・END
→・RESTART
アリサ・イリーニチナ・アミエーラが死んだ。
僕の名前を呼びながら微笑んだその表情は、もう動くことは無い。
抱きしめた彼女の体温は、流血を通して僕へと伝い、そして地へと沈んでいく。
もう、いい。
もういいんだ。
腕を振って全力で駆け抜けた僕は、何かを抱えることをしてこなかった。
その結果がこうなっただけだ。
コウタも、リンドウさんとサクヤさんもそのお子さんも、際限なく強くなり続けるアラガミにより、亡くなったのはかなり前のことだ。
そこで諦めること無く、それでも先へ進もう。
そう思った僕が愚かだった。
世界に救いは無く、誰もを救える希望なんて、絶望が釣り上げる為のエサでしか無かった。
あの時、 シックザールの与えた選択肢を選んでいれば、そうすれば大切な人だけは救えたかも知れない。
もう未来という空は見えず、過去という深海ばかりにしか目が向かない。
『最強の
その称号に何の価値があるのだろう。
もはや、ゴッドイーターどころか、人間の絶滅も直ぐそこに来ている。
最早人類は救われない。
――ああ、救われないのは人類を救う気でいた僕自身か。
もしかすれば、まだ僕の心が折れない可能性があったのかも知れない。
今までだって人類の絶滅と隣り合わせの場所にいながら戦ってきたと、アリサが愛した男に相応しくあろうと、それでも前を向いて走り続ける僕も在ったのかも知れない。
だけど、この僕はもう駄目だ。
今此処にいる僕は、もうこれ以上走れない。歩けない。立つことも出来ない。
情けなく這ってでも、生きることから逃げないと、吼えることも出来ない。
師に顔向けなど出来はしない。
リンドウさんに託された家族が襲撃されたとき、僕は間に合わなかった。
あの日から、リンドウさんの遺骨の前には顔を出していない。
「だから――――行き止まりだよ」
残された人々の集落へと向かう、超大型のアラガミに振り向きそう告げた。
『僕』はここで終わる。
自殺の手段として、アラガミに挑む辺り、僕は
ボロボロになった身体でやれることなどたかが知れている。
神器の限界を解放して、僕自身がアラガミになる前に相打つ。
きっとその後に、他のアラガミが人類を全滅させる可能性は高い。
だから、それを見たくない僕は、
さようならみんな。
さようなら、
「
――――――ここは、何処だ?
…死後の世界、とはこういった場所だと初めて知った。
死んだのは初めてだから、当たり前すぎる感想だと自分でも思った。
感覚が戻ってきた。
神器を持っている。
死後にアラガミがいなければ、無用の物だが、それでもずっと一緒に生きてきた半身だから。
目が、慣れてきた。
此処は、見覚えがある。
…如何して、此処なんだ?
あの世がエイジス島に似た風景なんて、神様って奴は意地が悪すぎる。
散々喰らってきた意趣返しかも知れない。
「誰だっ!!」
鋭い詰問と共に、カチャカチャと金属を動かした音がした。
見れば銃を構えた男達、そしてそれらに囲まれた男『ヨハネス・フォン・シックザール』。
それにしても――――――
「…なってない」
「何がだ」
護衛の一人が言うが、自覚が無いとは思わなかった。
僕から見て、男達の銃は誰も正確に照準を合わせられていない。
僕に直撃する照準に合わせて、引き金を引けるまでには、十分過ぎるほどに時間がある。
「それでは
急制動を駆使した移動で、先ずは一番近い相手の銃を蹴り飛ばす。
別の一人が僕に銃を向けたが、しかし引き金を引けば味方にも当たることを恐れて一瞬の戸惑いがあった。
その一瞬が命取りだ。
神器をロングブレードの形にして銃を切り裂く。
そのままブラストに変形させて、発射音は二度。別の男の足下に打ち込む。
あくまで目眩ましだが、それで意識を刈り取る為の時間を稼ぐには十分だった。
「喰らえっ!!」
護衛の内一人はゴッドイーターであったが――――――
「ぬるすぎる」
敢えて直前のガードで弾く。
僕の部隊にいたら、鍛え直してやったほど動きが悪い。
「てめえ」
「上だ」
先程撃ち放った一発が天上を破壊し、その破片がゴッドイーターの上に落ちてきている。
男は躱すでも防ぐでもなく、棒立ちになっていた。
「それでもゴッドイーターかっ!!」
男の上にある岩をブラストで吹き飛ばす。
その爆風の衝撃で吹き飛ばされたゴッドイーターは気絶した。
「残りは、お前一人だなシックザール局長」
「研究中の、新型ゴッドイーター…。君は――――いや、それは置いておこう。
目的は何だ」
話が早い。そこはソーマによく似ている。
「簡単なことだ。
力を貸してやるから絶対に成功させろ」
「何のことかと言っても無駄か。
…知っているのだな」
これが、
「ああ、俺達の手で完成させよう。
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一発ネタなので続きは未だありません。