いつかボク(日本人)が地球をすくう 〜亜宙戦記デミリアン〜 [ラノベ版]   作:多比良栄一

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第17話 そんなんじゃ、あんたとツガえないでしょ

 ヤマトが再生映像を見ていると、病室の外からガヤガヤと騒がしい声と、数人の足音が聞こえてきた。ヤマトはあわてて空中で手をふって映像を消し、テレビの映像に切り替えた。ふいにテレビの画面から、けたたましいローターの回転音にまじってレポーターの声が聞こえてきた。

『ご覧下さい。アコンカグアの頂上が削り取られています』

 ヤマトが映像に目をむけるとアンデス山脈の稜線近くを飛ぶヘリコプターの映像が映し出されていた。映像は、6000メートル級の山が20座以上そびえたつ山脈の最高峰アコンカグア。不思議なことに頂上から下に百メートルほどがスパッと横に切断されていた。

 ヤマトが映像に目を奪われていると、ドアがすっと開いてブライトがミライを連れて、見慣れない少年たちと一緒に入ってきた。

「なんだぁ、思ったよりいい男じゃない。ミリオンキラーって呼ばれてるから、実物はもっと『ギタギタ』しているかと思ったわ」

「アスカ、やめないか、初対面で」

 彼らのいきなりのご挨拶にヤマトはむっとしてブライトに尋ねた。

「ブライトさん、この子たちは?」

「今日、月基地から到着した」

「聞いてなかったけど」

「あぁ、わたしも上から昨日唐突に聞かされた」

 ブライトは憤懣やる方なしという仏頂面で答えた。 

「ヤマト、彼らを紹介する」

 ブライトが手に持った電子ペーパーを見ながら紹介をはじめた。

 

「こちらが、龍・リョウマ 17歳」

「ヤマト君、よろしくお願いします」

 ヤマトはいかにもリーダー然とした顔立ちをしたリョウマに、すぐさま『正義感』『朴念仁』とラベリングした。あの顔は、杓子定規で融通がきかないタイプの顔立ちだ。サイドを刈りあげた髪形は爽やかそのもので、目元から鼻にぬけるラインがすっきり通り、育ちの良さ、意思の強さ、をどうしても感じてしまう。いいヤツという印象しか感じさせない清廉さがにじみ出ている。

 ヤマトにはとうてい馴染めそうもなかった。

 

「で、こちらがリョウマの双子の妹、龍・アスカ 17歳」

 ブライトが紹介を続けた。

「あんたがはっているエースの地位を奪いにきたわ」

 アスカに対するヤマトの第一印象は『高飛車』『自尊心』。

 こういう虚勢を張りたがる人間は、実態を伴わないことがほとんだ。ただ、男まさりの口調とは異にして、外見はおどろくほど女らしい。赤みがかった黒髪をふわっと広げた髪形も、猫のようにクリッとしたまなじりも、たいていの男にとっては魅力的だ。本人もそれを理解したうえでの、あの口調なのかもしれない。もし、それが確信犯なら、『したたか』というラベリングも追加しておくべきか。

 

「それからレイ、レイ・オールマン」

 ヤマトはハッとしてブライトが手を指し示すほうを見た。

 もうひとりいた?。

 ヤマトが目をむけると、ショートヘアの子がリョウマのうしろでぼんやりとして立っているのが見えた。ジェンダーレスというべきか、ボーイッシュな顔だちをしており、アスカと違って女性らしさには無頓着らしい。『順応性』『控え目』とでもラベリングすれば良いだろうか。レイについてだけは、第一印象だけでは、とてもつかみきれない、とヤマトは感じた。

「ごめん。もうひとりいたんだ」

「気にしないで。馴れっこ」

「そうそう、この子のことは気にしないでいいわよ。存在感ゼロの『レイ』だからね」

 ヤマトはアスカの口調にイラっとしたので、皮肉を言うことにした。

「ありがたいね。ボクは厚かましいのも、馴れ馴れしいのも苦手だから。気づかないくらいがちょうどいい」

「は、そんなんじゃ、ツガえないでしょ」

「ツガう?」

 あわててブライトが補足をくわえた。

「ヤマト、彼らは日本人のDNAを96・9%を保持した『クロックス』のメンバーで、次世代パイロット生誕プロ……」

 タケルはいままで何回か聞かされていたプロジェクトの内容を思いだして声をあげた。

「ブライトさん、そういうのやめてくれないかな」

「ヤマト、これは軍の決定事項なんだ」

「だったら、ぼくはその『軍』をやめるよ」

「あんた、『ボカ』ぁ。あたしみたいな女とツガわなきゃ、日本人の純血が絶えちゃうでしょ。そりゃ、99・9%(スリーナイン)にはならないけど、98%くらいにはなるでしょ……」

 

「絶えてかまわないよ!」

 ヤマトは大きな声で、その場を一喝した。一瞬でその場が静まる。

 ヤマトはブライトと新しいパイロット三人を睨みつけるような目をむけて言った。

「あと十体で終わりなんだ」

「ぼくたちの子供世代に、ヤツラの脅威は絶対に残さない」

「いや、しかし、もしそれが果たせなかった時の保険も用意しておくことも必要だよ」

 リーダーのリョウマが、これぞお手本とでもいうべき正論を口にした。ヤマトはうんざりして思わず嘆息した。

「リョウマ君……。君は正論が正解だと思っているのか」

「あぁ、だってそうだろ」

「まったく、軍もまぬけな優等生をよこしたね」

 そのことばにリョウマより先にアスカのほうが反応して、食ってかかってきた。

「なによ、その言い草。たった3%、純度が高いだけで威張らないで欲しいわ」

「アスカ、君は死ぬと思ってここにきたのか?」

 ヤマトはたったひとことで、アスカの次のことばを封じた。

「次世代パイロットを用意する、ってことは、亜獣を駆逐する前にぼくらが死ぬってことだ」

「そ、そうは言ってないわ」

「あと十体、全部ぼくが倒す。次世代なんかに残しはしない」

 ヤマトの自信にみちた宣言にその場にいた者すべてが、ことばを発せなかった。

 

 その時、背後のドアがすーっと開いて誰かが入ってくるのが見えた。

 

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