いつかボク(日本人)が地球をすくう 〜亜宙戦記デミリアン〜 [ラノベ版]   作:多比良栄一

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第30話 君たちの任務は、人を救うことじゃない。生きて帰ってくることだ

「なぜ、ぼくを出撃させない!」

 ヤマトの口ぶりにブライトはうんざりとした。リンと言い争いを繰り広げ、そのあと国際連盟の事務総長に舌鋒でなぶられてきたというのに、今またこれだ。

「ヤマト、何度もいうように、マーズでの出撃は許可しない。おまえは待機だ」

 ヤマトが口を開きかけたので、さらに大声で制した。

「これは命令だ。反問は許さん!」

 ヤマトが恨めしそうな目のまま、三人のパイロットのモニタ映像のほうへ目をむけた。三人は両腕を機材に挟み込まれていて『血液循環チューブ』の左側のチューブ、通称『動脈チューブ』のほうから血を吸いあげられているところだった。

 ヤマトが先ほどの激高ぶりからは想像できないほど、静かな声で言った。

 

「ブライトさんは、あの三人が『勝てる』というのにベットしたんですか?」

「いや、彼らが『負けない』に賭けた。最初から勝てるなどと楽観視するほど、近視眼的な生き方をしてきてはいない」

「じゃあ……」

「あの時、神名朱門(かみなあやと)の時はなににベットしたんです?。あれは絶対に勝てない勝負でしたよ」

 たったいま、リンとの会話で耳にした名前を、今またヤマトにもちだされてブライトはことばに詰まった。

『出撃準備完了です』

 その時、出撃レーンから聞こえてきた報告に、ブライトはホッとした。目の前に三人のパイロットがシートに座って待機している姿が浮かびあがった。ブライトは大げさに咳払いをした。ヤマトへの牽制をふくんだしぐさだった。

「いよいよ、君たちの初陣だ」

「時間はたっぷりある。いつも通りの戦いかたができれば、必ずいい結果がついてくるはずだ」

「健闘を祈る!」

「リョウマ、アスカ、レイ……」

 突然、脇からヤマトが発言した。せっかくの手向けのことばを台無しにされて、ブライトはむっとした。

「残念ながらボクは待機にまわされて、君たちと一緒に出撃できない。初戦だからって倒そうと気負わなくてもいい……」

 ヤマトはモニタ越しとは思えないほど、真剣なまなざしを三人にむけた。

「君たちの任務は、人を救うことでも、街を守ることでも、ましてや亜獣を倒すことでもない……」

「生きて帰ってくることだ!」

 モニタに映る三人の表情にとまどっている色がみえたが、かまわずヤマトは続けた。

「頼むから、それだけは守ってほしい」

 それだけ言うと、ヤマトは踵をかえし司令室の出口にむかった。

「ヤマト、どこへ行く?」

「ブライトさん、自分の部屋でモニタしているよ」

 

「ここにいたら、ブライトさんの賭けを邪魔してしまいそうだからね」

 

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「速い」

 軍事用の電磁誘導パルスレーンの高速移動のスピードに、レイは思わず声をもらした。これだけの巨体がマッハを超えるスピードで、空中をすべるように移動しているのは驚きだった。

「なに言ってんのよ、レイ。軍用よ、軍用。200キロ程度で『だらたら』走っている民生用とは比べモンになるわけないでしょ」

「これなら基地から神戸までアッという間だ」

 リョウマもはじめて体験するその速度に、少々興奮気味なのが画面からも伝わってきた。

「ほら、もう見えてきたわよ」

 アスカの声はわずかだけだが跳ねるようにうわずっていた。

 レイがモニタに目をやると、もうもうとした煙が各所にあがっているのが、かなたに見えた。まだずいぶん遠いとはいえ、このスピードならものの数分で到達するだろう。レイは自分の腕につながれた『血液循環チューブ』を交互に確認した。左の『動脈チューブ』にも右の『静脈チューブ』にも特に変化は見られない。

「こんなに興奮しているのに、血、全然変わんないんだ」

「レイ、あったり前でしょう。気分で色とか変わったら、そっちのほうが怖いわよ」

「だって、ヤマトが血の力で操るって言っていたから……」

「はーん、このあいだの密会の時ね」

「密会?」

「しらばっくれるんだぁ。戦いから帰ってきたら、たっぷり聞かせてもらうからね」

 レイには意味がよくわからなかったが、リョウマがふたりに割って入ってきた。

「さあ、もうすぐ着くよ」

 

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