形や機能が可笑しいけど刀だから問題ないよね!

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久しぶりに見た刀語で右衛門左衛門が超絶かっこよかった。


不反。なぜなら私のこの武器は、刀だからだ。

刀剣を手に、悪しきモンスター達と生死をかけて連日連夜戦い続けなければならない、蒼き天空に浮かぶ鋼鉄の城。そんな城を、透明な足場の上に立つ2人が眺めていた。一人は白衣を着た目が死んだような男性。彼こそは鋼鉄の城の、この世界そのものの創造者であり、現在鋼鉄の城に約8000人を閉じ込め、デスゲームを強いている天才にして世紀の犯罪者。半年前まで、このデスゲーム開始時には1万人の人間を閉じ込めていた彼は、新たに発行される歴史の教科書に載るだろう。

平和を語る現代において、1万人もの人を電子の世界に監禁し、既に2000人もの人を死なせているのだ。

 

そんな男の隣に立つのは、同年代程の青年。こちらは白衣ではなく和装を着ており、右頬に『不』という奇妙な刺青を入れている。男性にしては長めの髪をポニーテールにし、頭頂部は青みのかかった黒の髪なのに、毛先に近づくにつれて赤くなり、毛先は完全に真っ赤である。愉快そうに鋼鉄の城を眺める彼は、隣に立つ青年の良き隣人であり協力者であり助言者である。最悪1万人が死亡する狂気に対して、彼は何も言わない。愉快そうにただ笑う。止めることなど全くないし、以ての外だと思っている。

 

「そろそろ傍観者に徹するのはやめるのかい?」

 

「ああ。私はこれから作っておいたアバターを使って、作ったギルドを更に大きくする。巨大な、言葉一つ、行動一つでプレイヤー達の心を奪い揺さぶれる程のギルドを」

 

「いいゾ。その傍観者に徹し続けることなく己が最も楽しみを味わうその姿勢。実にいいぞ、俺好みだ。絶対的に上に立った奴の行動は大抵、下の者達が切磋琢磨する姿を見下ろし笑うのが王道だが、お前のように絶対的な位置にいながら、危険を承知でさらに引っ掻きまわそうとする。なんと素晴らしいことか。エンターテインメントの才能がきっとあるぞ」

 

「あまり茶化さないでくれたまえ。それよりも、君も前線で動くのだろう?」

 

「応。俺はもともと傍観者に徹するつもりは無い。道化師か、裏切り者辺りが妥当だろう。台本を引き裂きアドリブで演技し舞台配置を掻き乱して役者を疑心暗鬼にさせる。それで適当なところで退場。見事に俺に相応しいだろう」

 

カカカ、と笑う和装に、白衣は何も言わない。冷たい目でさぞ楽しそうだと観察するように見ているだけだ。既に火種は渡されている。彼はこれからプレイヤー達を翻弄させるだろう。嘘の交じった言葉を吐きながら、意味があるかのように動き、遊び歩くことだろう。

 

「くれぐれも気をつけてくれ。私と君のシナリオは既に決まっている。余程予想外の事態が起こらない限りは———」

 

「シナリオを動かすな、だろう?安心しろよ。ちゃんとキャラ通り、冷静冷徹で動いてやるから。素の状態は見せねぇよ。信じろ、決して見つかることはないからよ」

 

軽く言う和装。これから彼らはお互いの演じるキャラクターを纏って、周りを欺きながら行動する。白衣はいつもより口数を多く、多くの者達を引っ張っていけるリーダーとにての人格に。和装は口数を減らし、いかにも強者であり、正体不明感を出す存在に。趣味と実益を交えた、死の遊戯を彼らは楽しみに行くのだ。

 

白衣の青年がコンソールを操作すると、彼らの姿が変わる。現実の服装から、アバターとして動くための姿に。白衣の青年は赤を基調とし、大盾と片手剣を持った騎士の姿に。和装の青年は一昔前の西洋風の黒い服を着て、白を基調とし縦書きの墨で『不忍』と書かれた仮面を顔の上半分に被った姿に。これが彼らの偽りの姿。鋼鉄の城で行動するための正装。

 

「では行こうか。いや、その前に」

 

「ん?どうしたよ」

 

「君の右衛門左衛門(えもんざえもん)という名前、もっといいものがあったんじゃないかな?」

 

「風情があっていいだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

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失敗した。素直にそう思う。前の階層では少しは手こずりはしたが、大して時間をかけることも、ダメージを負うこともなく余裕と言える程に勝ち進めることが出来た。ならば最前線の迷宮区。たかが1階層変わっただけ、そう油断して、現状死にかけとなった。

アイテムを使って回復する余裕はない。スイッチする相手もいない。ソロで挑んだのが間違いだったのか。

斬撃に対する効果が薄い相手。攻撃は低いが防御力が高く、VIT(敏捷)重視のビルドでは相性が悪い。ATK(攻撃)にもっとスキルを振っておくべきだった。

 

HPバーはレッドに突入し、もう半分もない。万事休す。

 

視界の左上に表示されているHPバーが全損した時、現実での自分の命も消える。電子レンジの中に頭を突っ込み、そのままマイクロウェーブを送り込まれて脳が沸騰するように死んでいく。

もはや生存の道など考えていない。苦しんで死ぬのか、苦しまないで死ぬのか。一寸先の闇しか考えることが出来ない。

 

都合よくヒーローが来てくれるわけでもない。ここはゲームの世界でも現実。現実という名のゲーム。現実はどこまでも非情なのだ。救いの手は差し伸べられない。誰にも悟られずにここで死に、誰にも気付かれずにこの世界から退場していく。

 

最初から定められていたかのような終わり。仲の良かった姉妹を、両親を亡くし、自分自身も難病に侵され白いベッドの上で同じく白い天井を毎日眺め続け、自分の死が来るのを待つばかりの毎日。

ゲームで死ぬか、現実で死ぬか。その二者択一しか残されていない。

 

「死にたくない・・・!」

 

そんな現実認めるか。そんな空想があってたまるか。必死に生きてきた。一人でも、苦しくても、悲しくても、時には自分からこの命を絶ちたくなっても生きてきた。必死で必死で、今を生き抜き、明日まで届かせた。

同じだ。今も同じだ。今までと何も変わらない。必死に生きろ。生きるために手段を尽くせ。気合を振り絞り、命を燃焼させてでも明日に繋げろ。生きてこそだろう。食べるも飲むも遊ぶも考えるも犯すも殺すも、全てが生きてこそだろう。

 

「死んで、たまるか・・・!」

 

振り返り、剣を振り上げる。あと一撃、掠りでもすれば消えるHP。だからどうした。自分はいつもこの状態なのだ。何が違う?触れれば消える命だろう。いつもと同じ、何を恐れることがある。

 

きっと、彼女は不幸だったのだ。家族を失って天涯孤独の身となり、治らぬ病に伏せ続け、緩やかに衰弱していく自分の体。挙句の果てにこんな世界に閉じこめられる。不幸に愛されていたかのような人生。故に、ここにも不幸は着いてきた。

 

剣が敵の武器とぶつかり合う。このまま一気に攻める。ヒットアンドアウェイ戦法で叩き潰す。擦り殺す。確実に殺す。だが忘れることなかれ。ここは現実であり、ゲームなのだ。

 

「2、体目・・・?」

 

ここはゲームの世界。モンスターは自動でポップされ、一対一の状況は簡単になくなる。逃げ続けてきたのが他のモンスターの目に止まったのだろうか、それとも近場でポップしたのか。モンスターは増えていた。

二体同時に、相性が悪い相手。こちらは一撃喰らえば死亡確定。無理だ。

 

不死(しなせず)

 

何かが破裂したような、パン!という音。なかなか聞くことは少ないが、テレビ等の時折ある衝撃映像SPなどで、たまに流れる音。恐らくは火薬が炸裂する音だろう。火薬を使う代表的なものといえば銃。だがこの世界にあるのだろうか?ここは剣の世界。銃など存在しない、するはずがない。

 

はっ、と目を見開く。突然の炸裂音に意識を取られていたが、気づけば目の前には赤いポリゴンが散っている。それも二体分。恐らくは先程、自分を追っていたモンスター達。

 

奥を見る。奥には男がいた。着ているのは鎧でもなく、この世界でも見たことの無い洋装。戦闘の時に着る服ではない。そもそも防具ですらないだろう。顔の上半分に縦書きで『不忍』と書かれた仮面をつけて顔を隠している。

そして彼は、こちらに向けて二丁の拳銃を構えている。

 

喉が引き攣る。まだこちらに向けている。つまりは自分を殺そうとしている?怖い。モンスター相手ならまだしも、人間相手に剣を振るったことなどない。震えて剣先を向けることすら出来ない。

 

考えが纏まる間もなく、発砲。弾丸が射出される音で反射的にめをつむる。自分にダメージはなく、聞こえたのは小さな呻き声。後ろを振り向けばモンスターがポリゴンとなっている。

 

「死にたくないのなら着いてこい。安全地帯(セーフティーポイント)まで案内してやろう」

 

銃を懐にしまい、こちらに背を向けて歩き出す。質問する間もなく、足は勝手に動き出す。歩いているにしては速いが、走っているわけではない。駆け足で見知らぬ男について行く。

 

30分ほど続いた無言の時間が終わる。口を開いたのは仮面の男だ。

 

「この先を真っ直ぐ進めば、パメオの街がある。今から急いけば攻略組が会議をする時間と重なるはずだ。まだこの階層の攻略を続けるというのなら加わるといい。彼らはソロに寛大だ。まぁ、生き抜けるという自身があるのならだが」

 

「ま、待って!待ってください!」

 

言うだけ言って、迷宮区へ逆戻りしようとする男を呼び止める。男はまだ何か?と静かに告げて呼び止めた彼女を見つめる。仮面を被っているため表情が分からないが、きっと鋭い瞳をしているのだろう。こちらを睨んでいるのだろうか。だとしたら、少しだけ怖い。

 

「えっと・・・ぼ、僕はユウキって言うんだけど、君、じゃなくて、貴方の名前、聞いてもいいかなって」

 

不断(ことわらず)。再び縁が巡り会うことは恐らくはないと思うが、知りたいのなら教えてやる。『右衛門左衛門』。私はこの世界で、この姿の時はそう名乗る」

 

「長い・・・えっと、じゃあエモンって呼んでいい?」

 

「それも不断(ことわらず)。好きに呼ぶといい。ではな、ユウキよ。私は行く」

 

「あ、ふ、フレンド登録もしようよ!ねぇってば!」

 

今度こそ振り返ることなく、さっさと姿を消してしまう右衛門左衛門。あっという間に遠くなっていくその背中を追いかけようとするが、自分のHPがまだ戻っていないのを思い出し、足を止める。

 

「まぁ、またいつか会えるから、フレンド登録はその時でいっか!あ、そういえばこの街で攻略組が集まってるんだっけ?僕も混ぜてもらおうかな」

 

前向きなのかバカなのか。先程まで感じていた死を忘れ、迷宮区へ挑もうとする一団へ自分も入れてくれと殴り込み、一団の一人を圧倒して入れてもらうという破天荒なユウキの姿があった。


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