いつかボク(日本人)が地球をすくう 〜亜宙戦記デミリアン〜 [ラノベ版] 作:多比良栄一
第1話 二十一世紀の日本人たち、すべておまえらのせいだ
『二十一世紀の日本人たち、すべておまえらのせいだ』
ヤマトタケルは車窓から、シブヤのスクランブル交差点を見下ろしながらそう思った。
眼下の交差点では、数十人もの警察官が歩行者たちを制止しているのが見えたが、どうもみな手こずっているようだった。
「草薙大佐……。ずいぶん時間が経つけど……」
文句を言われた
「タケル君。キミがスクランブル交差点を渡りたいなんて、無茶を言うからでしょ」
「まぁ、そうだけど……」
「準備して。そろそろ、降下するわよ」
シブヤは二回の関東大震災と、第三次世界戦争の影響で、一時期ひとの流れが途絶えていたが、『スクランブル交差点』が世界遺産になってから人気が再燃した。
今では最先端の街にすっかり生れ変わっていた。空飛ぶ車、スカイモービルのための、空の道路『流動電磁パルス・レーン』も、上空に縦横無尽に通じているのが見える。
車が空から降下し、交差点の手前10メートルほどの位置に音もなく『着車』した。
ドアが一斉に開くと、草薙大佐を先頭に、兵士たちが銃を構えながら降りたった。完全武装で一部の隙もないものものしい装備。高性能かつ強力な殺傷能力をもつマルチプル銃を構えている。
草薙に促され、ヤマトはゆっくりと地面に足を降ろした。すぐに兵士たちがヤマトタケルを取り囲む陣形を組む。
責任者とおもわれる警察官が近寄ってきた。
「あたりは全部封鎖いたしました」
その警察官は敬礼をすると、去り際に兵士たちの中心にいるヤマトに目をむけた。その視線はあきらかに怒気を含んでいた。警察官はヤマトと目があうと、「チッ」とあからさまに舌打ちをした。
ふと気づくと、現場を封鎖している警察官全員がこちらを見ていた。誰もが、警護対象者の自分に対して敵意むきだしの視線が向けていた。
「彼らの視線が気になる?」
草薙がヤマトに声をかけた。
「まさか」
草薙が手を大きく振って、どこかへむかって合図した。
「じゃあ、いくわよ」
歩きはじめたヤマトタケルの周りを武装兵たちが取り囲む。どこから狙われても対処できるように四人が四方向に銃をむけて、ヤマトにからだをくっつけたままゆっくりと、スクランブル交差点へ歩をすすめていく。
『自分の時間が欲しいから、お金がかかるから……。そんなご立派な理由で、親になれたのに、なろうとしなかったヤツラ。そして……出産や子育てを支援する政策をなおざりにして、人口減少になんの手も打たなかった政治家や官僚ども……』
『そう。すべて、西暦2000年頃……、今から450年前の日本人全員の責任……』
『2470年、ボクは地球上で最後の日本人になった……』
警護されながら交差点を渡る少年を見て、やじ馬たちがざわめきはじめていた。一列目にいた黒人系の青年二人組の一人がヤマトにいち早く気づいた。
「おい、あいつ、ヤマトタケルだ」
「まさか。日本人のDNAを99・9%保持しているっていう
「あぁ、『スリーナイン』だ」
「あいつが……」
彼が息を飲むと同時に、うしろのほうの群衆の一人から叫び声があがった。
「オレの母親は、あいつに殺された……」
イタリア系の中年男性だった。その隣にいたヒスパニック系の中年女性が声を荒げる。
「わたしは娘を殺され、家を潰されたわ」
「オレは会社を壊滅させられて、破産した……」
次第にそれらの声が大きく広がりだした。人々は手にしたボトルや缶をヤマトたちのほうへ投げつけはじめた。警察官が張った規制ビームの壁に跳ね返されて届かなかったが、みな、その行動を止めることはできなかった。シブヤのスクランブル交差点は、悲鳴にも似た怒号、怨嗟に満ちた叫びに埋めつくされた。
草薙がこめかみを押さえながら、「テレパス・ライン」と呼ばれる体内に埋め込まれた通信装置に声を張りあげた。
「音声ジャミングの出力弱いぞ、どうなってる?。まわりの音声がこっちに届いている」
「いいよ、草薙大佐……。慣れっこだ」
その時、ヤマトの耳にひときわ大きな怒号が聞こえた。
「ミリオン・マーダラー(100万人殺し)!!」
ヤマトは声の聞こえたほうに笑顔を向けると大げさに手を振った。
『まったく……気が早いったらない……』
『まだ95万人……なんだけどね』