いつかボク(日本人)が地球をすくう 〜亜宙戦記デミリアン〜 [ラノベ版]   作:多比良栄一

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第3話 ぼくがしくじったらふつうに人類全滅でしょう……

 スカイモービルからあわたただしく降りたった、ヤマトタケルは動く歩道上を走りはじめた。ふいにサッカーボール大の光る球体が飛び出してくる。

「ヤマト、遅い、遅い」

 その球体はヤマトの走るスピードに併せて転がりながら、ヤマトに声をかけてくる。

「シロ!」

『ブライト、怒ってるヨ』

「だと思ったよ」

 突然、眼前に『インフォグラシズ』と呼ばれる視覚デバイスから照射された映像が、網膜に投影された。司令官のブライト中将の姿だった。

「ヤマト、遅いぞ」

「ブライトさん。一応、空飛んできたんだけどね」

 AIロボットの『シロ』が合いの手をいれる。

『ヤマト、トンだ、トンだ』

「すでに、仙台駅近くまで迫っている」

「マンゲツはスタンバイOKですか?」

「マンゲツの生体状況、装備は万全との報告はあがっている」

 動く歩道上で移動しながら、ヤマトは上着を通路の途中に脱ぎ捨て、代わりに戦闘服に着替えはじめた。

「で、アルやエド、リンさんは?」

「出撃レーンに向わせた。直接、おまえに伝えたいそうだ」

「直接?。珍しいね。今日はなんかの記念日だったっけ」

「おそらく、前回の出撃の件を気にかけてるんだろう……」

 

 ヤマトの脳裏に前回の戦いが一瞬よぎる。

 『ナーヴセンサー』の調整ミスで、気絶寸前にまで追い込まれた前回のほろ苦い勝利。

 各担当の責任者たちは、それなりに責任を感じているのだろう。

 

 ヤマトは「出撃レーン」を進みながら、戦闘服に着替えたところで、ヤマトはレーンの終端になる一角に、だれか二人が待っているのに気づいた。

 ヤマトは顔を見るまでもなくそのシルエットだけで二人が誰かわかった。背が高くてガタイがよい作業服のアルと、背の低い白衣のエドの二人組の凸凹コンビは所内でも有名だ。

 アルとエド。

 戦闘装備の責任者と、亜獣対策の責任者。

 

「アル、コックピットの整備は万全?」

「当たり前だ、ヤマト」

「アル、前回、危うくボクが失神しそうになった『ナーヴセンサー』の調整は済んだ?」

「あぁ。あンときゃあ、済まなかったな」

「だが、今回は、一定以上の刺激が加わったら、瞬時に神経回路を遮断できるようプログラムの精度を高めといたよ」

「瞬時って、何秒?」

「すまん、0・3秒だ」

 ヤマトにはわかっていた。いつだって自分の要望を満額回答されたことはない。

「は、痛みが伝わる速度は0・05秒。確実に痛いよね」

「悪いな。これ以上速く遮断しては通常の微妙な操作に……」

「わかった。男の子だ、我慢する」

「わりぃな」

 枕詞のように謝意を口にするアルの言い回しには、いつも辟易とさせられる。

 

 ヤマトは神経質そうにメガネの中央を指でおさえている白衣の男エドに声をかけた。

「エド、亜獣の情報」

「あぁ、ヤマト君、現在まででわかっている情報を伝える」

 エドは下からヤマトの顔をのぞき込むようにして口をひらいた。

「出現順位ナンバー98。身長約30メートル、体長60メートル、二足歩行、恐竜型のいわゆる『ゴジラ』タイプ」

「名前をサスライガンと名付けた」

 ヤマトは「名前はどうでもいいよ」と皮肉を呟いたが、エドはまったく気にすることもなく、眼前に投影されているデータ表を見ながらたんたんと話しを続けていく。

「スキャンデータから推測すると、前回、ヤマト君が苦戦したナンバー97のゴルドライタみたいに、火の玉を吐きだすことはなさそうだ」

「武器は?」

「尻尾の破壊力はいままでにないほどに強力だ」

「で、こちらの世界への出現限界時間はどれくらい?」

「おそらく4時間。あと2時間はこちらの世界で暴れる可能性が高い」

「ぶっ倒す時間は充分ってことだね。で、弱点は?」

「いや、今のところまだ解析が…………」

 エドがメガネの弦をいじりながら顔を伏せた。

 

「タケル君。油断して、またマンゲツに怪我させないでね」

 

 皮肉たっぷりの女性の声が割り込んできた。

 春日鈴(かすが・リン)博士ーー

 白衣のリンが指でつまんだシート型端末をぷらぷらと振ってこちらにアピールしていた。

「リンさん」

 リンはハイヒールの音を高らかに響かせながらヤマトたちのほうへ近づいてきた。

「あなたは気絶しかかっただけだけど、あの子は腕折られたんだから……」

「了解…………。今度は気をつけるよ」

「あの子が死んだりしたら、私のそれまで積みあげてきた研究成果が台無しよ」

「またぁ……。リンさん、あいつが死んだら……」

「ふつうに人類全滅でしょうに……」

 

「ま、まぁね……」

 

 そう言いながらリンがふりむいた先、そしてヤマトがむかう正面の壁に、それはいた。

 

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