アイドルマスターシャイニーカラーズ 銀色の革命者 作:ヒロ@美穂担当P
美世初の国外戦はどうなるのか!?
STAGE16 夏の熱戦
7月。
美世は現在国外だ。ここはマレーシア。
マレーシアの首都クアラルンプールの郊外セランゴール州セパンにあるセパン・インターナショナル・サーキットに来ていた。
F1の舞台にもなっているこのコース。スピードが乗りやすくも、激しいバトルが起こりやすい。
そしてこのサーキットの特徴は年間を通して高温多湿である事。
このサーキットはほぼ赤道の直下に位置する。その気候からドライバーは体力的に厳しいレースを強いられる。
スーパーGTに至っては毎年6月開催ということで特に暑さにドライバーが苦しみ、毎年のようにクールスーツが故障し熱中症の症状に陥るドライバーが現れるのだ。そのため2009年にはあるチームのGT-Rが、暑さ対策としてレーシングカーとしては極めて異例のエアコン搭載でレースに参戦した程である。
ただ、今年はサーキットのスケジュールの都合から7月に開催される事になったのだ。
「暑い……」
薄着になっても汗が止まらない。ポカリを流し込みながらピットへ向かう美世。
「原田さん、大丈夫かい」
鈴木が美世を気遣う。
「大丈夫ですよ」
元気に返す美世。
「あたし……海外に行くの今回が初めてなんですよね。だからソレもあって楽しみで」
美世の目は輝いていた。
予選。
スーパーラップ方式で行われる。様々なチームのマシンが全開でホームストレートを駆け抜ける。
「原田さん、まずはここに慣れてほしい。無理はしないように」
「了解です」
美世が乗るGT-Rがピットアウト。コースインだ。
赤いRが咆哮を上げた。
「アンダーが……」
美世はアンダーステアに悩まされていた。13、14コーナーは
セッティングが合っておらず、美世は攻めれない。
美世は何とか奮闘し、スターティンググリッドは5番となった。
予選後。
GT-Rから降りた美世は足が地面に着いた途端へたりこんでしまった。
「はあーーっ、暑すぎるっ」
極限状態でタイムを削りにいく事。それは限界まで神経を張り詰めているのだ。
小さいミスを許さないタイムアタックは見てる方がはらはらするが、ドライバーはそんなレベルの話ではない。
今、張り詰めていた糸がプツンと切れて美世はへたりこんだ。
高温のマレーシアでここまで攻めた美世。初めてここを走ったにしては上出来だろう。
「原田さん、明日に備えて後はゆっくり休んでくれ」
「はい……」
美世はもう最初の元気がなくなっていた。
翌日。
決勝日の今日はスタンドに多くの観客が押し寄せる。現地の観客もいれば、日本から来たファンもいる。スタンドには美世の応援団も見えた。
各チームは最終セッティングで大忙し。
モチュールのピット内では鈴木が美世にアドバイスをしていた。
「最初は徹底的に食らいついてほしい。やはり、他のチームとの熟練度が違う。だが、原田さんは吸収が早い。イけると思ったら勝負に出てほしい」
「はい!」
アドバイスを受けた美世は準備に取りかかった。
国家斉唱と開会宣言の後、フォーメーションラップ十分前のアナウンスが流れた。
ここで、ドライバー以外はピットに戻る。
エンジンスタートのアナウンスが流れると共に、各車エンジン始動。
フォーメーションラップが始まると、サーキット中が緊張感に包まれる。全車がローリングラップを開始。
タイヤに熱を入れるべく、美世は車を左右にウェービングする。
灼熱の路面がタイヤに熱を帯びさせる。
全車隊列を整え、ペースカーはピットロードへ入る。直後にまずはGT500クラスがレーススタート。
少し後にGT300クラスがスタートした。
(遅いっ!!)
美世のGT-Rが前を走るSC430をぶち抜いた。スタートダッシュで出遅れたSCを相手にせずにとにかく上位に食らいつこうとする。
25周目で美世は2番手に着く。
前を走るのは青いカルソニックGT-R。美世は驚異の集中力で差を詰めていく。
「あたしが前に……っ!出るっ!!」
美世は前を往く青いGT-Rをブチ抜く事に理性を回す。
34周目。
美世のモチュールGT-Rのタイヤは限界を迎えようとしていた。初期制動で体制が崩れそうになる瞬間を何回も起こしていた。
もうリスクしかない状況だった。しかし、それは前のカルソニックGT-Rだって同じだ。
美世に張り付かれたままずっと首位を走っていた。不用意にピットインなんてできない状況。当然、タイヤがタレている。
限界寸前の2台のGT-Rがデッドヒートを繰り広げる。
「……っ!!」
モチュールGT-Rが狙ったラインから僅かに外れた。
狙ったラインから外れて立ち上がりが鈍る。カルソニックGT-Rがワンテンポ早く立ち上がる。その差は0.8秒。
マシンも
その時、美世の脳内にガラスが割れて砕け散るイメージが浮かぶ。
同時に美世の視界が変化し、思考が加速する。
これが美世の特殊能力である「ブレイク」。
「行けえぇぇっ」
美世のGT-Rがフルブレーキング。カルソニックGT-Rがブレーキングに入ってからワンテンポ遅らせてのブレーキングだ。
フルブレーキングし、ブレーキローターが赤熱する。
赤と青のGT-Rが闘争心をむき出しにしてコーナーの奥深くまで突っ込んでいく。
青いカルソニックGT-Rが引き下がった。この時点で美世のモチュールGT-Rは前に出た。
(やった!!)
だが、美世は大きなミスを犯す。このコーナーは14コーナーであるという事を忘れていたのだ。
カルソニックGT-Rよりも速く、そしてブレーキを遅らせたためにスピードが乗りすぎたのだ。
(あたしのバカーーーっ!!)
タイヤのグリップはとっくに残っておらず、食いつかない。美世のGT-Rはアンダーを出した。GT-Rはどんどんラインから外れ、コースオフしかけた。左側のタイヤをコース外にはみ出させながらも何とか立て直す。しかしこれが原因で美世はカルソニックGT-Rから離れてしまったのだった。
この後美世は順位を落とさないように全力を尽くしてピットイン。セカンドドライバーに後を託す。
レース終了後。
表彰台に美世は立っていた。美世が立っていたのは2番目に高い所だ。
スーパーGT第4戦リザルト
エントラント:NISMO
マシン:MOTUL AUTECHGT-R
予選:5位
決勝:2位
(31ポイント、総合ランキング5位)
表彰式終了後。
美世はピットに戻ろうとしていた。明日からのオフの事を考えながら歩いていた美世を呼ぶ声。
「原田さん、少しいいかい」
美世を呼んだのは美世と競り合ったカルソニックGT-Rのドライバーである岩崎基矢だ。彼は元々走り屋だった過去があるらしい。アマチュアとして活躍していた所、スカウトされたという。
「岩崎さん?」
美世は意外な人物に声をかけられた事に少し驚きながら話す。
「原田さん、とてもいい走りだったよ」
「ありがとうございます。岩崎さんをあと少しで抜けると思ったけどあたしがミスってしまって(笑)」
「ベテランでもミスする事はあるさ。俺も原田さんが後ろにいる時内心焦っていた」
「次は負けませんよ?」
「俺も負けないさ」
そう言った岩崎からは青いオーラが見える。
美世は岩崎から出てるオーラを見てかつて見た蒼いR34GT-Rを思い出した。
(あのオーラ……。あの車と一緒……)
美世がゴールする少し前。
ここは346プロ。蓮は休憩時間に
「美世は『勝った』のか?」
蓮に聞くのは向井拓海だ。
「うーん、僕は『互角』だと思う」
先程のブレーキング勝負の事だ。美世はアンダーを出してしまったが、そこまでの「運び方」について拓海は聞いている。
「美世さんの詰めはよかった。僕もあそこまではやれなかった。最も、アンダーを出したのはあるけどね……。でもカルソニックの方も目でわかるような破錠を見せなかった。ミスした瞬間全部が崩れそうな状態をひた隠しにしてよく耐えたなーって思った」
「よくわからねーけど、美世はあの青い車と互角に戦えたんだな!?」
「僕が言えるのはそのくらいかな」
「やっぱスゲーよなー、美世は」
蓮は声に出さずに思う。
(カルソニックのR35のドライバー……。何だろう?Zやブラックバードと似てるようで違う気がする)
場所は変わって283プロ。
「ああーーっ!モチュールが膨らんだっ!!カルソニックが前に出たーーーっ」
テンション高めの声での実況が部屋中に聞こえる。ライブ中継を見てる遥。そこに咲耶が来た。
「珍しいね、レースを見てるなんて」
「咲耶さん。このGT-Rのドライバーがアイドルって言うのもあって気になって」
「アイドル?」
「はい。346プロの原田美世さんなんですよ、このモチュールGT-Rのドライバー」
「へえ……」
「夜が長い……」
浩一は青いFDに乗って八重洲線を走る。夢斗に呼び出されていたのだ。
「くっそ、ヘンな用事だったらシバく」
現在の時刻は深夜12時。日付が変わった直後である。何しろ浩一が夢斗のメールを受け取って家を出たのがつい20分前。寝ようとしてた時に呼ばれたのだ。
「夢斗と……この間のFC」
前を走るのは夢斗の銀色のエボと夢斗が作っていたパーツを付けた白いFC。
「小日向さんが直してるって言ってたFCか……。小日向さん乗ってんのかな」
浩一の予想は半分当たり。残り半分がハズレなのは……。
「小日向美穂ちゃん!?」
そう。FCを運転するのは「小日向」美穂だ。
浩一がFCに並んでウインドウの向こう側に見えた顔にびっくり。
「遅いぜ、浩一」
夢斗がバックミラーに映った青いFDを見て言う。
夢斗のエボはFCとFDを置いていく。
「あっ、待てや」
「速い……!蓮さんの言ってた通り!!」
数分後……。
「やべえ……っ!?」
先程までの夢斗の余裕は消えている。今、夢斗は本気になった。
浩一のFDが見えなくなるのはいつもの事として美穂のFCが夢斗のエボを追い込んでいたのだ。
しかし。それは「FCが」速いのだ。まだ、
「ついて来いよ……っ」
夢斗のエボは最後のギアである5速で八重洲を走る。FCは離れずに一定の距離をついてくる。
「小日向さんにレッスンしてもらってるだけあるなー……。普通に上手い」
天才夢斗をしてこう言わせた美穂の実力。今はまだ蓮はおろか、夢斗にも届かない。しかし、美穂の実力は確実に蓮に近づいているのである。
2台はC1エリアに入った。ここからは純粋に実力が問われる箇所が一気に増える。
FCはエボⅩの
「夢斗をここまで追えるなんて……」
黄色いオーラを纏いながら夢斗のエボに続くFCを見て浩一は漏らす。
「美穂ー、フツーに上手いじゃん」
「私はまだ全然下手っぴですよ……」
「いや美穂ちゃん、俺より上手いよ?」
「浩一が下手くそなだけだろ」
「そうだな(ヤケクソ)」
「夢斗さん、あの……」
「どした?」
「ライブチケット……いりますか?」
「いる(迫真)」
「ひゃっ!?」
浩一が一瞬で美穂の前に来た。夢斗ですら浩一の動きを視認できなかった程。
「来週のライブ……です」
「おい浩一、美穂が怖がってんじゃねえか。まー美穂、俺はいい。
「ルビ酷くね!?」
翌週。
「みんなーーーっ!!」
「「「「ワアアアアアァァァァ!!!!」」」」
ライブ会場を歓声が満たす。
アイドル達がキラキラとステージで輝いている。
「相葉ちゃーーーん!!」
「うるせー……」
浩一と夢斗だ。美穂が渡したチケットがペアチケットだったので浩一が夢斗を強引に連れてきた。
ちなみに夢斗はライブ初体験。浩一は4回程行ったことがあるらしく、サイリウムなどを当然のように持ってきていた。
初体験の夢斗は何も持ってない。要するに地蔵になっている。
今ステージに立っているのは夕美。
彼女が歌っているのは新曲「Dreaming Star」だ。彼女が主役のアニメ「お花の妖精使いフローラル夕美」のエンディング曲として使用されてる。
コールに合わせて一斉に声をあげるファン達。
「「「オーーーッ、ハイッ!!!」」」
「また来てくださいねーーー!!」
夢のような時間は長いようで短い。しかし、その間の事は忘れられない体験。
ライブ終了後。
「いやーーーっ!相葉ちゃんよかったろ!?夢斗!!」
「こんなテンションのお前初めて見たわ」
大興奮で話す浩一といつものテンションの夢斗。
しかし夢斗の目は少し変わっていた。
「ま、コレがライブなんだなーって思ったわ」
「今度のヤツも行こうぜ!」
「お前だけで行け。疲れる」
浩一が自分のFDに乗るのを見て夢斗は思う。
(コレを見に行きたかったんだろ……)
ここは283プロ。
遥はアイドル達を集めていた。
「皆さんにここに集まってもらったのは……」
「来月開催するファン感謝祭についてです」
「ファン感謝祭……」
咲耶は聞こえた事を繰り返していた。
「ユニット皆でやる事を自由に考えていく……全ては皆さんのアイデア次第です」
遥が説明を終えて部屋を出た後、全ユニットのメンバー達は一斉に話し出す。
「さくやーん!さくやんは何か案ない?」
結華が聞く。
「私は……」
L'Anticaのメンバー達のやる事はまだ決まらなそうだ。
その日の夜。
咲耶は愛機エボⅨで首都高に出ていた。先程雰囲気組のコルベットを撃墜したばかりだ。
バックミラーに光が入り込み、車内を照らす。
「何だ……?」
後ろを見た瞬間、咲耶は鳥肌が立つのを感じた。
「1年振りか……!!今度は負けないっ!」
蒼いS30。その名は「悪魔」。1年前の因縁再び。
「前を走る、その為にずっと走り続けてきたっ」
エボⅨは再び戦闘態勢に入った。
「あの車は……1年前に見た」
Zを操る少女は去年見たあの車を見て言う。
その頃から「速い」とわかっていたが、今はそれがより強く主張されてる。車から見える
「私も本気で行きましょう、ぜっと」
少女、いや四条貴音が駆るZは咲耶のエボⅨを追う。
灼熱のマレーシアの激闘で美世は惜しくも優勝を逃す。
しかし確実に実力を見せた美世。
そして再び現れた悪魔のZ。咲耶は追うべき車との因縁の再会を果たす。
美世にとって人生初の海外の地でのレースは惜しい結果だったが、成長を感じられる結果にもなった。
そして咲耶は因縁の相手と再び出逢う。
ネタ解説です。
・セパンサーキット
美世初の海外戦の舞台セパン。文中にあるように1年通して高温多湿。
物語の都合上、ここでは7月開催になってますが本来は6月に開催するのが普通です。
・ブレイク
美世の特殊能力「ブレイク」。これはガンダムSEEDの「SEED」って思うとわかりやすい……かも。
詳しくは「疾走のR」を見てください。
・ライブシーン
夕美が着ている衣装は「夜の一輪」の衣装。要するにフェス限の衣装。
ちなみにデレステでは現時点で「Dreaming Star」は実装されてません。そのためライブシーンは彼女の持ち歌の「lilac time」で撮影してます。許してください。
「小さい日向の少年と少女」加筆修正しました。
誤字修正がメインですが、新たに加筆箇所あり。加筆した部分はこの「銀色の革命者」に続きます。具体的に言うとSTAGE6で描かれなかった部分となります。
こっちも呼んで頂けると嬉しいです。
https://syosetu.org/novel/187707/1.html
また、この話の数日前の話として外伝「空を目指した少女と地上に煌めく六連星」がありますのでぜひ見てください。STAGE15.5ってとこです。
https://syosetu.org/novel/196611/1.html
再び現れた悪魔のZ。
咲耶は立ち向かえるのか!?