……絶対許すわけにはいかない。
ヤツのことを簡単に説明すれば金持ちのボンボンの一言だ。
ヤツは、毎年毎年自分の誕生日になると人を集めて大きなパーティを開くということを同僚から聞いた俺は、ネットで毒物を手に入れて暗殺することを計画した。
だが、奴の飲食物に混ぜ込もうとするのは困難を極める、そこで、俺は奴に媚びへつらって奴の側近になることにしたのだ。
1年もかかってしまったがこれで彼女が救われると思うと、今までの苦労が報われる。
暗殺決行は明日だ。
「みんなぁ! 今日は俺の誕生日パーティに来てくれてサンキュー! どんどん食べて飲んで楽しんじゃってくれぇ!」
高級ホテルにあるパーティ会場でヤツが誕生日会の始まりの音頭取った。
もうすぐ俺に暗殺されるというのに……思わず笑ってしまいそうになるがここは何とか堪える。
ここ不審がられてしまえば、今までの苦労が水の泡になる、気を着けねば。
そう自分を戒めていると、奴から声をかけられた。
見ると、たくさんの美女に囲まれてるやつの姿が見えた。
顔をよく見ると、どうも酒を飲んで出来上がっているらしく、真っ赤になっている。
ヤツはハイテンション気味に美女たちの中から俺にこう言ってきた。
「楽しんでるかー? 楽しんでるとこ悪ィけど、部屋にお気にの酒を持ってくるの忘れちまってよう、お前今から言ってとってこい 大至急な! んじゃよろしくぅ!」
そう言ってヤツは美女たちと共に行ってしまった。
今にでも直接殺してやろうかと思うがここも堪える。
ヤツが言うお気に入りの酒というのは、ヤツが自身の父親からもらった酒のことだ。
ヤツの親父は相当な酒好きなようで、古今東西様座な酒を集めていて、ヤツはその中でも気に入った酒を父親からプレゼントされるらしい。
そんなお気に入りの酒を部屋に忘れてきたというのか……ならばちょうどいい、その酒に毒薬を混ぜてしまえばいちいちなにに毒薬を混ぜるかなんて考える必要はなくなる。
事がうまいこと動きすぎて、なんだか不気味だがやらないという選択肢はないだろう。
パーティルームを出てヤツが借りた部屋へと入る。
部屋には大きなカバンが置いてあり、開けるとその中には一本のワインとワイングラスが入っていた。
さすがにワインを開けてまた締めるという手段は難しい、なのでグラスの淵に毒薬を塗ることにする。
毒薬を塗り終えて、鞄を閉じ部屋から出ようとするとドアの前に人がいたようだった。
その時焦っていたのかその人とぶつかってしまった。
「っと、すいません!」
「いえ、余所見をしていた僕も悪かったのでどうかお気になさらず」
ぶつかってけがをさせてしまったわけではない様で少し安心する。
ぶつかった人物を見ると、オールバックの髪にメガネをかけ、スーツをびしっと着込んだ男性だった。
(……なぜだろう、どこかで見たことがある気がする)
「なにか?」
そう思っていると、じっくり見てしまっていたようで不審がられた。
まずい、何か言わなければ。
「いえ、どこかで見たような気がしたのですが、どうやら気のせいだったみたいです」
俺がそう答えると男性は、
「おや、そうでしたか。 世の中には似た人物が三人はいるといわれますからねぇ……っとここで会たのも何かの縁でしょう、名前を
「これはこれはご丁寧に、自分は……」
と自分の名前を答えようとして止める。
男性からとても聞いたことのある名前が出てきたからだった。
(杉下右京……この人は自分を杉下右京といったのか!?)
杉下右京、前世で見ていた刑事ドラマ、相棒に登場する警察官だ。
絶海の孤島と呼ばれる部署、特命係に属している人物で、そのフットワークの軽さと持ち前の推理力で数々の難事件を解決に導く。
たまに暴走することがあるが、刑事の鏡とも言えるような人物だったはずだ。
確かにこの世界に生まれてから相棒を見た覚えがない。
まさか……俺が生まれた世界は相棒の世界だったというのだろうか、もしそうだというならば俺がこの暗殺を成功させたとしてもあっという間に犯人だとばれてしまうだろう。
仮にここで暗殺をやめたとしても、別の事件が起きそうだ。
(一年も待ったというのに……はぁ、 残念だがひとまず今回はあきらめよう。 それよりもまずはこのビルから無事に脱出しなければ……このままでは奴を殺す前に俺が殺されてしまいそうだ)
名乗るふりをして、腕時計を見て時間を確認する。
「っともうこんな時間か、すいません急がないといけないようなので失礼します」
「おやそうですか、お引止めして申し訳ない」
「いえいえ、それでは」
時間がなく急いでいるように演技をしてこの場から離脱しようとするが、杉下さんが思い出したように声をかけてきた。
「おおっと、すいません一つよろしいですか?」
「ええっと急いでいるんですが……」
「すいません一つだけなので……あなたの持っているそれがどうしても気になってしまいましてねぇ……僕の悪い癖」
そういう杉下さんの目は俺の持っている鞄に向いていた。
「ああ、これですか。今回のパーティの主催者が、急いで持ってきてくれと言われたので中身が何かはわからないんです」
とっさに中身については嘘をついたが、すぐに見破られそうだ。
「おやそうでしたか」
「ええそうなんですよ、急に持ってきてくれと言われまして急いでいるんです」
「お引止めして本当に申し訳ない」
「いえいえ」
そう言ってこの場所から何とか離脱する。
途中、トイレに入りグラスに塗った毒を持っていたハンカチで拭って証拠を隠滅するが完全にとはいかないだろう。
だがこれで死ぬとまではいかなくとも腹をこわすレベルまでにはなったと思う。
今回死なれてしまっては困る。
グラスを鞄に直し、トイレを出てパーティ会場に向かう途中入り口に差し掛かったその時だった。
「わーいきれー」
「ほうなかなかの場所じゃのう」
「おいお前ら、あんまりはしゃぐんじゃねーぞ!」
「パーティ会場にうな重あっかな!」
「うな重はないと思いますよ、元太君……」
(あれは……まさか!?)
入ってきたのは五人の子供と髭を生やした中年男性だった。
それだけならば問題はなかったが、一人の少年に目が行った。
赤い蝶ネクタイに大きな眼鏡をした少年だ。
(コナン……なのか?)
江戸川コナン。
名探偵コナンと呼ばれる漫画の主人公で、平成のシャーロックホームズ、見た目は子供頭脳は大人の名探偵、死神などと前世では呼ばれていた人物、彼も杉下右京と負けず劣らずの推理力を持った探偵だ。
(もし彼も本物だとするならば、ここで起きる事件は普通の殺人事件ですむのか……?)
そう戦々恐々していると、俺を探しに来たのか同僚がが俺を呼びに来たようだった。
「あ、いたいた。 おーい ぼっちゃんがお前が来ないってお怒りだぞー早くこーい――半沢ー」
「あ、すいません! すぐに行きます!」
呼ばれたのでいやいやながらも駆け足で向かう。
(どうすりゃいいんだこの状況!?)
だがこの時俺は知らなかった。
ほかにも金田一一もここにいるということを……
(探偵学園Qとか古畑任三郎とかも入れようと思ったのは内緒だ)