いつかボク(日本人)が地球をすくう 〜亜宙戦記デミリアン〜 [ラノベ版]   作:多比良栄一

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第15話 なぜ、ぼくは生きている?

 ヤマトタケルは、広い部屋の真ん中に無造作に置かれた、ベッドの上にいた。

 周囲には、これでもか、というほどの量の計測機器やAIシステム、検査ロボットがあり、どれもが静かな動作音をたてながら稼働していた。ヤマトはからだに異常がないことは検査で判明していたので、このなにかしら仕事をしているらしい輩が自分から何を引き出したいのか理解できなかった。だが、首や腕、そして脚に痛みが残っている身では、あまり無理することもできないと、病床に横たわる立場に甘んじることにした。

 ヤマトは空中で二本の指をまわすジェスチャーをして、目の前に投写されていた3D映像を最初から再生した。これで同じ映像を見るのは、何十回目だろう。もう一時間以上も同じ映像を繰り返して見ている気がする。

 

 映像はマンゲツが亜獣サスライガンを倒したところから始まっていた。

 現場が上空から撮影された映像。

 飛びかかってきたサスライガンをセーバーで返り討ちにしたマンゲツが、その死骸を横目にゆっくりとたちあがる。

 

 その瞬間、画面の一部がぎゅぎゅっと歪む。

 

 マンゲツが一瞬消えたかと思うと、数メートル横の違う立ち位置に移動し、同時に、あたり一面が水浸しになっている。マンゲツを中心にした数十メートルの同心円が、道路、家、ビル、樹木、すべてが一瞬にして濡れそぼっているのだ。

 その思いがけない変化にだれもが目を奪われる。

 が、すぐにその映像からサスライガンの遺骸が、瞬時に消えていることに気づかされる。まるでデキの悪い合成映像か、とんでもない仕掛けのイリュージョンのどちらかを見せられている気分にさせられる。

 しかもその後、マンゲツは崩れ落ちるように膝をおり、その場に倒れ込む。何度か映像をみると気づくが、マンゲツの左足は骨折していて、自分の体重を支えていられなかったことがわかった。

 

 最初にこの映像を見せられたときは、ブライト司令官をはじめ、アル、エド、春日博士に取り囲まれていて、病室だとはおもえない物々しい雰囲気があった。だが映像が再生されるにつれ、自分の顔を睨みつけているブライトの、今にも爆発しそうな心境も理解できた。困惑の表情しか浮かべていない他の担当者たちの口元をみれば、彼らも、はやく納得のいく答えを聞きたくてうずうずしているのは間違いない。

 だが、このなかで一番驚いているのは自分なのだ。

 

 なぜなら、あの時、まちがいなく死んだ、と意識したのだから。

 

 だが、なぜか生きているーーーー。

 あの時、なにがあったか思い出せ。

 水圧に押し潰された、と思った瞬間、仙台の街のまっただなかに、まだ、いた。

 しかも亜獣を倒して帰投しようとする直前。亜獣の罠にはまる寸前。

 だがマンゲツの機体がなぜか濡れていた。

 いや当たり前だ。海に引きずり込まれたのだから。だったら、街中にいるのがおかしい。しかも、周辺はまるでそこだけ豪雨が降ったように水浸しになってもいた。

 ヤマトは、マンゲツの足元近くに設置されたカメラからの映像に思わずさけんだ。

「ストップ」

 ブライトのほうにむかって向きなおるとあわただしく訊いた。

「ブライトさん、ソードは?。ソードはどこに?」

「それはこっちが聞きたい。ソードは見つかってない」

 ヤマトは驚きを隠せなかった。停止状態になっているその映像には、はね飛ばされたソードの柄の下敷きになったはずの、親子連れがいそいそとビルの影に逃げていく姿があった。

 

『なぜ、生きている?』

 ヤマトの頭に疑問が灯ったが、そこで思考はストップさせられた。そこからヤマトも全部どう答えたのか憶えていられないほどの質問攻めがはじまった。ヤマトには正直に答えるしかすべがなかった。この映像のあと自分が体験したことを。

 亜獣に反撃を受けたこと、海へ引きずり込まれたこと、操縦回路を喪失しデミリアンと直結して操作したこと、そして亜獣を倒したこと……。

 ほとんどのことは包み隠さず語った。

 だが、マンゲツが圧壊した事実と、その寸前にコックピット内に響いた「かんげつ」と名乗った謎の声については口をつぐんだ。

 それは安易に語るべきではない。

 

 本能的にそう感じていた。

 

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