いつかボク(日本人)が地球をすくう 〜亜宙戦記デミリアン〜 [ラノベ版]   作:多比良栄一

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第36話 兄さん、逃げて!!

 リョウマはふたりが亜獣にむけて、槍と薙刀(なぎなた)の刃を打ち下ろしている姿を見ながら、ライフルをセットしていた。ここなら倒れている亜獣の姿がしっかりと捉えられた。たとえ起ち上がられたとしても死角は少ない。

 突然、かん高い音がして警告音が鳴った。亜獣があちらの世界に戻るまで、あと一分しかないことを警告していた。

 つまりは一発で仕留めるしかない、ということを意味だ。

「エドさん、この亜獣の弱点は?。どこを狙えばいい?」

「リョウマ君、ヤツの頭蓋骨を粉砕してくれ」

「レイとアスカの武器では、あの頭を砕くのは難しそうだ」

「了解」

 リョウマはすぐさま、亜獣の頭にロックオンしようと照準を定めようとして、軸線をレイとアスカの機体がふさいでいることに気づいた。

「レイ、アスカ、正面を開けてくれ」

 レイのセラ・サターンがすぐに持っている薙刀の刃を、力の限り亜獣のからだに突き立てると身体を横にずらした。

 亜獣の頭部が見えた。が、その頭は青い血や緑の体液にまみれて、どこがどうなっているのかわからない。

『これでまだ死んでないのか』

 リョウマはすぐに頭部らしき部位にむけて照準を合わせた。

「ロックオン」

 

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 リョウマの声が聞こえたと同時に、亜獣の腹を覆っている、針の経帷子が一斉に起ちあがっていた。人間なら一瞬にして鳥肌がたった、と表現すべきなのか。

 アスカは瞬時に理解した。

「兄さん、逃げて!!」

 アッという間に亜獣の腹から、おびただしい数の針の矢が放たれていた。百や千という数ではない、文字通り針の雨が上空を覆い尽くす。その先には兄が、リョウマがいる。しかも射撃準備にはいっている態勢。逃げ遅れるのは必至だ。あの気絶するような痛み。

 それが一瞬の力のゆるみになったのかもしれない。アスカは手元の槍が浮きあがるのを感じてハッとした。

 亜獣が起ち上がっていた。

 自分と同じように虚をつかれたレイの機体、サターンは勢いにあおられて、すでに後方のビルに尻餅をついていた。ナギナタの刃はまだ亜獣の首に突き刺さっていたが、亜獣がぶるんと首をふると、ぽろりと抜け、道路にガシャーンと音をたてて落ちた。

 どうやって?。

 放たれた針の矢の一部が、亜獣の一番近くにあるビルの壁に突き刺さっていて、そこからクモの糸のような細い筋がつながっていた。

『矢をアンカーにした?』

 この亜獣は大量の針の矢でこちらの注意をひいて、別の針を壁に打ち込みアンカーにして、自分の体勢を立て直したのだ。裏返ってしまったら自力で起きあがれないという致命的欠点をもつ生物が、助かる術を持っていない、と考えていたこと自体がまちがいだった。

 人間のおごりだ。

 その時、銃弾が亜獣の何本かある脚の一本を吹き飛ばした。先ほどまでの組み敷かれた状態なら、まちがいなく亜獣の頭蓋を吹き飛ばしていたであろう位置だ。兄の一撃はまったくの狂いもなく狙ったところに着弾していた。

 だが、ほんのコンマ一秒ほどの時間差で雌雄は決した。

 亜獣がアスカのほうへ体当たりしてきた。亜獣に刺さっている槍を両手でつかんだまま、セラ・ヴィーナスは軽々とうしろへ飛ばされた。10メートルほど後方の低層ビルを数棟なぎ倒し、そのなかの一棟にしたたか身体を打ちつけた。

 また0・25秒の洗礼がアスカの背中に走ったが、今度は歯を食いしばり、声を押し殺した。アスカはすぐにからだを起こして、次の攻撃にそなえた。

 

 亜獣は目の前から消えていた。

 

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