【悲報?】ウチの鎮守府に三下なセントーが来たってよ【朗報?】   作:嵐山之鬼子(KCA)

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相変わらず短めですが、6話投下。ついでに新キャラもふたり登場です。


【Phase06.Here Comes NEW……】

 「ご主人様、はよ~~ん☆ なになに? 漣になんか御用ですかぁ?」

 セントーと夕張の面通しが、そこそこ穏当に終わった(そして夕張(ひしょ)を無事悪だくみに引き込んだ)ところで、俺はもうひとりの秘書であり、ダベり仲間でもある艦娘を、執務室へと呼び出していた。

 

 綾波型9番艦・漣。外見年齢は13,4歳で、小豆色に近いピンクブロンドの髪をツーサイドアップにした陽気でおしゃべりな駆逐艦娘だ。

 『艦隊これくしょん』における5人の初期艦のひとりで、彼女を選んだ“提督”も多いことだろう。ゲームとは少し異なる形だが、俺が舞鎮に来て最初に着任したのもこの漣で、当初は俺と漣、そして最初の建造艦娘である綾波&初雪(夕張は“巡洋艦として初”だ)の4人で、鎮守府稼業を1から始めたものだ。

 そして、その性格は……。

 

 「お、よく来てくれたな、漣。今日から、この軽空母・セントーがウチの鎮守府に着任することになったんだが、じつは少々ワケありでな。カクカクシカジカ……」

 「まるまるうまうま……と。ほほ~、ソイツはまたグゥレイト! な話ですにゃー」

 何気に万能伝達言語(かくかくしかじか)が通じている(そしてソレをさも当然の如く受け入れている)のを見てわかる通り、ノリが良く、ネットネタを好み、オタク文化にも理解のある、俺にとって(ある意味、夕張以上に)非常に息が合う()だった。

 「最初期艦は伊達じゃない! のですよー」

 とは言え、時々俺の内心(じのぶん)を読むのはやめていただきたい。

 

 「え……ザミちゃん、アレでわかったの?」

 驚く夕張にきょとんした顔で漣が首を傾げる。

 「? そっちのセントーさんは、建造によって、艤装だけでなく艦娘ごと現れたイレギュラーな存在で、提督(ごしゅじんさま)としてはなんとか、ソレを大本営(うえ)に誤魔化したいんですよね?」

 うん、だいたいあってる。

 「ぐぬぬ……筆頭秘書艦の名にかけて、ザミちゃんに負けるわけにはいかないわね!」

 夕張も変な対抗心燃やさなくていいから。俺限定の“さとり”になっても別にいいことなんてないだろうが。

 

 「すげぇ……漣センパイ、ぱネェ」

 セントー(偽)も驚愕しているな。実は、正直、俺もアレで通じるとは……。

 「「カクカクシカジカ」に対する返事って「まるまるうまうま」っていうんスね。オレっち初めて聞いたっス」

 そっちかい!? コイツもだいぶ天然(ポンコツ)だな。

 まぁ、上喜部隊(ウチ)でやってくぶんには、その方が馴染みやすいかもしれんが。

 

 「あーまー、そんなワケなんで、漣にはセントーの奴を連れてこの鎮守府を案内してやってほしいんだが、頼めるか?」

 「どのみちヒマしてたんで、うけたまわりぃー、ですぞ☆」

 ニコニコと邪気の無い笑顔で漣が請け負うが、その調子の良さゆえに、俺としては、(こやつ)新人(セントー)にいらんこと吹き込まないか一抹の不安はぬぐえない。やっぱ俺自身が案内&解説した方がいいんだろうか。

 

 とは言え、今日は別に休日でもなんでもない平日で、そこそこ程度の規模のウチの部隊だって、毎日それなりの事務仕事(さぎょう)は発生する。

 優秀なる秘書艦殿(ゆうばり)に丸投げする──というのも、一瞬考えないではなかったが、さすがにソレはダメ提督過ぎると思い直す。

 

 「ではでは、ご主人様、逝ってきまーす!」

 「いってら~、一通り回ったら此処に帰って来てくれよー」

 多少の厄介事(こと)許容範囲内被害(コラテラルダメージ)か、と自分に言い聞かせ、執務室のドアから消えていく(テンションの高い)漣と、彼女に引っ張られてあわあわしているセントー(偽)を見送ったのだった。

 

  * * * 

 

 一見したところ、「能天気で何も考えてように見えるほど軽い今どきの女子中学生」めいた漣だが、これでも上喜提督の現・次席秘書艦であり、筆頭たる夕張が実戦や演習で出かけている際は、その代理を担っている。

 最古株である初期艦娘なこともあいまって、上喜配下の艦娘では、この舞鶴鎮守府のことを一番よく知ってる人材だと言ってもよいだろう。

 

 出撃ドックや訓練所、入渠施設、艤装保管庫などといった、“艦娘(ぐんじん)”としての戦闘(しごと)に直接関わる場所を手際よく案内した後、今度は“女子(ひと)”として舞鎮(ここ)で暮らしていくために必要な施設へとセントーを連れて行く。

 

 給糧艦娘・間宮が取り仕切る艦娘用の大食堂、酒保代わりのコンビニ、“お艦”こと鳳翔が営む軽食&立ち飲みの店、そして……。

 

 「それでね、ここが平時入渠施設──ま、平たく言うと普段入るためのお風呂だよん」

 「へっ? いや、入渠ドックは、さっき見せてもらったっスよね?」

 不思議そうな顔になったセントーに、漣は苦笑する。

 「あっちは戦闘でダメージを受けた時用の、いわば医療施設だかんね。味も素っ気もなかったっしょ? その点、こっちは……ホラ!」

 脱衣場と思しき場所を越えて、浴室本体に通じる扉を開け放つ漣。

 彼女についておっかなびっくり足を踏み入れたセントーは、中を見回して目を輝かせた。

 

 入渠ドックの方は、床はタイル貼り、浴槽もセラミック製かつ家庭用風呂同様に人ひとりが入れる程度の長方形の簡素な造りだった。

 対して、こちらはおそらく10数人が余裕で同時に入れそうな広さで、床には大きめの平石を並べ、浴槽は木製(おそらく檜造り)だ。銭湯を通り越して温泉に来たようなゴージャス感がある。

 

 「コレは、なかなかイイ感じっスねぇ」

 「でしょでしょ? ちなみにココ、朝5時から夜中の12時までが営業時間だから、その点だけは注意した方がいいよー」

 「漣もネットの動画観るのにムチューで夜何度か入り逃したし」……と顔をしかめるサブカル好きな次席秘書艦。

 「あ、この基地にもネット回線きてるんスか?」

 「うん。と言っても無線じゃなくて有線オンリーだし、上に申請しないといけないから、ちょっとメンドイけどねー」

 などとふたりが話していたところに、浴室の隅から声がかけられた。

 

 「おや、漣はともかくそっちは見かけない顔だな。新人か?」

 湯煙の向こうにいたのは、黒に近い茶色の髪をショートボブにした、凛々しい顔立ちの長身の女性──伊勢型戦艦2番艦の日向だ。

 今日は出撃・演習共に予定が入っていない休養日のため、朝風呂とシャレ込んだのだろう。

 

 「ですです☆ あ、こちらはセントーさん。今日からウチに加わることになる軽空母だそうですよー」

 漣にとっては同僚で、戦艦とは言え着任順序的には“後輩”に当たるうえ、つきあいも長いので気楽に受け答えしつつ、セントーを肘でつついてさりげなく挨拶するよう促したのだが……。

 

 「────ブハッ!!」

 突如として、セントーが鼻血を噴き出してブッ倒れたため、ふたりは大いに慌てることになる。

 

 参考までに伝えておくと、日向はその時、浴槽に浸かっていたため、当然タオル1枚も身に着けておらず、やや筋肉質な傾向はあるものの、(駆逐艦勢や一部巡洋艦娘だちが羨むのに十分な)豊満な乳房その他が正面からは丸見えだったことを付け加えておこう。

 


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