今や総人口のおよそ8割の人間が特殊な能力を持つようになった世界。
「個性」と呼ばれるそれは人々の価値観や常識を大きく変えた。
強個性と言われるような「当たり」から文字通り「没個性」なものまで、様々なものがある。
あくまで身体能力の延長線上であるにもかかわらず、個性の強さが優劣を付ける世界。才能が可視化された歪な社会。それらに違和感を抱くことなく盲信し続ける人間。
確かに扱いの難しい個性で活躍してる者もいるだろう。だが彼らと他の者たちではスタートラインが違うのだ。自分が個性の有効な使い方を考えている間にも他の者たちは自らの個性を磨いていく。それを間近で見続けて心が折れる者だっているだろう。
つまり、この世界に生まれた瞬間から人生における勝ち組と負け組に分けられるとも言えるのだ。
ただし、強い個性を持った者が必ずしも幸せであるとは限らないのだが。
「あなた、だいじょうぶなのですか?こんなところでねているとかぜをひきますわよ?」
「ヒッ、ご、ごめんなさい、ごめんなさい、お願いだからぶたないで!」
「今日こそはまけませんわよ!どちらがよりせーかくに作れるかしょうぶですわ!」
「ま、またなの?いや、別にいやじゃないけど…あ、ご、ごめんなさい、勝負、だね、わかったよ…」
「君がいつも百と遊んでくれている子かい?いつもありがとうね。ところで君の家はこの辺なのかい?君さえよければ親御さんにも挨拶をしたいのだけれど…」
「い、いえだいじょうぶです。そ、それじゃぼ、僕はこれで…」
「……フム…」
「くそ、一体どうなってるんだ!?応援のヒーローはまだか!」
「ダメだ、周辺の道路もめちゃくちゃになってやがる!ヘリを使おうにも優先して落とされてる!」
「一体何なんだよ、あのクリスタルは!」
「僕は人間じゃないんです。考えただけで人を殺せる、そんなバケモノなんです。そんな僕が生きていたって…」
「何を言っていますの!」
「…ぇ…?」
「私はあなたの良いところをたくさん知っていますわ!私が転んでしまったとき、急いで絆創膏を貼ってくれました!個性の使いすぎで倒れそうになったときは自分も疲れているにもかかわらず屋敷まで連れて行ってくれました!あなたが言うバケモノに、そんなことは出来ません!」
「モモ、ちゃん…」
「百の言う通りだよ。それに君はまだ子どもなんだ。世間一般では、まだまだ大人に甘えても良い年頃なんだよ」
「…いいんですか…?みんなと一緒にいても…また、遊んでも…?」
「当たり前じゃないか。確かに今まではダメだったかもしれないけれど、これからは違う、だから僕らとーーー
ーーー家族になろう」
「さて、先日の後処理も終わったし、養子縁組の届け出も受理された。改めて、これから君は僕たちの家族だよ」
「あ、ありがとうございます!」
「これからもよろしくお願いいたしますわ!」
「う、うん。よろしくね、モモちゃん」
「それじゃあ君の部屋を決めようか。どの部屋が「あ、あの…」…どうしたんだい?」
「1つ、お願いがあるんですが…いいですか?」
「いいとも、我が息子の初めてのお願いだ。もちろん聞くとも」
「な、名前を、もらっても、いいです、か?」
「ここが雄英…流石は名門校といったところですわね…」
「モモちゃん、校門の前で止まったら邪魔になっちゃうよ…歩こう?」
「それもそうですわね!行きますわよ!」
「あ、ま、待ってよ!そんなに急がなくても大丈夫だって!」
「ハクー!早く来ないと置いていっちゃいますわよー!」
これは1人のヘタレがヒーローを目指す物語。
つづくわけない。
主人公
八百万 百(ハク)
生まれ持った個性のせいで親から虐待を受けていた。次第に悪化していく暴力と個性の強制使用により心が淀んでいった彼は1つの街を自らの個性により飲み込んだ。その後、駆けつけたヒーローたちによって捕縛。両親は逮捕され、行く宛を失った彼は八百万家に引き取られる。同い年のモモと共に成長し、雄英に通うことになる。
個性「想像」
自分がイメージしたことを現実に起こすことができる。ただし、イメージを強く、正確に行わないと発動しない。また、本人の臆病な性格が災いし、感情が荒ぶると無意識に個性が発動してしまう。使いすぎると頭痛が起きる。