青年は、ロンの兄弟槍を片手に黄金の杯で酒を飲む 作:儀田 佳宗
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「おいおい、こりゃなかなか熱烈な歓迎してくれるじゃねぇか、えぇ?まぁ、最近はどこに行っても似たような反応されるけどよォ。」
村の前に現れたのは鉄製の甲冑をまとい、騎馬に乗った騎士達だった。
だが、その顔ぶれの多くには処理していない無精髭が生えていた。さらに、纏っている鎧も元は煌びやかな銀色だったのだろうが、今はくすんでいたり、ところどころへこんだりしており、その姿を見ると騎士と言うよりも賊の方が似合いそうな程だった。
その先頭に立つ男が甲冑の中からさっき叫んでいた男に語りかけている。
「す、すいません!」
「まぁいい、んじゃおめぇ、村長呼んでこい。あと、
「は、はいぃ!!き、厩舎はあちらになりますっ!!!」
男は、厩舎の場所を指さしたあと、そんちょーっ!!!とその場から逃げるように村長の家へと走っていった。
その後、騎士達は厩舎に馬を連れて行き、入り切らない何頭かは柱に手網を括りつけて最低限動かないようにしていた。
そして、年老いていながらも農業のおかげか足腰がしっかりとした老人がどっしりとした歩みで先程の男の前へと行き、膝をつく。
「騎士様方、遠路はるばるご苦労様です・・・」
「おう村長、また世話になるぜ。これが、今回必要になる物資のリストだ。」
そうして男が取り出した紙を村長は戦々恐々としながら受け取り、その内容を見た瞬間目を丸くさせ、怒りをあらわにした。
「これほどっ!これほど必要なのですか騎士様ッ!!今我々はもう自分達の分でさえこんなにはありません!!どうか、どうかご慈悲をッ!!」
「・・・はぁ〜、ったくよォ。いっつもこれだもんなぁ・・・おい村長、こんだけなくても、あるもんは全部出せ。全てかき集めてここに持ってこさせろ。」
「そ、そんなっ!!あなたはあなた方が守るべき民に死ねと言っているのですぞ!!そんな横暴が通っていいはずがない!!」
「ほぅ?それは我々騎士に対する反抗声明と受け取っていいのか?」
そこで、騎士は抜剣した。
「こっちも長旅で疲れも溜まってるし腹も減ってんだよ。先に言っておくが、次の戦場はこの付近だ。この前蛮族共によって占領されたこの村の隣町の奪還作戦を決行する。これがどういう意味か分かるか?俺達が疲労や空腹で倒れたら、次に殺されるのはお前達だ。俺達を空腹にさせたまま戦わせてお前らが蛮族共に八つ裂きにされて死ぬか、それとも少しでも生きる希望を得るために俺達に物資を調達するか。どっちにするかなんて、聞くまでもないだろう?」
まぁ、お前らがなんと言おうと俺達は
「分かったらさっさとよこせ。さもなくば貴様の四肢をもぎ、みせしめとして村の中央にでも飾ってやろう。・・・安心しろ、この前の時みたいにお前らの女子供には手を出しゃしねぇよ。ホントなら、今も隣の家の窓の隙間から覗いてるちょうど食べ頃の女の体を貪り食いたいくらいだが・・・」
男がそう言ってゲスな笑みを浮かべると同時に、
「団長殿、そのような行動は控えて欲しい。それは王命に逆らう行為だ。」
どこからともなく、フードを目深にかぶった騎士が男の前に現れ目にも止まらぬ速さで抜剣しその剣を男の首筋に当てる。
「・・・ほらな、なんでか知らんが旅の途中にこいつがいきなりやって来て、『王命により、貴殿らの行動を監視させてもらう』なんつー訳の分からんことを抜かしやがった。いわく、俺達の団には問題行動が多すぎるために王から直属の監視を付けられたそうだ。全く、女漁りなんてどこの団でもやってる事なのに、どこでヘマしちまったんだか・・・」
そう言いながら、男は抜剣した剣を腰に戻した。
「だが、実力は相当なもんでな、こいつのせいで女遊びが出来なくなってそれに対して不満に思った1人がこいつを殺そうとしたんだが・・・自分でも訳が分からんうちにそいつは細切れにされたよ。躊躇なんてありゃしなかった。だから、俺たちゃこいつの前ではいい子を演じなきゃならねぇんだよ。」
そう言って男は両手を上げた。すると、抜剣していた騎士も剣を鞘に収めて厩舎の方へと歩いていった。
そして、団長と呼ばれた男は先程の光景に唖然としていた村長に向き直り、言葉を続ける。
「ま、村人に直接的な被害をもたらすことはしないと約束しよう。だが、お前達の方から反抗的な行動をした場合は・・・」
男は、一気にその目を鋭くさせ、
「・・・その者とその者の家族を問答無用で叩き斬る。こっちもさすがになりふり構っていられないのでな。」
そう言い残して自分の馬を厩舎に連れていった。
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その様子を遠くからうかがっている影が3つ。
「・・・なぁ、あれって騎士だよな?声でかいから多少は内容が分かったけど・・・ひでぇ横暴だな。どう見てもあの村長を脅迫してるようにしか見えない。」
ガレウスは昼におこなった目に魔力を集めるという行為を少し変えて、それを目と耳に使用することで少しながらも会話を聞くことができていた。
「しまった・・・今日は色んなことがありすぎて、騎士達が来るのを
はい、うっかり頂きましたッ!!
「・・姉さん、またうっかりですか・・・」
またって!またって!?
「不味いわね、家の食料は一応バレないように隠してあるけど、私たちがいなかったら他のものも荒らし放題されちゃうわ・・・」
「え!?ちょっと待て、あいつら無断で家に上がり込んでくるのか!?」
「そうよ、ほんっとに!こっちにとってはいい迷惑なんだから!!」
えぇ・・・マジか・・・
The不法侵入じゃねぇか・・・
なるほど、これが魔王討伐のためという免罪符を掲げ、他人の家に上がり込んで棚を漁り、壺を割るという行為を繰り返すゲームの勇者の実写版か。
俺もゲームではアイテムを取るためにそんな行為をしていてたが・・・・・なるほど、やられる側はこんなにも胸くそ悪いものなのか。
もし、またゲームをする機会があったら、ゲームの進行が出来なくても他人の家に上がり込むのはやめよう。
「あれ?なんか今、こっち向いたような・・・」
リンがそうつぶやく。
すると、リンが見ていた相手が複数人の仲間たちに話しかけている。
そして、それを見た団長がその会話の中に入っていった。
「一体、何を話しているんでしょうか・・・?」
「さぁ?おおかた、飯は何にするかとか話しているんじゃないのか?」
すると、団長が
「なっ!?」
「うそっ!?なんで!?」
「あ!ね、姉さん!け、煙!!お肉が放ったらかしにしてたせいで燃えて煙が出てます!!」
「あっ!!お肉ぅぅぅううう!!!!!」
急いで、火が燃え移ってしまった肉に水をかけて消すが、もう原型も留めないほど丸焦げになってしまっていた。
「うわぁぁあ、私のお肉がぁ・・・」
「ま、まぁしょうがないよ。ほら、まだまだお代わりあるんだし・・・」
「もうおしまいよ・・・騎士達に見つかったら無理やり・・・」
「よォ・・・村のみんなは必死こいて食料隠してんのに、あんたらは呑気にわいわい野外パーティかい?」
後ろを向くと、数百メートルは離れていたはずの場所にいた団長がいた。
「お?なんでこんなに速く距離を詰められたかわからんっていう顔だな。まぁ、そいつは騎士の秘密ってやつだな。スマンが言うことは出来ん。・・・なぁ、その肉、もちろん俺たちに渡してくれるよなァ?」
そう言って、俺たちに対して手を差し出してきた。
「おいおい、人のもの横取りするなんて、今どきガキでもしねぇぞ?」
もちろん俺らは抵抗するで!!
内心ガックガクだけど、なんとかそれを悟られないように隠す。
「あのなぁ・・・」
そんな俺を、団長は底冷えする冷めた目で見つめてきた。
「俺ァ言ったよなぁ?反抗するならその家族もろとも斬るってよォ。別に、お前が少し力があるからって舐めてんのならいいけどよォ、そんときゃ、そこの2人の首が飛ぶぞ?」
その言葉とその態度にあまりにも大きな憤りを感じた。
「さっきも俺たちの接近に気づいていなかったようだし、この距離ならお前が反応する前にこいつらをぶった斬ることが出来る。どうだ?それが嫌ならさっさと渡せ。」
「・・・なんで・・・」
「あぁ!?まだ文句でもあんのか?」
「なんでそんな簡単に守るべき民を盾に取れるッ!?お前らおかしいんじゃないのかッ!?騎士っていうのは国民守る盾だろうが!それがこんな横暴して恐喝まがいのことしといて!情けねぇとか思はねえのかよッ!!!!」
思ったことが、口をついて出てくる。
俺のその言葉に、男は怒る・・・・・かと思えば、不思議そうな顔をしていた。
「あぁ?何を今更・・・・・ちょっと待て、おめぇどこの出身だ?」
団長は、俺の装いを見てこの辺りの人間じゃないことが分かったようだ。
もちろん、こんな暴漢共に教えるつもりはない。
「誰がお前らみたいな奴に教えるかよ!」
「質問に答えないならば隣のガキの首を切る。」
即答だった。こいつは、一切の躊躇い無くリン達の命を取引材料に使った。
卑怯だ!!と言いたかったが、質問の答え以外の回答は認めないという目で睨みつけて来たため、仕方なくリンに教えた町を言った。
「・・・・・東端の港町だ・・・」
「東端の港町・・・・・確かあのあたりは、メルクスかヴィナバージか・・・・・・なるほどなァ・・・」
途端に男の目は睨みつけてくるような目から、嘲笑や侮蔑の篭もった眼差しに変わった。
「そりゃあ分かるわけないわな・・・
そして、俺の事を《坊ちゃん》と呼んだ。
「ッ!!なんでいきなりそんな呼び方になんだよ!!」
「そりゃお前がこっちの事情も知らねぇで首突っ込んできた坊ちゃんだからに決まってんだろうが!!」
そして、俺に諭すように、子供に丁寧に教えるように言った。
「お前はどうせなんにも知らないだろうから教えてやるよ。俺たちはお前らと違って毎日毎日が生きていくのに必死なんだよ。各地でもう10年も不毛が続き、明日生きていく食料も手に入れられない。ガキは生まれた瞬間から苦痛を味わい、飢えに泣いては親を困らせる。そんなガキどもも、10年後生きてるのは2割も居ないだろうさ。騎士達は毎日死と隣り合わせの生活を送っているにも関わらず、支給されるもんと言えばいくばかの金とくっだらねぇ名誉って言う名の枷だけだ。お前さんの所は畑がなくても水産資源で魚や塩がいつでも手に入って飢えることは滅多に無いらしいじゃねえか?そんなだからお前さんは地獄を超えてきた俺らにとって坊ちゃんなんだよ。」
実際にどうかは知らないが、この騎士達にとってはそういう認識なのだろう。
だが、俺には一切関係ない。
「それでも!!いくらなんでも横暴がすぎるだろ!!お前はお前らが守るべき民に対してその地獄とやらを歩ませるようなことしてんだぞ!!」
そう言うと、団長は呆れた目をしてガレウスを見る、
「あのなぁ・・・さっきから俺達がやってる事が横暴だなんだって言ってるけどよォ・・・流石に坊ちゃんのお前でも知ってるだろ?これは、
「・・・・・は?」
俺は、その男の言うことを理解することが出来なかった。
アーサー王・・・直々の命令・・・・?
あ、アーサー王って・・・アルトリアだよな・・・?
アルトリアが・・・・・こ、こんなふざけたことを容認どころか自ら命令している・・・・・?
「いや、は?はこっちのセリフだぞ?何ほうけた顔してんだよ・・・・・・あぁ、そういやお前んとこの領主イカレ野郎だったな。確か、アーサー王に心底酔心してるらしいじゃねぇか。全く、このご時世そんなこと思えるなんて、狂人か色物かっての。」
なおほうけた顔をしている俺に、団長は続けて口にする。
「まぁ、狂った領主にどんな教育受けさせられてきたのかは知らんが、アーサー王にとって村の1つや2つ干上がらせるのは
・・・やめろ・・・・・
「酷いときゃわざと敵を村に誘導して、相手が村の人間や物資に夢中ななっている所を後ろから奇襲、なんて作戦もあったな・・・本当に、
・・・やめて・・・くれ・・・!!
「ほんとに、『明日勝つための措置だ。皆耐えてくれ』なんて言われた日にゃ、明日勝った後に一体何が残る、一体、いつまでその明日を続けにゃならんと思ったな。・・・あれは断じて人ではない。国を守るだけのただの
彼女を・・・貶めるのは・・・やめて・・・くれ・・・
その言葉が、どうしても言えなかった。
結局、何も知らない自分には本当に地獄とも言える場所をいくつも通ってきたこの人たちに口を出すことは出来なかった。
当たり前だ。
何も知らない子供が、やれ税金を無くせだの物価を安くしろだのと言っているのと何ら変わりない。
ただの子供の戯言だ。
そして、俺は何も言い返すことが出来ず口をただぱくぱくさせるだけだ。
「まぁ、その人形さんのおかげで俺らも好き勝手させてもらってるけどなぁ。んじゃ、こいつは貰っていくぜ。」
「あ、そ、それは姉さんの・・・」
男が手に取ったのはリンがまだ焼いていたちょうど食べ頃の肉だった。
「や、やめ・・・」
流石に子供のものに手を出させるのは容認出来ず、待ったをかけるが・・・
「いいの!!・・・騎士様、どうぞ全て持って行って下さい。私たちではとても食べきれそうにありませんでしたから・・・」
リンは逆に、差し出すようにまだ生だった肉塊も含め全部の肉を騎士達へと渡した。
「おぉ、そいつぁ貰ってやらねぇとな。良かったな、せっかく取った獲物が無駄にならずに済んで。」
ガハハと笑いながら団長と騎士達が村の方へ戻っていく。
それを見送ったあと、リンが頭を下げてきた。
「ごめんなさい、ガレウス、ブロウ・・・あなた達の了承も無く勝手に渡してしまって・・・」
「姉さん・・・私は大丈夫ですよ。私たちのこと、守ろうとしてくれたんですよね?ガレウスさん、まだお腹空いてるでしょうけど、どうか姉さんを許してあげてください・・・」
「あ、あぁ・・・あのままだったら俺もちょっと、自分を抑えられそうになかった・・・この中で1番年上のはずなのに・・・・俺の方こそ、すまなかった。」
この中で1番年上だと言うのに、リンに止められるまで暴走していたと思うと、自分が情けない。
「でも、まだお腹すいてるわよね。ちょっと待ってね!騎士達が寝静まった後に隠してる貯蔵庫あけるから。」
それじゃ、一旦帰りましょ?と言うリンに俺は、先に行っていてくれと言った。
「少し・・・頭を冷やしたい・・・1人にしてくれないか?」
リンもブロウも少し心配そうな顔をしたが、リンがわかった。じゃあ、私たちは先に行ってるから。・・・あまり遅くならないでね、と言ってブロウも一緒に連れていってくれた。
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突然だが、火はいいものだ。
見ているだけでも心が落ち着き、そのパチパチという音にはある程度のリラクゼーション効果があるとされている。
そして、ガレウスはさっきまで肉を焼いていた火を見ながら、先程の騎士達の言動を思い出す。
『アーサー王にとって村1つ干上がらせるのは
『酷いときには村の人間を巻き込んで囮にし、奇襲をしかける。』
『その全てが
・・・・・そんなことをして、一体なんの意味があるのだろうか?
それは、
国とは、土地だけでなく、民があって初めて確立されるものだ。
それがどうだ。騎士達が横暴を働き、民達はそれと敵からの脅威に怯えながら過ごし、子供たちは栄養失調で死んでいく・・・
こんなもの、独裁政治も甚だしいじゃないか・・・
選定の剣を手に取る時、彼女は言っていたじゃないか・・・
『・・・多くの人が笑っていました・・・それはきっと・・・
・・・今、民から笑顔を奪っているのは・・・あんたじゃないか・・・
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そうやって、かれこれ数時間も落ち込んでいると流石に周りは真っ暗になっており、これ以上外にいるとリン達にも心配を掛けてしまうので、しけた面のまま、残った火を消すために水を汲みに行こうと立ち上がった・・・・・・・・・・その時だった。
「失礼」
「うおっ!!」
その時、一切の気配なく火の明かりの中に人が入ってきていた。
「ちょ、やめてくれよ・・・・心臓止まるかと思ったぞ・・・」
そこに居たのは、フードを目深に被った1人の騎士だった。
「・・・無礼を詫びよう。しかし、貴殿はここで何をなされていたのだ?」
確かこいつは・・・なんだったか・・・・・監視役?だっけか。
だが、こいつらは人から平気でものを取るような奴らだ。
「別に、なんでもいいだろ?お前こそなんで来たんだよ。」
そう言うと、監視役はこちらに向けていきなり
「私は貴殿に用があってここに来た。・・・いや、正確には、貴殿の持つその
いきなりのことに、言葉にならない驚きを隠せない俺に、そいつは畳み掛けるように言った。
「要件を言おう。私は、貴殿に決闘を申し込む。」
月明かりの元、焚き火は静かにその煌めきをなくした。
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