第262話 次元の狭間 その4
降り注ぐミサイルの弾雨を潜り抜け紅いゲシュペンスト・MK-Ⅲカスタムの振るうシーズアンカーと轟破・鉄甲鬼の振るった斧がアインストのコアへと突き立てれる。
「ちいっ! 反応が早い! ユーリア! ラッセルッ!!」
コアを守るように展開された装甲にシーズアンカーが突き刺さり、動けなくなったカチーナがユーリアとラッセルの名前を叫び、放たれた銃弾がシーズアンカーが刺さっているアインストへと命中する。
【ギギャアアッ!?】
「おらあッ!!」
炸裂したゲッター合金の弾頭にアインストが悲鳴をあげた隙にゲシュペンスト・MK-Ⅲカスタムが蹴りを放ち、その反動と衝撃で何とかカチーナはアインストと距離を取る事に成功した。
『強引に攻めすぎるな、カチーナ、コウキ。あのアインストは並じゃない』
「だな、コアが見えているから一気に潰してやろうと思ったんだ」
『奇襲と速攻に対応されては正攻法しか無いな』
有象無象のアインストではなく、カチーナ達の前に立ち塞がるアインストはたったの4体。だがそのアインストはリンの言う通り並のアインストでは無かった。
【……】
今まで何度も確認されていたアインスト・アイゼンがより進化し強靭となったアインスト・アイゼンリーゼ。
【……】
イルムの乗るグルンガスト改をコピーしたアインスト・グルンガスト。
【……】
ダイゼンガーとアウセンザイターを模造したのだろうが、それぞれが中途半端に混ざり合い、ケンタウロスのような姿のアインスト・ゼネラルガーデイアン。
【……】
そしてゲッターD2をコピーしたであろうアインスト・D2。アインストの中でも別格の4体がクロガネとヒリュウ改を狙っていて進軍してくるのをカチーナ達は必死で食い止めようとしていた。
『ちっ、あの馬鹿がいないのにどこでアインストはグルンガストをコピーしたんだ』
「それを言うならダイゼンガーとアウセンザイターの混ざり物も同じだな」
『俺達から見えて無くとも向こうからは見えているんだろうさ』
カチーナ達は知るよしもないが、アインスト達は個であり群態だ。ここにいない個体の情報も共有しているからこそ、今突出した戦力を持たないカチーナ達では突破出来ない強力な機体を模したアインストを作り出したのだ。
「仲間の偽物にやられるほどあたし等は柔じゃねぇ、そうだろ? 作戦は変わらねえ! あたしらでアインストのリーダーをぶっ叩いてこのへんてこな空間を抜け出すだけだッ!」
この絶望的な状況でも心を折らないカチーナの態度は味方にとってとても頼もしいものであった。そしてその叫びに答える様に、この場にいなかった男の声が全員の機体に響いた。
『ったく、そこまで言われたら少し休むぜなんて言えねぇじゃないかよッ!』
空間に亀裂が走りそこから飛び出した鉄拳とアインスト・グルンガストの放った鉄拳がぶつかり合い凄まじい轟音を響かせる。
『イルムなにを……大丈夫か!?』
『はっ、お前に心配してもらえるとは嬉しいね、リン。アインストの群れを単機で突破して来ただけだ、大丈夫だまだやれる』
イルムの声にたいしてグルンガスト改はボロボロではあるが、その姿はまだ力強さに満ちていた。
『やれるんだな、イルム』
『やれるに決まってるだろ。あいつらをぶっ潰して、この空間を出る。簡単だ、俺もリーダーをぶっ潰して脱出して来たんだ。あいつらの
誰かを落とせば多分出口が出来る。俺達が出れるかは分からんが』
「イルム中尉みたいに応援が来る可能性はあるってことか」
『そういうこった、とにかくこのアインストの空間から脱出することを最優先だッ!』
生き残る為にも、仲間達を助ける為にもとにかく戦ってアインストを撃破し、道を開く。それだけが今のカチーナ達に出来る事であり、アインストの無機質な殺意と敵意に飲み込まれないように、意志を強く持ち4体のアインスト攻略の為に動き出すのだった……。
アインスト・アイゼンリーゼ、アインスト・グルンガスト、アインスト・ゼネラルガーディアン、そしてアインスト・D2……アインストがキョウスケ達の機体をコピーして、進化をしたその4体と戦えるだけの機体能力を持っているのはグルンガスト改、エクスバイン、轟破・鉄甲鬼とゲシュペンスト・MK-Ⅲカスタムの4機だけだった。轟破・鉄甲鬼を除けばグルンガスト改もエクスバインも、ゲシュペンスト・MK-Ⅲカスタムは戦力的に劣る機体ではあり、タイマンで戦うには不可能なほどに戦力差があった。
『リン社長! そのままで大丈夫ですッ!』
『ゼオラ! 合わせて!』
『オウカ姉様! はいッ!』
ラッセル、オウカ、ゼオラ、アラドの4人の支援を受け、リンはエクスバインをアインスト・ゼネラルガーディアンへと走らせる。
【!!】
プフェールトモードのアウセンザイターを模した個体からダイゼンガーを模した上半身が生えている異形のアインストの振るう一撃は確かに速かった。並みのパイロットでは反応しきれず両断されていただろう。
「ゼンガー少佐の踏み込みと比べればッ!」
ダイゼンガーが脅威なのはゼンガーの卓越した操縦技術と剣術の技量があるからだ。姿形を模しただけのアインスト・ゼネラルガーディアンは再生力、そしてその高い攻撃力頼りの単純な個体だった。
「喰らえッ!!」
ゲッター線ビームライフルがアインスト・ゼネラルガーディアンの頭部を捉え、アインスト・ゼネラルガーディアンが声にならない悲鳴をあげて大きく仰け反るが、それは上半身だけで、下半身のプフェールトモードのアインストは前足を変形させランツェ・カノーネの銃口をエクスバインに向ける。
「ちいっ!」
本来のプフェールトモードではありえない射撃にリンは舌打ちと共にエクスバインを後退させ、アインスト・ゼネラルガーディアンから距離を取る。
『大丈夫っすか! 社長さん!』
「なんとかな。ただ打点が余りにも足りないな」
ゲッタービームライフルの一撃は確かにアインスト・ゼネラルガーディアンの顔を焼いていたが、リンが後退するのを選択した僅かな時間でその傷の殆どは回復していた。
『コアを破壊しなければ私達の機体では厳しいですね』
『だ、だけどオウカ姉様。あのアインストのコアがどこにあるか、分からないわ』
通常のアインストと異なりアインスト・ゼネラルガーディアンはそのコアを体内に隠していた。
「コアの位置は分かっている」
『え? ど、どこですか!?』
「胸だ。ビームライフルが命中した時に体組織が崩れてコアが見えた」
『つまり胸部の装甲を破壊すれば良いのですね?』
「ああ。頼めるか、オウカ」
『その代り1回で決めてください、ゼオラ、アラド行きますよ!』
ラピエサージュを駆るオウカに先導され、ビルトファルケンカスタムとビルトビルガーがアインスト・ゼネラルガーディアンへと向かう。
「ラッセル。これ以上あいつを進化させるな。あいつは1番進化していない」
『そういう事ですか! 了解です!』
ゲシュペンスト・MK-ⅢタイプSの背部と両肩に増設されたゲッターミサイルのコンテナを全て同時に解放し、ミサイルの雨を降らせる。
「そこだッ!」
ミサイルが密集した瞬間を見逃さず、発射したスプリットミサイルがゲッターミサイルの弾頭を破壊する。
【――ッ!?!?】
ゲッターミサイルが破壊された事で降り注いだゲッター線がアインスト・ゼネラルガーディアンに降り注ぎ、アインスト・アインスト・ゼネラルガーディアンの装甲を融解させる。
『な、なんで……』
『あのアインストは若いの、まだゲッター線に耐えれるだけの能力が無い。闇雲に剣を振り回すことしか出来ないのよ』
アインスト・ゼネラルガーディアンは進化したばかりの個体であり、姿形を模しただけのアインストだった。確かに強力なアインストには違いないが、高密度のゲッター線には耐えれなかった。
『ゼオラ支援して! アラドッ!』
『いけるぜ、オウカ姉さん!』
マグナムビークとコールドメタルブレードを構えたラピエサージュとビルトビルガーがゲッター線の雨に苦しむアインスト・ゼネラルガーディアンに切り込み、胸に大きな×字の傷を刻み付ける。
「見えた! 離脱しろッ!!」
胸の×字から見えたアインストコア目掛け、エクスバインの放ったゲッタービームキャノンの翡翠色の光が放たれ、ゲッター線の光が体内に撃ち込まれたアインスト・ゼネラルガーディアンは目と口からゲッター線の光を放ちながら、風船のように膨れ上がる。
「いかんッ! 離れろ! 巻き込まれるぞッ!」
リンが真っ先に気付き、逃げろと叫ぶがそれは余りも遅すぎ膨れ上がったアインスト・ゼネラルガーディアンが爆発を起こし、エクスバイン達の姿はその光の中へと飲み込まれた……。
アインスト・D2の手から放たれたダブルトマホークとシーズアンカーがぶつかり合い凄まじい轟音を響かせる。
「王女様! あんたのいう通りだ! こいつ弱いッ!」
『当たり前ですわ! 偽物のゲッターロボが強いわけありませんもの!』
「はっ! 相変わらず武蔵にぞっこんだなッ!」
シャインのいう通りアインスト・D2は強力ではあるが、そこまでのアインストだった。ゲッターロボの特徴であり、最大の武器であるオープンゲットもゲッターチェンジも無い、巨体を生かした堅牢な装甲と攻撃力が武器のアインストだった。無論アインスト特有の再生能力はもあり、複数のアインストが融合しD2を再現しているのでビーム等の攻撃と攻撃手段も非常に多岐に渡っていた。だがどこまで言ってもそれだけだった。
『そんなのでよくも武蔵様のゲッターを真似しましたわね! 許しませんわよッ!!』
『しゃ、シャイン王女! おち、落ち着いてください!』
アインスト・D2から伸びる触手を交わしながら前へ前へ出るシャインとフェアリオン・タイプGを必死に追いながらシャインを諌めるラトゥーニの乗るフェアリオン・タイプSの姿を見たカチーナはゲシュペンスト・MK-Ⅲカスタムのコックピットに増設されていたボタンに視線を向けた。それはビアンがピンチの時に使えと言っていたゲシュペンスト・MK-Ⅲカスタムの最後の切り札……らしいのだが、カチーナは詳しい詳細を知らなかった。
「信じるぞビアンさんよッ!!」
ビアンが悪ふざけでこんなものを増設したとは思わず、もしこれが悪ふざけなら絶対ぶん殴ると心に誓い、カチーナはその拳でガラスケースを砕きながらボタンを押し込んだ。
「お、おいおいおい!? だ、大丈夫かこれッ!?」
モニターと操縦桿の一部が変形を始め。新しいモニターと計器が姿を現す。
『試作ゲッター炉心可動開始、強制システムダウンまで後220秒』
「こういう大事なことは先に言えッ!! ビアン・ゾルダークッ!!!」
自分の機体にゲッター炉心が組み込まれているなんて想像もしていなかったカチーナはそう叫び、操縦桿を強く握り締めペダルを強く踏み込んだ。
「う、うおッ!? くそッ! とんでもねえじゃじゃ馬だッ!」
PTではなく、特機のようなパワーで暴れ出す操縦桿を力で抑え込み、アインスト・D2へゲシュペンスト・MK-Ⅲカスタムを走らせる。
【……キシャアアッ!!!】
今まで沈黙していたアインスト・D2が初めて反応を見せた。自身が取り込めるレベルのゲッター線にカチーナを取り込み進化することを求めたのだ。
「やかましいッ!!!」
シーズアンカーの爪先にゲッター線の輝きが宿り、振るわれたアインスト・D2のダブルトマホークをまるで豆腐を崩すかのように破壊する。
【!?】
「くうっ!? とんでもねえッ!! これがゲッター線のパワーかよッ!?」
自分の意志に反して暴れ回るゲシュペンスト・MK-Ⅲカスタムをカチーナは完全に持て余していた。
「くそっ! こんなのを良く武蔵達は操れるなッ!」
『残り147秒』
ゲシュペンスト・MK-Ⅲカスタムの変化した装甲から溢れ出すゲッター線が少しずつ弱くなり、それに加えてモニターに映し出されている機体のコンディションは徐々に紅く染まり始め、限界が見えていた。
「勿体ねえがまたタスクに作らせるッ!! いっけえ、シーズアンカーッ!!!」
ゲッター線で強化されているシーズアンカーを射出すれば戻ってこないのはカチーナも重々承知していたが、今はこれしかないとカチーナは判断したのだ。
「ラトゥーニ、シャイン王女! 悪いがトドメを任せるぜッ!!」
ゲッター線に満たされたシーズアンカーがアインスト・D2の胸部と腹部に突き刺さる。
【ギイイッ!?】
「うおおおおッ!!!」
『残り34秒』
「それで十分だッ! ぶち抜けぇッ!!」
ゲッター線の翡翠の輝きを宿したライトニングステークの一撃がアインスト・D2の頭部を殴り砕いたが、そこまでだった。
『ゲッター炉心機能停止、冷却開始、冷却完了まで420秒です』
PTサイズに無理矢理小型化したゲッター炉心は出力こそ本物でも耐久力はゲッター炉心としては低すぎた。だがそれでもまだゲッターD2を模して進化を始めていたアインスト・D2を退化させるという大役は成し遂げた。
『ラトゥー二! あの偽物をぶっ飛ばしますわよッ!!』
『はい、シャイン王女ッ!』
ゲッターD2を模した箇所は少なく最早通常のアインストの大差の無い姿にまで退化したアインスト・D2にロイヤルハートブレイカーに耐えるだけの力は無かった。
「はっ! B級ホラーはうんざりだって言っただろうがッ!」
ロイヤルハートブレイカーに上半身と下半身を両断され消滅するアインスト・D2と入れ代わりに溢れだすアインスト・クノッヘンの群れに向かってカチーナは再起動したゲシュペンスト・MK-Ⅲカスタムを走らせ、放電し光り輝くライトニングステークの右拳でアインスト・クノッヘンのコアを殴り砕き、仲間を鼓舞する雄叫びを上げるのだった……。
運よくリン達のいる隔離空間にやって来れたイルムの駆るグルンガスト改とアインスト・グルンガストの振るう計都羅喉剣がぶつかり合い、次の瞬間に弾かれたのはグルンガスト改の方だった。
「くそっ! 無理をしすぎたなッ!」
【……】
リン達の場所に来るまでにイルムはアインスト・クノッヘン、グリートの群れを撃破し、少数のトカゲ型のインベーダーを撃破し、そして下半身を失ったゲッターロボ・変異態と次々に強敵を撃破し、やっとの思いで収縮を続ける世界から脱出してすぐ、自分の機体をコピーしたアインストと戦うのは流石のイルムと超闘士グルンガストでも限界だった。
『大丈夫か! イルム中尉!』
「ああ、あんたのおかげだよ、惚れそうだ」
『軽口を叩けるようなら大丈夫そうですね、イルム中尉』
『いや、ユウ。多分あれ痩せ我慢だよ』
「はっ! その通りだッ! ガス欠寸前だし、装甲もあちこちやばい! 悪いが支援してくれッ!!」
口調ほどイルムは余裕は無かった。蓄積したダメージによって変形も出来ず、そして強化パーツもあちこち不調を訴えており、いつシステムダウンするか分からない状態だと伝える。
『良くそんな状況で軽口を叩けるな』
「それが俺の良い所でね。とは言え、今のグルンガストじゃあいつには力負けする。テキサスマックで何とか出来ないか?」
ゲッターと同年代に作られた機体であるテキサスマックなら何とか出来るんじゃないかとイルムが尋ねるが、ユーリアの返事は暗いものだった。
『フルパワーを発揮できれば何とかなるかもしれないが、今の私では全力は出しきれない、精々援護がやっとだ』
「そう上手くはねえわな、ユウキ! 悪いがそっちでも支援してくれ! グルンガストは関節部が弱い! そこを狙い撃ってくれ!」
グルンガスト乗りだから知っているグルンガストの弱点を叫び、イルムは再びグルンガスト改とアインストグルンガストを対峙させる。
(そうだと良いんだけどな)
姿を模しているとは言え弱点まで共通とは限らない、関節部を狙えと叫んだのはイルムのそうであって欲しいという願いでもあった。
(ファイナルビームは2発か、脚と背中のブースターがやられてるから暗剣殺の威力は3割減……満身創痍だな、こりゃ)
エネルギー残量も機体のコンディションも最悪、普通のパイロットなら心が折れるところだが、それでもイルムの心はまだ折れていなかった。
「こんなところで折れたらヒーローなんか名乗れないわなッ!」
窮地も危機も何度も味わって来た。確かに今回は今までの中で1・2を争うレベルの窮地だが、それでも負ける物かと奮起する。
【!!!】
「させるかよッ!」
ファイナルビーム発射姿勢に入ったアインスト・グルンガストの胸部に向かってブレイククロスを発射する。発射された手裏剣はエネルギー発射前の発射口に飛び込み、発射口を破壊する。
「よっしッ!」
【!!】
「それでも無理矢理発射するかよッ! くそっ!?」
アインストが姿を模しているので発射口が破壊されてもファイナルビームが発射されるのを見て、イルムは舌打ちと共にファイナルビームを発射し、ファイナルビームを相殺する。
(距離を取ったら駄目だ! 間合いを詰めるッ!)
触手などの攻撃は反応するのがどうしてもギリギリになるが、距離を取ればファイナルビームが飛んで来る。そうなれば後1発しかファイナルビームを使えないイルムには避けるしか選択肢が無くなり、エネルギーに不安のある今のグルンガスト改では足が止まればそこで終わりだ。動ける間に、まだ戦える間にほんの一筋の勝機の糸を掴める可能性に賭けたのだ。
【!!!】
「くそっ! 力任せに振り回してきやがってッ!」
技もくそもない、力任せの剣戟。万全な状態ならばいなし、反撃する事も出来た。だがボロボロの状態のグルンガスト改では細かい動作は出来ず、押し負けると分かっていても力技に出るしかなかった。
「おおおッ!!」
【!!】
アインスト・グルンガストとグルンガスト改の計都羅喉剣がぶつかり、アインスト・グルンガストの計都羅喉剣が中ほどから折れるが、触手が折れた計都羅喉剣の切っ先を補い、再び激しい剣戟の応酬が繰り広げられる。
(くっ、流石に不味いぜ)
テキサスマック、ラーズアングリフ・GRの支援を受け、僅かに攻撃の軌道を逸らすことが出来ても決め手に欠ける。コアを破壊すれば良いが、そのコアの位置がイルムには分からなかった。胸部を破壊してもピンピンしていることからコアの位置は胸部ではない可能性が高いが、目に見えた弱点である頭部にコアを隠しているとは思えなかった。
(決まりが浅かったか、もう1度勝負に出るか……)
胸部の奥にコアがあるのか、それとも、頭部、いやあるいはその両方にコアがあるのか……このままでは押し負けることを自覚しているから勝負に出るか、それとも自分と同じように隔離された世界から仲間が脱出するのを待つか、この状況を切り抜ける為の様々な方法をイルムは考え……。
「ぐあっ!?」
この状況を打破する為に考え込んでいたことが裏目に出た、かつて闘龍鬼との戦いでイルムが行なった脚部だけをウィングガストの物に変化させた下からの斬撃を兼ねた蹴りにグルンガスト改の巨体が宙に浮いた。
【……ッ!!】
「真似だけじゃなくて進化もするかッ!」
グルンガスト改には無い、背部、肩部を変形させ2本の腕を生やしたアインスト・グルンガストは4本の腕で触手が変形した異形の計都羅喉剣の柄を握り締める。その余りにも巨大で歪な計都羅喉剣に己の持つ計都羅喉剣が酷く矮小なものに見えたが、それでもイルムにはこれに縋るしかなかった。
「何でも良い! 派手にやってくれッ!」
フレンドリファイヤなどを気にしている余裕は無かった。テキサスマックとラーズアングリフ・GRの攻撃がグルンガスト改の装甲をかすめながらアインスト・グルンガストを穿つが、完全にグルンガスト改に狙いを定めたアインスト・グルンガストはゲッター線弾頭やゲッタービームライフルの攻撃を受けても、怯む事無く、真っ直ぐにグルンガスト改だけを睨みつけ、4本の腕で計都羅喉剣を振り上げる。
「先手は貰った!」
だが巨大ゆえに動きが鈍くなっているアインスト・グルンガストの僅かな隙を突き、残されているブースターで加速したグルンガスト改は計都羅喉剣を振り上げた。
「計都羅喉剣ッ! 暗ッ! 剣ッ!! さぁぁああつッ!!!」
【!?!?】
アインスト・グルンガストの頭部に計都羅喉剣の切っ先がめり込み、少しずつ、少しずつ胸部へと計都羅喉剣は突き進むが……。
「くそッ! そこまでなんでもありかッ!」
頭部から腕を生やしたアインスト・グルンガストの打撃で頭部を両断する寸前で計都羅喉剣は頭部から抜ける。
【ッ!!!】
怒りの咆哮を上げ、アインスト・グルンガストが異形の計都羅喉剣を振り上げ……後方から飛来した槍……ディバインドリラーに刺し貫かれた。
【!?!?】
『油断してるんじゃねえぞ! この馬鹿がッ!!』
イルム同様ボロボロではあるがスヴァイサーを駆るバリソンもまたイルムと同じ様に自分を隔離している世界を支配するアインストを撃破し、この世界へと辿り着き、今にも両断されそうになっているグルンガスト改を見て、スヴァイサーの武装であるディバインドリラーをイルムを救う為にアインスト・グルンガストへ向かって投擲したのだ。
「肝に銘じるぜ! 今度良い酒をおごってやるよ、バリソンッ!! 今度こそこれで終いだ! 計都羅喉剣ッ! 暗ッ! 剣ッ!! さぁぁああつッ!!!」
残りのエネルギー全てを次ぎ込んだ一撃をディバインドリラーに貫かれたアインスト・グルンガストに防ぐ術は無く、頭部、そして胸部に2つ持っていたコアを両断され、耳障りな断末魔を上げながらアインスト・グルンガストは消滅した。
「見えた! あれが俺がこの隔離された場所に来る時に来た亀裂だ!」
ガラスが罅割れたかのような亀裂を見てイルムはそう叫んだ。その亀裂は徐々に徐々に大きくなり、それを閉ざそうとアインスト達が次々に現れる。
『今度はあの亀裂を守れば良いのか!』
「そうだ! コウキ達がまだ戦っている! 俺達が先に出たらコウキ達が閉じ込められる! そしたらまたこの亀裂が出来るか分からねえッ! 全員揃うまでこの亀裂を死守するぞッ!」
特殊な個体のアインストの姿はない、だが視界すべてを埋め尽くすクノッヘン達の群れを睨みつけながらイルムはコウキやリン、カチーナ達が戦いを終えるまでこの亀裂を守るぞと叫び、ボロボロのグルンガスト改を操り、真っ先に飛びかかって来たアインストクノッヘンのコアへ文字通り鉄拳を叩き込むのだった……。
コウキがアインスト・アイゼンリーゼと戦う事を選んだのは本能的、動物的勘ともいうべき物だった。アインスト・D2、アインスト・グルンガスト、アインスト・ゼネラルガーディアンその全てが紛れも無く強敵だったが、アインスト・アイゼンリーゼはそれを遥かに越えていた。
【……】
次はお前を刺し貫いてやるといわんばかりにホルツシュラオベを向けるアインスト・アイゼンリーゼの姿にコウキは舌打ちした。
「しとめ損ねて来たツケか……お前がここまで強くなったのは」
【……ッ】
アイゼンリーゼへと変化したアインスト・アイゼンリーゼは生き延び続けてきた。何度も何度もハガネ達と戦い、その都度生き延びて進化してきた。戦いの中でキョウスケの戦闘技術を学び、己の物とし進化を続けて、ついにはアインスト・アイゼンリーゼへと進化した。
【ッ!!】
「ちいっ!」
恐ろしいほどの踏み込みで突き出されたホルツシュラオベを斧で弾いた轟破・鉄甲鬼だが、その真紅と白銀の装甲には貫通痕が刻まれていた。
「……中々厄介なカラクリだ」
武装はアルトアイゼンと同じ、リボルビングバンカーに当たるホルツシュラオベ、エアリアルクレイモアに該当するクヴァドラートミーネ、5連マシンキャノンに当たるマシーネンゲヴェイア。それがそれぞれ巨大化しただけ……通常のアインストならばだ。だがこのアインスト・アイゼンリーゼは通常のアインストよりも遥かに進化していた。キョウスケの技術を学び、戦いの間合いを学習した。
【!!】
「いつまでもお前の思い通りになると思うなよッ!」
クヴァドラートミーネ……チタン弾の変わりにアインスト寄生体を発射する一撃と轟破・鉄甲鬼の放った酸を伴った暴風がぶつかり合い、寄生体は次々に融解し爆発する。
【!】
「その程度!」
その爆発を隠れ蓑にし突撃して来たアインスト・アイゼンリーゼのホルツシュラオベとアタッチメントが変形したドリルがぶつかり合い、凄まじい火花を散らす。
「ふんッ!」
ドリルとホルツシュラオベがぶつかり合う中、何かの気配を感じたコウキは反射的に左手の斧を振るい、何かを弾き飛ばした。
【……!?】
「キョウスケを真似ている割には姑息な手だ」
防いだのに貫かれていたカラクリは単純明快。透明になっていたホルツシュラオベの端末だった。
「訂正しよう。お前も他のアインストと大差が無い」
【!!】
その言葉に反応したのか怒りの咆哮を上げるアインスト・アイゼンリーゼはマシーネンゲヴェイアとクヴァドラートミーネを乱射し、突撃してくる。
「緩急を付ける程度の知恵はあるか、だが相手が悪かったなッ!」
コウキのいう通りだった。アインスト・アイゼンリーゼがコウキを相手をするにはまだ経験と、キョウスケ、そしてベーオウルフの力を己の物にするには時間が足りなかった。後ほんの少し、例えばコウキと戦う前に他の誰かと戦い、経験を積めばコウキと言えど容易には勝てない個体へと進化していただろうが、アインスト・アイゼンリーゼがコウキと戦うにはまだ未熟だったのだ。
【!?】
「くたばれ」
マントを盾にマシーネンゲヴェイアとクヴァドラートミーネを防いだ、マントがアインスト細胞に寄生され、本体が寄生される前にマントを切り離し、アインスト・アイゼンリーゼの視界を奪うと同時にゲッタービームを打ち込み、アインスト・アイゼンリーゼはその脅威を完全に発揮する前にこの世から消え去った……。
「戦ったのが俺で良かったな……武蔵やラドラでも対応出来たと思うが……強さは別として厄介な個体だった」
右腕のアタッチメントがアインスト細胞に寄生されているのを見てコウキは躊躇い無く、右腕のアタッチメントと斧を捨て、頭部のゲッタービームで焼き、その場を後にした。
「早く合流しないと不味いな、誰か寄生されていなければいいが」
寄生されていたら殺すしか無いからなと小さく呟いたコウキは遠くに見える戦闘の光を頼りに合流する為に轟破・鉄甲鬼を走らせた……切り捨てたアタッチメント……それが狙いだったといわんばかりに闇の中から姿を現したアインスト・ゲシュペンストがそれを拾い上げ、再び闇の中へと消えるのにコウキは最後まで気付く事が出来ないのだった……。
第263話 次元の狭間 その5へ続く
今回はHP7万~12万台のボスと特定ユニットだけで戦うというマップをイメージしてみました。高いHPと攻撃力と再生能力と一見強いですが、援護攻撃などをしっかりと使えば勝てる難易度で考えております。使えるユニット制限で強敵と戦うのはスパロボあるあるですよね? 違うかな、ちょっと不安ですが、私はあるあるだと思ったのでこうして見ました。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い