青年は、ロンの兄弟槍を片手に黄金の杯で酒を飲む 作:儀田 佳宗
いやね、言いたいことは分かるんだよ。
でもね、俺は囚われてしまったんだよ・・・
《読み専》という名の呪縛に、ね。
それからはほかの作品にうつつを抜かして毎日ランキングをチェックする毎日だったんだ。
・・・でも、俺分かったんだ。
皆が俺の事をどれだけ応援してきてくれたのかってことが・・・さ。
だから、俺、皆に言いたいことがあるんだ。
・・・・マジすいませんでしたッ!!
(´•̥ω•̥`)<スイマセン!!
前の延長にも懲りずに今回も伸ばしてしまってマジごめん!!
こんな俺でも、作品に罪はないから読んでくれたら嬉しいな!
・・・はい?
「そんな、訳が分からないよぉって顔されてもねぇ・・・」
「い、いやだってそうだろ。それこそわけわかんねぇよ・・・だって、そもそも俺には」
「魔術回路が無い。」
俺の言葉を先回りしてマーリンが言う。
「そう。そもそも魔術回路が無ければ魔法陣どころか魔術の魔の字も使えないし、魔力すら身に宿せない。」
「分かってるなら・・・」
「だが、私は
・・・は?
「え?どういうことだよ?魔法陣描いたのも俺だし、詠唱したのだって俺だぞ?それなのに起動したのが俺じゃないって・・・」
なんだ?あの部屋に俺以外の誰かが隠れていたとでも言うのか?
ま、まさか!?闇の組織の陰謀が・・・
「ないよ。」
「デスヨネー。」
ならどういうことだ?
「確かに、魔力源がなければ術式は起動しない。だが、逆に言えば
・・・?
「は?だから魔力源がないじゃん。」
「いや、君もいつも見ているものだよ?」
・・・??
「・・・すまん、考えても訳分からんから教えてくれ。」
「いや、考えるもなにも君たちの時代でも神秘が色濃く残っている存在だよ?」
「・・・いや、だからなんだよ!?」
怒鳴ると、彼は馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
こいつ正解言う気ねぇだろ・・・
「いやぁ、この時代でも見れるんだけど・・・ほら、いつも夜空に浮いてるアレ。」
アレ・・・って!!
「まさか、月か!?」
「そうそう。人類未踏である今よりは神秘が薄いかもしれないけど、それでもアレは地球の抑止力とほぼ同じ神秘を持ってるからねぇ。ほら、君たちの時代でも聞かないかい?
偶然の要素多いな!?
いや、でも神隠しって・・・
「日のない所に煙は立たないのと同じで、元がなければ噂も立たないよ。それに、星の内包する神秘は人や神々のそれとは訳が違う。ある意味、ありとあらゆることを成し遂げてしまうようなものさ。」
・・・なるほど。
「ということは、俺が自分で描いた術式に月の光が無理やり魔力をねじ込んだことで勝手に魔法陣が起動した、ってことか?」
「まぁ、簡単に言えばそういう事だね。で、君が刺したエクスカリバーが起点になって座標がこの時代子の場所に確定されて飛ばされたって事さ。」
・・・うん。
「これまでの事も考えると・・・確率やばくね?」
「狙ってやったんじゃないからねぇ。あ、あとこっちにやって来てからの出来事は召喚時に起きた弊害のせいだよ。」
?弊害ってなんだ?
「まぁ、どんな形であれ君は一度抑止力という強大な力のうねりを通ったんだ。ということは、この英霊召喚の七つの筐のようにクラススキルのようなものが付与されるはずなんだ。そして、君の場合はそれが幸運を上げるようなものだったんだろうね。」
・・・マ?
「・・・え?じゃ、じゃあなんだ?俺がこっちに来てから聖杯やこの槍を拾ったり、来たばっかりでアルトリアに会えたのはそのスキルのおかげってことなのか?」
「まぁ、幸運っていうスキルは付けやすいからね。実際に目に見えて強力だったりする訳じゃない曖昧であやふやなものだから。でも、だからこそ今の人の数よりも自然の数の方が多い時代では強力なものになるんだよ。普通、過去から未来に持ってくるものだからね。」
「なるほどな、通りでこんなに出来レースみたいにことが上手く運んできたわけだ。」
「でも、その幸運も長くは続かないよ?」
・・・まぁ、そりゃ幸運はあくまでも幸運だからな。
「あぁいや、そういう意味じゃなくてね、そのままの意味で君の幸運は無くなるよ?」
・・・・どゆこと?
「だって君、
「・・・マジで?」
え!?俺抑止力に狙われんの?
「当たり前じゃないか。本来この時代に居ない人間がいるんだ。しかも、ただの一般人じゃなくて聖杯やロンギヌスの槍なんて言う歴史上の英雄になり得る力を持った人間だ。そんな巨大な力で歴史が変えられるなんて抑止力は絶対に許さない。気づかれるのも時間の問題さ。」
「えー・・・じゃ、じゃあどうすればいいんだよ・・・」
「うーん、こればっかりはどうしょうもないから受け入れるしかないねぇ。」
・・・はぁぁぁあああ・・・
「まぁまぁ、そんな顔しないで。大丈夫だよ、最悪私が君を実験動物としてここに匿ってあげるから。」
「いや、アヴァロンに置いてもらうのは嬉しいけどお前の実験動物なんぞになるのは絶対にゴメンだッ!!」
まぁじかよ・・・まぁでも、これは今じゃどうしようもないなぁ。
確かに抑止力ですら干渉できない隔絶された空間にあるアヴァロンにいれば抑止力も手は出せないけど・・・
・・・これはのちのち考えよう。
「おや?問題を先送りにするなんて、感心しないねぇ。」
「うるさい、また今度考えさせてくれ。今考えられるようなもんじゃない。」
「それが君の答えならば。・・・ところで、君は魔術回路の本数は凄まじいようだけど、魔術は使えるのかい?」
「いや、全く。」
魔力放出は使えるけど。
「まぁそれもそうか君には
「起源?」
はて、どっかで聞いたような・・・
「起源って言うのは、文字通りその人の起源そのもので様々なものがある《剣》という極端なものもあれば《食べ物の名称》や《事柄の名称》などというあやふやなものまでね。だが、魔術師は生まれた時からこれらを持っていてその起源に似通った魔術を習得するものなのさ。」
あぁ、あれか。エミヤの剣という起源や切嗣の切って繋ぐっていう聞いただけじゃ意味の分からないようなもんまで沢山あったな。
・・・ダークシンプソンは確か傷を開く・・・だったか?
ありゃ性根からえぐいよ・・・
「おや?知っているようだね。じゃあ起源を
・・・確か士郎がそうだったか?
瀕死の体にアヴァロンを埋め込まれて強制的に《剣》という起源を付けられたんだったか。
「・・・これも知っているとは、君は知識が相当偏っているようだね・・・。」
うっせ、オタクなんて皆そんなもんだよ。
「まぁいいや。で、君の場合は聖杯が体に埋め込まれているから、それを起点にロンギヌスの槍が使いやすくなるよう《槍》という起源や、《刺し穿つ》という起源を付与することも出来るよ?」
「え?まじかよ、そんなことまでできんのか・・・」
「まぁ原理は礼装作るのと同じだからね。この私に出来ないことは大抵はないのさ!」
いや、そんな胸張って言われるとむかつく。
「・・・と言いたいところだけど、今日はもう無理みたいだね。時間があと少ししかないみたいだ。」
あ、結構話し込んでたけどもうそんな時間か。
「さぁ、もうすぐ目覚めの時だ。それまでに何か聞きたい事はあるかい?」
・・・聞きたいこと、か。
まぁ山ほどあるわな。
これからどうすればかいいのかとか、
俺はどういう風に立ち回った方がいいのかとか、
魔術のことや槍のことも・・・
・・・魔術?
「・・・なぁ、この時代のこのブリテンにお前以外の魔術師って居ないのか?」
「ん?何を言っているんだ、いるに決まってるじゃないか。最も、魔術師という言葉に私が当てはまるかと聞かれればどうかと思うけど、いきなりどうしたんだい?」
「いや、ちょっと知り合いの子供がアベレージワンの魔術師なんだけどな、魔術の使い方が分からないんだと。師になる人や親がいないからよく分かってなかったらしいけど。」
リンに魔術を教えてくれる人が居たらいいと思うんだよなぁ。
「?何を言っているんだい。この時代のブリテンには確かに魔術師はいるけど
・・・ん?
「いや、お前は知らないかもしれないけど俺の友達のリンネイルってやつがアベレージワンなんだよ。」
「だから、いないって。私を誰だと思っているんだい。花の魔術師マーリンだよ?この世界のありとあらゆる場所はこの
そういえば、こいつ《千里眼》持ちだったな。
「いや、でも五大元素全てを使える奴がいてな・・」
「あぁ、リンネイルと言ったかい?確かにその子は五大元素全てを扱えるようだけど、その子は
・・・え?
「なんでだよ、魔術使えるんだから魔術師だろ。」
「いや、彼女には魔術回路どころか魔力すら
・・・・・・・???
「あぁ、よく分かってないようだね。正確に言えばあれは《魔の寵愛者》という彼女特有の特異的な魔術体質のせいなんだ。魔の寵愛者というのは、まぁ例えば私が火の魔術を使ったとする。その時体の魔術回路を通って体内の魔力が事象に変換されるんだ。でも、炎が燃える時に酸素が少なからず二酸化炭素に変化するように魔術に変換された魔力は少しだけ空気中に残って溶けるんだ。で、その少ない魔力に指向性を持たせて現象化することが出来るという体質なのさ。」
・・・ほへー。
「ん、よく分かってないようだね。でもこれはある意味では物凄く強力な力だったりするんだ。まず、空気中の魔術の残滓を使うだけだから魔力が必要ないため魔力切れや疲労が全くない。さらに、魔術を使うために本来必要な詠唱も必要ないし、使いたい魔術をあらかじめストックしておくことも出来る。そして、この力の最も強力な所は五大元素以外の特殊で例外的な魔術でさえいくらでも扱えるという所だ。分かったかい?」
・・・つまり、その《魔の寵愛者》っていう体質があれば先制攻撃にはくそ有利だし、虚数魔術みたいなチート魔術まで使える、と・・・
・・・使い方によっては結構チートだな。
そう思った時、視界が徐々にぼやけてきた。
「おや、もうお別れの時間のようだね。まぁ君の最後の質問が他人のことについてだったのは予想外だけど、概ね君の事情は理解したよ。」
"もうそんな時間か"と口に出して言おうかと思ったが、口を開こうとしても声は出なかった。
「もう世界が君を捕まえているからね。隔絶した空間とはサヨナラだ。また次の夢で会おう。その時には、君に起源を付与してあげるから。」
そりゃありがたい、ぜひとも頼む。
「あぁ、じゃあね。」
おう、またな。
そう思いながら、俺の意識は途切れた。
「・・・まぁ、次の夢に介入出来るかどうかは聖杯のご機嫌次第になりそうだけどね。」
──────────────────────────
・・・目が覚める。
瞼を開けると、天井が見えた。
横を見ると、昨日ブロウが寝ていたベッドが見える。
・・・ということは、多分アルトリアが俺を連れて来てくれたのだろう。
全く、出会ってから迷惑ばかり掛けてしまっているみたいだ。
・・・後で礼を言わないと。
耳にはよく分からない鳥の鳴き声が聞こえてくる。
・・・こいつら、朝から結構な大声で泣くなぁ。
そう思いながら体を起こすと目の前の扉がバタンッ!!と力強く開けられた。
「あ、あぁ!起きたんですね、ガレウスさんっ!!」
出てきたのはブロウディアだった。
だが、様子がおかしい。
明らかに服が汚れているし、激しく運動したあとのように汗をかき、肩で息をしながら真っ青な顔で立っていた。
「お、おう、おはようブロウ。ところで、朝からどうしたんだ?病み上がりに激しい運動をするのは良くないぞ?」
「そんなこと言ってる場合じゃないんですっ!!」
俺が注意すると、ブロウは大声を出して否定し今にも泣きだしそうな顔を俺に向けた。
「姉さんが・・・姉さんがいなくなったんです!!」
・・・・は?
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