いつかボク(日本人)が地球をすくう 〜亜宙戦記デミリアン〜 [ラノベ版]   作:多比良栄一

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第32話 だれが死者になりすました……

「モスピダン!」

 レイのカメラから送られてきた映像を見ながら、エドは興奮にからだを震わせていた。 姿形はまったく違うが、エドは今回の亜獣はこの「モスピダン」とおなじような能力を有していると推察した。

 亜獣のデータベースが眼前に浮かびあがり、AIに自動ソートされた該当データを表示した。エドはそのデータに目を走らせながら、司令室にいる人々に講釈をはじめた。

「68年前にあらわれた亜獣3番の『モスピダン』は、まわりに幻影をまき散らしたという風に言われています」

「幻影?、それどういう意味?」

 リンが怪訝そうな顔をして訊いた。

「わからない。ただその当時の資料によれば、避難する人々がみな一瞬にしてなにかに取り憑かれたようになった、としか」

「みんな何をみたの?」

「それは……」

 そこまで言いかけて、エドはことばをうしなった。指が震えている。

 この3番目の亜獣の時にたいへんな事件が起きたことを思いだしたからだった。

「あぁ、大変だ。この『モスピダン』の時、大事件が起きたんだ」

「そうだったわ……」

 春日リンも狼狽しているように見えた。自分と同じように衝撃を受けているのは明らかだった。

「なにがあったんだ」

 ふたりの専門家がそろってショックを受けている姿にブライトが苛立ちをぶつけた。

「この亜獣の時に、デミリアンを一体うしなっているんです」

「セラ・ネプチューンよ」

「そんな早くに一体うしなっていたのか?」

 ブライトの驚きももっともだった。

 まだパイロットの訓練や亜獣対策も充分ではなかったとはいえ、全部で九体しかいないデミリアンの一体を、こんな序盤でパイロットごとロストした。『モスピダン』とはそれほどまでに手ごわかったのだ。

 エドの中空を操る手がとまった。目の前に浮かぶデータベースの画面に、パスワードを要求するアラートが点滅していた。

「生体パスワードがかかっている!」

「どういうことなんだ、エド」

 たまらずブライトが問いただした。

「わかりません。誰かがこの亜獣のデータを封印しているんです。しかも、そのパスワードの主はすでに死んでいるんです」

「つまり、今はなにもわからんということか!」

 エドにはブライトが一瞬、天を仰いだのが見えた。が、彼はすぐに正面のパイロットたちの映像のほうへ向きなおると、指示を出しはじめた。

「アスカ、レイ、リョウマ、みんな聞いてくれ」

「さっきから聞いてるわよ」

「『アトン』は近づいた相手になにか幻覚のようなものが見せるらしい。みんな注意してくれ」

 ブライトの注意喚起にレイとリョウマは口々に了解の合図を送ってきたが、アスカだけは皮肉たっぷりの軽口で返してきた。

「なにもわからないってことだけは、充分わかったわ……」

「それにこいつと同種の亜獣に、デミリアンが殺されたってこともね」

 エドはいたたまれない気分になった。手助けする専門家なのに、逆にパイロットたちに不安材料をふりまく結果になってしまっている。

 

 だが誰だ?。

 誰がこのデータに生体パスワードを施した……。これは死者のパスワードなのだ。

 だれが死者になりすましたのだ?。なんのために……。

 

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