【悲報?】ウチの鎮守府に三下なセントーが来たってよ【朗報?】   作:嵐山之鬼子(KCA)

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※関東在住者限定の時季ネタ、かつ番外編なのをよいことにメタな会話が飛び交いますが、ご寛恕ください。



【Extra-1.Summer Dream】

 「サービスが足りないですよ~!」

 それは、いきなり提督執務室に飛び込んで来た、上喜鎮守府次席秘書艦こと漣のそんなひと言から始まった。

 

 その言葉を聞いた俺達──俺こと上喜仁中佐と筆頭秘書艦の夕張、そして雑多な理由から“秘書艦代理補佐見習い”という謎の役職(めいもく)で、この執務室(へや)にいるセントー(偽)の反応は……。

 

 「やっぱこういう場合は、古式ゆかしく「てぇへんだてぇへんだ、ご隠居!」って叫びながら入って来てほしいな」

 「いや、その場合は、パイセンより基地総司令の猪熊中将とかの方が御隠居役は適任じゃないスかね?」

 俺のダメ出し(?)に対して、異議ありと正論(?)をブツけてくるセントー。

 

 「確かに、上喜提督じゃ渋みが足りませんね。もうちょいわかりやすく「お兄さま、あなたは堕落しました」とか?」

 「R・高峰秀子?」「カルメン故郷に帰る」

 すかさず、90年代少年マンガのネタを突っ込んでくるあたり、やるな夕張!

 ……それに的確に反応できる俺達(オレラ)も俺達だが。

 

 「──というワケで、ワンモアプリーズ」

 向き直って漣にテイクツーを要請する。

 

 「え~~、仕方ないなぁ。──てててて、提督! ししし深海棲艦が!」

 なんだかんだでノリのいい漣は、一度執務室から出て、再度飛び込んでくるトコロから始める……って、オイ!

 「まさか、深海棲艦が鎮守府に直接攻めてきたのかよ?」

 テレビアニメ版9話みたいに!?

 「15年ぶりっスね」

 「ああ、間違いない……棲姫よ」

 待てや、コラ、本当だったらネタに走っていい事態(こと)じゃねーぞ!

 

 「いえ、そういう危険(こと)は別にないですよ~」ゴチンッ!

 しれっと言い放つ漣の頭にゲンコツを落とす。

 「はぅン、ひどいですよ、ご主人様。いくらメイドに折檻がお約束とはいえ」

 「るさい。人騒がせな」

 涙目で見上げる漣がちょっと可愛いと思ってしまったことは心の棚の奥深くにしまっておこう。

 

 「で、結局、何が言いたかったんだ?」

 なんか執務を続ける雰囲気じゃなくなったんで、執務机横の応接セットに4人で座って雑談を始める。ま、ちょうど一服入れようと思ってたトコロだしな。

 「それです! せっかくの美味しい(きせつ)だってゆーのに、プールネタや水着ネタのひとつもやらずに終わるのはもったいなさ過ぎでしょー!」

 (コイツ)……今回が番外編だからって思いっきりメタなネタをブッ込んできやがったな。

 

 「夏って言っても、もう9月よ? そりゃ、まだまたぜ残暑は厳しいけど……」

 「お盆過ぎてるから海水浴は不可っスね。まぁ、プールなら開いてるトコもあると思うっスけど」

 夕張とセントーが至極常識的なツッコミを入れるが、当の漣は「()だやだ、プール行きたい! 水着でサービスシーン入れたいんだーい」とダダっ子モードに突入している。

 「て言うか、そもそも艦娘達(おまえら)って、わざわざプールに行きたいのか? 常日頃から海で軍務(しごと)してるのに」

 そりゃ、まぁ、泳ぐのと“水上スケート”してるのでは、大分勝手は違うんだろうが、「水辺なんか仕事だけでもう沢山!」ってなっても不思議はないと思うんだが。

 

 「甘いですよ、提督(ごしゅじんさま)、プールは別腹です!」

 理解不能なコトを、さも世界の真理のように声高に主張されても、その……なんというか困る。

 「そ、そういうモンか」

 「そーゆー、モノなのです」

 いったい何がソコまでこやつを駆り立てるのか、と不思議に思いつつも、ちょっとだけ考えてみる。

 

 (思えば、この夏は筆頭秘書艦(ゆうばり)次席秘書艦(さざなみ)を、実務と事務の両面でずいぶん酷使しちまったからなー。秘書艦見習(セントー)も、名目だけでなく書類仕事を実際に手伝ってもらうことになったし)

 

 「いいだろう。この週末は自由参加のリクリエーションってことで、近くのプールを半日程借り切って、希望者を連れて行ってやる」

 「やたっ! よっ、ご主人様、太っ腹!」

 何か思いついたらしい上喜の言葉に、発案者の漣が目を輝かせる。

 

 「はぁ~、まったく仕方ないですね、提督もザミちゃんも♪」

 両手を頭の左右に掲げて、やれやれという風に首を振る夕張だったが、弾む語尾や隠しきれない口元の笑みから、彼女も内心ではこの突発イベントを歓迎していることは傍目にも丸わかりだ。

 「あ、せっかくだから水着を買いに行かないといけませんね! 提督、今日は早上がりさせてもらってもいいですか?」

 いや、珍しくこんなことを言い出すあたり、実は夕張が一番楽しみにしているのかもしれない。

 

 とは言え、そのことをわざわざ指摘するほど俺も他のふたりも野暮じゃない。もっとも、あとで聞くと、漣は一瞬からかおうかとも思ったらしいが、それで夕張がヘソを曲げて「じゃあ、いかない」とでも言いだすと面倒なのでスルーすることにしたんだとか。

 

 「うーん……今月はお小遣いがちょっとピンチだから、漣はパス1で~す。去年のだけど、まだほとんど着てない水着持ってるしー」

 ちなみに、漣が言ってるのは、ゲームで俗に「夏服七駆」と言われている第七駆逐隊の艦娘たちが夏に着用している私服(?)の事だろう。

 艦娘たちには時々、この種の“制服以外の衣装”が支給されることがある──その大半が『艦これ』のゲームと連動してるっぽいことを俺は知っているが、その理由までは不明だ。

 (軍上層部(おえらいさん)の趣味とかだったらアレだなぁ)

 ま、目の保養になるから、提督側としてはなんらデメリットはないんだが。

 

 「ああ、そう言えば、ザミちゃんやボノちゃんは去年、大本営から支給されてたわね。じゃあ、センちゃん、ふたりで駅前のデパートにでも行こっか?」

 「えーーと……申し訳ないっス、夕張(バリ)センパイ。オレっちも、水着は一応持ってるんで……」

 セントー(偽)いわく、建造時に本人といっしょに建造ドックから出て来た金属製のスーツケース(?)に、服とか身の周り品だとかが色々入ってたんだとか。

 

 (そういや、『アズレン』でのセントーは、実装直後に水着の着せ替えが来てたっけか。有名原画家のキャラデザだから優遇されてたのかねぇ)

 

 「そ、そうなの。古参のザミちゃんだけじゃなくて、新米のセンちゃんにも衣装が……ふ、ふふふ……」

 あ、いかん。夕張が自虐(めんどくさい)モードに入った。

 「そうよね。どうせ私は昔っからいる割に公式水着ひとつない艦娘(おんな)よ」

 筆頭秘書艦殿が扶桑山城(ふこうしまい)並みにヤサグレておられる。

 「水着はおろか、浴衣も晴れ着もクリスマス衣装も支給されないし」

 どうやら地味に気にしていたらしい。

 

 (ん~、艦娘としての夕張は(実物の実験軽巡・夕張と比べれば)割と性能的には恵まれてると思うんだがなー)

 

 ゲームとリンクしているという俺の予想が正しいなら、もう少し待てば三越コラボでのお洒落な私服が届くはずだけど、さすがに今、根拠が俺の脳内にしかないソレを引き合いに出すのははばかられる。

 第一、その予想が間違っていたら、期待させたぶん余計な落胆を与えることになるだろうし。

 

 結局、その場は何とか夕張をなだめすかし、漣とセントー以外で気配りの上手そうな駆逐艦娘を何人かフォローにつけてデパートに送り出す……くらいしか、俺に打てる手はなかった。

 

 * * * 

 

 さて、そんなこんなで、時季的にちょっと遅い「プールでの水遊び」へと繰り出すことになった上喜提督と愉快な艦娘(なかま)たち。

 

 「うーむ、来る前は、わざわざプールを借りなくてもいいかと思ったが、こうして眼前にして見ると貸し切りにして正解だな」

 思い思いの水着に着替えてプールサイドにたむろしている10数人の艦娘たちの姿を眺めながら、機嫌良さそうに口元を緩めて上喜はつぶやく。

 

 たとえば、わざわざデパートでおニューの水着を購入した夕張の場合、緑と白のギンガムチェックのビキニを選んだようだ。

 普段はメロンと呼ぶとと怒るクセに、衣服や小物にはメロンをイメージさせる代物を選ぶことが多い夕張。某タイガー教師の如く、彼女にとってメロンは「憎みつつ愛している」ものなのかもしれない。

 水着単体だと露出度はかなり高めだが、ライトグレーのパーカーに袖を通し、白いパレオを腰に巻くことで、いくぶん肌色比率を抑えているのは、彼女の恥じらいの表れだろう。

 

 初期艦にして次席秘書艦(えせメイド)たる漣は、前述の如く“七駆夏服”バージョンの水着だ。水色を基調に白と薄紫で彩られたセパレートで、ボトムには紺色のミニスカートも履き、私服の白いパーカーを羽織っている。明るく元気(ハイテンションとも言う)な漣にはよく似合っているが、本人は内心「ウケ狙いで伊号(せんすいかん)たちからスク水を借りてくるべきだったかな~」と考えていたりする。

 

 そのほかにも、大淀や榛名に間宮といったどちらかという控えめであまり鎮守府から離れることのない艦娘たちも、各自なかなかお洒落な水着に身を包んでこの場に集っている。

 一匹オオカミ気質で知られる曙(まぁ、上喜(ココ)の部隊の曙は割合フランクだが)まで来ているあたり、やはり艦娘たちも夏らしい息抜き(レクリエーション)がしたかったのかもしれない。

 

 (おもに交渉面で)そこそこ苦労した企画に、部下たちが多数参加してくれたのは、上喜も提督(じょうし)として嬉しいのだが……。

 「目の保養を通り越して目の毒だな。うーむ、けしからん」

 そう言いつつも、目を逸らさずに艦娘たちの水着姿を凝視(がんみ)しているのだから、その真意は推して知るべし。

 

 「あぁ~いいっスねぇ~」

 上喜のすぐそばで「うんうん」と頷いているセントー(偽)だが、その本人も白の、しかもかなり際どい(下乳丸見えの)セパレート水着姿なので、上喜としては微妙に落ち着かない気分だった──もっとも、視線自体はユサユサ揺れるその“南半球”に釘付けなのだが。

 

 「て・い・と・く♪ ドコ見てるんですか?」

 彼がチラ見している視線の先を察知した夕張が、叱咤半分からかい半分といった雰囲気で、上司を咎めた。

 

 「バッカ、おめー、コイツの場合、普段から割と露出度の高い格好だろうが。だから水着になっても肌色面積あんまし変わらんなぁ──とか考えてただけだって」

 「嘘つけ、絶対見てたゾ」

 弁解する上喜を、なぜか某語録風の台詞で漣が糾弾する(というかおちょくりたいだけだろう)。

 

 「まー、そーゆーご主人様の言い訳は置いといて」

 ……と、何か箱みたいなものを脇にどける仕草をする漣。

 「ちょっと失敗だったんじゃないですかねぇ、この企画」

 「やれやれだぜ」と言わんばかりに肩をすくめる漣の指摘に、周囲の艦娘たちもどこか賛成ムードだ。

 

 「むぅ……やはり、豪華ホテルのプールとかじゃないとダメか?」

 ちなみに此処、実は鎮守府近くの中学校のプールだったりする。プールサイドはシンプルな灰色の耐水タイルを敷き詰めただけで、プール自体も25メートル四方の長方形で、波だの水流だの滑り台だのといった仕掛(ギミック)とは無縁の単なる水溜まりだ。

 

 「いや、それもありますけど、それ以上に──その、寒いんですよ、提督!」

 そう、ここにいる艦娘の大半が、水着の上にパーカーなりTシャツなりを着ているのは、気温がそこまで高くないからだ。

 

 「今週の頭までは、まだだいぶ残暑がきびしかったんだがなぁ」

 上喜の言う通りで、漣が執務室に飛び込んで来た日は、確かに日中の気温が30度を超えていたし、水遊びするのにちょうどいい気候だったのだが。

 

 「いやー、まさかたった5日間でこんなに気温が下がるとは思わなかったっスね!」

 それでも25度、つまり初夏ぐらいの温度ではあるのだが、日差しが真夏ほど強烈でないことに加えて、人間の体はたかだか5度下がったくらいでも涼しいを通り越して肌寒いと感じてしまうものなのだ。

 

 府の教育委員会と交渉までしてプールを借りた上喜提督だったが、心なしか肌寒さに震えているような艦娘(ぶか)たちの姿を見ては、この企画を断念せざるを得なかった。

 

 「仕方ない。せめて弁当だけでも食って帰るか」

 プールサイドにレジャーシートを広げて座り、わざわざ間宮に作ってもらったお重入り弁当を、やけ食い気味にパクつき始める提督&艦娘たち。

 

 ──こうして、上喜提督監修の「ドキッ! もう9月だけどプールだ水遊びだ! ポロリも……あるといいなぁ」企画(イベント)は、ふたを開けるとわざわざ近所の中学校までピクニック(?)に来ただけという散々な結果に終わったのだった。

 

 「うーん、オレっちはそれほど寒くなかったんで、泳いでみたかったんスけどねぇ」

 なお、水着と普段の格好との差異が少ないせいかケロッした顔のセントーが、帰り際にちょっぴり未練がましい視線をプールに向けていたりしたのだが、まぁ、それもまた「青春の一頁」というヤツだろう(適当)。

 

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