『証明』を交わした、あの創設祭から数年が経った。
わたし、絢辻詞は生徒会長になった後に高校を卒業。今では国立大学に通っている。
そして、わたしの大切な人……橘純奈は、わたしの指名で生徒会の副会長となった。高校を卒業してからは就職し、イベントの企画のお仕事をやっている。創設祭の経験を活かしたかったからこの進路を選んだとのこと。
このように別々の進路を選んだわたし達だけど……帰る場所は、一緒。
「ただいまー、詞……今日も疲れたよー」
スーツ姿で帰宅する純奈。この仕事は休日がまばらな上、帰る時間も遅いことが多い。純奈に聞けば、大体この業界はこんな感じだから大丈夫、って言っているけれど……正直、わたしは心配。
「お疲れ様、純奈。ご飯あるわよ?」
「ありがとー……詞の手料理が毎日の楽しみだよ」
「毎日って言っている割には結構食べて帰ってくること多いわよね」
「仕方ないじゃん、それも仕事の一環みたいなとこあるし……」
まるで、純奈が夫でわたしが妻みたい。だけど、わたし達2人の関係が恋人に変わった……っていうことではなくって。お互いがお互いの安心出来る居場所を求めた結果、わたし達は共同生活を始めたというだけ。
わたし達の関係は、わたしが持ち合わせてる語彙じゃ言葉に出来ない……というか、わたしが簡単に表現できないようにさせている。友達でもなくって、かといって恋人でもない。あえて言うならば……すごく特別な関係、とでも。
……確かにキスはしたし、今もするし……実はその先のことも経験済みだったりする。でも、それは、お互いの居場所を確認しあって認め合う、いわば儀式みたいなもの。
一応、純奈から恋人になろうっていう提案……ううん、告白をされたこともあった。でも、わたしは『恋人』という枠にわたし達の関係を移動することを拒んだ。
純奈への愛しさもあるにはあるし、純奈に愛されることがわたしにとってすごく幸せでもある。だけど……純奈への気持ちを恋という言葉で、純奈との関係を恋人という言葉で簡単に表現してしまうのは、きっと間違っている気がするって思ってしまったから。
けれど……。
「まあいいのだけれど……純奈、勝手にどこかに行かないでよ? 純奈はもう、あたしのものなのだから」
「ええっ!? いつ詞のものに……って、とっくのとうに詞のものか、私は」
「ふふっ。……大好きよ、純奈」
「私も。詞、大好き」
わたしは純奈のことが好きで、純奈もわたしのことが好き。そのことは間違ってないし、揺らがない事実。
その『好き』という言葉の意味が、果たしてライクなのかラブなのかというのは……どっちも合ってるって、今は言っておこうかな。
わたし、絢辻詞は……すごく、幸せです。
最後までお読み頂きありがとうございました。これにて本小説は完結とさせていただきます。
以降、後語りを。
この文章を書くきっかけについて。
にじさんじ所属の卯月コウ、魔界ノりりむによるアマガミ配信(https://youtu.be/HIaVRC-Pt5k)にてアマガミを知り、そこから月ノ美兎の配信アーカイブ(https://youtu.be/xXU8E-fOqKc)を見て絢辻さんを知って……私はアマガミにものすごく感銘を受けたわけです。
私はこういう外から感銘を受けるような作品に出会うと、私の中でもう一度再構成して外に出したいと思うような人間なので、そこで二次創作意欲が湧いたわけです。
何か外に出したい、二次創作したいととモヤモヤしている私に決定的なきっかけとなったのが、その月ノ美兎が絢辻詞と一緒にいるファンアート群。
百合というアイデアが舞い降りた瞬間でした。
そしてゴールデンウィークの終わりから、ほぼ毎日文章を打ち込む日々が始まりました。終わりに近づくにつれて案の定筆の進みが遅くなりましたが、何とか1ヶ月ちょっとで完結までこぎつけることができました。
実は連載小説を初めて完結させることが出来ました。褒めて。
……何はともあれ。10年前の作品であるアマガミという原作で、しかも人を選ぶオリ主百合物で、UA1万3000超えにお気に入り300件超え。また、感想も多く頂けて……皆さん、読んで頂き本当にありがとうございました。この小説を書いて良かったです。