絶対に後悔なんてしてないから。

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さようなら


嘘つき

嘘つき

 

流れる雲母に煌めく夜空は、沈んだ僕の心に静かに居座った。

隣に居るように、この感情を共にしてくれるかのように。

ひとりだ、けれどひとりじゃない。

ふと俯いていた顔を上げれば、『彼』は微笑んでくれる訳で、僕は少しだけ心が軽くなった気がした。

誰も見ていないから、誰かに見てもらいたい。

誰にも出来ないから、僕だけは出来たらいい。

欲望も、願望も、等しく同じものなのだと。

願いも、祈りも、等しく意味の無いものなのだと。

誰かが言った。

『君はひとりでいたい?』

僕は答えた。

『僕はひとりでいたい。』

ずっと、このまま命の終わりまで。

ただ、そう願うのも、そう祈るのも、結局は誰かに縋って生きている訳だ。

明日食べるものは?

今日生きていくために何をする?

住む家は?

地べたに這いつくばっては生きていけない。

誰に言葉を教わろうか。

教科書を読めばいいか。

それは、誰かが作ったもの?

なら、読むのはよそう。

 

そんな無意味なことを繰り返して。

ひとりで行きたいと。

ひとりで生きていけると……?

 

だからなぁ、もう諦めてしまおうか。

寂しく穴の底で夜空を眺めるのも。

泣いた顔を見られまいと顔を隠すのも。

だって、ずっと見られていたんだ。

夜空に、空気に、かみさまに……。

繋いだ手からは感情が零れて、

消えた笑顔からは綻びが縺れて。

泣いて落ちた涙からは苦しさが溢れ出して。

服に染みては、地面に零れては、何にもなれずに消えていくんだと。

 

寂しいなぁ、悲しいなぁ。

空はこんなに清々しいのに、僕は何ひとつ出来ていないじゃないか。

誰が急かした?

誰に言われた?

いいや、誰にも言われてなんていなかった。

つまり自分が勝手に自滅しただけだ。

 

ひとりで、誰にも助けを求めないで。

ついには心が壊れてしまった。

辛いと、言えなくなってしまった。

 

嘘つきだと、お前には価値がないと。

ひとに価値など付けられない。

でも、生きていくために価値を付ける。

僕は、負けたんだ。

ずっと、ここで生きていけるって。

泣いたって意味ないのに。

 

『悲しいなら笑って、そうして次の朝を待つんだよ』

そう、いつの日か誰かに言われたけど

僕はそれに頷けなかった。

 

『相談ならいつでも来てくださいね?』

その真摯な言葉も裏があると考えてしまう。

 

ああ、醜いな。

こんな考えしか出来なくなっちゃってさ。

全てが遅いんだと感情が告げる。

今更諦めたって意味が無いなんて、

気づくのが遅すぎたんだ。

 

痛いなぁ、痛い。

ひとりがこんなにいたいなんて。

苦しさに喘いで、辛いと叫んで。

 

ああ、本当に……孤独だ。

 

別に心を殺して嘘をつくなんて……。

そんな面倒なことはしていないけど、

2つの選択肢を与えられて、それぞれにどんな道があるかなんて考えられないから、いつも『悪い方』を選んでしまうんだ。

親に隠した秘密だって、バレないように嘘をつく。

バレたらバレたで『関係ない』と嘘をつく。

 

痛くないなぁ、もう随分と心が軽い。

でも、何かが違う。

信じてもらいたいのに、僕には資格がないのかなぁ……。

いつからか話が噛み合わなくなった。

いつからか信じてもらえなくなった。

 

ずるい

ずるい

どうして僕じゃないんだ?

どうして僕の『片割れ』ばかり信じるの?

 

僕は要らないのか。

僕は必要ないのか?

 

ねぇ、教えてよ。

 

僕はどうしてこうなっちゃったの?

期待に応えられなくなったらいらないの?

捨てられちゃうのかな。

用済みの判子を押されて、ひとりゴミと一緒に詰められちゃうのかな。

 

手に持った『凶器』は心に侵食していって、いつしか痛みすら無くなった。

 

でも辛いよ、悲しいよ。

ひととして、人間としての何かが欠落しちゃったんだ。

 

なのに、痛みは感じるんだ……。

おかしいよね?

僕はニンゲンじゃないのにさ。

見た目だけ、姿と声と?

あとは何が同じだった?

みんなが持ってるもの。

でも僕にはないもの。

 

無くなっちゃった?

違う、自分で捨てたんだ。

なのに、今更取り返したいとか。

自分でいらないって言って捨てたのにね。

過去に置いてきた記憶だけ。

過去はやり直せないし、取り戻せない。

今は無い昔の記憶には、どんなものがあったのかさえ、もう分からないんだ。

 

 

 

目が覚めると、そこには誰もいなかった。

机の上に置かれた手紙には、

自分の字で書かれた紙が1枚置いてあるだけだった。

 

嘘つきだ、全部、この世界なんて。




サヨウナラ

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