ドレミフラ祭の作品となります。
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ドレミフラ祭

夢の中の出来事というのは基本的に覚えていたりするわけではないしそれ自体が存在するのかどうかもよくわからない。実際そう思っている今の私は毎回夢があるごとにそんなことを考えているのだろうか。それを知る手立てはない。

「あら、珍しいお客さんね」

夢の中では私に話しかけてくる存在はいない。なぜならそれが私の夢だからだ。私の意思によって周囲の全てが左右される。そういうはずだからだ。ならば私の部屋にいるこのへんなやつはなんだろうか。

ナイトキャップのようなものをつけているからバクだろうか?でも食蟻獣のような見た目だったはず。では違うな。

「それはこっちのセリフですよ。夜の支配者さん」

しゃべったああ‼︎なんてアホなことはしない。

「そうだったかしら?私が見ている夢なのだから私以外の存在がいるとしたらそれは私が作った幻か…あるいは別の存在かと思ったのだけれど」

 

「まず二つほど間違いを正しましょう」

ジト目をさらに細めたその存在は私のそばに歩いてくる王座に座る私は動けない。金縛りというやつね。

「支配者にお説教?」

口だけは動かせる。いや、動かしてもらえているということね。

「一つ目ここでは私が支配者です」

その途端体が動くようになる。随分と優しい支配者だこと。

「二つ目。夢の中が個人だけなのは表層だけです。深層は全て繋がっていますしそこには夢の住人だっています」

へえ、初耳ね。仮にそうであればいつか支配してみたいものね。

「まさに貴女が支配者って言いたいのね」

 

「その通り。そして大変面倒なことにヒトは時々個人の夢を深層に持ち込むのです。それの処理を遣わされた身ですがね。正直面倒なので消し飛ばしてもよろしくて?」

あらそう。それは困りものね。でも私にそれを言われても困るわ。私はただ夢を見ているだけなのだから。細い骨のような羽が揺れる。

「それ困るわ。私だって夢の中で消されたくないもの」

 

「夢の中で私に抗うつもりですか?まあそちらの方が私としても面白くて楽しいのですけれどね」

 

夜の王と呼ばれる存在よ。そう簡単には倒されないわ。

月はないけれどハンデとして受け取っておいてね。

 

「私も戦うのは好きではないです。よろしい。存在を消し飛ばすのはやめましょう」

 

「感謝するわ」

 

ただ、この場合私もその面倒ごとを解決するのを手伝わないといけないのでしょう。そもそも私は専門外もいいところよ。

どうしましょうかね。

 

「ああご心配なく。こうやって深いところに落ちてくる魂は決まって精神的に不安定な存在なのでその原因を排除すればどうにでもなりますよ」

 

「大人しく夢が覚めるのを待つのは?」

 

「夢の世界では体感時間が大きく異なるのですよ。覚めるを待っていたら一体いつになるやら」

そう。一応夢の中でも時間感覚ってあったのね。

 

 

「なら私に問題があると仮定してじゃあ私はどうすれば良いのかしら」

私の問いかけにその夢の住人は薄ら笑いを貼り付けたまま答えた。

 

「簡単な話です。原因である貴女自身が原因を解決するのですよ。勿論私はそれを全力でサポートしますよ」

 

「そう…じゃあ早速だけれど原因を教えてくれるかしら?」

 

「貴女自身がそれは一番分かっていることでしょう」

そう言われてしまえばそうかもしれないでも原因は思いつかない。一体なんなの?

たまをひねっても全然思いつかない。思いつかせない。

 

「思いつかないようですね。ではヒントをあげましょう。破壊、恐怖、孤独、罪、〇〇」

 

最後の言葉が頭に引っかかり、急にかき回し始めた。

頭痛が一気に襲いかかる。

なにこれ……

立っていられない。思わずしゃがみこんでしまう。足元が歪む。着ているはずの黒いドレスがいつの間にかなくなっていて、気づけば体を覆っているのは白いシャツ一枚だけだった。

 

 

「さあ、貴女の化けの皮を剥いでみましょうか」

気配を察知。彼女は目の前にいる。だけれど顔をあげられない。イタイ……イダイ‼︎

 

「貴女はレミリアではありませんよ」

そんなの嘘だ。

私はレミリア・スカーレット。高貴な夜の王……

 

「ならどうして目の前にそのレミリアの妹がいるのでしょうかねえ」

 

違う。違う‼︎確かに私はレミリアだ!お姉様だ‼︎

 

「貴女はフランドール・スカーレット。いつまで姉のフリを続けるおつもりですか?」

 

姉のフリ?いや…そんなの信じたくない!だってフランだったら…ずっとあの部屋でひとりぼっちになっちゃう‼︎私が動ける世界はあの部屋だけになっちゃう‼︎

 

景色にヒビが入る。最初は小さかったそれらが大きく膨れ上がり一気に音を立てていく。

いやだ……

「貴女達の事情は知りませんがこれ以上ここを壊さないでほしいですね」

いや現在進行形で壊れていっているのは違うの?と思うけれどあ、これ私の夢だった。全部……

「これにて貴女の夢は終わりです。貴女が何を思い何を感じて姉になる夢を見ているのか興味は全くありませんし知ろうとも思いません。ですが、二度とこのようなことがないようにお願いしますね」

夢はいつか覚める。私の世界が欲しいという夢もいつか覚めて…世界への興味もなくなってしまうの?

 

考える時間は残っていない……

 

 

「もし同じことが起こったら?」

最後に一言だけ……聞いておく。

「二度目はありません」

じゃあその二度目は私がこの世界の神だ!

 

 

 

 

「フラン?大丈夫…」

ふかふかのベッド…体がいつもより軽い。

「あ…お姉様……」

目を開ければ、声の主であるお姉様がいた。珍しいといえば珍しい。でも考えてみればお姉様は私に何かあると一番にすっ飛んでくる。不思議だなあって最初は思ったけれど今ではそういうものって慣れた。

「悪い夢を見ていたのね」

 

「うん…ひどい悪夢だった……」

ただ、そんな悪夢であってもあの世界はとても広々としていた。私の夢が壊れた直後、一瞬だけど見れたあの光景は私にとってはとても魅力すぎた。

そう……私にとって世界とはこの狭い部屋のないだけなのだ。

 

今それを思い知った。でも今はそうでもない。こんな小さな部屋だけれどそれでも十分かもしれないって思えるようになった。だって、私の新しい世界見つけたか‼︎

 

「フラン?」

 

「どうしたのお姉さま」

 

「嬉しそうだけれど…何かあった?」

 

「なんでもない…なんでもないよ」

2度目はない……私には二度もいらない。私は私の力で夢の世界の神になる!こっちの世界はここしかないけど…ここよりもっともっと楽しい場所‼︎待っててね!

 

 

コレはとある破壊の少女が忌み嫌われる少女に出会う前の話。




「さあ始めましょう‼︎戦争を!」


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