【悲報?】ウチの鎮守府に三下なセントーが来たってよ【朗報?】   作:嵐山之鬼子(KCA)

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 本作を含めた「風強波高」シリーズ全体に共通する設定の解説です。
 『艦娘ぐらし、始めました』の方に置いてあるものより、幾らかバージョンアップしてあります。
 「こまけぇーこたぁいーんだよ!」という人は回避推奨。



【commentary.『風強く波高し』シリーズにおける特殊な設定】

(0)基本設定

 

◆発端と最初期の状況

 1990年頃までは、現実の地球とほぼ変わらず。

 しかし、90年代初頭から、世界各地の海で、「謎の船影」が確認され始める。

 そして、1999年夏、未確認遊泳物体による大侵攻が開始され、地球上の海路の90%以上と空路の70%近くが、未確認遊泳物体──「深海棲艦」と命名された勢力の手に落ちる。

 海路は言わずもがな、空路も基本的には空母タイプ深海棲艦の艦載機?によって押さえられているが、艦載機の数が少ないため目の届かないところにいくらかは細々と生き残っていると言うほうがよい状態。それも海から遠い陸地の上の限られたもののみで、洋上はほぼ完全に深海棲艦の勢力下にある。

 深海棲艦は陸上活動できないのか、内陸部に直接攻めてくることはほとんどなかったが、各国の航空戦力は前述の艦載機によって'99~'00年の「第一次深海大戦」(別名:大侵攻)の際に、ほぼ壊滅させられている。さらに、内陸部でもカスピ海、死海、アラール海などの大型塩湖には、深海棲艦の出現が確認されている。

 

 以上のような経緯から、陸路で移動可能なユーラシア大陸-アフリカ大陸、南北アメリカ大陸以外の土地の交流は、2000年代初頭の時点では、ほぼ途絶えている。また、アラスカ-ロシア、日本-樺太-ロシアは、かろうじて(艦娘の護衛艦隊をつけることで)流通経路が確保されている。

 

◆深海棲艦について

 作品中でも触れているが、“純粋に物理的な攻撃では撃破することが困難”な存在。

 実際、大侵攻時には、先進国御自慢の超長射程ミサイルや秘蔵の大出力レーザー砲などは、驚くくらいに役に立たなかった。むしろ、至近距離まで接近して放たれた戦闘機のバルカン等の方が、多少なりとも傷をつけただけマシなほど。また、破れかぶれで全速力で体当たり特攻したとある駆逐艦は、それだけで軽巡洋艦サイズの深海棲艦に中破ダメージを与えた。

 

 以上のことから、各国軍部の技術陣は「深海棲艦には“意思なき攻撃”は無意味」と認識、有効な兵器の開発を試行錯誤した結果、さまざまな事情から深海棲艦へのアンチユニットである有意識艦「艦娘」が生まれたと言われている。

 

 ※実は、この説は正確には間違い。各国がこの結論に達する前に、少なくとも日本には「最初の六人」(後述)が出現しているため。ただし、各国が艦娘を受け入れる素地となったことは確か。

 

◆本シリーズにおける(日本での)艦娘

 

・日本に於いて、公式文書などで正式には「有意識艦」と呼ばれる

 

・当初(2000年代前半)は、法律上、艦娘は他の艦船同様「物」扱いだった。ただし、多くの現場では人間と同じように扱われており、「国を守ってくれる勇敢なる乙女をモノ扱いすること」に対する批判も強かったため、2000年代後半には法整備が進み、日本国民に準じる権利を有するようになる(ただし、現役時は、その権利の一部は制限されている)。

 

・艦娘の“本体”ともいえる船魂は、本来霊的存在だが、建造時に召喚され、一度実体を得て以降は、轟沈する(=「死ぬ」)まで現世に留まる(※これは第三世代型以降の艦娘であっても同様)。また、実体化後は食欲、睡眠欲なども通常の人間に近い生理を有する(ただし、常人に比べるとある程度の制御は可能)。

 

・当初、有意識艦を保有しているのは、日本のみだったが、2001年半ばの段階で、ドイツ、アメリカ、イギリスの3ヵ国も艦娘の建造(かいはつ)に成功、さらに翌々年には、ロシア、中国、フランス、イタリアの4ヵ国にも艦娘が顕現するようになった。大半の艦娘が出そろったとみられる2015年時点で、これら8ヵ国の中でも、日本とアメリカ、イギリスが他の国を質、量ともに圧している。

 

(1)本シリーズの2003年以降の日本の軍制

 

・自衛隊は日本防衛軍に名称変更&組織改造されており、陸・海・空軍に分かれている。ただし、戦前と異なりシビリアンコントロールは効いている(制度上の軍のTOPである防衛大臣は総理大臣の下位に位置する)。

 

・日本防衛軍のなかで、陸・海・空軍部の各総司令部が“大本営”と通称されている。

 

・戦後50年以上も平和(深海棲艦が出現したのは1999年)だった国柄故か、軍人に志願する人は未だ多くないため、志願者なら15歳(中卒)以上35歳以下なら、よほどのことがない限り(兵卒として)即採用される。

 

・士官学校は18歳(高卒)で入学、2年間で卒業となっている(卒業段階で准尉、正式任官後、少尉になる)。ただし、有意識艦指揮者(艦娘の“提督”)の素質を認められたものはこの限りでなく、最年少15歳・最短3ヵ月(普通は半年)で促成士官教育を叩き込まれることになる(例外的に士官学校入学後に資質が判明した場合は、通常のカリキュラムで学ぶことも可能)。また、“提督”は任官時に自動的に少佐となる。

 ※なお、大反攻後終結は、素質者も提督となることは義務ではなくなった。

 

・小学校卒業段階で中高教育に6年制の防衛軍付属幼年学校(全寮制で学費免除)を選ぶことも可能。幼年学校在籍者は、士官学校生同様、一種の予備役扱い(とは言え、現場投入された例は現状ほぼ皆無)で、18歳の卒業時に自動的に下士官(伍長)として任官できる。

 15歳で入隊して3年後に伍長になるというのは、かなり難しいので、本気で軍人になる気があるなら幼年学校に入学した方がお得ではある(事情が許すなら、ではあるが)。また、優秀な成績(学年TOP5程度)で卒業した者は、士官学校への推薦枠も得られるので、その意味でも職業軍人になる気があるなら、腹をくくって幼年学校に入る方がお得(しかし、そこまで優遇しても、幼年学校の入試倍率は1.2倍程度という……まぁ、軍人の殉職率が自衛隊などとは段違いなので仕方ない部分もあるのだが)。

 ちなみに、士官学校は東西2ヵ所、幼年学校は全国に8ヵ所存在する。

 

・艦娘の身分については時間とともに大きく変化した。当初は書類上「人の形をした兵器」扱いであったが、現場でそのように扱われることは稀であった。第二世代型艦娘の登場以降は準軍人、さらに第三世代型の登場以後は、戦艦娘・正規空母娘は少尉待遇、軽空母娘・重巡洋艦娘は曹長待遇、それ以外の艦娘は伍長もしくは軍曹待遇となり、基本給与もそれに準じている(戦功次第で昇進することも可能)。

 

 

(2)艦娘の登場と変遷

 

・作中でも断片的に語られているが、1999年夏の「第一次深海大戦」の直前に、日本に6人の艦娘と名乗る女性たちが現れ、政府にコンタクトをとったのが、公的な記録に残る「世界で初めての艦娘の登場」である。

 

・この「最初の六人(オリジナルシックス)」については、純粋に霊的な存在が現世に具現化したもので、半ば精霊(英霊?)じみた存在であり、零世代とも言われ、第一世代以降の艦娘とは一線を画する能力を持つ。

 ※オリジナルシックス

 ・駆逐艦 雪風

 ・軽巡洋艦 北上

 ・重巡洋艦 妙高

 ・潜水艦 伊401

 ・戦艦 長門

 ・空母 鳳翔

 

・「最初の六人」の力は強大ではあったが、いかんせんこの6人だけでは広大な海をカバーしきれない。そのため、言葉は悪いが彼女たちの“量産型”として生み出されたのが、第一世代型の艦娘達である。特殊な“器”を用意し、艦娘の船魂を召喚&“器”に憑依定着させることで、より多くの艦娘を確保することに成功した。その技術は世界各国に拡散され、ようやく深海棲艦に対する反撃ののろしが世界中で上がることになる。ただし、その“器”の材料は若い女性の水死(以下、検閲削除)。

 

・人道的な観点と、純粋に“器”の“素材”の数の確保が難しいことから、第二世代型艦娘の開発がなされた。これは、艦娘と相性が良いと判断された若い女性を薬で仮死状態にして、フルオロカーボン液の一種で満たされた水槽に沈めたうえで、艦娘の船魂を召喚&憑依させることで、艦娘を生み出す仕組み。ただし、これには被験者の人格や記憶の大半(7割~9割以上)が失われるという欠点(つまりほぼ別人となってしまう)があったため、志願する側には多大な覚悟が要求された。

 

・第一世代から第二世代の初期には、船魂(こころ)が憑依した人型とは別に、船魂が乗って操り、深海棲艦と戦火を交えるための船体(からだ)(≒実物大の軍艦)が用意され、心と体の2組で一体の艦娘を構成していた。

 しかし、船体が損傷した際の修理回復には莫大な時間と物資が必要とされる。反面、船魂(艦娘)が直接攻撃を叩き込めば、深海棲艦を沈めることも十分可能だという研究結果が発表され、試験的に船魂のみで構成された艦隊によって実施された作戦が良好な結果を得たため、以降はよほど特別な例を除いて大きな船体は作られなくなる。

 

・第二世代の欠点を克服すべく考案されたのが第三世代型の艦娘。最先端科学と密かに継承されてきた陰陽術、双方の知識と技術を結集して作られた「霊的な疑似ナノマシン」を対象に注入することで、基本艤装を装備して水上を自力航行し、深海棲艦と戦う能力を付加する。

 第一・第二世代で行われた船魂の召喚は、ナノマシン注入後に、被験者が自ら(無意識に)行うこととなる。船魂と本人の霊魂が併存しているため、元の人格・記憶も比較的残りやすいが、それでも幾らかは艦娘としてのパーソナリティに浸食される。また、「艦娘になれる」資質そのものは第二世代と大差なく希少で、十代から二十代の日本人女性100人につき、ひとりかふたり程度()。

 

 ※正確な統計ではないが、十代から二十代での艦娘適格者は、イギリスとドイツは150~200人にひとり程度、アメリカその他では300~400人にひとり程度と見られている。また、他の国が自国所属だった軍艦の艦娘にしかなれないのに対して、日本では稀にだが他国の軍艦の船魂を受け継ぐ艦娘が誕生することもある。

 

・第一~第三までの艦娘の共通要素としては以下の通り。

 

 1)各人に対応した「基本艤装」と呼ばれるモノを装備し、起動することで、水上航行その他の艦娘としての能力を発揮できる。

 なお、各鎮守府等での「建造」とはこの基本艤装を作ることを指す

 

 2)老化//成長が本来の10分の1(第一世代は20分の1)以下に抑制されている。

  また、艦娘である限り月経は訪れない。故に男性と性交しても妊娠はしない。

 

 3)体力、筋力、耐久力などの身体的機能は、艤装を外している時でも、日本代表に選ばれるアスリート並みに強化されている。基本艤装を装着・起動している際は、さらにそれが高まる。

 

 4)入渠施設を使用することで驚異的な速さで負傷が回復する。高速修復材を併用すれば、さらにそれが速まる。ただし、日常的な負傷はともかく、深海棲艦の攻撃で受けた傷は自然治癒しない(これは深海棲艦の攻撃はある種の呪詛を帯びているため)。

 

・第二世代型以降の艦娘は、基本艤装を「解体」し、接続を“切る”ことで任意に「引退」が可能。また、艦娘として「現役」でいられるのは長くても10年程度(個人差あり)で、限界を迎えると基本艤装との同調率が下がっていくため、どの道引退せざるを得なくなる。

 引退後は、ほぼ普通の人間と変わらないが、女性としては身体能力が高めで、実年齢より若く見られることがほとんど。また、艦娘になる際に容姿が変化した場合、引退しても元には戻らない(男性が艦娘化した場合、女性のまま)。

 

・第一世代型は同様の形での引退はできないが、2015年末時点で生き残っている第一世代型は僅か10数人のみ。このうち大半は大本営の勧告に従って前線を離れ(制度的な)引退をしているが、3人だけはいまなお「現役」である。

 

 ※ちなみに、「実体化した英霊」とも言える零世代(オリジナルシックス)には、上記の共通要素の大半が当て嵌まらない。


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