いつかボク(日本人)が地球をすくう 〜亜宙戦記デミリアン〜 [ラノベ版] 作:多比良栄一
ブライトはこの出撃前の時間が一番苦痛だった。なぜならこのタイミングで必ず国際連邦の事務総長が連絡をしてくるからだ。
イレギュラーはない。必ずだ。
『ビーッ』と甲高い音ともに、天井から投影され、3Dの立体映像が浮かびあがった。空中に浮かびゆっくりと回る『SOUND ONLY』の文字。
『ブライト君。53日ぶり……だったかな」
「あ、はい……」
『ところで、ブライト君……例の……』
「『
相手にイニシアチブをとられまいと、ブライトのほうから打ってでた。
『なぜだね?。拷問してでも聞きだすべきだと言っていたはずだが……』
「亜獣はあと11体も残っているんですよ。無理をして万が一、ヤマト・タケルになにかあったら、これからの地球の命運はどうするつもりです?」
『『四解文書』の内容を知ることは、地球の運命にかかわる最優先すべき事項だ。問題は、その内容を今や、世界中で、あの少年、ヤマトタケルしか知らないことだ』
「事務総長。おことばですが、本当に存在するか疑問視される文書のために、亜獣撃退のための切り札を捨てるわけには……」
突然、天井から投影されていた『SOUND・ONLY』の文字が消えて、ニュース映像に切り替わった。ブライトにはすぐにそれがなにかわかった。
何度も見せつけられた50年ほど前のニュース映像。
当時のデミリアンのパイロットたちが、時のローマ法王に謁見したときのものだ。
パイロットのひとりが法王になにかを耳打ちする。
すると、みるみる法王の顔が青ざめていく。
法王は胸を押さえて苦しみはじめ、
その場に昏倒してしまう。
まわりにいた教皇たちが駆け寄り、あたりは慌ただしさに混濁する。
ライブ配信されていたことで当時、世界中で大騒ぎになったと、記録に残っている。
『この時、耳元で囁かれ、時のローマ法王をショック死にいたらしめたものこそ、『四解文書』の一節だよ』
「いや、重々承知しています」
「では、ブライト君、諳《そら》んじてみたまえ」
毎度、毎度の茶番劇。
ブライトはぐっと唾を飲み込んでから口をひらいた。
「四解文書……」
「一節を知れば世界は『憤怒』し……
二節を知れば世界は『恐怖』し……
三節を知れば世界は『絶望』し……」
「そして最後の一節を知れば……」
事務総長の声がまるで唱和するかのようにブライトの声と重なる。
『世界は『発狂』する』
『こんな地球を滅ぼしかねない最終兵器が、君の部下である、あの最後の日本人、ヤマトタケルだけに継承されているのだ』
『実に危険だ……』
「いや、しかし、いまは彼は地球の救世主ですよ……」
ブライトは反駁しようとしたが、声はそれを遮るように言った。
『あぁ……、ブライト君、言い忘れていたことがある……』
『月基地で訓練中のデミリアン操縦士を3名……。明日、そちらに到着する』
ブライトは最重要事項を事もなげにぶち込んできた、事務総長の意地悪なサプライズに動揺してなるものかと、口をひきしめた。
こちらから見えないが、あちらはカメラごしにこちらの顔色を伺っているはずだ。
まちがいなく邪気に満ちた目で。
『96・9%の純血。
「
『まぁ、少々、不安材料はあるがね。君ならば使いこなせると信じているよ』