でろりんの大冒険   作:ばんぼん

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戦闘開始10分経過から始まります。

残酷な描写にご注意下さい。











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 くそっ……どうしてこうなった!?

 

「バカ野郎共がっ! 勇者の力を舐めてんじゃねぇ!!」

 

 誰に向けるともなく怒りに任せて叫んだ俺は、残る力を振り絞ってザングレイへと突貫する。

 フェイントも型も何もなく、ただ一直線にザングレイに向かって走り、飛び上がって牛そのモノの顔面目掛けて左拳を突き出す。

 

「お見通しダっ!」

 

 俺の攻撃はザングレイの左腕に備え付けられた盾にいとも容易く受け止められる。

 ザングレイが持つと小さく見えるが、タワーシールド程もあるその盾にはヒビ一つ入りはしない。

 

「フンッ!」

 

 力任せに振るわれたザングレイの巨大な拳が迫る。

 

 あ……やべぇ……。

 

 懐に飛び込んだ事でリーチの長いアックスの刃先は飛んでこない……しかし、この固く握られたバレーボール程もある拳を食らえば死ねる気がする。

 

 実際にコイツを目にした時から判ってはいたんだ……″今の″俺には勝ち目なんか無かったんだ。

 

 俺は……何処で間違えたんだろう?

 

 もっと武器を用意して、しっかり回復しておけば……将軍を待っている間にルイーダの酒場を往復する時間……いや、結果論か……ロモスを離れた瞬間ザングレイが現れる可能性だって有ったんだ……やはり、勝てないなら″でろりんらしく″逃げれば良かった……って、今更か。

 

 それにしても、ヤケに攻撃が遅く感じる……これが死ぬ前に起こる走馬灯現象というヤツだろうか?

 

 ん?

 

 この加速した感覚を使えば、なんとかなる…のか?

 

「まだだ! まだ終われん!!」

 

 空中で身体を捻った俺は、迫る拳に背負った甲羅を向けた。

 ″ガンっ″と全身に衝撃が走り吹き飛ばされた俺は、勢い良く顔面から地面にダイブする。

 

「グハハハハっ! 脆い、脆すぎル! これが獣王の恐れタ強欲の勇者か? マルデ亀ではないヵ!」

 

「ゆ、勇者様を御護りしろぉ!!」

 

 みっともなく地面に突っ伏した俺を見てザングレイは笑い、兵士達はそのザングレイから護ろうと、槍を構えて俺を庇いだてる。

 

「バ、馬鹿かお前ら……何処の世界に兵士に護られる勇者が居るんだよっ」

 

 甲羅の重さに耐えながら左手一本で大地を押した俺は、なんとか上体を起こす……血と土で汚れた勇者服が俺の絶体絶命を物語るかの様だ。

 

「ご無事でしたか!? 此処は我等に任せてお逃げ下さい!!」

 

「はぁ……? お前らが先に逃げろ、と言っているんだっ……キメラの翼が有るから……俺は、いつでも逃げられるんだよっ」

 

 駆け寄って来た年配の兵士Aの助けを借りて立ち上がり、ザングレイに視線を戻すと槍を持った兵士達が取り囲んでいるのが視界に入る。

 

 馬鹿がっ……勝てない相手にまだ挑もうというのか……。

 

「流石は勇者様、備えは万全ですな? では、今すぐお使い下さい! その間我等が時間を稼いでみせます!!」

 

「だ……だからっ、人の話を聞け……って」

 

「皆の者! 突撃だぁ!!」

 

「「「おぉー!!」」」

 

 人の話を聞かない兵士Aは、ザングレイを四方八方から取り囲んだ兵士B〜Hに突撃の指示を下した。

 

「グハハハハ……性懲りもなく死にに来たか! モゥリァァァ!」

 

 ザングレイがバトルアックスを振り回す。

 

「ぐぁ!?」

「ぎぁ!?」

「ぬわらばっ!?」

 

 アックスに弾かれた兵士達が紙切れの様に吹き飛んだ。

 

 あ……死んだ……。

 

 弾かれる事なく胴が上下に分断された者、頭から落ちて首が変な方向に曲がった者……強者の一振りは兵士の命を簡単に刈り取ってゆく。

 

 ・・・

 

 くそっ……なんでだ?

 

 馬鹿かコイツラ?

 

 どうして死にに逝く!?

 

「ヤったぞ!!」

 

 弾き飛ばされなかった兵士の一人が歓声を上げる。

 背後から迫った事で、槍の穂先をザングレイの鎧の隙間から突き刺せた様だ。

 

「グハハハハ……キサマごときの力でハ、この身体に傷一つ付ける事は出来んゾ!」

 

「そんなっ!? ……ヒッ!?」

 

 喜んだのも束の間、平気で振り返ったザングレイの巨大な手が、兵士の頭部を掴み、投げ棄てた。

 

「テメェェェっ! 調子に乗ってんじゃ、ねぇ!! メラミっ!!」

 

 俺は最後の魔法力でメラミを唱えた!

 

 だが、ザングレイの鎧にはメラゾーマですら通用しなかった……メラミが通る道理はない。

 

「その程度の炎では俺を焼く等出来ぬワ……グワっハハハハっ……」

 

 案の定、ザングレイには効かなかった!

 

 勝利を確信したのかザングレイは余裕の笑みを浮かべ、両手でバトルアックスを握り締め″ノッシノッシ″とニジリ寄る。

 

「ゆ、勇者様……こ、此処は我等が……」

 

 生き残った兵士達が俺の前に集い、人の壁を作る。

 

「……もう良い……お前等は逃げろ。こんな処で死んでどうする? 死んだら終わりなんだぞ?」

 

 どうしてこんな簡単な事を解ってくれない?

 コイツ等さえ逃げてくれりゃぁ俺は何時でも逃げられたんだ。

 

「勇者でろりん……キミが我等兵士の命まで気にかけてくれるたのは分かっている。だが、我等の命は我等の信ずるモノの為に使う」

 

 敬語を止めた年配の兵士Aが俺の左肩に″ぽん″と手を乗せ、穏やかな表情で語り出した。

 

「は? 何、言い出すんだ?」

 

「キミが居る限り我等の戦いは終わらんのだ。 キミが万全ならば必ずやザングレイは倒せる! アレほどの大呪文を使ったのだ。恥じる事は無い……今は、逃げるんだ! そして、何時の日か大魔王を倒しロモスに、いやっ世界に平和をもたらしてくれ!」

 

「だから、何を……言っている……? それはホントの勇者が……」

 

「勝手な願いを押し付けてすまんな……行くぞぉ!!」

 

「「「おぉぉ!!」」」

 

 人の話を聞かない兵士Aは、傷付いた兵士を率いて正面からザングレイに斬りかかった。

 

「グハハハハ……五月蝿いハエめ! キサマ等ごときが真の獣王であるザングレイ様を倒せるものヵ!!」

 

 右に左にバトルアックスを振るうザングレイは、斬りかかる兵士を歯牙にも掛けない。

 

 ダメだ。

 

 このままでは全滅する……どうしてこうなった?

 

 これは、勇者を騙って兵士を煽ったムクイなのか?

 

「もう、止めろ!! お前等の力じゃソイツは倒せない! 無駄死にしたいのか!」

 

「へへっ……勇者様さえ無事なら無駄じゃありませんっ。命を賭ける価値はありますよ!」

 

 近くに吹き飛ばされてきた兵士Bが意味の解らない事を言って立ち上がる。

 

「馬鹿かっ、自分が死んでどうする!?」

 

「へっ……へへっ……この牛野郎!! うぉぉぉ!!」

 

 俺の問いには答えず、兵士Bはザングレイに特攻をかけた。

 

 人が……死んで逝く……どうして、こんな……。

 

 くそっ……。

 

 魔法力が有ればこんな奴なんかに。

 

 違うっ!

 

 武器さえ有れば……

 

 違うっ!!

 

 アイツらが居ればっ……俺はこんな牛野郎に負けやしなかったんだ。

 

 俺は……どうして独りで闘って……こんな無様な……

 

 動かない右手で砂を掴み諦めかけた、その時、

 

 

『ウォリャァ!! ゴールデン・スタァンプ!!』

 

 軽く飛び上がったピンク鎧の戦士が、黄金のハンマーを振り下ろす。

 軽い地響きを引き起こし、大地に放射状のひび割れを産み出した一撃は、衝撃だけで兵士を吹き飛ばし、ザングレイの行進をピタリと止める。

 

「……へろへろ?」

 

『ほっほっほ……大魔法使いの秘呪文をみよ! マヒャドぉ!!』

 

 動きを止めたザングレイに向け、緑色の魔法使いの杖先から放たれた猛烈な吹雪が襲い掛かる。

 吹雪は鎧の周りの水蒸気を重なり合うように凍らせ、ついには巨大な氷の彫像を造り上げた。

 

「まぞっほ!?」

 

「あーぁ、みんな傷だらけじゃない? ホイミかけたげよっか?」

 

 聞き慣れた声に振り替えると、腰に手を当てたずるぼんが立っていた。

 

「姉ちゃん……」

 

「勇者がそんな情けない顔しないのっ! 纏めて面倒見てあげるわっ、ベホマラー!」

 

 ずるぼんの身体からキラキラ輝く粒子が拡散され、力ある言葉と共に回復の光を放った。

 完全に事切れた者以外はムクリと起き上がり、自らの体を不思議そうに見詰めている。

 

 肩の痛みこそ消えないモノの、俺の体力も幾分か回復した様だ。

 いや、体力だけでなくパーティーメンバーの思いがけない出現で、精神的にも幾分か楽になっている。

 

「ベホマラーか!? 一体、いつの間に!? いや、それより、どうしてロモスに?」

 

「ふっふーんだ。アタシは僧侶よ? あんな鳥に使えたんだからアタシに出来ないワケは無いのよ」

 

 ずるぼんは、何故か天を指差して″ビシッ″とポーズを決めた。

 

「鳥って……アレか?」

 

 ガキの頃に見た極楽鳥のベホマラーだろう……これまたえらく古い経験を持ち出してきたな。

 

「がっはっは! 一人ずつ癒すのが面倒になったんだんだよなっ」

 

 へろへろはハンマーを軽々と肩に乗せてやって来ると、ベホマラー習得の秘訣を暴露する。

 

「五月蝿いわねっ。こっちの方が効率良いのよ」

 

「なんとか間に合った様で何よりじゃわい」

 

 最後に腰をトントンと叩きながら、まぞっほが輪に加わった。

 

「いや、だから……なんでお前らが此処に来てんだよ!? 世界樹はどうした?」

 

「なんでって……王様の命令に決まってるじゃない?」

 

「リーダーはアルキードの勇者だからなっ」

 

 説明する気がないのか、2人は揃って省略しきった情報を口にする。

 

「いや、意味わかんねーし」

 

「なぁに簡単な話じゃ。アルキードの勇者が理由も告げずに持ち場を放棄するわけにはいくまい? お主の居所は解る範囲でワシ等が伝えておったのじゃよ」

 

「感謝しなさいよ? 王様に嫌われて良いことなんて無いんだからっ」

 

「はいはい言って頭下げてりゃ良いだけだなっ。簡単だぜっ」

 

「ん……まぁ、そうだな」

 

 

「ハァ……あんた達ホントに解ってんの? 王様に嫌われたら晩餐会に行けないのよ!」

 

 ずるぼんは前を指差しポーズを決めた!

 

「いや、別に行きたくねぇし」

 

「アンタが良くてもアタシが困るのよ! それで、今日はロモスが総攻撃を受けてるって教えてあげてたら、『ロモスを救って貸しを作ってこい。ついでにアルキードの勇者も助けて来い』って伝令を受けたの」

 

「は……ハッハッハ……そうかよ、俺はついでか。クックック……流石は王だな、恐れ入るぜ」

 

 遠く離れた王城に居ながらにして、戦局を変える一手を放つ。

 何処まで状況を把握していたのか解らないが、俺にとってはこれ以上ない見事な采配だ……これが王として産まれた者の影響力か。

 

「な、何よ? 急に笑って……頭でも打ったの?」

 

「いや、何でもねぇ。さぁって……何時までも喋ってる場合じゃないな。聖水、持ってるか?」

 

「有るわ」

「ほれっ」

 

 ずるぼんとまぞっほから二本ずつ、合計四本の聖水を受け取る。

 

「よしっ。一気に片付けるぞ!」

 

 受け取った一本を一気に飲み干し、残り三本を頭からぶっかける。

 

「オノレっ小癪な真似ヲ! モゥゥゥ許さん! 叩き潰してくれル!!」

 

 氷から脱け出たザングレイは雄叫び上げて怒っている。

 

 だが……、

 

「許さないのはこっちの方だ……兵士の仇、取らせて貰うぞ!」

 

 ベホマラーで起き上がれなかった者はザオラルでも助かるまい。

 

 ・・・

 

 散っていった兵士に報いる為にも、ザングレイはここで殺す!

 

「グハハハハ! モゥゥ忘れたヵ? 貴様の力は通用せンのダ! 数が増えて強気に成りおったヵ」

 

「数が増えた? 違うなっ! 世界最強のパーティーが揃ったんだ! お前、ツイてないぜ? クロクダインに始まり、キルバーンにミストバーン、フレイザードにブレーガン、ハドラーに親衛騎団……色んな奴が俺の前に立ちはだかったが、今の俺が一番強ぇ!!」

 

「勝つのは俺ダ!! 来い! 勇者ヨ!!」

 

 

 まるで闘牛の様に現れた敵に全力で当るザングレイは、数的不利を気にもしない。

 敵と見れば何であれ闘い倒す……そこには善も悪もなく、ザングレイは実にシンプルと言える。

 ザボエラの策は提案されたから使っただけだろう。 クロコダインをライバル視するだけあって、ザングレイも又、武人なのだ。

 

 と言っても、多くの被害を被った以上、馴れ合う気は無い。

 

「よぉーし! 炎から氷、崩して衝撃、最期は貫く! 後は任せるっ、1分でケリを付けるぞ!」

 

 甲羅の盾をへろへろに渡した俺は、主語を省いて簡潔に作戦を告げる。

 

「任せなっ」

「やれやれ……人使いが荒いのぅ」

「無理しちゃダメよ?」

 

 長年の阿吽の呼吸。

 作戦はしっかり伝わった様で三人はそれぞれの配置に散ってゆく。

 

 ザングレイの正面には、ハンマーを担ぎ盾を構えるへろへろ。

 左右に別れ機会を伺う俺とまぞっほ。

 ずるぼんはへろへろの背後に隠れている。

 

 配置が完了されたのを見た俺は、回復したばかりの全魔法力を解放する。

 

「行くぜっ、まぞっほ! ベ・ギ・ラ・マぁー!」

 

 俺のベギラマに合わせてまぞっほもベギラマを唱えた!

 十字砲火の熱線がザングレイに襲い掛かる。

 

 しかし、ザングレイには効かなかった!

 

「次だ! マヒャド!!」

 

 ワンテンポ遅れてまぞっほもマヒャドを唱えた!

 

 ザングレイは盾を構えて腕を振り、凍り付くのを防ごうとしている。

 しかし、俺達の狙いは急激な温度差による金属疲労だ。

 

「今だ! へろへろ!!」

 

 甲羅の盾を前面に構え、ハンマーを右手で引き摺りながら、へろへろが一気に駈ける。

 

「うおぉりゃ!! ゴールデン・アッパー!!」

 

 振り上げたハンマーがザングレイの守りを崩し、バトルアックスが宙に舞う。

 

「がら空きね。綺麗な薔薇にはトゲが有るのよ! ピンポイント・アタック!」

 

 無駄にポーズを決めたずるぼんのピンクロッドが素早く伸びて、ザングレイの鎧の胸部を破壊し僅ながらも牛革が露になる。

 

「コレで、終わりだぁ!」

 

 全ての魔法力を左手に集めた俺は、過剰としか言えない回復呪文を形成する。

 

 これならば百発百中。

 直に当てれば勝負は決まる。

 

 後は、眩いバカリの輝きを放つ左手を突き出して、ザングレイに突撃をかけるのみ。

 

「喰らえっ! シャイニング・アタァーック!!」

 

 へろへろのハンマーを盾で受け止めたザングレイの懐に飛び込んで行く。

 ザングレイは一瞬コチラを見たが意に介さず、へろへろとの力勝負に意識を戻した。

 槍の穂先も通さぬ牛革に寄せる自信の現れだろうが、その自信は過信と知れ!

 

 ″ドスッ″

 

 嫌な感触と共に、俺の左手はザングレイの牛革を突き破った。

 

「グハっ……バっ……馬鹿な!? オレの身体をこうも容易く貫くとハ!? あ、有り得ヌ」

 

 血へどを吐いたザングレイは驚きながらも、へろへろを払い除け、巨大な手を左右から伸ばして俺に掴みかかろうとしている。

 

 流石の生命力と勝利への執念だ。

 

「ふんっ……メラ、ゾーマ!!」

 

 ザングレイの体内でメラゾーマを唱えた!

 

「モゥゥゥァァっ!?」

 

 鎧の内側から炎が吹き出し、ザングレイの巨体を包み焼いてゆく。

 

「お前、強かったぜ……」

 

 命を奪った相手にかける言葉などなく、短い言葉を告げてバックステップで飛び退くと、誰かに背中を受け止められた。

 

「でろりんさん!? 大丈夫ですか!?」

 

 受け止めたのは息を切らせたマァムの様だ。

 

「マァムか? お前、どうして?」

 

「あら? マァムちゃんじゃない? 大丈夫……って言ったのに来たんだ?」

 

 ん? 

 コイツラ途中で出会ってたのか?

 

「はい……やっぱり、その……心配で」 

 

「ふぅーん? 心配するのは構わないけど、貴女に出来るコトなんかないわよ? この子の怪我はアタシが治すし」

 

「っ痛!? ちょっ、何怒ってんだ!?」

 

 何故か怒り気味のずるぼんは、よりにもよって俺の右手を掴んで自らの方へと引き寄せる。

 左手もボロボロだが、もうちょっと丁寧に扱ってもらいたいモノだ。

 

「怒ってないわよ! さぁ、ホイミかけたげるから横に成りなさい」

 

 そう言って地べたに座り込んだずるぼんは″グイッ″と俺の右手を下に引く。

 

「意味わかんねぇ……大体マァムにはやって貰うことがあるぞ」

 

 疲労感から眠気も襲ってきているし、下手に口答えせず、ずるぼんの膝を枕に横になる。

 

「は、はい! 私に出来ることならっ」

 

「じゃぁ、ザングレイを倒したのはお前とポップな? ロモス王国にはそう報告してくれ。異論は認めない」

 

「え?」

 

「バッカじゃないの!? 意味わからないのはアンタよ! 何考えてんのっ!?」

 

「ふむ……アルキード王じゃな? あの王は野心を隠そうともせぬからのぅ」

 

 怒れるずるぼんとは正反対に、どこか納得した表情でまぞっほがやって来た。

 

 流石、まぞっほ。

 話が早いぜ……これならば後は任せても大丈夫そうだ。

 

「そう言うこった。まぁ、それだけじゃ無いけどな……兎に角、後処理は任せる……ぞ……」

 

 こうして多大な犠牲を払ってザングレイを倒した俺は、魔法力を使い切った代償に強制的な眠りに就くのだった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「おい、知ってるか? ロモスを救った勇者はまだ子供らしいぜ?」

 

「はぁ? 甲羅を背負った変な勇者だろ?」

 

「違うわよ! 黄金の鎧を身に纏った貴公子様よ!」

 

 西の空が赤く染まる頃、ロモスを救った勇者の姿を一目見ようと、多くの民衆が城の中庭に詰め掛けていた。

 

 俺達はその様子を最後尾となる城壁の上で姿を隠して見守っていた。

 

″パァンパランパパパパァン″

 

 兵士達がトランペットを吹き鳴らすと、二階のカーテンが左右に別れ、その中からダイ達が姿を表した。

 

『勇者さまぁ!』

『我らのロモスを救ってくれてありがとぉ!』

 

 巻き起こる大歓声に三人は三様の困惑した表情を浮かべている。

 

「ほぇ〜。本物の勇者はカッコえぇのぅ」

 

「何言ってるのよ!? 本物の勇者はでろりんよ!! ダイ君は頑張ったみたいだけど、闘ったらでろりんが勝つわ!」

 

「いや、なんで俺がダイと闘うんだよ?」

 

「五月蝿いわね! 良い? アソコの真ん中に立ってるのは本来ならアンタよ! それを、こんな所で……バッカみたい」

 

 テラスを指差し怒るずるぼんだが、俺達がここに居ると言うことは、手柄の譲渡を認めていると云うことに他ならない。

 ポップとマァムは、まぞっほの脅しともとれる説得によって、渋々ながらも了承したらしい。

 

 どちらも俺が昏睡中の出来事だ。

 

「そう言うてやるな……コヤツにはコヤツの考えが有るんじゃて」

 

「悪いな、まぞっほ。大層な考えなんてないんだ。俺はアソコに立ちたくない……ただソレだけだ。勇者に寄せられる期待……そんなモノを背負いたくないんだ。勇者にすがって死んでいく人を見るのは、もう……沢山だ」

 

 人が死ぬのは仕方ない……哀しいけど、戦争だからな……。

 だが、俺を守って死んで逝く……そんな姿を見るのは御免だ。

 

「ハァ……アンタってホント馬鹿ね? 兵士が死ぬから闘いを止めるの? 兵士が死ぬのはアンタのせいなの!? 違うわよね!? 悪いのは大魔王で兵士が死んだのは弱いからよ!」

 

 いや、まぁそうだけど、身も蓋もねぇな。

 てか、高レベル僧侶としてその考え方で良いのか?

 

「闘いは止めねぇさ。ただ、兵士を煽るのは程々にするってダケだ」

 

「ふむ。勇者と名乗らねば兵士は寄ってこぬ、寄って来ぬから人は死なぬか……お主の言い分も分からんではないのぅ。じゃが、手遅れでは無いか?」

 

「そうね。アンタが闘いを止めないなら、何処から見ても立派な勇者じゃない? あ、後ろはダメね」

 

「え? マジで? その都度否定すりゃイケんだろ? 本物の勇者はダイに押し付けて、俺は影で将軍をぶっ殺す! これぞ、完璧な役割分担ってモンだ」

 

 ザングレイは思った以上に強かった。イレギュラーである将軍は俺の手で始末せねばなるまい。

 

「はぁ……アンタってホンット馬鹿ね? でも、そうしたいなら付き合ったげるわ」

 

「ほっほっほ。ワシラはワシラの役割を果たすだけじゃな」

 

「リーダーは勇者だからなっ」

 

「だから、ソレを止めろって!」

 

 こうしてダイの晴れ姿を見た俺達は、決意も新たにひっそりとロモス城下を後にするのだった。













でろりんが覚醒したら話が終わるので、こんな形での決着となりました。
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